ナレッジ・マネジメントとは

ナレッジ・マネジメントとは

ナレッジ・マネジメント(KM)は、組織内で情報を識別、整理、保存、および配布するプロセスです。

組織内で知識に簡単にアクセスできない場合、価値を生むタスクに費やすべき貴重な時間を、関連情報の検索に費やさざるを得ないため、ビジネスに多大なコストがかかる可能性があります。

ナレッジ・マネジメント・システム(KMS)を使うことで、組織の集合的な知識を活用し、業務効率を向上させることができます。これらのシステムに欠かせないのは、知識ベースですが、これらは通常、情報を保存し、それに容易にアクセスできるようにするための一元管理の場所を提供するため、ナレッジ・マネジメントを成功させる上で非常に重要です。

ナレッジ・マネジメント戦略を採用している企業は、組織的な学習能力とチームメンバー間のコラボレーションが強化され、ビジネス全体でより迅速な意思決定が可能になるため、成果をより早く達成できるようになります。また、トレーニングやオンボーディングなどの業務も効率化され、従業員の満足度と定着率が向上したという報告もあります。

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知識の種類

ナレッジ・マネジメントの定義には、暗黙知、経験知、形式知という3種類の知識が含まれています。これらの種類の知識は、主に情報の体系化によって区別されます。

  • 暗黙知: このタイプの知識は通常、経験を通じて獲得され、直感的に理解されます。その結果、表現したり体系化したりすることが難しくなり、この情報を他の個人に伝えることが難しくなります。暗黙知の例としては、言語、顔認識、リーダーシップスキルなどが挙げられます。
  • 経験知: 一部の文献では暗黙知を経験知と同じ意味に解釈していますが、一部の学者はこれらを別々に分類し、経験知の定義にはより細やかな違いがあると述べています。暗黙知を体系化することは困難ですが、経験知には必ずしもこの問題はありません。その一方で、経験知の情報はまだ文書化されていません。これはプロセス内に存在する傾向があり、「ノウハウ」と呼ばれることもあります。
  • 形式知: 形式知は、マニュアル、レポート、ガイドなどのさまざまな種類の文書内に取り込まれるため、組織はチーム間で簡単に知識を共有できます。このタイプの知識はおそらく最もよく知られており、その例としては、データベース、ホワイト・ペーパー、事例などの知識資産が挙げられます。このタイプの知識は、組織内で知的資本を保持し、新しい従業員への知識の伝達を成功させるために重要です。
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ナレッジ・マネジメントのプロセスとツール

ナレッジ・マネジメントのプロセス

一部の学者は、ナレッジ・マネジメントのプロセスを、知識の獲得、創造、洗練、保存、転送、共有、活用を含むプロセスと要約しています。このプロセスは、もう少し総合的に考えることができます。効果的なナレッジ・マネジメント・システムは、通常、次の3つの主なステップを経ます。

  1. 知識の創造:このステップでは、組織全体に広めたい既存の知識や新しい知識を特定し、文書化します。
  2. 知識の保存:このステップでは、通常、情報技術システムを使用して組織の知識を格納し、共有できるようにします。リポジトリーの要件を満たすには、情報を特定の方法でフォーマットする必要がある場合があります。
  3. 知識の共有:この最終ステップでは、知識を共有するプロセスが組織全体に広く伝達されます。情報が広まる速度は組織文化によって異なります。こうした行動を奨励し、報奨する企業は、確実に競争上の優位性を獲得するでしょう。

ナレッジ・マネジメントのツール

組織がナレッジ・マネジメントのメリットを享受するために活用できるツールは数多くあります。ナレッジ・マネジメント・システムの例には次のようなものがあります。

  • 文書管理システムは、PDF、画像、ワード・プロセッサー・ファイルなどの電子文書の一元管理システムとして機能します。これらのシステムは、学んだ教訓などの文書を簡単に取得できるようにすることで、従業員のワークフローをより効率的なものにします。
  • コンテンツ管理システム(CMS)は、エンド・ユーザーがコンテンツを編集および公開できるWebコンテンツを管理するアプリケーションです。これらは文書管理システムと混同されることがよくありますが、CMSはオーディオやビデオなどの他のメディア・タイプもサポートしています。
  • イントラネットは、組織内にのみ存在するプライベート・ネットワークで、社内の関係者間での有効化、ツール、プロセスの共有を可能にします。維持には時間とコストがかかりますが、社内ディレクトリーや検索など、コラボレーションを促進するさまざまなグループウェア・サービスを提供します。
  • Wikiは、その使いやすさから、人気の高いナレッジ・マネジメント・ツールになる可能性があります。情報のアップロードや編集は簡単ですが、その簡単さゆえに、作業者が不正確な情報や古い情報を更新してしまう可能性があり、誤情報が流れる懸念があります。
  • データ・ウェアハウスは、さまざまなソースからのデータを単一の中央の一貫性のあるデータ・ストアに集約し、データ分析、データ・マイニング、人工知能(AI)、機械学習をサポートします。これらのリポジトリーからデータが抽出され、企業は洞察を導き出すことができ、従業員はデータに基づいた意思決定を行うことができます。

ナレッジ・マネジメントを加速させる戦略

ナレッジ・マネジメント・ソリューションは、チーム間および個人間での知識の伝達を促進するのに役立ちますが、それが肯定的な結果を生み出すには、ユーザーが率先して活用する必要があります。つまり、ナレッジ・マネジメントの成否には、人的要素が大きく関わっています。

  • 組織文化: 管理方法は、経営者がどのような組織に導いていくかに影響を与えます。管理者は、チーム全体での知識共有を奨励し、高く評価することで、学習する組織文化を育めます。このタイプのリーダーシップは、チームが互いに信頼し合い、よりオープンにコミュニケーションしてビジネス成果を達成するための基盤を築きます。
  • 実践コミュニティー: 特定の分野の卓越したセンターは、従業員が質問できる場としてフォーラムを提供し、学習と知識の伝達を促進します。このようにして、組織は会社の特定の領域における専門家を増やし、特定のタスクを実行するための特定の個人への依存を軽減することができます。

ナレッジ・マネジメントのユースケース

適切なツールと戦略を備えたナレッジ・マネジメントは、次のような特定の用途で成功を収めています。

  • 従業員のオンボーディング:ナレッジ・マネジメント・システムは、新規採用者が習得しなければならない膨大な情報に対処できるようにします。入社後数週間を「データの山」で圧倒する代わりに、新入社員がいつでも役立つ情報にアクセスできるナレッジ・ツールを提供し、継続的にサポートします。詳細はこちら
  • 従業員の日常業務:すべての従業員が正確な回答と重要な情報にアクセスできるようにします。適切なタイミングで適切な従業員が関連性の高い回答にアクセスできるようになるため、情報検索に費やす時間を減らし、ビジネスを成長させる活動により多くの時間を費やすことができるようになります。詳細はこちら
  • セルフサービスのカスタマー・サービス:顧客は、電話でサポートに問い合わせるよりも、自分で答えを見つけたいと繰り返し声を挙げてきました。ナレッジ・マネジメント・システムが適切に導入されると、企業はカスタマー・サポートのコストを削減しながら、顧客満足度を高めることができます。詳細はこちら

ナレッジ・マネジメントのメリット

ナレッジ・マネジメント戦略を採用する企業には、さまざまなメリットがもたらされます。主なメリットは次のとおりです。

  • スキル・ギャップの特定: チームが暗黙知や経験知に関する関連文書を作成したり、形式知を統合したりすると、チーム間のコア・コンピテンシーにおけるギャップが明らかになります。これにより、経営陣は新しい組織構造を形成したり、必要な人材を採用したりするための貴重な情報を得ることができます。
  • より十分な情報に基づいた意思決定:ナレッジ・マネジメント・システムは、個人や部門に知識を提供します。現在に至るまで蓄積してきた企業の知識へのアクセス性を向上させることで、チームのスキルが向上し、ビジネス目標をサポートする情報に基づいた意思決定を行えるようになります。
  • 企業の知識を維持する: 最も知識のある従業員が明日退職したら、企業はどうなるでしょうか。ナレッジ・マネジメントを実践することで、企業は組織の知識を蓄積していくことができます。熟練の従業員やその他の専門家が保持している知識を、より広範なチームが利用できるようにします。
  • 業務効率: ナレッジ・マネジメント・システムは、情報を必要とする従業員が関連情報をより迅速に見つけられる場所を提供します。これにより、調査にかかる時間が短縮され、意思決定が迅速化され、業務効率化によるコスト削減につながります。生産性の向上は時間の節約になるだけでなく、コストの削減にもつながります。
  • コラボレーションとコミュニケーションの強化: ナレッジ・マネジメント・システムと組織文化の相乗効果により、チーム・メンバー間の信頼が深まります。これらの情報システムにより、従業員間におkる透明性が高まり、共通の目標に対する理解と連携が強化されます。また、積極的なリーダーシップとオープンなコミュニケーションにより、チームがイノベーションを促進し、フィードバックを受け入れる環境が生まれます。
  • データ・セキュリティー:ナレッジ・マネジメント・システムを使用すると、組織は権限制御、閲覧制御、文書セキュリティーをカスタマイズして、情報が適切なチャネルまたは選択された個人のみがアクセスできるようにすることができます。従業員が安全かつ自信を持って知識にアクセスする自主性を与えます。
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