今日の金融機関では、「人的資源の有効活用」が喫緊の経営課題となっています。その解決策として期待されているのが、「デジタルワーカー」による“AIファースト”の取り組みです。これまで効率化が難しかった煩雑な業務処理やサービスの高度化への対応をデジタルワーカーに任せることで職員の負担を軽減します。本記事では、IBMが提唱するデジタルワーカーが金融機関の仕事をどのように変革できるのかを紹介します。
AIファーストとは、業務プロセスの一部をAIで効率化するのではなく、AIを前提に業務全体を再設計することを指します。生成AIを中心とした最新テクノロジーを駆使して、人が行う必要がない業務を徹底的に自動化する、もしくは人が行う業務を高度化してインテリジェンスを提供することで、業務・サービスの生産性と品質、価値を飛躍的に向上させます。これまでの“AIが業務や人を支援する”という考え方から、“AIができないことを人が補填する”という考え方に発想を転換するのです。
デジタルワーカーは生成AI技術を活用したソフトウェア・ロボットであり、職員一人ひとりのバディ(相棒、仲間)となります。顧客管理や煩雑な業務処理、顧客のアフターフォロー、多様な提案など、さまざまな仕事を担当します。
デジタルワーカーは、多彩なスキルを駆使して、複雑な業務プロセスの一部分を独立して実行できるソフトウェア・ベースの労働力でもあります。定型・非定型を問わず、これまで人が行ってきた業務をAIが理解し、さまざまな業務の専門家であるAIエージェントを使いながら人を支援し、人に代わって業務を行うことで、事務作業から解放し、人の能力の拡張を実現します。
デジタルワーカーにより、金融機関の業務をどのように変革できるのでしょうか。
現在の窓口業務では、顧客が紙の書類やタブレットに依頼内容を記入・入力し、テラーが確認して後方事務センターに電送します。同センターの事務担当者は、複数のシステムを操作して照合処理を行い、別の担当者がシステムに入力します。依頼内容や処理などに関して不明な点があれば、テラーや役席に判断を仰ぎます。その間、顧客は店舗で長時間待たされることもあります。
一方、デジタルワーカーを導入した窓口業務では、顧客がタブレット画面で入力した情報をデジタルワーカーが勘定系システムやサブシステムなどの登録内容と逐次照合し、相違がある場合は画面上でリアルタイムに指摘して顧客に確認・修正を促します。
また、デジタルワーカーでは判断できない事項は、役席や後方事務センターの専門スタッフにチャットでリアルタイムに確認し、承認を得ます。全てをデジタルワーカーだけで完結させるのではなく、重要な事項については必ず人が承認することがポイントです。
デジタルワーカーは、業務に合わせて「AIアシスタント」「AIエージェント」「自律型AIエージェント」などの機能や各種のスキルを連携させて作業を遂行します。
AIアシスタントは生成AIを搭載したチャットボットであり、問い合わせに対する自動回答を実現します。また、AIエージェントに事務規定などの業務マニュアルの手順を登録することで、人と対話しながら業務を遂行させることができます。さらに、自律型AIエージェントは、入力内容に応じて必要となる作業を自ら判断して手順を組み立てます。業務マニュアルを参照しながら、システム操作に必要なコードを生成AIが自動生成し、自律的に業務を進めることができます。
業務の内容に応じてこれらの機能を複合的に活用することで、複数の業務処理や顧客・職員間のコミュニケーションを自動化しながら、業務オペレーションの正確性と生産性を飛躍的に高めることが可能となるのです。
IBMは、デジタルワーカーの活用に必要な技術とサービスを包括的に提供しています。
銀行業務を熟知したエキスパートによるコンサルティング・サービスを通じて、デジタルワーカーを活用した業務変革の検討、組織のミッション策定、新システムへの影響分析、運用管理体制の構築、移管スケジュールの策定など、多岐にわたる論点を検討し、最適な導入計画をサポートします。
デジタルワーカーを実現する技術も豊富に取り揃えています。例えば、「IBM watsonx Orchestrate」は前述した各機能を統合するコントローラーとして、業務プロセス全体とコミュニケーションを管理します。「IBM Blueworks Live」は業務マニュアルを基に既存の業務を可視化し、業界標準の業務プロセス定義に変換してシステム上で実行します。
また、業務プロセスに沿った画面を、「IBM Business Automation Workflow」によって容易に作成できます。大量の紙の帳票については、「IBM Datacap」がOCR処理、分類、補正などのデジタル化のプロセスをワークフローとして実行します。さらに、判断や制御など、あえて人を介在させることが必要な業務(ヒューマン・イン・ザ・ループ)については、IBMのAIを活用したBPO(AI First BPO)が代行します。
このほか、マイクロソフト、アマゾン ウェブ サービス(AWS)、SAP、セールスフォースなどの技術・サービスと組み合わせることで、お客様に最適なデジタルワーカーを実現します。
デジタルワーカーは後方・センター業務だけでなく、間接業務にも適用できます。その一例が「経費精算」です。
IBMは現在、SAPとの戦略的パートナーシップにより、株式会社コンカーの経費精算ソリューション「SAP Concur ®」とデジタルワーカーを組み合わせた経費申請の確認業務の自動化に取り組んでいます。申請内容と社内規定の照合や交通費計算など、それぞれ異なる役割を持つ複数のデジタルワーカーが連携し、出張日や金額、日当などの確認に加えて、申請内容の妥当性や添付書類のチェック、申請漏れの検出などを行います。これにより、短期間で業務を2~3割削減することを目指しています。
IBMは、“AIができないことを人が補填する”BPO業務や、生成AI活用に向けた知見の伝承、リスキリングによる付加価値業務へのシフトを通じて、お客様と共に人的資源の有効活用を推進するパートナーを目指しています。その一環として、AIファーストの実現を推進する国内デリバリー拠点である「IBM地域DXセンター」を全国に展開しています。
金融業界のビジネス変革が求められる中、金融機関が競争優位性を高めていくためには、生成AIなどの先進技術を活用した業務変革が必要とされています。IBMはデジタルワーカーを通じて、金融機関の新しい仕事の進め方の実現を支援していきます。
SAP Concurは、出張、経費、請求書管理を統合したソリューションを提供する世界有数のブランドであり、これらのプロセスの簡素化と自動化を追求しています。高い評価を得ているSAP Concurのモバイルアプリは、社員の出張をサポートし、経費を自動で入力し、請求書の承認を自動化します。AIを使いリアルタイムのデータを統合、分析することで、効率的な支出管理を行うことが可能です。SAP Concurのソリューションは、手間の掛かる作業をなくし、お客様の業務効率化に貢献、最高の状態でビジネスを進めることができるようサポートします。詳細はconcur.comまたはSAP Concur ブログをご覧ください。
世界最大の出張・経費管理クラウド SAP Concur の日本法人で、2010年10月に設立されました。『Concur Expense(経費精算・経費管理)』・『Concur Travel(出張管理)』・『Concur Invoice(請求書管理)』を中心に企業の間接費管理の高度化と従業員の働き方改革を支援するクラウドサービス群を提供しています。
コンカーの詳細については www.concur.co.jp をご覧ください。
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