マラウイは、聳え立つ山々から平らな乾燥した平原、広大な湖や川まで、地形の多様性に富んだ国です。歴史的に、天候も同じように多様で、5月から10月までの涼しく乾燥した季節と、11月から4月までの暑く湿った季節に分かれています。しかし、近年、気象パターンの変化により、季節の予測がはるかに難しくなりました。
気象の予測不可能性は、国民と経済に直接影響を与えます。マラウイは肥沃な土壌を豊富に有し、人口の大半は農業で生計を立てています。主要な作物の1つはピーナッツです。ピーナッツは土壌を肥沃にし、家庭の食料となり、国内外での収益であり、家畜の飼料となります。
国内の小規模農家の多く(10ヘクタール以下の家族所有の畑を運営している農家)は、経営に苦労しています。無理のない貸付や市場へのアクセスが不十分であることは、継続的な貧困のサイクルの一因となります。その結果、多くの農家は高品質の種を購入する資金がないため、リサイクル種(基本的には穀物)を植え付けなければなりません。そのような種は、使用する季節ごとに収穫量が減少します。さらに、多くの農家は、テクノロジーが提供できる超局所的な気象情報にアクセスできないため、依然としてラジオを使って、一般化された天気予報を受信しています。
マラウイ政府は農家にエクステンション・サービスを提供しており、エクステンション・ワーカーと呼ばれる農業の専門家が、作物を植え付け、施肥、収穫する時期、方法、場所についてアドバイスしています。ただし、エクステンション・ワーカーに対する農家の比率が高く、1,500~2,000農家ごとに約1人のワーカーが稼働しています。
世界的な非営利団体であるHeifer Internationalは、これらの農家を支援することを目指しています。「私たちは、発展途上経済の小規模農家が持続可能な生活収入を達成できるよう支援します」と、この非営利団体のグローバル・デジタル・テクノロジー部門であるHeifer Labsのディレクター、Antoinette Marie氏は述べます。「私たちは持続可能な開発に重点を置いており、その取り組みを通じて、長期的な地域社会との関与の末、農家は自立することができます。」
Heifer Internationalのイノベーションおよび新規イニシアチブ責任者であるElizabeth Magombo-Kabahe氏は、次のように付け加えています。「私たちは、現状のコミュニティーに基づいてプログラムを構築しています。介入を開始する前に、私たちはコミュニティーと時間を過ごし、その生活方法を理解します。」
Heiferの経営陣は、早い段階で、農家が生活可能な収入を得られるよう、収穫量を増やすという目標を掲げ、シーズンが始まる前から収穫、そしてその後に農家を支援することの重要性を理解していました。そのためには、特に新型コロナウイルスの感染拡大後、作物の収穫量を増やし、市場での競争力を強化するためのデジタル・ソリューションの導入を加速させる必要がありました。
2021年、Heiferは、AIなどのテクノロジーや専門家のエコシステムを通じて、世界中で環境的および経済的ストレスに直面しているコミュニティを支援するIBMのソーシャル・イノベーション・プログラムであるIBM ® Sustainability Acceleratorに参加しました。Heiferはマラウイ地域に焦点を当て、IBMと協力して、作物サイクルの各段階で農家にタスクベースの推奨事項を提供するオープンソース・プラットフォームであるOpenHarvestを構築・開発しました。
このプロジェクトに取り組むうえで、Heiferには2つの主要な目標がありました。「私たちは、デジタル拡張サービスに革新的なアプローチを採用したかったのです」とMarie氏は言います。「私たちは、農家に具体的かつ農学的な推奨事項について大規模にリーチしたかっただけでなく、行動の変化や市場の連動性の問題にも取り組みたかったのです。」
IBM Sustainability Acceleratorプログラムの第一歩として、HeiferとIBMは一連のデザイン思考セッションを実施し、両組織はプロジェクトのテクノロジー戦略を策定し始めました。IBM Sustainability Acceleratorで、エンド・ユーザーと協力してニーズを満たすソリューションを構築することに重点を置く取り組みの一環として、Heiferはその後、農家自身と2回目のセッションを開催しました。これは、体験型からデータ駆動型の農業への移行に農家を関与させる上で重要でした。
雨季が近づくと、Heiferは、人、プロセス、テクノロジーを組み合わせたIBMの共同エンゲージメント・モデルであるIBM Garage™メソッドを使用して、 IBM Consultingおよびその他のIBM事業単位と連携しました。「私たちは、設計要件を明確化し、バックログに統合し、スプリントを行い、現場で更新をデプロイおよびテストするというアプローチで協力しました」とMarie氏は言います。「IBM Sustainability Acceleratorが終了する頃には、HeiferチームとIBMチームは別々のチームではなく、一つのチームのように感じられるようになりました。」
「そのとき、物事が本当に生産的なものになったのです」と彼女は続けます。「機能要件に対処しただけでなく、プログラム上の課題に取り組み、ソリューションを通じて提供できる他の価値分野のアイデアも検討していました。」
その結果、強化されたOpenHarvestソリューションは、テクノロジーとコミュニティ参加を組み合わせたものとなりました。これは、IBM Cloud上で稼働するOpenHarvest管理プラットフォームと、コミュニティ・ファシリテーター(他の農家にいつ何を植えるべきか助言する地元の農家)用のモバイル・アプリケーションで構成されています。
このソリューションは、AI搭載のIBM Environmental Intelligence API を活用して、リアルタイムの超ローカルな天気予報、地元の土壌検査センターからの土壌水分と組成のデータ、コミュニティ・ファシリテーターが収集したデータなど、さまざまなソースからデータを収集して分析します。その後システムは、植え付け時期、肥料の使用量、収穫時期など、各農家への推奨事項を生成します。ほとんどの農家はスマートフォンを持っていないため、推奨事項はフィーチャーフォンのSMSメッセージとして受信されます。このシステムはまた、機械学習の技術(特にクラスタリング)を使用して、農業季節全体を通じて特定の推奨事項がいつトリガーされるかを予測することにより、管理者が種や肥料などのリソースをより効率的に計画し、割り当てることができるようにします。
Heifer社は、何が機能し、何が機能していないかを判断するために、農家が推奨事項に一貫して従うように徹底する必要があります。そのような農家の取り組みを奨励し、データ駆動型の農業慣行を促進するために、Heiferのチームは、農家が現場作業に関する検証可能なデジタル記録を取得する奨励プログラムを設置しました。最も収量の多い上位10件の農家には、ピーナッツの種40kg(1エーカー分にあたる)が贈られました。
コミュニティー・ファシリテーターは農場を訪問し、関連データを収集してラベル付けし、スマートフォンのアプリで写真を撮ります。次に、地元大学の農学生がその写真を分析し、推奨事項が適用されていることを確認します。プログラムに参加することで、農家は高品質の種子や資材を購入するための家計規模に合った融資を得ることができます。
Heifer InternationalとのIBM Sustainability Acceleratorプロジェクトは、2023年に終了しました。パイロット期間における収穫量は、有望な結果を示しました。参加者の多くが平均5人の世帯を支援していたため、このプロジェクトは受益者とその家族が収穫量を増やす上で直接的に貢献しました。
この影響は、すでに一部の農家に人生を変える機会をもたらしています。ある農家は、このプログラムのおかげで初めて融資を利用できるようになり、リサイクル種を使う代わりに認証種の種を購入できるようになったといいます。また、以前はアクセスできなかったエクステンション・サービスを利用し、携帯電話のSMSメッセージを通じて推奨事項を受け取ることができるようになり、その後、それを実施しました。
彼の収穫は大成功で、子供たちの制服、妻の衣服、そしてマラウィの主食であるトウモロコシを購入し、今年の分の食糧が確保できました。さらに、彼は現在、事業に投資し、支援者を雇い、農場の効率を高めるための資本を持っています。
他にもポジティブな影響を与えた話があります。「ある農家は2店舗を建設し、4匹の豚を購入し、小さな食料品店を始める計画です」とMagombo-Kabaghe氏は言います。「彼は子供たちの学費を支払うことができ、次のシーズンに向けて肥料を購入するための資金を確保しています。別の農家は、泥と草で作られた茅葺きの家に住んでいましたが、今ではレンガ造りの家を建てています。彼女は今シーズンの収益で鉄の屋根を設置したいと考えています。」
HeiferのIBM Sustainability Acceleratorプログラムへの参加は2年間で終了しましたが、マラウイの農家との取り組みはまだ始まったばかりです。将来を見据えて、Heiferはプラットフォームを通じて収集され、プラットフォームに入力されたデータを利用して、AIモデルのソリューションへの統合を評価しています。またHaiferでは、現在学生が行っている推奨事項の確認など、一部の機能の自動化も検討しています。
このプロジェクトの成功は、十分な恩恵を受けていない地域社会に持続可能な農業開発をもたらす上で、データとデジタルテクノロジーが変革をもたらす力を持つことを示しています。これはHaiferとIBMが共有する環境的・人道的価値観に基づくアプローチです。一つの取り組みには世界を変える可能性があり、それは一件一件の農場から始まります。
1944年以来、Heifer Internationalは、持続可能な方法で飢餓と貧困をなくすために、世界中で5,200万人以上の人々と協力してきました。Heiferは現在、アフリカ、アジアおよび南北アメリカ(米国を含む)の19の国または地域で事業を展開しており、農家や食料生産者が地域経済を強化し、生活収入をもたらす安全な生計を構築できるよう支援しています。
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