Eurobits Technologies社
IBM Cloudに堅牢かつセキュリティーが充実したサービスを展開することで金融環境を変革しています
Eurobits Technologies社

銀行業界は規制当局の圧力を受けて、支払い処理や口座集約といったサービスを市場の新規参入者に開放しつつあります。Eurobits社にとって、この変化は重大な成長機会となります。同社は、銀行が信頼できるサード・パーティーに口座情報へのアクセスを提供する支援サービスを提供しています。同社は先行者としての優位確保を目的としてIBM® Cloudに移行し、顧客基盤の急拡大に必要な柔軟性、規模、レジリエンスを獲得しています。

ビジネス上の課題

Eurobits社では国際的な成長機会を活かすため、オープン・バンキング・サービス用に、所定の法域に顧客データを保持する機能を持つ、より柔軟でスケーラブルなプラットフォームを必要としていました。

概要と経緯

Eurobits社は2つのデータセンターでVMware vSphere on IBM Cloud環境に移行しました。API管理の産業化にはIBM® API Connectを、アプリケーションのコンテナ化にはIBM Cloud Kubernetes Serviceを採用しました。

成果 迅速化:

柔軟にサービスを拡張可能になり、成長の壁が取り除かれます

セキュリティー機能の充実

シングルテナントのクラウドサービスは、金融サービスの利用者に信頼感を与えます

コンプライアンス

現地のデータ保護法に準拠することで、国際的な事業展開が円滑になります

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成長に向けた体制づくり

Eurobits社は銀行口座情報サービスの先駆者として、銀行間の連携を支援することで、顧客が複数のバンキング・サービス・プロバイダーにある銀行口座から簡単に支払い、口座を管理できるようにします。この両方の活動をサポートするために同社ではセキュアなAPIを提供しており、このAPIを使用することで信頼のおける当事者は顧客の口座情報を安全に共有し、顧客は取引銀行の口座にログインせずに送金できます。

2018年1月、EU決済サービス指令の改定版(PSD2)が施行されました。これに伴い、銀行顧客はサード・パーティーのプロバイダーを利用して財務管理ができるようになりました。2019年9月に決済サービスプロバイダーに対してPSD2への対応が法的に義務付けられました。

Eurobits社CEO(最高経営責任者)のArturo Gonzalez氏は次のように語ります。「当社は現在オープン・バンキングと呼ばれているサービスに欧州で初めて手掛けましたが、長年このサービスには目立った競争相手がいませんでした。ところがPSD2をはじめとするさまざまな進展を受け、オープン・バンキングは今や欧州だけでなく世界中で強力な市場勢力となっています。大きな機会を秘めたこの急成長分野への参入を図るうえで、素早い行動は重要な要素でした。先行者の持つ競争上の優位は永遠に続かないとわかっていたためです」

Eurobits社は、顧客、取引、活動地域の拡大に十分対応できる柔軟性を備えた新しいインフラストラクチャーを構築する必要がありました。その当時、基幹システムは、サード・パーティーのデータセンターにあるコアロケーションのハードウェアでホスティングされていました。この環境は完全に仮想化されていましたが、基礎となる物理的なインフラストラクチャーが依然として、発展の足枷となっていました。サーバー容量が足りなくなるたびに、サービス・プロバイダーのアップグレード完了や追加ハードウェアのプロビジョニングを待つ必要がありました。

Gonzalez氏は次のように振り返ります。「ビジネスの着実な成長とコンピューティング要件の予期せぬ増減に対応するために、柔軟性を高める必要がありました。世界的拡大を念頭に置くと、金融データの国内保持を義務付ける現地のデータ保護法、中央銀行の規制、フィンテック法に準拠可能である必要もありました。これらの要件を満たすために、グローバルに展開するクラウド・プロバイダーを探しました」

さらに、オープン・バンキングという新分野ではさまざまな運用モデルが必要です。サービス・リクエストの中には、1日単位または当日中の金融情報を対象とするものもあれば、データのスナップショットへの1度限りのアクセスのみ必要とするものもありました。これらすべてのサービスでは、適切なAPIを通じてEurobits社のサービスに接続して使用できる必要があります。

Eurobits社が以前使用していた、銀行にAPIをデプロイするためのモデルは、規模と洗練度に欠けていました。以前は、顧客と取引数が比較的小規模であったため問題なく機能していましたが、サービス需要の急増に対処するには、より柔軟なモデルが必要だと同社は認識していました。

IBM API Connectを使用して、簡単かつコスト効率よくAPIをデプロイ、管理することは、最先端の決済プラットフォーム機能の維持に貢献しています Arturo Gonzalez氏 CEO Eurobits社
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予備調査

あらゆる大手国際クラウド・ベンダーのソリューションを比較検討したうえで、Eurobits社は戦略プラットフォームとしてIBM Cloudを選択しました。「IBMは他社と違っていました」とGonzalez氏は打ち明けます。「当社の主な顧客基盤は銀行とフィンテックですが、セキュリティーの観点から、マルチテナント環境にデータを配置することを銀行は望みません。IBMと他社との最大の違いは、ハイブリッド・ソリューションとして運用可能な点でした。ほとんどの重要な情報はシングルテナント・アーキテクチャーを通じて移動しますが、それほど重要でない情報はマルチテナント・アーキテクチャーを使用できます。

Eurobits社のクラウド移行の第1段階では、IBM Cloudの予行演習も兼ねて、既存のVMware vSphereデプロイメント用の災害復旧(DR)環境をパリのIBMデータセンターに作成しました。VMware vSphere Replicationは、実稼働デプロイメント(当初はサード・パーティーのデータセンター)からIBM Cloud Bare Metal Serverに仮想マシン全体を同期します。Eurobits社が実稼働環境をフェイルオーバーする必要が生じた場合、オーケストレーション・ツールによって予備の仮想マシン・インフラストラクチャーがIBM Cloudに自動的にデプロイされます。

「IBM Servicesとの連携作業で信頼感が生まれました。担当者と直接話しながらサポートを受けることができたためです。他の大手クラウド・プロバイダーは匿名ベースか自動ツールでのサポートのみ提供しています。技術的な問題が生じた場合、実際の担当者から協力が得られると、間違いなくサービスの価値は高まります」(Gonzalez氏)。

重要なワークロードをクラウドに移行

災害復旧イニシアチブの成功を受け、Eurobits社はIBM Cloudサービス・チームと次のステップである、実稼働環境のクラウドへの全面移行に進みました。同チームは、VMware vSphere High Availabilityを使用して、アムステルダムにあるIBM Cloud Bare Metal Serversに、VMware ESXiサーバー用の3つのレプリカ・クラスターをセットアップしました。同時に、VMwareの初期の災害復旧環境はパリに残しました。専用サーバーが不要なシステムについては、VMwareデータのバックアップと保護に、VMware vSphere on IBM Cloud、VMware vCenter Server on IBM Cloud、IBM Spectrum Protect Plus on IBM CloudなどのIBM Cloud製品を使用しています。

Eurobits社ではVMware APIを使用して、IBM Cloudでの実稼働デプロイメント用仮想マシンの作成と移行を自動化しています。自動化には独自のものとIBMから提供されるものと両方のスクリプトを使用しています。すべてのVMware仮想マシンはパリにある災害復旧データセンターにバックアップされます。

IBM Cloudに移行した仮想マシンは、当初30台でしたが、今では約50台が稼働しています。ITディレクターのMani Ghelichkhani氏はこの拡大の要因を次のように説明します。「当社は事業を拡大中でユーザーも増えていますが、IBM Cloudのおかげでこうした拡大に対応しながら、高可用性を維持しています。新製品の開発も行っています」

Eurobits社では、大型ファイルのレポジトリ用にIBM Cloud File Storageも使用しています。このレポジトリはNFS経由で一部の実稼働サーバーと、バックアップされたディスク・イメージ用にIBM Cloud Block Storageに接続しています。

新たな収益源にアクセス

Eurobits社はAPIを通じて提供されるサービスの多様化にまつわる課題に対処するために、新しい市場部門への売り込みに利用可能なIBM® API Connect on IBM Cloudを選択しました。

この点についてGonzalez氏は次のように語ります。「エンゲージメント・モデルの数と種類が増えるにつれ、自前のAPIデリバリー・モデルを展開するのはほぼ不可能になりました。IBM API Connectを使用して、簡単かつコスト効率よくAPIをデプロイ、管理することは、最先端の決済プラットフォーム機能の維持に貢献しています

Eurobits社のCRO(最高リスク管理責任者)兼CMO(最高マーケティング責任者)であるPablo Rovira氏は、次のようにコメントします。「IBM API Connectを使用すると、小規模なクライアントが必要に応じてサービスを利用し、支払い可能なマーケットプレイスにAPIを公開できるようになります。以前は大規模なB2Bクライアントを重視しており、日常的に直接会うことがクライアントとの関係構築にはつきものでした。こうしたデリバリー・モデルはコストがかかるため、小規模の潜在クライアントはマーケティング対象から外れていました。IBM API Connectの導入を機に柔軟性が大幅に高まると同時に当社サービスの利用開始コストも低下したことで、まったく新しい市場への扉が開いています」

Kubernetes上のマイクロサービス

Eurobits社のクラウド移行第2段階は、アプリケーションのコンテナ化です。同社では、IBM Cloud Kubernetes Serviceを使用して、クライアントの需要の変化に合わせて規模を調整可能な、レジリエンスの高い弾力的なアークテクチャーを構築しています。例えば、口座情報サービスでは、銀行400行のコネクター・サービスのいずれかに更新が必要となった場合、コンテナ内のJavaベースのマイクロサービスを使用して開発から実稼働までの各段階を大幅に加速しています。銀行コネクターは多くの物理リソースと論理リソースを共有するため、複数の仮想マシンの代わりにコンテナベースのアプローチを使用することで、ITリソースを有効活用できるようになり、パフォーマンスも向上します。

Gonzalez氏は次のように説明します。「IBM Cloud Kubernetes Serviceの採用により、アークテクチャー方式はかなりモノリシックなものから、マイクロサービスを使った、より分散的なものに変わり、各銀行コネクターを個別に管理可能になります」

Ghelichkhani氏が次のように付け加えます。「エンドユーザーの銀行口座からすべての情報を取得するために必要なテクノロジーを考えると、各ソフトウェアは他のソフトウェアから独立している必要があります。コンテナ化により、口座集約ソリューションの全体的なアーキテクチャーに影響を与えることなく、あらゆるコネクターで修正操作を実行できます。DevOpsチームは、サービスに修正パッチまたは開発パッチを適用した後に、本番環境に移行する場合の作業が楽になると、このテクノロジーに感謝しています。

IBM Cloud Kubernetes Serviceの採用により、アークテクチャー方式はかなりモノリシックなものから、マイクロサービスを使った、より分散的なものに変わり、各銀行コネクターを個別に管理可能になります Arturo Gonzalez氏 CEO Eurobits社
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際立った柔軟性

IBM Cloudを実行基盤とすることで、Eurobits社はパフォーマンス、可用性、拡張性、柔軟性、セキュリティーといった、成長と国際化が著しいオープン・バンキング・サービス市場で競合他社をリードし続けるために必要な要素を獲得しました。IBM Cloud Bare Metal ServersをVMware vSphereの実行基盤とすることで、マルチテナント環境が潜在的に持つセキュリティー・リスクを負うことなく、トランザクションを高速処理する専用コンピューティング能力も獲得しています。そのうえ、基幹システムを新しいBare Metal Serversに急拡大して、クライアントの新たな需要を満たすこともできます。

Gonzalez氏は具体例を挙げます。「当社の主要クライアントの1社は、大々的なマーケティング・キャンペーンを近々実施する予定で、1カ月から2カ月ほどでユーザー数は10倍から20倍になると見込まれます。VMware vSphere on IBM Cloudにより、この種の状況に必要な高い柔軟性が得られます。また、IBM Cloudという実行基盤は継続的な世界的拡大も後押しし、規模と地域の両方をシームレスに拡張できます」

高い安全性と準拠能力

現地規制で個人データと金融データの国内保持が義務付けられる場合でも、Eurobits社はIBMの世界的なクラウド・データセンター・ネットワークを活用し、必要なサービスのローカル・インスタンスを起動するだけで簡単に準拠することができます。VMwareの仮想化とKubernetesのコンテナ化はいずれも新たな進出拠点に既存機能を迅速に導入するのにうってつけの役割を果たします。マイクロサービスとしてアプリケーションを設計し、IBM Cloud Kubernetes Serviceにデプロイすることで、水平方向の拡張性と全体的なアプリケーションのアップタイムも向上します。サービス分離によるセキュリティー上のメリットにも最後に触れておきます。

要約すると、Eurobits社の顧客基盤の大半を占める銀行やフィンテック企業は、準拠能力、充実したセキュリティー、高パフォーマンスの3要素と共に、回復能力も実証済みで事業継続を後押しするソリューションが必要です。IBM Cloudはこうした要件を満たすことで、Eurobits社とそのクライアントが複数の地域の厳格な規制に準拠できるようにしています。特に、Bare Metal Serversを使用することで、データとトランザクションはクラウドの他の環境から常に物理的に分離し、リスクを嫌う同社のクライアントに信頼感を与えます。

常にビジネスで利用可能

VMware High Availabilityテクノロジーを実稼働のクラウド・センター内で使用することで、重要な口座情報と決済サービスは常に利用可能な状態にあります。また、IBM Cloudに災害復旧ソリューション一式が格納されているため、Eurobits社は予期しない障害時にもサービスを迅速かつ安定的に復元できます。所有コストも以前のホスティング環境より低下しています。

「今では、サービスの中断から自動的に復旧するのがはるかに簡単になっています」とGonzalez氏は言います。「実務的には、ダウンタイムが低下し、復旧が迅速化することになります。Kubernetesを使った即応的なアーキテクチャーへの移行が完了したら、これらのメトリクスの改善が予測されます。つまり、最大のメリットはこれから得ることになるのです」

同氏は次のように締めくくります。「IBMが当社のパートナーであるという事実は、金融サービス業界のクライアントに高度な安心感と信頼感を与えています。急激に拡大中で、それにより重い規制上の課題と制約が課される市場で成功するにはこの移行を完了する必要がありました。当社はIBM Cloudが後ろ盾にあるため、こうした課題に自信を持って立ち向かっています」

Eurobits社のロゴ
Eurobits Technologies社

Eurobits社(ibm.com外部へのリンク)は欧州における銀行向け口座集約サービスの先駆的企業です。顧客リストには、BBVA、Santander(スペイン)、ICA Banken(スウェーデン)、La Banque Postale(フランス)、KBC(ベルギー)といった欧州各国の最大手金融機関が名を連ね、17カ国の銀行、通信企業、公益企業、決済プロバイダーの間で、安全性の高いシームレスな接続を提供しています。EU決済サービス指令第2版に深く関与し、API経由での電子請求書発行サービスも手掛けています。

次のステップ

IBM Cloud for VMware Solutionsポートフォリオの詳細については、IBM担当員またはIBMビジネス・パートナーまでお問い合わせいただくか、Webサイト(ibm.com/cloud/vmware)にアクセスしてください。

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脚注

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