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Smarter Business

食料は飲料空容器! ポケモンのベトベターが次世代型リサイクルボックスになった

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柴本 健太郎 氏

柴本 健太郎 氏
日本コカ・コーラ株式会社
技術本部
QSE
環境サステナビリティガバナンス
マネージャー

コカ・コーラの各種環境活動の計画と実行、環境法令関係のコンプライアンスを担当。

 

Ken Lee 氏(リモートで参加)

Ken Lee 氏(リモートで参加)
日本コカ・コーラ株式会社
コマーシャルディベロップメント
RGM
シニアマネシャー

炭酸飲料のコマーシャル戦略を担当。

 

内藤 剛史 氏

内藤 剛史 氏
株式会社ポケモン
統括本部 経営企画部 人事担当
統括本部 プレイヤーリレーション部

人事においてアジア広域採用、障がい者採用、各種研修、人事制度企画を担当。「はらぺこベトベター」推進のためプレイヤーリレーション部を兼務中。

 

新海 翠 氏

新海 翠 氏
株式会社ポケモン
映像本部 映像企画部

主に映像制作における監修業務を担当。

 

白石 歩 氏

白石 歩 氏
日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング株式会社
ISE IoTソリューション
ITスペシャリスト/データサイエンティスト/量子コンピューターエンジニア

データ分析/AIモデル開発を中心にIoT/AIのシステム開発、デモ開発などを担当。量子コンピューティングに関する研究や啓蒙活動も実施中。

 

丸岡 豊 氏

丸岡 豊 氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
東京ラボラトリ IBMガレージ
クラウド・エキスパート・サービス
ソフトウェア・ディベロッパー

開発者、プロジェクトマネジメント、Agile開発、エンタープライズ・デザイン思考にいたる幅広い知識と経験を元に、お客様のクラウドをテーマとしたDX推進の支援を担当。

ヘドロから生まれたポケモンながら、じっと見ているとなんともユーモラスでかわいらしさを感じるポケモンの「ベトベター」。そのベトベターをモチーフに開発されたのが、飲料空容器をAIで分別するリサイクルボックス「はらぺこベトベター」だ。口からペットボトルを食べさせると「ベタ~・・ベットベタゥ!」と低い声でうなるように鳴く。ビンを食べさせると違う鳴き声で反応する。

開発に携わったのは、日本コカ・コーラ株式会社、株式会社ポケモン、日本アイ・ビー・エム株式会社の延べ20人ほどの有志社員たちだ。業務時間外に集まり、およそ1年半をかけて制作。ユーザーが楽しみながらゴミの分別やリサイクルについての関心を深めることができるプロダクトとして、2020年11月に完成させた。

有志で進められたプロジェクトとは、どのようなものだったのか。そこに込められた、それぞれの思いとは。プロジェクトの中心となった、日本コカ・コーラ株式会社(以下、コカ・コーラ)の柴本健太郎氏とKen Lee氏、株式会社ポケモン(以下、ポケモン社)の内藤剛史氏と新海翠氏、日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング株式会社(以下、ISE)の白石歩氏と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、IBM)の丸岡豊氏による座談会でお届けする。

ファンが体験する価値を追求、かつ飲料空容器回収ボックスの使い方を周知

©2020 Pokémon. ©1995-2020 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

©2020 Pokémon. ©1995-2020 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

——飲料空容器回収ボックス「はらぺこベトベター」は、回収した容器をAIによって判別すると伺いました。その仕組みを教えてください。

(ISE)白石 「はらぺこベトベター」の中には、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)という手のひらサイズのコンピューターと、それに連動した重さセンサーとカメラが入っています。重さセンサーが入ってきた容器を感知し、カメラが発動して撮影。その画像をIBM Cloudに送り、AIのIBM Watsonが画像認識して、「ペットボトル/ビン/カン/それ以外」と判断し、ラズベリーパイに返します。その結果を受けて、「ベタ~(ムグムグ)・・ベットベタゥ!」(=ペットボトル)、「ベター!(ムガッフムガッフ)・・ベー!」(=ビン)といった、ペットボトル、ビン、カンそれぞれに用意された鳴き声を発する仕組みです。捨ててから約3〜5秒で鳴き声としてフィードバックされます。

IBM Watsonで認識された、ペットボトル、ビン、カンを食べた数は、データベースのIBM Db2に、画像ファイルはCloud Object Storageに蓄積されます。そしてクラウドを通じ、「ポケモンだいすきクラブ」サイト内の特設コンテンツ「ベトベターの満腹大作戦 はらぺこベトベター (IBM外のWebサイトへ)」において、「はらぺこベトベターレポート」として公開されています。

——「はらぺこベトベター」は、2020年11月に東京・池袋のポケモンセンターメガトウキョー&ピカチュウスイーツにてお披露目されましたね。ユーザーの反応はいかがでしたか。

(ポケ)内藤 すごく良かったです。「かわいい」「面白い」といった声をたくさん聞くことができ、飲料の空容器を捨てるための列ができるくらいでした。ベトベターのキャラクターを認知していただき、その魅力もアピールできたと思います。

——飲料の空容器を捨てるのに、列を作るというのは驚きの光景です。ちなみに、ペットボトル、ビン、カン以外のゴミを入れるとどういう反応をするのでしょうか。

(ポケ)内藤 当初のアイデアでは「食べられないもの」を入れたときにも固有の鳴き声反応を検討していましたが、鳴き声が聞きたくてゴミを入れたくなってしまうだろうと考え、何も反応させていません。そのため、一般ごみやドリンクカップなど、飲料空容器以外のゴミは食べられませんという説明看板を横に置きました。

(コカ)柴本 私たちとしては、消費者の皆様に「飲料空容器だけを入れてください」というメッセージを強く伝えたいと考えていました。そこで、回収ボックス全体をベトベターの形にするのではなく、ベトベターは上に乗せるだけにして、街にある一般的な飲料空容器回収ボックスだと認識できるようにしています。

ベトベターのキャラクターとゴミ問題が結びついてプロダクトが生まれた

新海
——「はらぺこベトベター」は、有志による活動から生まれたと伺いました。

(ポケ)新海 はい。2019年、異業種交流会に出席した際に、たまたまコカ・コーラのKenさんと同じテーブルに座っていたことがきっかけで交流が始まりました。私の大学時代の友人を通じて、IBMの有志にもつながり、「スモールスタートで何か面白いことはできないか」と3社で定期的に集まるようになったのです。

(コカ)Ken そうですね。大規模な異業種交流会で少し気後れしていたんです。そしたら隣のポケモン社も同じような状況だった(笑)。

(ポケ)新海 2019年の5月に、ポケモンを盛り上げるために何かしようというテーマを掲げ、ポケモン社でワークショップを開催しました。ポケモンには900近い種類がいるのですが、知名度がものすごく高い「ピカチュウ」のようなポケモンもいれば、知名度が低めのポケモンもいます。私たちには、そのようなポケモンの魅力も発信していきたいという思いが常にあり、IBMから「はらぺこベトベター」の原案となる企画をお聞きして、「これは良いですね」と思ったのです。

——この有志活動には何人が参加したのでしょうか。

(コカ)柴本 延べ20人くらいだと思います。IBMから10人ほど、ポケモン社から3人ほど、コカ・コーラから5人ほど、といったところです。業務でなく有志の活動のため、基本的には自由参加。最初から最後まで関わった人もいれば、自分の業務が落ち着いている時期だけ加わった人もいます。

——原案はIBMさんからということですが、なぜベトベターだったのでしょう。

(ISE)白石 いろいろなポケモンの特徴を踏まえた上で、何を価値化できるのか、私たち持っているITテクノロジーとどう組み合わせられるか、社会課題なども念頭に模索しました。その結果、ベトベターのキャラクター設定が私たちの理想を具現化するのに適していると。また、2020年の東京五輪で人が集まりゴミも増えるだろうから、タイミング的にもちょうどいいと考えたんです(当時は東京五輪の延期決定前)。

(ポケ)新海 ベトベターは工場の廃液から生まれ、汚いものが大好物で、一見ネガティブな印象を与えるキャラクターです。それをうまくゴミ問題やリサイクルといった社会課題につなげたのは、アイデアとして素晴らしいですよね。

また、アローラ地方のベトベター (IBM外のWebサイトへ)には、ゴミ問題を解決するために人間によって連れてこられたというキャラクター設定があります。そのため、飲料空容器回収ボックスとして人に利用されることでポケモンの世界観と現実がリンクして、コアなファンにも楽しんでもらえるのではないかとも思いました。

(IBM)丸岡 ポケモンのファンが見たときにどう感じるか、回収ボックスを利用するユーザーはどのような体験に価値を感じてくれるのか。そのようなユーザーにとっての体験が最も重視するポイントであり、ITはそのためにあるという考え方のもと、IBMのメンバーは社内でかなり議論しました。

(コカ)柴本 飲料業界の大きな課題として、自動販売機の脇にある飲料空容器回収ボックスはゴミ箱と認識されがちということがあります。紙コップやプラスチック容器などの一般ゴミが入っていることは珍しくないどころか、普通の状況になってしまっています。ひどい時には小型家電が入っていることもあります。

この飲料容器以外の処理には、日本のコカ・コーラシステムだけでも年間数十億円が費やされています。ベトベターのアイデアは、回収ボックスの課題を楽しく消費者に啓発できるし、話題性もあります。リサイクルといった社会課題の側面のみならず、私たち清涼飲料業界の課題を鑑みても、まさしくぴったりなアイデアでした。

アジャイル開発により、コストは最小限で、ユーザー体験価値の最大化へ挑戦

丸岡
——「はらぺこベトベター」の開発にはどれくらいの期間を要したのでしょうか。

(IBM)丸岡 3社で集まり始めてからはアイデアベースでいろいろな話をしていました。「はらぺこベトベター」に関して言えば、先に述べた2019年5月のポケモン社のワークショップ以降から徐々に具体的な取り組みを始めています。

(コカ)柴本 2019年7月には、ザ・コカ・コーラ カンパニー(米国本社)が主催する社内のハッカソンイベントに応募しました。残念ながら選ばれなかったのですが、世界的に評判がよかった。「本気で取り組んでみたら」と、社内のSNSを通じて多くのコメントをもらうことができました。

そんな後押しもあり、紙粘土で作ったミニチュアサイズの模型を使って、「これを作りたい」とプロジェクトにかける思いを社長に説明しました。結果、「面白そうだからやってみたら」と返事をもらい、最低限の予算をいただいたのが2020年1月だったと思います。本格的な始動からお披露目まで1年はかかっていませんね。

——プロダクト作成に係る費用はコカ・コーラが出したということでしょうか。

(コカ)柴本 ボディ(造形)に関してはコカ・コーラで製作しました。ただ、予算をどこがいくら出したということではなく、IBMもポケモン社も無形資産として大きな価値を提供していただいたと考えています。

(ISE)白石 あくまで有志活動なので、IBMでは特別に承認を取ったわけではありません。知見の共有については、上司からも特に反対はありませんでしたし、むしろ多くの社員が協力してくれました。ここは、IBMの良い文化だと思います。

予算についてはあまり細かく規定せず、必要なときに必要な方法を考えて、できる範囲で頑張ったということです。クラウド環境一つにしても、できる範囲でベストの方法を考える。とにかく、はらぺこベトベターを作り上げることに集中しました。

そのアプローチは一般的な製品の製作過程とは異なります。完成された設計をもとに計画的に作るのではなく、できるだけ予算をかけずに、できるだけワークフローを減らしながら、最小限の方法でユーザーの体験価値をどこまで提供できるのか。つまり、MVP(Minimum Viable Product)というアプローチを取っています。

(コカ)Ken その点から見ると、スタートアップ的なプロジェクトだったと言えるかもしれません。

(ポケ)新海 ポケモン社では、ベトベターの魅力を世の中に発信できる絶好の機会だということで、社長以下役員含め「面白いからやってみたら」と後ろ盾になってくれました。ポケモンのためになるのであれば、若手社員がやりたいことをフレキシブルにサポートしてくれる。全てのポケモンを大事にするという思いがあるからこそ、有志活動に理解を示してもらえたし、ここまでやってこられたと思います。

——3社とも、このような有志活動をバックアップする企業文化が育まれているのですね。プロジェクトとしては、どのくらいの頻度で活動していたのでしょうか。

(ポケ)内藤 最初は2週に1回、最後の2〜3か月は週1回でした。とはいえ、皆さんそれぞれ「本業務」があるので、必ず出席するわけではありません。プロジェクトが山場になってきた2020年3月〜4月くらいは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下、新型コロナウイルス)の影響でフルリモートになりました。ただ、それぞれの会社自体が素早くリモートへ移行していたため、比較的すんなり切り替えが進んだと思います。

(IBM)丸岡 物理的な「もの」を作る必要もあったので、その点はいろいろと工夫が必要でした。それぞれが変化や課題に柔軟に対応しつつ進めていく、IT業界だと「アジャイル開発」と言ったり、組織マネジメントだと「ティール組織」と言ったりしますが、そんなアプローチを最初から実行してきたチームだったので、フルリモートになっても、そのときにできる最大限のことを自然にやれていたように思います。

AI用のデータを集めるため、ペットボトルを持ち寄り7,000枚近い画像を撮影

白石

©2020 Pokémon. ©1995-2020 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

——技術的な側面から見ると、どのような課題があったのでしょうか。

(ISE)白石 ボックスの中に入っているラズベリーパイは一般的なシステムで、IBM Watson もノウハウの蓄積があるため、その点はスムーズに進みました。大変だったのは空容器を捨てた時に画像を撮るタイミングです。うまく合わないときれいな画像が撮れず、誤判定につながってしまうんです。その調整を、内部の機材を組み上げながらやらなければならず、時間がかかりました。また、画像認識の精度を上げるために容器の画像をたくさん学習させる必要があります。その両軸の繰り返しの中で改良していきながら、タイミングと認識が正しいものになるように合わせていくのです。

(ポケ)内藤 そのために、ペットボトル、ビン、カンのほか5種類、それぞれ国内売り上げの上位30品を集めました。それを買って、飲んで、洗って、撮って、また集めてと、人海戦術で回してしていくのも大変でした。一つにつき8方向から撮影し、精度を高めるために5〜6回は同様のデータ集積を繰り返しています。空容器は自分たちで持ち寄るほか、収集所に行って回収ボックスから集められた袋を開いて利用したりもしました。そこで、空容器以外のゴミなどが捨てられているのを目の当たりにして、現実が身に染みましたね。

(IBM)丸岡 回収ボックスの内部構造をどう作ればきれいな画像が撮れるかは誰もわからない。IBMだけでなくコカ・コーラもポケモン社のみなさんも一緒に考えてくださって、リモートでずいぶん議論しました。IBMだけでは気付かないアイデアを他の会社の方々からいただけたし、役割が明確でなくざっくりしているからこそ、問題が起きたらみんなでつぶしにいく。さまざまな視点から解決策を検討でき、次のステップに進めることができたと思います。

有志メンバーを支え、ゴミ問題への気付きを促す、その鍵は“楽しさ”にある

内藤

——プロジェクトを進めるに当たり、各社の文化が違う中で摩擦などはなかったのでしょうか。

(ポケ)内藤 文化の違いはいろいろありますけれど、それが特に障害になったとは感じませんでした。むしろ、3社とも社員の自主性に任せる文化があり、動きやすかったと思います。ざっくりとした役割がありつつも、有志活動なので「あなたはこれをやるべき」という義務が誰にもないんですね。それが最初は不安でしたが、いざ実際プロジェクトが始まってみると、役割を越えて「こういうことを実現したい」「そのためにはこういうことができたらいいな」と自由に話し合えて楽しかったです。

(IBM)丸岡 コンセプト作りや作業などはフラットに進めることができました。ただ全体を最終的に決める役は、最初はコカ・コーラの柴本さんにお願いしてなんとなく中心になっていただきました。

(コカ)柴本 その役割もやんわりとしたものだったと思います。ビジネスで一般的な発注者・受注者の関係がないので、各社がそれぞれの主張をし、でも譲るところは譲るという調整が生きていました。本業務で携わるプロジェクトとは全く違うと感じました。

(IBM)丸岡 私は他の有志活動にも携わっていますが、それらと決定的に違う点は、コカ・コーラもポケモン社も社長や役員クラスの方が後ろ盾となっていただいた点です。これは「はらぺこベトベター」を成功に導いた大きな分岐点になったと思います。後ろ盾のない不安定さは、活動の阻害要因になってしまいますから。

——有志活動において、モチベーションを維持するために必要なものは何だとお考えでしょうか。

(ISE)白石 まず、義務感というものがほとんどなかった。皆でわいわいアイデアを出し合って議論したり、実際の製品化に向けて行動したりすることが楽しくて集まっているうちに、実現までこぎつけたというイメージです。たとえば「趣味はサッカーです」と言うとの同じように、趣味は「はらぺこベトベター」作りです、といったところでしょうか。お披露目に向けて、モチベーションも上がっていきました。

(コカ)柴本 私は、若干モチベーションの浮き沈みがありましたね。当初お披露目のタイミングとして設定していた2020年の東京五輪が延期となった。「ゴミが問題になる渋谷のハロウィンにしよう」とも考えたけれど、人が集まることは新型コロナウイルスの影響で望ましくなかった。目指す具体的なタイミングがなくなり、「どうしようかな」と思っていました。

(コカ)Ken とはいえ、このチームはどんな壁でもあきらめないでぶつかって解決しました。僕はそこに感動しました。有志活動だからこそ、義務感でない楽しむ意識が大事になるのではないかと思います。

内藤

——プロジェクトの背景には、ゴミ問題やリサイクル問題といった社会課題に対して貢献していきたいという思いもあったのでしょうか。

(ポケ)内藤 環境問題をはじめとする社会課題への取り組みは大切だと思います。一方で、日々の生活の中で、いつも問題意識をもって行動するには強い意志が必要になります。「はらぺこベトベター」は、まず“楽しい”がくる。その先の結果として、ゴミ問題やリサイクル問題があるというアプローチを目指していました。

(ポケ)新海 ポケモンセンターでお披露目した際、ゴミ箱だと思って紙くずをお持ちのお客様がいらっしゃった。でも、一般ごみは「食べられない」という看板を読んで、「これは食べられないんだね」と、こちらがお声がけする前に持って帰ってくださいました。「環境に悪い」と考えるのではなく「ベトベターが食べられないならやめよう」と考えてくださった。ポケモンを思いやる気持ちというと大げさですが、そういう気持ちが自然とリサイクル問題につながったことが嬉しかったです。

(コカ)柴本 街にある飲料空容器回収ボックスはすごく汚れていることが多いです。でも、この「はらぺこベトベター」は抱きついて写真を撮る方もいる。世界でいちばん人気のある回収ボックスですよね。飲料業界ではゴミ処理の問題などから「回収ボックスを撤去してはどうか」という意見もありますが、ユーザーの体験を楽しいものに変えるアプローチで、業界や社会の課題解決に取り組んでいけると実感しました。

©2020 Pokémon. ©1995-2020 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

——このプロジェクトを進めるにおいて、IBMの強みなどは感じましたでしょうか。

(ポケ)内藤 試行錯誤しているときに「こうだったらどうだろう」と提案すると、すぐ仮のモデルを作って実際に試し、うまくいかなければ「次はこうしよう」と。アジャイル的な開発を取り入れ、速いサイクルで進んだことは大きかったです。

(IBM)丸岡 ユーザー体験を重視するという点では、ポケモンセンターメガトウキョーでの展示中も空容器判別の精度を高くするためのプログラム修正を行い、ユーザーに楽しい体験をどんどん届けられるよう意識していました。さらに、展示中はお客様の注意を引くよう、空容器を入れなくても数十秒〜数分に1回鳴くように設定していましたね。

(ポケ)新海 「はらぺこベトベター」のユーザーは、ポケモン社のお客様と重なります。そのため、繰り返しになりますが、ユーザーにどういう体験をしてもらえるかを強く意識していました。IBM、コカ・コーラの皆さんも、その意識を私たちと同じレベルで持っていただき、動いてくださったので、安心してご一緒できるいいチームだったと思います。

——最後になりますが、IBMでは今後もテクノロジーと身近なキャラクターをかけ合わせた社会課題へのアプローチなどは考えていますか。

(ISE)白石 私たちは、このプロジェクトが本格始動する少し前、2019年のハロウィンの翌朝に渋谷でゴミ拾いをしました。渋谷の道路は一見綺麗でしたが、人から見えない意外なところにかなりの量のゴミが捨てられていたんです。ゴミを拾った地点のデータを取っていたので後から分析したところ、それはより顕著に可視化され、結果として、人が日常的に意識することのない見えない所のゴミ問題に気付くことができました。キャラクターをどう使うかは別としても、ゴミのデータ化は環境課題の解決やスマートシティを作るきっかけになると考えています。

(IBM)丸岡 そのゴミ拾いでは、拾ったゴミをポイントにする「ゲーミフィケーション」を取り入れました。嫌なものとされていたゴミが、見つけることが楽しいという体験に変わると、リサイクルや社会貢献としてではなく、単純に楽しんできれいな街を維持できる。それは、今回のプロジェクトでも感じた価値であり、コカ・コーラ、ポケモン社はもとより、さまざまな業種とIBMのITテクノロジーがコラボできれば嬉しいです。

©2020 Pokémon. ©1995-2020 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

©2020 Pokémon. ©1995-2020 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

メインビジュアル:©2020 Pokémon. ©1995-2020 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.