織り込む
戦略策定の基礎となる戦略的意図や、ビジネス・プラットフォームのデザインの中に、エコシステムが生み出す機会を織り込み、デジタル・トランスフォーメーションを加速させる原動力とする。
AIや自動化、ブロックチェーン、モノのインターネット、5G、クラウド、そして量子コンピューティングの適用が進んだことで、以前は目指すべき将来像であったコグニティブ・エンタープライズは、今や現実のものとなった。
世界中でバーチャル化が加速する革新の時代において、エコシステム、デジタル・ワークフロー、企業のネットワーク化がもたらす影響力は、かつてないほど大きくなっている。そこで生まれつつあるのが「バーチャル・エンタープライズ」だ。本レポートでは、このバーチャル・エンタープライズを支える、エコシステムの参加者の連携を強化する共通の機能やデータなどを、価値の「ゴールデン・スレッド」と呼び、注視することとする。
この数年間、 世界中の企業がテクノロジーの包括的活用を通じたビジネスモデルの変革に向けて、重大な局面に立たされている。デジタル・トランスフォーメーションの対象は、企業のフロントやエッジといった領域から、より奥深いコア領域へと拡大した。またAIや自動化、モノのインターネット(IoT)、ブロックチェーン、そして5Gなどのテクノロジーの成熟度は、大規模な活用が可能なレベルにまで達し、ビジネスに飛躍的な成長をもたらしている。
あらゆる業界の企業が、テクノロジー、プラットフォーム、そしてエクスペリエンスを提供する企業に生まれ変わろうと模索を続けている。私たちはこの模索のフェーズを「コグニティブ・エンタープライズ」の誕生に向けた重要なステップと捉えている。コグニティブ・エンタープライズは、「新たな市場を創出するプラットフォーム」の姿を描き出し、「インテリジェント・ワークフロー」を構築し、「エクスペリエンスと人間性」に生命の火を灯す。
新型コロナウイルスは、コグニティブ・エンタープライズの実現において、大きな影響をもたらした。コロナ禍は、指数関数的な速度で進化する「エクスポネンシャル・テクノロジー」の導入が、デジタル・トランスフォーメーションの取り組みの加速や、高い効率性と効果を伴う柔軟なプロセス実現の鍵となることを証明した。また、ハイブリッドクラウド・インフラストラクチャーを活用すれば、消費モデルやサービスが向上することも明らかにした。コグニティブ・エンタープライズを構成する前述の3つの基本的要素は、今日、私たちが接している現実世界においてそれぞれ次のような広がりを見せつつある。
「新たな市場を創出するビジネス・プラットフォーム」は、デジタル化のペースを速め、対象となる範囲を新しいエコシステムやパートナーにまで拡大する。「インテリジェント・ワークフロー」は、大量の顧客や従業員に対応するため、高度な自動化とAIを積極的に活用する。そして、顧客・従業員・市民の安全と健康を守る必要性から、「エクスペリエンスと人間性」について新しい定義が生まれつつある。
実は今回のパンデミックによって余儀なくされた「バーチャル化」は、従来、変革の中心的なテーマであった。その上で、次世代の組織・事業モデルとしての「バーチャル・エンタープライズ」の出現が加速している。これまでの体験を原動力に変えて、可能性を新たなレベルに引き上げるバーチャル・エンタープライズは、物理的な資産やインフラストラクチャー、人材の必要性を再評価し、高度なデジタル化、拡張バリュー・チェーン、新たな形態によるパートナーシップの可能性を拓く。
実は今回のパンデミックによって余儀なくされた「バーチャル化」は、従来、変革の中心的なテーマであった。その上で、次世代の組織・事業モデルとしての「バーチャル・エンタープライズ」の出現が加速している。これまでの体験を原動力に変えて、可能性を新たなレベルに引き上げるバーチャル・エンタープライズは、物理的な資産やインフラストラクチャー、人材の必要性を再評価し、高度なデジタル化、拡張バリュー・チェーン、新たな形態によるパートナーシップの可能性を拓く。
この1年で、顧客や同僚とのバーチャルな接触が極端に増えたことで、人間とテクノロジーのインターフェースも進化した。当初は目新しいものと思われたツールや働き方は、時を待たずに日常のありふれた風景となった。
エンゲージメント醸成のための手法は、もっぱらデジタル・チャネルに置き換わり、市場やアクセスの可能性が広がった。また一方で、共感や帰属意識、人間的なつながりをいかに再構築するかという新たな課題も見つかった。先進的なソフトウェアやテクノロジー・ソリューションは、職務上の人間関係やコラボレーションの可能性を深める一方、課題も浮き彫りにするのである。
私たちはパンデミックの経験を通じて、世界中のすべてがつながっていることや、人類が地球や自分たち自身にどれだけ大きな影響を及ぼし得るのかを再認識させられることとなった。だからこそ、バーチャル・エンタープライズにおいては存在意義や方針、社会的影響がこれまで以上に考慮されなければならない。
気候変動や健康維持、社会的平等の実現といった重要な課題の解決において、エコシステムが高い潜在力を持つことは明らかだ。サステナビリティーとステークホルダー資本主義は経営層にとって最大の関心事となっており、最先端テクノロジーを活用するビジネスモデルは、その実現に欠かせないものとなっている。
ノルウェーを拠点とするYara社は、飢餓のない持続可能な世界の実現に向けて、デジタル農業プラットフォームAtfarm/FarmXを開発し、全世界の持続可能な農業を支援している。Yara社は世界最大のミネラル肥料メーカーであり、またデジタル農業ソリューションのグローバル・リーダーでもある。同社が開発したこのプラットフォームは、世界の自営農家をつなぎ、生産力向上に必要な支援を提供する。
総合的なデジタル・サービスと、農業に関する迅速なアドバイスを提供することで、同社は最終的に森林破壊を阻止し、既存農地における生産量の増加に貢献している。例えばこのプラットフォームは、局地的な分単位の気象データに基づき、タイムリーで正確な作物収穫量を予測し、窒素や水の管理方法を提案している。
また特定のクラウドに依存しないこのプラットフォームは、最先端のデータ・サービスを従量課金制で提供している。こうしたサービスによって、農家はIoTセンサーやAIといった最先端のテクノロジーが生み出す、局地的な天気予測や作物の被害予測、リアルタイムの施肥提案などを活用できるようになった。
同サービスを利用する農業生産者は、すでに300万人を上回っている。このプラットフォームによって、Yara社はビジネスモデルを拡大しつつ持続可能な農業を支援し、他社との差別化に成功している。そしてまた、農業ビジネスの透明性と信頼性を高めるブロックチェーンなどの先進テクノロジーの開発も推進している。
同プラットフォームがカバーする耕作可能地は、1,000万ヘクタール以上に及ぶ
Yara社がこの2年間で獲得した農業生産者の数は300万人以上
オンデマンド・ソリューションによって、かんがい用水資源を最大20%節約
Yara社のバーチャル・エンタープライズに対する取り組み
Schlumberger社は最先端のデジタル・ソリューションや革新的テクノロジーを駆使することで、世界のエネルギー業界のパフォーマンスとサステナビリティーの向上に貢献している。同社はDELFIと呼ばれるE&P(Exploration & Production = 探鉱と生産)向けのコグニティブ環境を提供している。これによって顧客はクラウド化を加速させ、さまざまな境界線を超えた自由なコラボレーションを促進し、従来のデータ・サイロからの脱却を図ることができる。
DELFIを用いれば、エネルギー企業はSchlumberger社の最先端E&Pソリューションやアプリケーションが利用でき、データ主導の新しいワークフローも構築できる。また、AIや分析機能、自動化などの最新テクノロジーを導入することも可能になる。また世界中のどこであっても、DELFI環境を導入することで、エネルギー・データの業界標準である、OSDU™ Data Platformと連携できるようになる。
顧客の総所有コストは10~20%削減される見込み
“Write once, deploy anywhere” (「1回書けば、どこでも展開できる」)というコンセプトのもと、顧客独自の要件に応じたアプリケーションやワークフロー、プラットフォームの開発を加速させる。また大規模なサービスにも対応でき、サービスの導入から実用化までの期間も短縮できる
これまで50%に達していなかった参入可能な世界市場の範囲を、ほぼ100%に拡大できる
Schlumberger社は最先端のデジタル・ソリューションや革新的テクノロジーを駆使することで、世界のエネルギー業界のパフォーマンスとサステナビリティーの向上に貢献している。同社はDELFIと呼ばれるE&P(Exploration & Production = 探鉱と生産)向けのコグニティブ環境を提供している。これによって顧客はクラウド化を加速させ、さまざまな境界線を超えた自由なコラボレーションを促進し、従来のデータ・サイロからの脱却を図ることができる。
DELFIを用いれば、エネルギー企業はSchlumberger社の最先端E&Pソリューションやアプリケーションが利用でき、データ主導の新しいワークフローも構築できる。また、AIや分析機能、自動化などの最新テクノロジーを導入することも可能になる。また世界中のどこであっても、DELFI環境を導入することで、エネルギー・データの業界標準である、OSDU™ Data Platformと連携できるようになる。
顧客の総所有コストは10~20%削減される見込み
“Write once, deploy anywhere” (「1回書けば、どこでも展開できる」)というコンセプトのもと、顧客独自の要件に応じたアプリケーションやワークフロー、プラットフォームの開発を加速させる。また大規模なサービスにも対応でき、サービスの導入から実用化までの期間も短縮できる
これまで50%に達していなかった参入可能な世界市場の範囲を、ほぼ100%に拡大できる
バーチャル・エンタープライズの最も戦略的な構想として挙げられるのが、プラットフォーム思考とエコシステム概念の結合であろう。バーチャル・エンタープライズでは、エコシステムを戦略の中心に据えることで、イノベーションを進化させ、新たな市場を創出し、機能を大幅に向上させることが可能となる。ただし、この実現には経営層の明確なビジョンが不可欠である。またそのビジョンには、他の企業との戦略的関係の構築による成長の可能性や、他の企業が参加したくなるような拡張ビジネス・プラットフォームの優位性などが明示されているべきである。
エコシステムがオープン性を備えていれば、その範囲や価値創造の可能性は広がる。エコシステム内の企業は、業界内の企業だけでなく、業界外の企業とも新たな関係性を構築し、最大の成果を共有できるようになる。
デジタル化によるつながりや、データ同士の組み合わせの共有は、エコシステムと顧客・参加企業との関係性に新たな可能性をもたらした。さらにオープンでセキュアな標準規格とソフトウェア主体のネットワークを基盤とする技術アーキテクチャーの登場により、こうした関係性の構築はますます容易になっている。
ビジネス・プロセスの外部化やワークフローの拡張は、応用技術の組み合わせが創り出す差別化を通じて、エコシステムのすべての参加者に新たな市場創出または参入の機会をもたらしている。また業界の壁が取り払われたことで、これまで単独の企業では実現不可能だったソリューションや標準がエコシステム内に生まれつつある。
世界が直面する重要課題の多くが、こうしたコラボレーションを必要としている。新型コロナのワクチンを開発した時のように、持続的な影響力を持つ官民が手を取り合えば、気候変動や食料安全保障といった難しい課題の解決において、オープンで拡張性を備えるセキュアなプラットフォームが高い潜在力を発揮することは明らかだ。
ここ数年における、業界の枠を超えたエコシステムの例が、ブロックチェーン・コンソーシアムである。このコンソーシアムにおいて、参加者はワークフロー全体を通じて安全に相互理解を図り、コストを削減し、効率を高め、さらにデータに対する信頼を深めることができる。
最初に登場したブロックチェーンは、サプライチェーン、来歴証明、ID管理などの分野におけるものだった。参加者や取引状況を安全かつ確実に識別し、リアルタイムで即同期できれば、プラットフォームやエコシステムの形成において、実現可能性や創造性が高まることは容易に想像できる。
オープン、エコシステム、そしてプラットフォームといった概念は、企業の戦略を飛躍的に発展させ、自社への理解を根底から覆すような、大きな影響力を持つ。中小企業や個人のような小規模な参加者であっても、このバーチャル化された環境の新たなコミュニティーに参加すれば、自分たちの付加価値を高めることができる。
多くの企業はプラットフォーム・ビジネスモデルへの第一歩として、取り扱う商品やサービスの改善のために、デジタル化を進めている。例えば、献血検査を実施する臨床検査企業では、薬理試験のアラート送信にデジタル・テクノロジーを活用して効率化を実現した。
デジタル・ソリューションは、多額の投資コスト(CAPEX)を共有の運用コスト(OPEX)に転換させ、参入障壁を押し下げ、コストにおける新たな好事例を作り出す力を持つ。その力は、自動化とゼロタッチ(zero-touch)によってさらに高まるだろう。
エコシステムのバーチャルな参加者になることは、企業文化の面から見ても大きな意味を持つ。参加組織にとってエコシステムとは、主要な社会システムとして事業の中心に位置づけられるべきものだ。広報活動やコア・コンピタンスも、この方針にのっとる必要がある。経営層はこの問題に共同で取り組み、信頼関係を構築し、オープンな企業文化を創造する必要がある。これには一方で、所有権や支配力を放棄するという側面も持つ。
コロナ禍がもたらした緊急性は、さまざまな面において企業間の信頼を低下させ、ビジネスを第一義とするバリュー・チェーンや依存関係の脆弱性を露呈させた。オープンでセキュアなインテリジェント・ワークフローは、こうした課題に対し有効である。新しい組織横断的なモデルを構築することで、プラットフォームやエコシステムの脆弱な部分を補強することが可能となる。
バーチャル・エンタープライズの最も戦略的な構想として挙げられるのが、プラットフォーム思考とエコシステム概念の結合であろう。バーチャル・エンタープライズでは、エコシステムを戦略の中心に据えることで、イノベーションを進化させ、新たな市場を創出し、機能を大幅に向上させることが可能となる。ただし、この実現には経営層の明確なビジョンが不可欠である。またそのビジョンには、他の企業との戦略的関係の構築による成長の可能性や、他の企業が参加したくなるような拡張ビジネス・プラットフォームの優位性などが明示されているべきである。
エコシステムがオープン性を備えていれば、その範囲や価値創造の可能性は広がる。エコシステム内の企業は、業界内の企業だけでなく、業界外の企業とも新たな関係性を構築し、最大の成果を共有できるようになる。
デジタル化によるつながりや、データ同士の組み合わせの共有は、エコシステムと顧客・参加企業との関係性に新たな可能性をもたらした。さらにオープンでセキュアな標準規格とソフトウェア主体のネットワークを基盤とする技術アーキテクチャーの登場により、こうした関係性の構築はますます容易になっている。
ビジネス・プロセスの外部化やワークフローの拡張は、応用技術の組み合わせが創り出す差別化を通じて、エコシステムのすべての参加者に新たな市場創出または参入の機会をもたらしている。また業界の壁が取り払われたことで、これまで単独の企業では実現不可能だったソリューションや標準がエコシステム内に生まれつつある。
世界が直面する重要課題の多くが、こうしたコラボレーションを必要としている。新型コロナのワクチンを開発した時のように、持続的な影響力を持つ官民が手を取り合えば、気候変動や食料安全保障といった難しい課題の解決において、オープンで拡張性を備えるセキュアなプラットフォームが高い潜在力を発揮することは明らかだ。
ここ数年における、業界の枠を超えたエコシステムの例が、ブロックチェーン・コンソーシアムである。このコンソーシアムにおいて、参加者はワークフロー全体を通じて安全に相互理解を図り、コストを削減し、効率を高め、さらにデータに対する信頼を深めることができる。
最初に登場したブロックチェーンは、サプライチェーン、来歴証明、ID管理などの分野におけるものだった。参加者や取引状況を安全かつ確実に識別し、リアルタイムで即同期できれば、プラットフォームやエコシステムの形成において、実現可能性や創造性が高まることは容易に想像できる。
オープン、エコシステム、そしてプラットフォームといった概念は、企業の戦略を飛躍的に発展させ、自社への理解を根底から覆すような、大きな影響力を持つ。中小企業や個人のような小規模な参加者であっても、このバーチャル化された環境の新たなコミュニティーに参加すれば、自分たちの付加価値を高めることができる。
多くの企業はプラットフォーム・ビジネスモデルへの第一歩として、取り扱う商品やサービスの改善のために、デジタル化を進めている。例えば、献血検査を実施する臨床検査企業では、薬理試験のアラート送信にデジタル・テクノロジーを活用して効率化を実現した。
デジタル・ソリューションは、多額の投資コスト(CAPEX)を共有の運用コスト(OPEX)に転換させ、参入障壁を押し下げ、コストにおける新たな好事例を作り出す力を持つ。その力は、自動化とゼロタッチ(zero-touch)によってさらに高まるだろう。
エコシステムのバーチャルな参加者になることは、企業文化の面から見ても大きな意味を持つ。参加組織にとってエコシステムとは、主要な社会システムとして事業の中心に位置づけられるべきものだ。広報活動やコア・コンピタンスも、この方針にのっとる必要がある。経営層はこの問題に共同で取り組み、信頼関係を構築し、オープンな企業文化を創造する必要がある。これには一方で、所有権や支配力を放棄するという側面も持つ。
コロナ禍がもたらした緊急性は、さまざまな面において企業間の信頼を低下させ、ビジネスを第一義とするバリュー・チェーンや依存関係の脆弱性を露呈させた。オープンでセキュアなインテリジェント・ワークフローは、こうした課題に対し有効である。新しい組織横断的なモデルを構築することで、プラットフォームやエコシステムの脆弱な部分を補強することが可能となる。
Schlumberger社は最先端のデジタル・ソリューションや革新的テクノロジーを駆使することで、世界のエネルギー業界のパフォーマンスとサステナビリティーの向上に貢献している。同社はDELFIと呼ばれるE&P(Exploration & Production = 探鉱と生産)向けのコグニティブ環境を提供している。これによって顧客はクラウド化を加速させ、さまざまな境界線を超えた自由なコラボレーションを促進し、従来のデータ・サイロからの脱却を図ることができる。
DELFIを用いれば、エネルギー企業はSchlumberger社の最先端E&Pソリューションやアプリケーションが利用でき、データ主導の新しいワークフローも構築できる。また、AIや分析機能、自動化などの最新テクノロジーを導入することも可能になる。また世界中のどこであっても、DELFI環境を導入することで、エネルギー・データの業界標準である、OSDU™ Data Platformと連携できるようになる。
顧客の総所有コストは10~20%削減される見込み
“Write once, deploy anywhere” (「1回書けば、どこでも展開できる」)というコンセプトのもと、顧客独自の要件に応じたアプリケーションやワークフロー、プラットフォームの開発を加速させる。また大規模なサービスにも対応でき、サービスの導入から実用化までの期間も短縮できる
これまで50%に達していなかった参入可能な世界市場の範囲を、ほぼ100%に拡大できる
心臓病治療で第1位にランクされる非営利の専門医療機関クリーブランド・クリニックは、IBMと提携し、「ディスカバリー・アクセラレーター」センターを設立する予定だ。このセンターの目的は、ハイブリッドクラウド、AI、量子コンピューティングといった最新のテクノロジーを用いて、ヘルスケアとライフサイエンスの分野で飛躍的な進歩を達成することだ。クリーブランド・クリニックの研究者は、高度なコンピューター・テクノロジーを用いて、膨大な量のデータを生成・分析し、ゲノミクス、単一細胞トランスクリプトミクス、臨床応用、新規化合物の創出と創薬、ポピュレーション・ヘルスなどの研究を進め、新型コロナ危機のような公衆衛生上の脅威に対する新たなアプローチを含めた研究を行う予定である。またこのセンターでは、ディープ・サーチ、AIと量子コンピューティングによる高度なシミュレーション、生成モデル、そしてAI主導の化学合成の自動化といった、IBMの次世代のテクノロジーやイノベーションに基づく研究を進めようとしている。
この10年間の共同プログラムは、ヘルスケアとライフサイエンスにおける、進歩と発見を目的とする
活用するクラウドがアクセスするIBMの量子システムの数は20以上に及ぶ
2023年には、量子ビット数1,000以上を目指す
心臓病治療で第1位にランクされる非営利の専門医療機関クリーブランド・クリニックは、IBMと提携し、「ディスカバリー・アクセラレーター」センターを設立する予定だ。このセンターの目的は、ハイブリッドクラウド、AI、量子コンピューティングといった最新のテクノロジーを用いて、ヘルスケアとライフサイエンスの分野で飛躍的な進歩を達成することだ。クリーブランド・クリニックの研究者は、高度なコンピューター・テクノロジーを用いて、膨大な量のデータを生成・分析し、ゲノミクス、単一細胞トランスクリプトミクス、臨床応用、新規化合物の創出と創薬、ポピュレーション・ヘルスなどの研究を進め、新型コロナ危機のような公衆衛生上の脅威に対する新たなアプローチを含めた研究を行う予定である。またこのセンターでは、ディープ・サーチ、AIと量子コンピューティングによる高度なシミュレーション、生成モデル、そしてAI主導の化学合成の自動化といった、IBMの次世代のテクノロジーやイノベーションに基づく研究を進めようとしている。
この10年間の共同プログラムは、ヘルスケアとライフサイエンスにおける、進歩と発見を目的とする
活用するクラウドがアクセスするIBMの量子システムの数は20以上に及ぶ
2023年には、量子ビット数1,000以上を目指す
バーチャル・エンタープライズの視野は、時間的には未来、空間的には社外に対して開かれている。つまりバーチャル・エンタープライズは歴史や社内情報によって意思決定を行うのではなく、大量のデータや、新たなタイプの集合知を使って予測分析や予見分析を行い、イノベーションを加速させるのである。
バーチャル・エンタープライズが目指すイノベーションは、より厳密で奥深い科学的発見のアプローチに基づくものだ。例えば現在、新型コロナウイルスのワクチンは、まさに科学的な厳密さと深遠さをもって開発されており、従来のように年単位ではなく月単位で進められている。この姿勢をビジネス・イノベーションに応用したらどうなるだろうか。
実験やシミュレーション、仮説の検証は長い間、科学の発見の中心的アプローチだった。ところがバーチャル・エンタープライズにおいては、同様のアプローチが業界の壁を超えて、かつてない速度で可能となる。その鍵となるのが、AIやIoT、量子コンピューティングなどのエクスポネンシャル・テクノロジーである。
バーチャル・エンタープライズは、エコシステムとインテリジェント・ワークフローを活用することで、リアルタイムで処理を行い、新たな価値の鉱脈を迅速かつ効率的に掘り当てる。アジャイル開発とIBM Garage手法は、共創(Co-create)、共同実行(Coexecute)、共同運用(Co-operate)といった概念に基づく実験がもたらす、影響力の大きな好事例となるだろう。
データサイエンティストは、バーチャル・エンタープライズとエコシステムのオープン・アーキテクチャーを活用することで、データ共有のメリットを享受する。そこには極限までデジタル化することによって初めて入手可能となった詳細な分析情報が含まれる。またニューラル・ネットワークなどの最も重要で複雑な問題の分解を可能にし、刺激的で斬新なソリューションを生み出す。
AIと機械学習によって、これまで以上に詳細なパターン認識が可能になれば、ワークフローを最適化するソリューションはよりシンプルかつ効果的なものへと進化を遂げ、企業やエコシステムは、永続的なワークフローのゴールデン・スレッドを確立できるようになる。また科学的なアプローチを的確にエコシステム全体に行きわたらせて、イノベーションを促進することができれば、業界横断的なパートナーシップとコンソーシアムはより活性化するだろう。
同様に、従来のコンピューターでは解析に何世紀もかかるような問題を数分で解析できる量子コンピューターにも、物流や新素材開発、創薬などの分野に革命的な進化をもたらす可能性がある。バーチャル・エンタープライズは、量子力学を活用することで、既存のワークフローを再構築し、新たな方法論、効率性、あるいは顧客・パートナー・従業員との関わり方を創出できるようになる。また拡張インテリジェント・ワークフローによって、特定のタスク処理を量子コンピューターに任せ、そこからイノベーションを誘発することも期待できる。
データ主導のイノベーションは、バーチャル・エンタープライズのさまざまなレベルで起こり得る。それは顧客データの分析から得た洞察に基づいて、サービスを提案するといった基礎的なレベルから、ワークフローの視点からプロセス内のアクティビティーやパフォーマンスを継続的に監視・分析することで、改善すべき領域を浮き上がらせ、自動化や人間による介入を実施するといった、応用的なレベルまでも含む。
またプラットフォーム・レベルでは、企業やビジネス・パートナーのデータ・ソースを複合的に活用することで、市場ギャップや製品・サービスのイノベーションを発見し、複雑で複合的な機会を活かすことができる。エコシステムを広範に網羅すれば、データ、情報、参加者の数は膨大なものになり、アイデア創出のプロセスは加速する。ここで重要になるのが、発明を実際に行うことと、その規模である。こうした理由から、バーチャル化とエコシステムとは、私たちが直面するさまざまな課題の解決策として、今後ますます重要度を増していくだろう。
バーチャル・エンタープライズの視野は、時間的には未来、空間的には社外に対して開かれている。つまりバーチャル・エンタープライズは歴史や社内情報によって意思決定を行うのではなく、大量のデータや、新たなタイプの集合知を使って予測分析や予見分析を行い、イノベーションを加速させるのである。
バーチャル・エンタープライズが目指すイノベーションは、より厳密で奥深い科学的発見のアプローチに基づくものだ。例えば現在、新型コロナウイルスのワクチンは、まさに科学的な厳密さと深遠さをもって開発されており、従来のように年単位ではなく月単位で進められている。この姿勢をビジネス・イノベーションに応用したらどうなるだろうか。
実験やシミュレーション、仮説の検証は長い間、科学の発見の中心的アプローチだった。ところがバーチャル・エンタープライズにおいては、同様のアプローチが業界の壁を超えて、かつてない速度で可能となる。その鍵となるのが、AIやIoT、量子コンピューティングなどのエクスポネンシャル・テクノロジーである。
バーチャル・エンタープライズは、エコシステムとインテリジェント・ワークフローを活用することで、リアルタイムで処理を行い、新たな価値の鉱脈を迅速かつ効率的に掘り当てる。アジャイル開発とIBM Garage手法は、共創(Co-create)、共同実行(Coexecute)、共同運用(Co-operate)といった概念に基づく実験がもたらす、影響力の大きな好事例となるだろう。
データサイエンティストは、バーチャル・エンタープライズとエコシステムのオープン・アーキテクチャーを活用することで、データ共有のメリットを享受する。そこには極限までデジタル化することによって初めて入手可能となった詳細な分析情報が含まれる。またニューラル・ネットワークなどの最も重要で複雑な問題の分解を可能にし、刺激的で斬新なソリューションを生み出す。
AIと機械学習によって、これまで以上に詳細なパターン認識が可能になれば、ワークフローを最適化するソリューションはよりシンプルかつ効果的なものへと進化を遂げ、企業やエコシステムは、永続的なワークフローのゴールデン・スレッドを確立できるようになる。また科学的なアプローチを的確にエコシステム全体に行きわたらせて、イノベーションを促進することができれば、業界横断的なパートナーシップとコンソーシアムはより活性化するだろう。
同様に、従来のコンピューターでは解析に何世紀もかかるような問題を数分で解析できる量子コンピューターにも、物流や新素材開発、創薬などの分野に革命的な進化をもたらす可能性がある。バーチャル・エンタープライズは、量子力学を活用することで、既存のワークフローを再構築し、新たな方法論、効率性、あるいは顧客・パートナー・従業員との関わり方を創出できるようになる。また拡張インテリジェント・ワークフローによって、特定のタスク処理を量子コンピューターに任せ、そこからイノベーションを誘発することも期待できる。
データ主導のイノベーションは、バーチャル・エンタープライズのさまざまなレベルで起こり得る。それは顧客データの分析から得た洞察に基づいて、サービスを提案するといった基礎的なレベルから、ワークフローの視点からプロセス内のアクティビティーやパフォーマンスを継続的に監視・分析することで、改善すべき領域を浮き上がらせ、自動化や人間による介入を実施するといった、応用的なレベルまでも含む。
またプラットフォーム・レベルでは、企業やビジネス・パートナーのデータ・ソースを複合的に活用することで、市場ギャップや製品・サービスのイノベーションを発見し、複雑で複合的な機会を活かすことができる。エコシステムを広範に網羅すれば、データ、情報、参加者の数は膨大なものになり、アイデア創出のプロセスは加速する。ここで重要になるのが、発明を実際に行うことと、その規模である。こうした理由から、バーチャル化とエコシステムとは、私たちが直面するさまざまな課題の解決策として、今後ますます重要度を増していくだろう。
心臓病治療で第1位にランクされる非営利の専門医療機関クリーブランド・クリニックは、IBMと提携し、「ディスカバリー・アクセラレーター」センターを設立する予定だ。このセンターの目的は、ハイブリッドクラウド、AI、量子コンピューティングといった最新のテクノロジーを用いて、ヘルスケアとライフサイエンスの分野で飛躍的な進歩を達成することだ。クリーブランド・クリニックの研究者は、高度なコンピューター・テクノロジーを用いて、膨大な量のデータを生成・分析し、ゲノミクス、単一細胞トランスクリプトミクス、臨床応用、新規化合物の創出と創薬、ポピュレーション・ヘルスなどの研究を進め、新型コロナ危機のような公衆衛生上の脅威に対する新たなアプローチを含めた研究を行う予定である。またこのセンターでは、ディープ・サーチ、AIと量子コンピューティングによる高度なシミュレーション、生成モデル、そしてAI主導の化学合成の自動化といった、IBMの次世代のテクノロジーやイノベーションに基づく研究を進めようとしている。
この10年間の共同プログラムは、ヘルスケアとライフサイエンスにおける、進歩と発見を目的とする
活用するクラウドがアクセスするIBMの量子システムの数は20以上に及ぶ
2023年には、量子ビット数1,000以上を目指す
we.trade社はヨーロッパの主要銀行の共同出資により設立され、世界初のデジタル金融貿易プラットフォームを提供している。ブロックチェーン・テクノロジーを用いて、買い手、売り手、銀行、保険会社、物流機関を、より高いデータ・インテリジェンスとトレーサビリティーに結び付ける。そして、国境を越えた取引を簡素化し、信頼性と透明性を高め、エコシステムへの参加障壁を軽減し、参加者に新たな市場を提供する。
このプラットフォームは、貿易金融の融資ワークフローを合理化することで、摩擦を減らし、企業の新市場への進出を後押しする。また貿易会社に、保険への高信頼のアクセス、信用格付け、ロジスティクス・サービスなどを提供し、カウンターパーティー・リスクを低減させる。さらに取引の自動化、エンド・ツー・エンドのトレード・エコシステムの統合を支援する。
トランザクション処理のコストを80%削減
2019年のサービス開始以降、参加者は15カ国17銀行まで拡大
400以上のクーリエ・国際配送業者を追跡調査
we.trade社はヨーロッパの主要銀行の共同出資により設立され、世界初のデジタル金融貿易プラットフォームを提供している。ブロックチェーン・テクノロジーを用いて、買い手、売り手、銀行、保険会社、物流機関を、より高いデータ・インテリジェンスとトレーサビリティーに結び付ける。そして、国境を越えた取引を簡素化し、信頼性と透明性を高め、エコシステムへの参加障壁を軽減し、参加者に新たな市場を提供する。
このプラットフォームは、貿易金融の融資ワークフローを合理化することで、摩擦を減らし、企業の新市場への進出を後押しする。また貿易会社に、保険への高信頼のアクセス、信用格付け、ロジスティクス・サービスなどを提供し、カウンターパーティー・リスクを低減させる。さらに取引の自動化、エンド・ツー・エンドのトレード・エコシステムの統合を支援する。
トランザクション処理のコストを80%削減
2019年のサービス開始以降、参加者は15カ国17銀行まで拡大
400以上のクーリエ・国際配送業者を追跡調査
インテリジェント・ワークフローは存在意義、方針、価値のゴールデン・スレッドを生み出し、バーチャル・エンタープライズを構成する多くの人や要素を有機的に紡ぎ、その中心となって支える存在である。このワークフローの参加者は、社内であれ、エコシステムをまたいだ社外であれ、ワークフローが求める方針に従う必要があり、そこから得た経験は情報として提供しなくてはならない。
このワークフローが生み出す総合的な価値の恩恵を享受するのは、エンド・ユーザーである。コロナ禍は、私たちに迅速かつ大規模な変革を迫り、拡張インテリジェント・ワークフローの重要性を浮き彫りにした。
拡張インテリジェント・ワークフローの効果は、すべての参加者の処理速度、正確性、セキュリティーに左右される。ワークフローが生み出す価値や効果の大きさは、そのオープン性と互換性によって決まる。企業内のワークフローを調査し、それを上手に活用すれば、プロセスのサイロ化を回避することができる。
ワークフローの範囲は大きければ大きいほど、またエンド・ツー・エンドの関係性を強化すればするほど、その成果は大きくなる。ワークフローの範囲を顧客やサプライヤー、さらにはその他の利害関係者にまで広げることで、バーチャル・エンタープライズの可能性は飛躍的に高まるだろう。
拡張インテリジェント・ワークフローは、多くの参加者の関心を引き付けることで、真のプラットフォームに生まれ変わる。それがバーチャル・エンタープライズや関連プラットフォームを形作り、さらにはエコシステムにも影響を及ぼす。またエクスポネンシャル・テクノロジーを組み合わせれば、潜在的な課題に適切に対処できるようになり、ビジネスモデルの変革は加速し、パフォーマンス・レベルは高次な段階へと移行する。現代の、いわゆる拡張されたエンタープライズにおいては、ワークフローが競争力を生み、差別化を可能にするのだ。
バーチャル化は、パフォーマンスを向上させる新たなエクスポネンシャル・テクノロジーの1つとなった。物理的な資産をデジタル化し、投資コストを運用コストに置き換える。さらに個人、チーム、オフィスを、新たな参加型のモデルに移行させる。
これまで私たちは、テレワーク・モデルや組織の大規模な統廃合がもたらす生産性の向上、あるいはデジタル・ゼロタッチ・アプローチが対象とするプロセスの複雑さなどを目の当たりにしてきた。こうした流れに、高度な自動化とボットの広範な活用が融合し、ワークフローは洗練され、より包括的な「デジタルツイン」モデルの開発が現実のものとなった。
場所という制約が取り去られた結果、将来に向け大きな可能性が開かれつつある。例えば、国境を越えて新たな労務費のコスト・プールが生まれたり、バーチャルな組織横断的専門チーム(CoE)が設立されたり、インテリジェント・ワークフローにおける空間や場所の概念が再定義されたりしている。マーケットプレイス、アグリゲーター、技術基盤のコンソーシアムなど、まったく新しい高度なデジタル・ビジネスモデルの構想においては、地理的な境界線はもはや前提条件とは見なされない。
データに基づいたインテリジェント・ワークフローは、新たなデータ間の関係性や組み合わせを発見した。データの標準化とオープン・プロトコルの活用は、パートナーとの共同実験や共同イノベーションを可能にした。こうした一連の動きが、オープン・ハイブリッドクラウド・アーキテクチャーの構築を推し進める要因の1つとなっている。データ・アクセスの高速化は、新たなリアルタイム・プロセスにとって、非常に重要なミッションとなっている。
最大限の効果を得るためには、社内であろうと、パートナーシップ間であろうと、またはその他の領域であろうと、共通の目的に沿って複数のワークフローを連携させなければならない。なぜならサイロ化を克服し、全体として一貫した体験を提供する必要があるからだ。
ワークフローの有効性、ひいてはバーチャル・エンタープライズの有効性は、そこに関与するあらゆる企業や個人のスピード、正確性、セキュリティーによって決まる。
拡張インテリジェント・ワークフローを再構築すれば、バーチャルなナレッジ・ワーカーの活躍の場を、エンジニアリングや製造の現場にまで広げることができる。IoTとセンシングは、企業のエッジ領域や製造現場からの情報をワークフローに流し込み、さらなる自動化や、洞察の発見、予測レベルの向上を可能にする。
拡張ワークフローは、バーチャル・エンタープライズのゴールデン・スレッドとして、エコシステム全体の体験と価値を伝達する役割を担うようになった。そしてワークフローを背景に、情報の信頼性は高まり、重要な意思決定を瞬時に下すための自動化のルールやアルゴリズムもまた、ワークフローに蓄積されるようになった。
インテリジェント・ワークフローは存在意義、方針、価値のゴールデン・スレッドを生み出し、バーチャル・エンタープライズを構成する多くの人や要素を有機的に紡ぎ、その中心となって支える存在である。このワークフローの参加者は、社内であれ、エコシステムをまたいだ社外であれ、ワークフローが求める方針に従う必要があり、そこから得た経験は情報として提供しなくてはならない。
このワークフローが生み出す総合的な価値の恩恵を享受するのは、エンド・ユーザーである。コロナ禍は、私たちに迅速かつ大規模な変革を迫り、拡張インテリジェント・ワークフローの重要性を浮き彫りにした。
拡張インテリジェント・ワークフローの効果は、すべての参加者の処理速度、正確性、セキュリティーに左右される。ワークフローが生み出す価値や効果の大きさは、そのオープン性と互換性によって決まる。企業内のワークフローを調査し、それを上手に活用すれば、プロセスのサイロ化を回避することができる。
ワークフローの範囲は大きければ大きいほど、またエンド・ツー・エンドの関係性を強化すればするほど、その成果は大きくなる。ワークフローの範囲を顧客やサプライヤー、さらにはその他の利害関係者にまで広げることで、バーチャル・エンタープライズの可能性は飛躍的に高まるだろう。
拡張インテリジェント・ワークフローは、多くの参加者の関心を引き付けることで、真のプラットフォームに生まれ変わる。それがバーチャル・エンタープライズや関連プラットフォームを形作り、さらにはエコシステムにも影響を及ぼす。またエクスポネンシャル・テクノロジーを組み合わせれば、潜在的な課題に適切に対処できるようになり、ビジネスモデルの変革は加速し、パフォーマンス・レベルは高次な段階へと移行する。現代の、いわゆる拡張されたエンタープライズにおいては、ワークフローが競争力を生み、差別化を可能にするのだ。
バーチャル化は、パフォーマンスを向上させる新たなエクスポネンシャル・テクノロジーの1つとなった。物理的な資産をデジタル化し、投資コストを運用コストに置き換える。さらに個人、チーム、オフィスを、新たな参加型のモデルに移行させる。
これまで私たちは、テレワーク・モデルや組織の大規模な統廃合がもたらす生産性の向上、あるいはデジタル・ゼロタッチ・アプローチが対象とするプロセスの複雑さなどを目の当たりにしてきた。こうした流れに、高度な自動化とボットの広範な活用が融合し、ワークフローは洗練され、より包括的な「デジタルツイン」モデルの開発が現実のものとなった。
場所という制約が取り去られた結果、将来に向け大きな可能性が開かれつつある。例えば、国境を越えて新たな労務費のコスト・プールが生まれたり、バーチャルな組織横断的専門チーム(CoE)が設立されたり、インテリジェント・ワークフローにおける空間や場所の概念が再定義されたりしている。マーケットプレイス、アグリゲーター、技術基盤のコンソーシアムなど、まったく新しい高度なデジタル・ビジネスモデルの構想においては、地理的な境界線はもはや前提条件とは見なされない。
データに基づいたインテリジェント・ワークフローは、新たなデータ間の関係性や組み合わせを発見した。データの標準化とオープン・プロトコルの活用は、パートナーとの共同実験や共同イノベーションを可能にした。こうした一連の動きが、オープン・ハイブリッドクラウド・アーキテクチャーの構築を推し進める要因の1つとなっている。データ・アクセスの高速化は、新たなリアルタイム・プロセスにとって、非常に重要なミッションとなっている。
最大限の効果を得るためには、社内であろうと、パートナーシップ間であろうと、またはその他の領域であろうと、共通の目的に沿って複数のワークフローを連携させなければならない。なぜならサイロ化を克服し、全体として一貫した体験を提供する必要があるからだ。
ワークフローの有効性、ひいてはバーチャル・エンタープライズの有効性は、そこに関与するあらゆる企業や個人のスピード、正確性、セキュリティーによって決まる。
拡張インテリジェント・ワークフローを再構築すれば、バーチャルなナレッジ・ワーカーの活躍の場を、エンジニアリングや製造の現場にまで広げることができる。IoTとセンシングは、企業のエッジ領域や製造現場からの情報をワークフローに流し込み、さらなる自動化や、洞察の発見、予測レベルの向上を可能にする。
拡張ワークフローは、バーチャル・エンタープライズのゴールデン・スレッドとして、エコシステム全体の体験と価値を伝達する役割を担うようになった。そしてワークフローを背景に、情報の信頼性は高まり、重要な意思決定を瞬時に下すための自動化のルールやアルゴリズムもまた、ワークフローに蓄積されるようになった。
we.trade社はヨーロッパの主要銀行の共同出資により設立され、世界初のデジタル金融貿易プラットフォームを提供している。ブロックチェーン・テクノロジーを用いて、買い手、売り手、銀行、保険会社、物流機関を、より高いデータ・インテリジェンスとトレーサビリティーに結び付ける。そして、国境を越えた取引を簡素化し、信頼性と透明性を高め、エコシステムへの参加障壁を軽減し、参加者に新たな市場を提供する。
このプラットフォームは、貿易金融の融資ワークフローを合理化することで、摩擦を減らし、企業の新市場への進出を後押しする。また貿易会社に、保険への高信頼のアクセス、信用格付け、ロジスティクス・サービスなどを提供し、カウンターパーティー・リスクを低減させる。さらに取引の自動化、エンド・ツー・エンドのトレード・エコシステムの統合を支援する。
トランザクション処理のコストを80%削減
2019年のサービス開始以降、参加者は15カ国17銀行まで拡大
400以上のクーリエ・国際配送業者を追跡調査
鉱業界のエコシステムの中で、長年にわたり多くの顧客関係を築いてきたShell社は、IBMと共同で業界初のデジタルB2Bマーケットプレイス「Oren」を立ち上げた。Orenの設立目的は、プラットフォームを開示して、買い手と売り手を結び付け、ソリューションやサービスのキュレーションを行うことで、鉱業界におけるデジタル・サービスの活用やサステナビリティーの推進を加速させることである。
Orenは使いやすさを考慮して設計されており、ソリューションやサービスをワンストップ型で提供することで、デジタル・トランスフォーメーションの実現という難しい課題の解決を目指している。またオペレーションのデジタル化、効率性の向上、排出量の削減、社会的営業ライセンスの拡張等に関し、長期的なデジタル・ロードマップを提供することで、鉱業事業者が戦略的にサステナビリティーを実現できるよう支援している。
成果鉱業界初のB2Bデジタル・マーケットプレイス
60を超える即戦力となるソリューション
ネットゼロ、脱炭素化の達成を支援するエコシステム・ツール
鉱業界のエコシステムの中で、長年にわたり多くの顧客関係を築いてきたShell社は、IBMと共同で業界初のデジタルB2Bマーケットプレイス「Oren」を立ち上げた。Orenの設立目的は、プラットフォームを開示して、買い手と売り手を結び付け、ソリューションやサービスのキュレーションを行うことで、鉱業界におけるデジタル・サービスの活用やサステナビリティーの推進を加速させることである。
Orenは使いやすさを考慮して設計されており、ソリューションやサービスをワンストップ型で提供することで、デジタル・トランスフォーメーションの実現という難しい課題の解決を目指している。またオペレーションのデジタル化、効率性の向上、排出量の削減、社会的営業ライセンスの拡張等に関し、長期的なデジタル・ロードマップを提供することで、鉱業事業者が戦略的にサステナビリティーを実現できるよう支援している。
成果鉱業界初のB2Bデジタル・マーケットプレイス
60を超える即戦力となるソリューション
ネットゼロ、脱炭素化の達成を支援するエコシステム・ツール
新型コロナウイルス感染症の危機は、地球上のあらゆるものが相互に結び付いていることや、自然の役割、自然と人間の関係について、私たちに教訓をもたらした。パンデミック以前から、企業はそれぞれ環境、社会、ガバナンスについて目標を持っていたが、今回の出来事は改めてサステナビリティーへの関心が高まる重要な契機となった。コロナ禍で私たちの生活は大きく変化した。バーチャルな働き方へ移行し、移動を自粛し、都市活動やグローバルな取引による輸送量を抑制した。しかしその結果、大気中の炭素量は減少したのである。
バーチャル・エンタープライズへの進化は、この流れを加速するものであり、持続可能な地球環境の実現に向けた構造的な変革の一部となるだろう。企業は利害関係者の資本価値向上を企図し、顧客や従業員は、企業の価値観に基づいて購入や就業を判断する。そうした中、ビジネスの目指す将来像は、より大局的な見地を考慮したものに変わりつつある。
バーチャル・エンタープライズの拡張エコシステムは、インテリジェント・ワークフローを自動化し、資産構成を再構築して、データをスマートに活用するが、これまでとは別次元の環境変化にも対応できる可能性を秘めている。このエコシステムの特徴ともいえるパートナーシップは、価値観を共有する参加者によって構成されることになるだろう。
こうした状況の中、企業の影響力が幅広く社会的な次元にまで拡大された、ステークホルダー資本主義に注目が集まっている。企業はパートナーシップやエコシステムの枠を拡大し、健康、気候変動、食料安全保障、社会的不平等といった世界が直面する重要問題にまで、その視野を広げつつある。
企業の主導権争いは、変革を可能にするプラットフォームの形成や新たなジョイント・ベンチャーの設立、または革新的パートナーシップ・モデルの構築などを巡って熱を帯びつつある。複数のエコシステムにわたる要素を整理して組み込むことができる、バーチャル・エンタープライズのオープンなアプローチは、この動きを加速する最適な手段と言える。
バーチャル・エンタープライズの出現により、企業はサステナビリティーの概念をその本質に取り込むことに成功した。企業は事業や価値提案、パートナーシップ、顧客エンゲージメント戦略に、サステナビリティーを織り込むことで、人と人との関係や、地球への接し方に影響を与え、脱炭素社会の実現などエコロジカル・フットプリントの改善に貢献し、真の変化をもたらすことができるようになった。この困難な時期をチャンスと捉えれば、企業はサステナビリティーと連動した革新的な商品やサービスを生み出すことも可能である。
バーチャル化は、サステナビリティーの実現という私たち共通の取り組みにおいて、極めて大きな役割を果たす可能性がある。バーチャル化には、デジタル・アクセスやテレワークの促進、およびオフィス・スペースや通勤時間の削減によって脱炭素化を進めたり、エクスポネンシャル・テクノロジーを駆使することで、循環型経済を維持・強化したりする力がある。例えば、アナリティクスによって、拡張サプライチェーンの来歴管理や予測能力を高めれば、消費と調達を合致させ、廃棄物を削減し、再利用計画の精度を高めることができる。企業の成功に対する基準や指標に、気候変動対策が組み込まれれば、炭素削減は進み、再生可能エネルギーを開発しようという強い動機を生むきっかけとなるだろう。
働き方は今後も永続的に変化を続け、もはや以前のような姿に戻ることはないだろう。従業員や利害関係者の健康と福祉を尊重する姿勢は、企業にとってこれからも優先事項であり続けるはずだ。バーチャル・エンタープライズが、事業におけるネットワークやチーム・モデルを構築する際、そこに従事する人々の健康に留意し、参加者の身分を証明し、生活の安定に配慮することは必然になってくるだろう。ここで大きな役割を果たすのが、テクノロジーだ。過去1年間におけるIT技術の変革の結果、従業員と雇用者の関係はより豊かなものになった。従業員の家庭にまで企業が入り込み、仕事、従業員、家族、そしてコミュニティー全体において新しい関係性が醸成された。
新型コロナウイルス感染症の危機は、地球上のあらゆるものが相互に結び付いていることや、自然の役割、自然と人間の関係について、私たちに教訓をもたらした。パンデミック以前から、企業はそれぞれ環境、社会、ガバナンスについて目標を持っていたが、今回の出来事は改めてサステナビリティーへの関心が高まる重要な契機となった。コロナ禍で私たちの生活は大きく変化した。バーチャルな働き方へ移行し、移動を自粛し、都市活動やグローバルな取引による輸送量を抑制した。しかしその結果、大気中の炭素量は減少したのである。
バーチャル・エンタープライズへの進化は、この流れを加速するものであり、持続可能な地球環境の実現に向けた構造的な変革の一部となるだろう。企業は利害関係者の資本価値向上を企図し、顧客や従業員は、企業の価値観に基づいて購入や就業を判断する。そうした中、ビジネスの目指す将来像は、より大局的な見地を考慮したものに変わりつつある。
バーチャル・エンタープライズの拡張エコシステムは、インテリジェント・ワークフローを自動化し、資産構成を再構築して、データをスマートに活用するが、これまでとは別次元の環境変化にも対応できる可能性を秘めている。このエコシステムの特徴ともいえるパートナーシップは、価値観を共有する参加者によって構成されることになるだろう。
こうした状況の中、企業の影響力が幅広く社会的な次元にまで拡大された、ステークホルダー資本主義に注目が集まっている。企業はパートナーシップやエコシステムの枠を拡大し、健康、気候変動、食料安全保障、社会的不平等といった世界が直面する重要問題にまで、その視野を広げつつある。
企業の主導権争いは、変革を可能にするプラットフォームの形成や新たなジョイント・ベンチャーの設立、または革新的パートナーシップ・モデルの構築などを巡って熱を帯びつつある。複数のエコシステムにわたる要素を整理して組み込むことができる、バーチャル・エンタープライズのオープンなアプローチは、この動きを加速する最適な手段と言える。
バーチャル・エンタープライズの出現により、企業はサステナビリティーの概念をその本質に取り込むことに成功した。企業は事業や価値提案、パートナーシップ、顧客エンゲージメント戦略に、サステナビリティーを織り込むことで、人と人との関係や、地球への接し方に影響を与え、脱炭素社会の実現などエコロジカル・フットプリントの改善に貢献し、真の変化をもたらすことができるようになった。この困難な時期をチャンスと捉えれば、企業はサステナビリティーと連動した革新的な商品やサービスを生み出すことも可能である。
バーチャル化は、サステナビリティーの実現という私たち共通の取り組みにおいて、極めて大きな役割を果たす可能性がある。バーチャル化には、デジタル・アクセスやテレワークの促進、およびオフィス・スペースや通勤時間の削減によって脱炭素化を進めたり、エクスポネンシャル・テクノロジーを駆使することで、循環型経済を維持・強化したりする力がある。例えば、アナリティクスによって、拡張サプライチェーンの来歴管理や予測能力を高めれば、消費と調達を合致させ、廃棄物を削減し、再利用計画の精度を高めることができる。企業の成功に対する基準や指標に、気候変動対策が組み込まれれば、炭素削減は進み、再生可能エネルギーを開発しようという強い動機を生むきっかけとなるだろう。
働き方は今後も永続的に変化を続け、もはや以前のような姿に戻ることはないだろう。従業員や利害関係者の健康と福祉を尊重する姿勢は、企業にとってこれからも優先事項であり続けるはずだ。バーチャル・エンタープライズが、事業におけるネットワークやチーム・モデルを構築する際、そこに従事する人々の健康に留意し、参加者の身分を証明し、生活の安定に配慮することは必然になってくるだろう。ここで大きな役割を果たすのが、テクノロジーだ。過去1年間におけるIT技術の変革の結果、従業員と雇用者の関係はより豊かなものになった。従業員の家庭にまで企業が入り込み、仕事、従業員、家族、そしてコミュニティー全体において新しい関係性が醸成された。
鉱業界のエコシステムの中で、長年にわたり多くの顧客関係を築いてきたShell社は、IBMと共同で業界初のデジタルB2Bマーケットプレイス「Oren」を立ち上げた。Orenの設立目的は、プラットフォームを開示して、買い手と売り手を結び付け、ソリューションやサービスのキュレーションを行うことで、鉱業界におけるデジタル・サービスの活用やサステナビリティーの推進を加速させることである。
Orenは使いやすさを考慮して設計されており、ソリューションやサービスをワンストップ型で提供することで、デジタル・トランスフォーメーションの実現という難しい課題の解決を目指している。またオペレーションのデジタル化、効率性の向上、排出量の削減、社会的営業ライセンスの拡張等に関し、長期的なデジタル・ロードマップを提供することで、鉱業事業者が戦略的にサステナビリティーを実現できるよう支援している。
成果鉱業界初のB2Bデジタル・マーケットプレイス
60を超える即戦力となるソリューション
ネットゼロ、脱炭素化の達成を支援するエコシステム・ツール
デジタル・チャネルを活用した新しい顧客サービスを開発する、フランスの大手通信会社Orange France社は、従業員のデジタル・コンピテンシーを強化する包括的プログラムOrange Campusを開発した。
Orange France社は共創スタジオを使って、人材能力とテクノロジーがいかにシームレスに連携できるかのビジョンを描いた。この過程において、それまで150種類あった役職を主要な30種類にまで絞り込み、将来の従業員育成に必要な80種類のデジタル・コンピテンシーを特定した。また従業員が新たなデジタル・スキルを習得できるようトレーニング・パスを再編し、キャリアの流動性を高めた。
改革に携わる従業員の半分は、Orange Campusを使用して新しいデジタル・スキルを習得している
デジタル・チャネルの活用によって顧客売上は150%増加し、NPSは10ポイント上昇した
デジタル・アシスタントをフルに活用したセルフ・サービスの利用率は30%増加した
デジタル・チャネルを活用した新しい顧客サービスを開発する、フランスの大手通信会社Orange France社は、従業員のデジタル・コンピテンシーを強化する包括的プログラムOrange Campusを開発した。
Orange France社は共創スタジオを使って、人材能力とテクノロジーがいかにシームレスに連携できるかのビジョンを描いた。この過程において、それまで150種類あった役職を主要な30種類にまで絞り込み、将来の従業員育成に必要な80種類のデジタル・コンピテンシーを特定した。また従業員が新たなデジタル・スキルを習得できるようトレーニング・パスを再編し、キャリアの流動性を高めた。
改革に携わる従業員の半分は、Orange Campusを使用して新しいデジタル・スキルを習得している
デジタル・チャネルの活用によって顧客売上は150%増加し、NPSは10ポイント上昇した
デジタル・アシスタントをフルに活用したセルフ・サービスの利用率は30%増加した
バーチャル・エンタープライズの最大の特徴は、人間とエコシステム、およびエクスポネンシャル・テクノロジーを仲介する新たなインターフェースであるという点だ。場所の制約がなくなるにつれて、スキルや能力、必要な機能などに所選ばずアクセスする機会は現実に増えている。パートナー企業を含むエコシステム内の人々へのアクセスが広がることで、可能性も大きく広がる。同時に、この拡張されたダイナミックなコラボレーションは、明確に定義されたワークフローと、堅牢かつ使いやすいツールやシステムを必要とする。
バーチャル・エンタープライズは、個人にとってはチャンスであると同時に脅威にもなり得る。グローバルなつながりを活かせば、自分自身のスキルを新たな分野で発揮できるようになる一方で、企業が自分よりも高いスキルを持つ人にアクセスすることも、これまでになく容易になっている。そのため幅広く学び続けることや、アジャイル・アプローチへの対応能力の重要性は、今まで以上に増してきている。ここ最近取りざたされているギグ・エコノミーといった側面からだけでなく、むしろ組織や能力開発に対する構造的なアプローチという側面から見ても、「従業員」という概念を考え直すべき時期に来ているのかもしれない。このようにバーチャル・エンタープライズには、明確でオープンな人材戦略が必要なのである。
バーチャル・エンタープライズは、データやテクノロジーを信頼できる組織文化を持っていなければならない。ここで言うデータやテクノロジーとは、経営層や従業員、利害関係者が意思決定の際に参照する、運用モデルの基軸となるものだ。このことによって、今まで以上に重要な意思決定をデジタル・ワーカーやボットが行うようになるだろう。今後の課題は、これらのテクノロジーが状況に応じて適切に予測したり、文脈を理解したりできるようになり、結果として人々が納得できる意思決定を下せるようになるかどうかだ。
バーチャル・エンタープライズが、さまざまな部門・企業・地域・背景において、インクルージョンとダイバーシティーを加速させる可能性を持っているという点は極めて重要だ。信頼性に優れたオープン・プラットフォームと拡張ワークフローは、現在は疎外されている人々に、グローバル経済への新たな門戸を開く可能性がある。参入障壁が下がり、移動せずとも経済活動に参加することができるようになるからだ。ただし、こうしたオープン性は、テクノロジーやプラットフォームの力だけでは実現できない。
組織とそのエコシステムの文化と価値観には、多様な貢献と人々の多様性を受け入れ、評価するための深い開放性が必要である。例えば、バーチャル・エンタープライズにおいてチームの定義が厳格すぎたり、配慮が足りなかったりして参加する個人が遠隔地で隔絶されてしまうと、集団としての多様性がかえって損なわれる可能性がある。
高度に進化した自動化やデジタル化、アルゴリズムが通常のものとなり、テレワークによる職場の分散が過度に進むと、バーチャル・エンタープライズにおける人間性は毀損されるリスクにさらされる。しかし新しい働き方のモデルの中には、チームや個人の能力を伸ばすことで、家庭と職場の境界の曖昧化という事態にうまく対応できたケースもある。
バーチャルなコミュニケーションにおいては、ビデオ会議などのテクノロジーに頼らざるを得ない状況は続くだろう。このためコワーキングという仕事のスタイルが確立された一方で、共感、協力、人脈づくりといった人間的な触れ合いは希薄になっている。
つまり、孤独なリモート環境下、ZoomやTeams、Webexでは、例えば「休憩室での同僚との会話から生まれる思いがけない幸運との出会い」などは望むべくもなく、精神的な負担が個人を苛む潜在リスクは残り続ける。
バーチャル・エンタープライズの経営層は、こうした課題に積極的に取り組まなければならない。現実に経営層が行う取り組みは大切だが、同時に機械に「人間らしさ」を実装することも重要だ。職場環境のハイブリッド化が進む先には本格的なニューノーマルの到来が待ち構えており、それに向けて働き方や働く場所、管理の仕方、そしてリーダーシップに関する新しいルールが次々と生まれつつある。
企業にとって、オフィスの場所やデザイン、拡張性はさらに重要かつ複雑な要素となるだろう。オープン・スペースとプライバシーのバランスは、ワークフローや、各従業員が使用するツールに応じて変化させる必要がある。企業の経営層は、戦略的に業務上のツールを選択し、競争上の優位性を確立しなくてはならない。
企業のバーチャル化が進むと、強力な企業文化を構築するための新たな指標が必要になってくる。世界中に分散する従業員や、バーチャルでしか接する機会のない従業員の間に、ポジティブな自社アイデンティティーを浸透させることが、リーダーに課された課題である。企業が「勝ち続ける文化」(ウィニング・カルチャー)を確立するためには、コミュニケーションの明確化、率先垂範、従業員の成長を促す継続的なフィードバックなどが不可欠になってくる。
バーチャル・エンタープライズの最大の特徴は、人間とエコシステム、およびエクスポネンシャル・テクノロジーを仲介する新たなインターフェースであるという点だ。場所の制約がなくなるにつれて、スキルや能力、必要な機能などに所選ばずアクセスする機会は現実に増えている。パートナー企業を含むエコシステム内の人々へのアクセスが広がることで、可能性も大きく広がる。同時に、この拡張されたダイナミックなコラボレーションは、明確に定義されたワークフローと、堅牢かつ使いやすいツールやシステムを必要とする。
バーチャル・エンタープライズは、個人にとってはチャンスであると同時に脅威にもなり得る。グローバルなつながりを活かせば、自分自身のスキルを新たな分野で発揮できるようになる一方で、企業が自分よりも高いスキルを持つ人にアクセスすることも、これまでになく容易になっている。そのため幅広く学び続けることや、アジャイル・アプローチへの対応能力の重要性は、今まで以上に増してきている。ここ最近取りざたされているギグ・エコノミーといった側面からだけでなく、むしろ組織や能力開発に対する構造的なアプローチという側面から見ても、「従業員」という概念を考え直すべき時期に来ているのかもしれない。このようにバーチャル・エンタープライズには、明確でオープンな人材戦略が必要なのである。
バーチャル・エンタープライズは、データやテクノロジーを信頼できる組織文化を持っていなければならない。ここで言うデータやテクノロジーとは、経営層や従業員、利害関係者が意思決定の際に参照する、運用モデルの基軸となるものだ。このことによって、今まで以上に重要な意思決定をデジタル・ワーカーやボットが行うようになるだろう。今後の課題は、これらのテクノロジーが状況に応じて適切に予測したり、文脈を理解したりできるようになり、結果として人々が納得できる意思決定を下せるようになるかどうかだ。
バーチャル・エンタープライズが、さまざまな部門・企業・地域・背景において、インクルージョンとダイバーシティーを加速させる可能性を持っているという点は極めて重要だ。信頼性に優れたオープン・プラットフォームと拡張ワークフローは、現在は疎外されている人々に、グローバル経済への新たな門戸を開く可能性がある。参入障壁が下がり、移動せずとも経済活動に参加することができるようになるからだ。ただし、こうしたオープン性は、テクノロジーやプラットフォームの力だけでは実現できない。
組織とそのエコシステムの文化と価値観には、多様な貢献と人々の多様性を受け入れ、評価するための深い開放性が必要である。例えば、バーチャル・エンタープライズにおいてチームの定義が厳格すぎたり、配慮が足りなかったりして参加する個人が遠隔地で隔絶されてしまうと、集団としての多様性がかえって損なわれる可能性がある。
高度に進化した自動化やデジタル化、アルゴリズムが通常のものとなり、テレワークによる職場の分散が過度に進むと、バーチャル・エンタープライズにおける人間性は毀損されるリスクにさらされる。しかし新しい働き方のモデルの中には、チームや個人の能力を伸ばすことで、家庭と職場の境界の曖昧化という事態にうまく対応できたケースもある。
バーチャルなコミュニケーションにおいては、ビデオ会議などのテクノロジーに頼らざるを得ない状況は続くだろう。このためコワーキングという仕事のスタイルが確立された一方で、共感、協力、人脈づくりといった人間的な触れ合いは希薄になっている。
つまり、孤独なリモート環境下、ZoomやTeams、Webexでは、例えば「休憩室での同僚との会話から生まれる思いがけない幸運との出会い」などは望むべくもなく、精神的な負担が個人を苛む潜在リスクは残り続ける。
バーチャル・エンタープライズの経営層は、こうした課題に積極的に取り組まなければならない。現実に経営層が行う取り組みは大切だが、同時に機械に「人間らしさ」を実装することも重要だ。職場環境のハイブリッド化が進む先には本格的なニューノーマルの到来が待ち構えており、それに向けて働き方や働く場所、管理の仕方、そしてリーダーシップに関する新しいルールが次々と生まれつつある。
企業にとって、オフィスの場所やデザイン、拡張性はさらに重要かつ複雑な要素となるだろう。オープン・スペースとプライバシーのバランスは、ワークフローや、各従業員が使用するツールに応じて変化させる必要がある。企業の経営層は、戦略的に業務上のツールを選択し、競争上の優位性を確立しなくてはならない。
企業のバーチャル化が進むと、強力な企業文化を構築するための新たな指標が必要になってくる。世界中に分散する従業員や、バーチャルでしか接する機会のない従業員の間に、ポジティブな自社アイデンティティーを浸透させることが、リーダーに課された課題である。企業が「勝ち続ける文化」(ウィニング・カルチャー)を確立するためには、コミュニケーションの明確化、率先垂範、従業員の成長を促す継続的なフィードバックなどが不可欠になってくる。
デジタル・チャネルを活用した新しい顧客サービスを開発する、フランスの大手通信会社Orange France社は、従業員のデジタル・コンピテンシーを強化する包括的プログラムOrange Campusを開発した。
Orange France社は共創スタジオを使って、人材能力とテクノロジーがいかにシームレスに連携できるかのビジョンを描いた。この過程において、それまで150種類あった役職を主要な30種類にまで絞り込み、将来の従業員育成に必要な80種類のデジタル・コンピテンシーを特定した。また従業員が新たなデジタル・スキルを習得できるようトレーニング・パスを再編し、キャリアの流動性を高めた。
改革に携わる従業員の半分は、Orange Campusを使用して新しいデジタル・スキルを習得している
デジタル・チャネルの活用によって顧客売上は150%増加し、NPSは10ポイント上昇した
デジタル・アシスタントをフルに活用したセルフ・サービスの利用率は30%増加した
Delta Air Lines社は、自社のデジタル・プレゼンスを常に進化させ、顧客および従業員体験を向上させる必要性を理解している。パンデミックの影響により需要が減少する中、これをデジタル基盤とデジタル・オペレーションのモダナイゼーション(最新化)の好機と捉えている。
同社はデジタル・トランスフォーメーションの一環として、顧客体験の向上と全社規模の効率化を目指し、データとアプリケーションのほとんどをクラウドに移行する作業を進めている。オープンなハイブリッドクラウド・アーキテクチャーに移行することで、開発や展開、セキュリティー、運用などにおいて、一貫性を保ち、標準に準拠したアプローチの採用が可能となる。この新しいクラウド・アーキテクチャーは、同社のネットワークを統合し、アジリティーを高め、アプリケーション横断的なデータの活用を推進するだろう。
Delta社は2024年までに、アプリケーションとデータベースの90%以上をクラウド環境に移行する予定
移行完了後には、開発分野の生産性は30%以上改善される見込み
1,000人以上のITエキスパートが、アプリケーションの開発と提供、データ管理、セキュリティーに関するトレーニングを受ける予定
Delta Air Lines社は、自社のデジタル・プレゼンスを常に進化させ、顧客および従業員体験を向上させる必要性を理解している。パンデミックの影響により需要が減少する中、これをデジタル基盤とデジタル・オペレーションのモダナイゼーション(最新化)の好機と捉えている。
同社はデジタル・トランスフォーメーションの一環として、顧客体験の向上と全社規模の効率化を目指し、データとアプリケーションのほとんどをクラウドに移行する作業を進めている。オープンなハイブリッドクラウド・アーキテクチャーに移行することで、開発や展開、セキュリティー、運用などにおいて、一貫性を保ち、標準に準拠したアプローチの採用が可能となる。この新しいクラウド・アーキテクチャーは、同社のネットワークを統合し、アジリティーを高め、アプリケーション横断的なデータの活用を推進するだろう。
Delta社は2024年までに、アプリケーションとデータベースの90%以上をクラウド環境に移行する予定
移行完了後には、開発分野の生産性は30%以上改善される見込み
1,000人以上のITエキスパートが、アプリケーションの開発と提供、データ管理、セキュリティーに関するトレーニングを受ける予定
バーチャル・エンタープライズは計り知れない可能性を秘めている。新たな市場を創出するプラットフォームは、新しいエコシステムと有用なインテリジェント・ワークフローに根差した形で実現される。また、こうして生まれたプラットフォームが、科学とデータに基づくイノベーションによって再構築され、広範囲に持続的な影響をもたらす。さらに、これらのワークフローによって、人々がテクノロジーとどう関わり、共感や高い生産性、または経験を獲得していくのかについても明らかになりつつある。ただ、その実現のためには、目的に合ったアプリケーションやインフラストラクチャー・アーキテクチャーの存在が不可欠となるだろう。
パンデミックの発生は、デジタル化の進展に必要な、柔軟性と適応性を備えたクラウドベースのアーキテクチャーの利用を加速させた。しかし未来の企業にとって必要なのは、単なる「クラウド」ではない。包括的アーキテクチャーに属し、適切にワークロードに対応できる「最適なクラウド」だけが、オープン性と高いセキュリティーを実現できるだろう。
バーチャル・エンタープライズは、ハイブリッドクラウドが提供する、オープンでセキュアな最新のアーキテクチャーによって実現する。しかし企業内において、各アプリケーションはサイロ化によって分断されており、インテリジェント・ワークフローの働きは制限されている。また複数のクラウドベースのソリューションの登場によって、新たなレベルでの不整合が顕在化している。
こうした現状から、メインフレーム環境やプライベートクラウド環境、およびパブリッククラウド環境をまたがって拡張ワークフローを支えることができる、オープンソース・アーキテクチャーの価値が高まっている。
このアーキテクチャーは、社外のパートナーとエコシステムへの接続性を高めることで、さらに価値を高める。マルチプラットフォームのエコシステムは進化し続けており、オープンなAPIとマイクロサービスによって、アクセスの互換性を高め、パートナー間のデータのやりとりの活発化とそこから創出される価値の深化を促進している。
オープンソース・ソリューションは、機能や業界の横断がもたらす相乗効果を通じて、新たな価値を生み出すコラボレーションや共有機能を構築する。このソリューションは、集合知による開発やイノベーションによって生まれたものであり、またその本質的属性である互換性は、さまざまな成果をもたらす要となってきた。こうしたことが、バーチャル・エンタープライズの適応性の基礎を形作っている。
オープンソースは、扱う情報に限界がなく、制約に縛られないため、システムの構築や保守に必要なスキルへのアクセスは極めて広範囲に及ぶ。企業がトランスフォーメーションに乗り出すためにはスキルの開発が必要になるが、そのとき課題になるのが、古いIT技術しか持たない人材の扱いだ。
基盤となるソリューションやアーキテクチャーのオープン性が高ければ高いほど、またメインフレーム環境、プライベートクラウド環境、パブリッククラウド環境などにわたる対象範囲が広ければ広いほど、開発やメンテナンスを担当するチームのメンバーを交代したり、再教育したりする場面は増えるだろう。
経営層の中で、CIOとCTOの重要性は高まる一方だ。これはテクノロジーそのものがビジネスになったからだけではなく、技術アーキテクチャーに関する戦略的意思決定が、改めて競争上の優位性を左右する要因になってきたからである。インテリジェント・ワークフローとプラットフォームの基盤となる次世代エンタープライズ・システムについて、適切な意思決定を下すことは重要である。また同様に、エコシステムに必要なデータやセキュリティーの要件を満たすオンプレミスやプライベートクラウド、パブリッククラウドなどのインフラストラクチャーの選択も重要だ。そしてこれらすべての選択肢において、ビジネスの状況に応じた柔軟な変更や、適正なコストの範囲内で実現できることが必要である。
バーチャル・エンタープライズへの移行に必要なアプリケーション・モダナイゼーションの作業は、そもそも複雑な上に、従来存在した複雑さが、単にデジタルやクラウドの複雑さに置き換わっただけで終わってしまうというリスクも高い。アジャイル・アプローチやDevSecOps、自動化はそれ自体有用ではあるが、活用にあたっては利用方針・道筋の整理が必要となる。その点において、エンタープライズ・アーキテクチャーに関するさまざまな変動的要因のオーケストレーションを担うコントロール・タワーのアプローチが登場した意味は大きい。オープン・スタンダードを活用し、この概念をエンド・ツー・エンドのエコシステムにまで拡張することは、検討に値する。
データの可用性や品質、セキュリティー、スケーラビリティーは、バーチャル・エンタープライズの成功に不可欠な要素だ。これらは基盤となる技術アーキテクチャーにも大きな影響を及ぼす。
インテリジェント・ワークフローやプラットフォームとともに、マルチクラウド・ソリューションの普及が進むと、それらを支えるデータの保管場所や、アクセス速度を把握して管理する必要性も高まる。いささか逆説的に聞こえるかもしれないが、バーチャルな世界において「データの重力」の重要性が増大しているのである。
同様にクラウドベースのERPソリューションは、アーキテクチャー全体において重要な役割を果たしており、インテリジェント・ワークフローの柱となっている。クラウドベースのERPソリューション、差別化されたデータ、オープンなアプリケーション・プラットフォームなどを適正に統合することで、拡張インテリジェント・ワークフローは複数の環境にまたがって機能し、確固たる中心軸としてバーチャル・エンタープライズを支える。
セキュリティーはすでに、テクノロジーに基づくビジネスやビジネスモデルの進化を支える、最も重要な要素となっている。企業のエコシステムが、パートナーやプラットフォームにまで拡張されるのに伴って、セキュリティーの範囲をインテリジェント・ワークフロー全体にまで広げる必要性もさらに高まっている。
これらの新しいワークフローは、主にデータと情報で構成されるが、このデータの価値は、ソースの透明性、信頼性、そしてセキュリティーに大きく依拠している。ブロックチェーンなどの先端テクノロジーは、これらの新しいワークフローにおける、ID管理や来歴、アクティビティー情報などの精度を高める、かつてない強力な推進役を果たす可能性を秘めている。
最後に、バーチャル・エンタープライズにおいて、参加者をシームレスかつ安全に、またリアルタイムに結び付けるネットワークの力も極めて重要だ。ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)は、ハイブリッドクラウド・テクノロジーと組み合わせれば、次世代のコネクティビティーとレジリエンスを実現する、適応性に優れたソリューションとなる。このことによって、通信会社の役割は見直され、新たな企業やエコシステム・パートナーへの門戸が開かれるだろう。つまり新しいネットワーク・バリュー・チェーンに対して、さまざまな構成要素を提供できる可能性が開かれるのだ。ここでもまた、基盤となる技術アーキテクチャーのオープン性が非常に重要になってくる。
バーチャル・エンタープライズは計り知れない可能性を秘めている。新たな市場を創出するプラットフォームは、新しいエコシステムと有用なインテリジェント・ワークフローに根差した形で実現される。また、こうして生まれたプラットフォームが、科学とデータに基づくイノベーションによって再構築され、広範囲に持続的な影響をもたらす。さらに、これらのワークフローによって、人々がテクノロジーとどう関わり、共感や高い生産性、または経験を獲得していくのかについても明らかになりつつある。ただ、その実現のためには、目的に合ったアプリケーションやインフラストラクチャー・アーキテクチャーの存在が不可欠となるだろう。
パンデミックの発生は、デジタル化の進展に必要な、柔軟性と適応性を備えたクラウドベースのアーキテクチャーの利用を加速させた。しかし未来の企業にとって必要なのは、単なる「クラウド」ではない。包括的アーキテクチャーに属し、適切にワークロードに対応できる「最適なクラウド」だけが、オープン性と高いセキュリティーを実現できるだろう。
バーチャル・エンタープライズは、ハイブリッドクラウドが提供する、オープンでセキュアな最新のアーキテクチャーによって実現する。しかし企業内において、各アプリケーションはサイロ化によって分断されており、インテリジェント・ワークフローの働きは制限されている。また複数のクラウドベースのソリューションの登場によって、新たなレベルでの不整合が顕在化している。
こうした現状から、メインフレーム環境やプライベートクラウド環境、およびパブリッククラウド環境をまたがって拡張ワークフローを支えることができる、オープンソース・アーキテクチャーの価値が高まっている。
このアーキテクチャーは、社外のパートナーとエコシステムへの接続性を高めることで、さらに価値を高める。マルチプラットフォームのエコシステムは進化し続けており、オープンなAPIとマイクロサービスによって、アクセスの互換性を高め、パートナー間のデータのやりとりの活発化とそこから創出される価値の深化を促進している。
オープンソース・ソリューションは、機能や業界の横断がもたらす相乗効果を通じて、新たな価値を生み出すコラボレーションや共有機能を構築する。このソリューションは、集合知による開発やイノベーションによって生まれたものであり、またその本質的属性である互換性は、さまざまな成果をもたらす要となってきた。こうしたことが、バーチャル・エンタープライズの適応性の基礎を形作っている。
オープンソースは、扱う情報に限界がなく、制約に縛られないため、システムの構築や保守に必要なスキルへのアクセスは極めて広範囲に及ぶ。企業がトランスフォーメーションに乗り出すためにはスキルの開発が必要になるが、そのとき課題になるのが、古いIT技術しか持たない人材の扱いだ。
基盤となるソリューションやアーキテクチャーのオープン性が高ければ高いほど、またメインフレーム環境、プライベートクラウド環境、パブリッククラウド環境などにわたる対象範囲が広ければ広いほど、開発やメンテナンスを担当するチームのメンバーを交代したり、再教育したりする場面は増えるだろう。
経営層の中で、CIOとCTOの重要性は高まる一方だ。これはテクノロジーそのものがビジネスになったからだけではなく、技術アーキテクチャーに関する戦略的意思決定が、改めて競争上の優位性を左右する要因になってきたからである。インテリジェント・ワークフローとプラットフォームの基盤となる次世代エンタープライズ・システムについて、適切な意思決定を下すことは重要である。また同様に、エコシステムに必要なデータやセキュリティーの要件を満たすオンプレミスやプライベートクラウド、パブリッククラウドなどのインフラストラクチャーの選択も重要だ。そしてこれらすべての選択肢において、ビジネスの状況に応じた柔軟な変更や、適正なコストの範囲内で実現できることが必要である。
バーチャル・エンタープライズへの移行に必要なアプリケーション・モダナイゼーションの作業は、そもそも複雑な上に、従来存在した複雑さが、単にデジタルやクラウドの複雑さに置き換わっただけで終わってしまうというリスクも高い。アジャイル・アプローチやDevSecOps、自動化はそれ自体有用ではあるが、活用にあたっては利用方針・道筋の整理が必要となる。その点において、エンタープライズ・アーキテクチャーに関するさまざまな変動的要因のオーケストレーションを担うコントロール・タワーのアプローチが登場した意味は大きい。オープン・スタンダードを活用し、この概念をエンド・ツー・エンドのエコシステムにまで拡張することは、検討に値する。
データの可用性や品質、セキュリティー、スケーラビリティーは、バーチャル・エンタープライズの成功に不可欠な要素だ。これらは基盤となる技術アーキテクチャーにも大きな影響を及ぼす。
インテリジェント・ワークフローやプラットフォームとともに、マルチクラウド・ソリューションの普及が進むと、それらを支えるデータの保管場所や、アクセス速度を把握して管理する必要性も高まる。いささか逆説的に聞こえるかもしれないが、バーチャルな世界において「データの重力」の重要性が増大しているのである。
同様にクラウドベースのERPソリューションは、アーキテクチャー全体において重要な役割を果たしており、インテリジェント・ワークフローの柱となっている。クラウドベースのERPソリューション、差別化されたデータ、オープンなアプリケーション・プラットフォームなどを適正に統合することで、拡張インテリジェント・ワークフローは複数の環境にまたがって機能し、確固たる中心軸としてバーチャル・エンタープライズを支える。
セキュリティーはすでに、テクノロジーに基づくビジネスやビジネスモデルの進化を支える、最も重要な要素となっている。企業のエコシステムが、パートナーやプラットフォームにまで拡張されるのに伴って、セキュリティーの範囲をインテリジェント・ワークフロー全体にまで広げる必要性もさらに高まっている。
これらの新しいワークフローは、主にデータと情報で構成されるが、このデータの価値は、ソースの透明性、信頼性、そしてセキュリティーに大きく依拠している。ブロックチェーンなどの先端テクノロジーは、これらの新しいワークフローにおける、ID管理や来歴、アクティビティー情報などの精度を高める、かつてない強力な推進役を果たす可能性を秘めている。
最後に、バーチャル・エンタープライズにおいて、参加者をシームレスかつ安全に、またリアルタイムに結び付けるネットワークの力も極めて重要だ。ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)は、ハイブリッドクラウド・テクノロジーと組み合わせれば、次世代のコネクティビティーとレジリエンスを実現する、適応性に優れたソリューションとなる。このことによって、通信会社の役割は見直され、新たな企業やエコシステム・パートナーへの門戸が開かれるだろう。つまり新しいネットワーク・バリュー・チェーンに対して、さまざまな構成要素を提供できる可能性が開かれるのだ。ここでもまた、基盤となる技術アーキテクチャーのオープン性が非常に重要になってくる。
Delta Air Lines社は、自社のデジタル・プレゼンスを常に進化させ、顧客および従業員体験を向上させる必要性を理解している。パンデミックの影響により需要が減少する中、これをデジタル基盤とデジタル・オペレーションのモダナイゼーション(最新化)の好機と捉えている。
同社はデジタル・トランスフォーメーションの一環として、顧客体験の向上と全社規模の効率化を目指し、データとアプリケーションのほとんどをクラウドに移行する作業を進めている。オープンなハイブリッドクラウド・アーキテクチャーに移行することで、開発や展開、セキュリティー、運用などにおいて、一貫性を保ち、標準に準拠したアプローチの採用が可能となる。この新しいクラウド・アーキテクチャーは、同社のネットワークを統合し、アジリティーを高め、アプリケーション横断的なデータの活用を推進するだろう。
Delta社は2024年までに、アプリケーションとデータベースの90%以上をクラウド環境に移行する予定
移行完了後には、開発分野の生産性は30%以上改善される見込み
1,000人以上のITエキスパートが、アプリケーションの開発と提供、データ管理、セキュリティーに関するトレーニングを受ける予定
バーチャル・エンタープライズに見られるような事業上の変化は、一企業からエコシステム・パートナー全体に至るまで、極めて広い範囲に影響を及ぼす。包括的な戦略を立て、利害関係者の調整を続け、意味のある加速的な進歩を実現すると同時に、単に企業に変化を押し付けたり、アジャイルによる混乱を引き起こしたりしないよう注意を払う必要があるだろう。
Garage手法は、価値の「ゴールデン・スレッド」を追求する新たなアーキテクチャーにさまざまな構成要素と参加者を統合し、パフォーマンスを強化する要素を加え、広範囲にわたって人間、プロセス、システムを互いに紡ぎ合わせる効果的な方法だ。また共創(Co-create)、共同実行(Co-execute)、共同運用(Co-operate)に基づくこのGarageモデルは、パンデミックがもたらしたバーチャル化した世界においても、効果を発揮することが証明されている。
企業はあらゆる場所のスキル、能力、知識を活用することで、生産性を大幅に改善することができる。またエコシステム・パートナーは、企業内の機能的な境界線を取り払うことで、イノベーションやデジタル・トランスフォーメーションに参加できるようになる。
この手法においては、中核的な重点領域と戦略的な方針が強化されるだけでなく、アジャイルで機能横断的なチームが活動するためのアーキテクチャー・ルールの制定もなされる。さらにGarageには、機会を特定したり、アイディエーションや期待されるインパクトの鍵となるデータがそろっているため、エコシステム内のソリューションと接続すれば、進化を加速させることができるはずだ。
バーチャル・エンタープライズの6つの必須項目は、Garage手法によって実現し、加速させることができる。Garage手法は、総合的なトランスフォーメーション・プログラムの一環として組み込まれる拡張インテリジェント・ワークフローとも適合する。この手法を通じて、以下の6つの項目が可能となる。
戦略策定の基礎となる戦略的意図や、ビジネス・プラットフォームのデザインの中に、エコシステムが生み出す機会を織り込み、デジタル・トランスフォーメーションを加速させる原動力とする。
科学とデータ主導のアプローチで革新を進め、ワークフローやプラットフォーム、さらにはエコシステム全体の進化を促す。
インテリジェント・ワークフローを拡張し、テクノロジーが誘発するビジネス・トランスフォーメーションという「差別化をもたらすゴールデン・スレッド」を創出する。
SDGs(持続可能な開発目標)達成のために、チームの目標やエンゲージメントを改善しつつ、実効性ある戦略策定を通じて、現在の最重要課題を解決する。
インテリジェント・ワークフローを充実させ、顧客体験・従業員体験の向上のために試行・検証を継続できるよう、バーチャル・ワーカーに権限委譲を行う。
ハイブリッドクラウドとネットワークを介して、変革プログラムの実施を加速させ、プラットフォーム、エコシステム、そして拡張ワークフローを成長させる。