人材領域でも IBM Watson が活躍している。Watson は IBM が展開するコグニティブ・コンピューティング・システムだ。コグニティブ・コンピューティングとは、人工知能の技術を応用した仕組みのこと。自然言語など非構造データの洞察を得意としており、最近だと医療現場で大量の文献を読み込んだ Watson が、患者の病名を特定したことで注目を集めた。
株式会社フォーラムエンジニアリングが展開する「Insight Matching」は、Watson のテクノロジーを活用した人材マッチングシステム。IT領域から自動車関連など、多岐に渡るエンジニアが約5000人登録している。
なぜ人材領域で Watson が必要なのか。そしてどのように Watson を活用しているのかを紹介しよう。
従来の人材マッチングサービスの悩み
従来の人材マッチングサービスは
- クライアント企業からの要望を詳細にヒアリング
- 人材コンサルタントが膨大なデータから適正のある人材を複数に絞る
- そこからより適していそうな人材を企業に提案し最終的な契約に繋げる
といった流れが主流だった。クライアント企業とエンジニアへのヒアリング後、実際にエンジニアを複数に絞り、最終的に面接を経て契約という流れだ。膨大な量のデータベースから人力で候補を見極める必要があり、非常に時間かかるとフォーラムエンジニアリングの松波 宏紀(まつなみ・ひろき)取締役は話す。
課題となるのは時間的コストだけではない。エンジニアのスキルや性格、嗜好は人材コンサルタントが判断するため、どうしても適正を見抜くスキルをテクノロジーでは補えなかった。
Watson は、従来の人材マッチングサービスが抱える「時間的コスト」と「属人的なスキル」の問題をクリアし、公平性や正確性を保ちながら、よりスピーディーな人材マッチングを可能にした。
IBM Watson は人材マッチングサービスの課題をこう解決する
「Insight Matching」では、実際にユーザーとテキストチャット形式で対話する。履歴書のみでは知ることが難しかった趣味や性格などの人間的な側面も分析し、独自のアルゴリズムを用いて適正を数値化する。
この図はあるエンジニアのスコアリンググラフ。例えば、設計士を募集する企業があったとする。その企業にとって適合性の高いエンジニアを提案する際に、エンジニアとの対話から得た情報をそれぞれ数値で表す。
具体的には、数値上では電話営業のスキルが35点だったとしても、設計士を募集する企業の事業領域とのスキルやモチベーションにおける適合性が90点なので、クライアント企業とエンジニアの適合性は 70点。エンジニアと企業の適合性が十分に高いと Watson が理解し、人材コンサルタントに提案するといった仕組み。
現時点で Watson とのやり取りはテキストベースだが、将来的には音声による対話でやり取りができるようになる。
まとめ
このように IBM Watson はこれまでと比較して、公平で正確かつスピーディーな人材マッチングシステムを構築できるようになった。将来的には単なる人材マッチングシステムに留まらず、Watson を活用したプラットフォーム化の実現を人材領域で目指す。
2017年11月1日、BluemixはIBM Cloudにブランドを変更しました。 詳細はこちら