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Smarter Business

ユーザーの行動情報を企業の即戦力に! ライフログが生む次世代ビジネスの可能性

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取材・文:高柳 圭、写真:山﨑美津留

AIを活用するには大量のデータを上手に取り扱う必要がある。AIで使う「大量のデータ」というと過去の文献や画像を思い浮かべる読者も多いと思うが、スマートフォンが持つ位置情報や歩数といった運動量を記録した「行動情報データ」も重要なデータのひとつだ。その「行動情報データ」を、ライフログとしてユーザーが記録、可視化できるアプリ「SilentLog(サイレントログ)」は、日々の活動を自動で記録できるという使いやすさが人気だ。この「SilentLog」を開発した株式会社レイ・フロンティアの大柿 徹CTO(上写真、左)と田村建士CEO(同右)にアプリの開発に至ったきっかけや、ライフログという大量のデータを分析する基盤に採用したIBM Bluemixの「Spark as a Service」が、どのように開発時の課題解決や分析性能の向上に寄与したのかを聞いた。

 

スマートフォンの位置情報やセンサー活用が鍵をにぎる次世代のビジネス

——レイ・フロンティアがどのようなビジネスをされているか教えてください。

大柿:弊社は2008年に設立しました。この年は、iPhoneが発売された時期です。当時、携帯電話にはGPSが搭載され始めていましたが、他にもさまざまなセンサー機能などが組み込まれたスマートフォンを目にして、これからの時代は位置情報やスマホを使った事業がカギになると確信したのが会社を立ち上げたきっかけです。

位置情報を使ったサービスを展開したいという思いがあり、現在はAR(拡張現実)を取り込んだ製品も展開していますが、それも位置情報の技術を可視化して提供できないかと思案して生まれたものです。

——位置情報やセンサーデータを活用したサービス「SilentLog」と「SilentLog Analytics」を提供していますね。

大柿:「SilentLog」はiPhone(※現在iOSにのみ対応)を持って歩くだけで、アプリを立ち上げることなく、GPS情報からユーザーの情報を分析、可視化してくれるライフログアプリです。移動にかかった歩数や撮影した写真などと一緒に、時間軸に沿って見ることができます。「SilentLog Analytics」は、ユーザーの移動手段や移動した経路、歩数といった行動情報をAIを使ってリアルタイムで記録・分析するプログラムです。

現在は「SilentLog」で得たデータを「SilentLog Analytics」で分析することで、さまざまな分野の新しいソリューションにつなげる試みも行っています。

 

「ライフログアプリ」が生み出す情報資源

——具体的にどのようなソリューションを作っているのでしょうか。

田村:株式会社イードが運営するマイカー燃費管理サービス「e燃費」との連携など、複数の企業様とアプリのユーザー分析などを共同で行っています。それぞれのユーザーの行動情報を弊社が整理・分析してプロファイリングし、レポートする。データの付加価値を大きくするお手伝いです。

「SilentLog Analytics」による分析から得られる知見もデータとして提供しています。例えば自動車業界では自社の特定車種の利用者がどのような人物で、どのような1日を過ごしているかメーカーが把握できていないケースが多いのですが、利用者が「車に乗っていない間」の行動パターンが見えれば、新しいサービスの提供ができるのではないでしょうか。自動車以外の業界にも言えることですが、ユーザーの行動情報から逆引き的に見込み客の創出につなげることができるのです。

——仮想ユーザー像を作るためには正確かつ大量の行動情報データを分析する必要がありますね。

大柿:充分な行動情報データを蓄積するにはユーザーに長期的に利用してもらえるサービスを作ることが必要です。しかし、AR関連のサービスはイベントなどでの短期的なものがほとんどでした。しかもスマートフォンでARアプリを使う際に「カメラをかざす」という動きが、ユーザーにとってストレスではないかと考えていました。

そこで企画されたのがライフログアプリ「SilentLog」です。スマホにインストールするだけで気軽に使え、日々の行動情報を記録できるメリットもある。これならユーザーの日常生活に溶け込み、長期的な利用をうながせると考えました。

IBM Bluemix採用の経緯を話す大柿氏

 

アプリの構築・運用で果たすIBM Bluemixの役割

——「SilentLog」の分析基盤としてIBM BluemixのSpark as a Serviceを採用していますが、どのような理由があるのでしょうか。

大柿:「SilentLog」は弊社のサーバーにアプリを通じて大量のデータが常に流入してきます。分析する際にはそこから不要なデータを消去する必要があり、分析それ自体とデータの振り分けプログラム構築に、IBM BluemixのSpark as a Serviceが活躍してくれています。

大量のデータを分析する基盤としてHadoop(大規模データの分散処理を支えるオープンソースのソフトウェアフレームワーク)を含めてさまざまな候補を探しました。

その中で、ビッグデータ分析のための並列分散処理エンジンであるSparkが、大変魅力的でした。ネイティブなHadoopをベースとした分析基盤と比べても効率性の向上が見込めました。当初は他のウェブサービス上でSpark環境を自社構築することを検討していました。自社でコードを書き、ノードを立てることはそこまで手間ではないのですが、実際に機能させようとすると初めて構築したシステムは何らかのトラブルが出るケースが多く、それを解決・調整するのに結果的に時間がかかってしまいます。

その点、Spark環境がパッケージされているIBM Bluemixなら構築にかかる手間を省き、本来の目的であるデータ分析に素早く着手できます。そして、使い慣れた開発画面で一貫して操作ができるので、作業効率も上がります(記事末尾のコラム参照)。

「SilentLog」のエンジン部分は前述の通り弊社のSDK(ソフトウェア開発キット)の形で、他社へのサービスとしても展開していますが、今後「SilentLog」を含めた全体のデータ量が増えた時にも、IBM Bluemixであれば変化に対応しやすいことが大きな利点でだと感じました。

——「SilentLog」やそのデータを活用したサービスを始め、今後の展望について聞かせてください。

Alt:これからの展望について語る田村氏

田村:「自社の製品・サービスを利用するユーザーを知りたい」という企業のニーズは今後も高まると思います。その中で、類推データやプロファイリングデータを作り、そこに仮想ユーザーを当てはめるという方法を取ることで的確なサービスの提供が可能となり、ひいては企業の競争力アップにつながると考えています。

具体的に言えば、AIが機械学習する際の教師データが作ることができれば、自動車メーカーが車に乗らない若年層に向けてアクションする際、何らかのサポートにつながるわけです。

企業が情報を扱う時に一番大切なのは「信頼」です。情報管理を徹底し、ユーザーがその製品・サービスを使うことで独自のメリットを感じてもらうのも不可欠ではないでしょうか。

大柿:今後、オフライン上のみならず、オンライン上での行動情報とも結びつけ、広い意味での「カスタマージャーニー」を設計することでユーザーにメリットを届けられるサービスを展開していきたいですね。

 

2017年11月1日、BluemixはIBM Cloudにブランドを変更しました。詳細はこちら
 

Spark as a Serviceの管理画面レイ・フロンティアで使用しているIBM Bluemix(Spark as a Service)の開発画面。ソースコード、実行結果、コメントが全て1画面で表示されている。開発者が使い慣れた開発画面で操作ができるため、開発にかかるスピードを向上できる。