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公開日:2024年9月16日
寄稿者: Camilo Quiroz-Vazquez

デバッグとは

デバッグとは、バグと呼ばれるソフトウェア・プログラムのコーディング・エラーを見つけて、隔離して、修正するプロセスです。デバッグは、コーディング・エラーの原因を明らかにし、ソフトウェアの機能上の問題を防ぎ、ソフトウェアの全体的なパフォーマンスを向上させるのに役立ちます。

論理エラー、ランタイム・エラー、構文エラー、セマンティック・エラーなどのコーディング・エラーは、クラッシュ、間違った出力または不正確な出力、セキュリティーの脆弱性、データ損失につながる可能性があります。開発者がプログラムのソースコードで、これらのエラーの影響を調査できるようにするソフトウェア・テストとは異なり、デバッグではエラーの根本原因を突き止めて、修正します。

ソフトウェア開発者は、デバッグ・プロセスを通じて根本原因分析を実行し、コンピューター・プログラムで見つかったバグを修正し、再度生じないようにします。バグはソフトウェアの安定性、信頼性、ユーザー・エクスペリエンスに悪影響を与える可能性があります。デバッグ・ツールと戦略は、デバッグ・プロセスの最適化に役立ちます。

デバッグ・プロセス

デバッグには通常、次の6つのステップが含まれます。

- 条件を再現する
- バグを見つける
- 根本原因を特定する
- バグを修正する
- 修正を検証するためのテストを行う
- プロセスを文書化する

ステップ1:条件を再現する

デバッグ・プロセスは、具体的である必要があります。エンジニアは、問題を正確に診断するために、聞きかじりの説明に頼ることはできません。したがって、デバッグ・プロセスの最初のステップは、バグが発生した条件を再現することです。バグを再現することで、プログラマーやエンジニアはエラーを直接観察して、デバッグ・プロセスを進めるために、コンテキスト・データを収集できます。

ステップ2:バグを見つける
 

次のステップは、コードを徹底的に精査して、取得可能なログを確認することで、バグの原因をできるだけ正確に特定することです。このステップでは、開発者は通常、手動で作業するのではなく、大規模なコードを簡単に検索できるデバッグ・ツールを使用します。

ステップ3:根本原因を特定する
 

開発者は、コードのロジックとフロー、またバグが発生する特定の条件下において、コードのさまざまなコンポーネントがどのように相互作用するかを調べることによって、バグの原因を特定します。

ステップ4:バグを修正する
 

このステップには通常、トラブルシューティングと問題を解消するためのコードの修正、そしてソフトウェアのリコンパイルと再実行が含まれます。最初の試みが失敗したり、意図せず新たなバグを生み出してしまう可能性があるため、この修正プロセスでは、数回の反復が必要になる場合があります。

ほとんどの開発者は、バージョン管理システムを使用して変更を追跡しているため、問題の解決になっていない変更を容易にロールバックしたり、新しい変更を行ったりできます。

ステップ5:修正を検証するためのテストを行う

バグの修正後に実施されるテストには、次があります。

  • ユニット・テスト:バグを修正するために変更した個々のコード・セグメントをテストします。
  • 統合テスト:修正したバグを含むモジュール全体をテストします。
  • システム・テスト:変更したモジュールが実行されるシステム全体をテストします。
  • 回帰テスト:修正したコードがアプリケーションのパフォーマンスに影響を与えないこと(つまり、バグを修正したことで、アプリケーションが回帰していないこと)を確認します。

ステップ6:プロセスを文書化する
 

最後のステップとして、開発者はバグの原因、修正方法、その他の関連情報など、修正プロセスの詳細を記録します。文書化は、将来的に同様のバグが発生した場合に参照できる貴重なツールです。

デバッグの例

システムが直面しているバグの種類を理解することで、ソフトウェア・エンジニアや開発者は、エラーが発生した場合に、壊れたコードを修正する適切な方法を見つけることができます。デバッグが必要な一般的なエラーの例を次に示します。

セマンティック・エラー

コーディング言語のルールに違反するコードは、セマンティック・エラーを引き起こします。間違った出力を生成する論理エラーとは異なり、セマンティック・エラーは意味のある出力を生成しません。

構文エラー

構文エラーは、開発者が括弧やカンマ、その他の入力ミスなどのコード要素を見逃した場合に発生します。文字による人間の言語では、入力ミスのある文でも理解できますが、コードの一部が欠落していると、すぐにエラーになります。

論理エラー

このタイプのバグには、技術的には正しいが、望ましくない出力を生じさせる、間違った指示がある構文が含まれます。構文は正しいため、検知が困難な場合があります。システムがすぐにクラッシュしない場合、間違ったコードの正確な場所を見つけるのに時間がかかる場合があります。

ランタイム・エラー

ランタイム・エラーは、アプリケーションの実行中または起動中に発生します。ランタイム・エラーは、アプリケーションの更新、再起動、または再インストールによって修正できる場合があります。また、より多くのメモリーを必要とするプログラムや論理エラーなどの別の種類のエラーのサインである場合もあります。

デバッグの種類

デバッグのプロセスは、困難で手間がかかる場合があります。デバッグ・プロセスに対するさまざまなアプローチを理解することで、タスクの管理をより効果的に行うことができます。

バックトラッキング 

このアプローチでは、開発者はエラーが検出された時点から逆算してバグの原因を見つけます。具体的には、問題のあるソースコードに対してプログラムが実行した手順を遡って、どこで問題が発生したかを確認します。バックトラッキングは、デバッガーと併用すると効果的です。

原因の除去

仮説型のデバッグ手法である原因の除去では、エラーの原因を推測し、それぞれの可能性を個別に検証する必要があります。このアプローチは、チームがコードとバグを取り巻く状況に精通している場合に最も効果的です。

分割統治

大規模なコードベースをデバッグする場合、チームはコード行をセグメント (関数、モジュール、クラス・メソッド、その他のテスト可能な論理区分)に分割して、それぞれを個別にテストしてエラーを特定することができます。問題のセグメントが特定されたら、それをさらに分割して、バグの原因が特定されるまでテストできます。

Printおよびログによるデバッグ

印刷とログのデバッグ戦略では、変数の値、コール・スタック、実行フロー、およびその他の関連情報を表示するために、コードにprintステートメントまたは「ログ」を追加します。このアプローチは、実行順序がプログラムの動作に影響を与える可能性がある並行システムや分散システムのデバッグに特に役立ちます。

ラバーダック・デバッグ

このアプローチでは、開発者は任意の無生物オブジェクトに対してコードを1行ずつ「説明」します。このアイデアは、コードを声に出して説明することで、開発者がそのロジック(またはその欠如)をよりよく理解し、バグをより簡単に発見できるというものです。

自動デバッグ

自動デバッグは、分析、人工知能(AI)、および機械学習アルゴリズムを利用して、デバッグ・プロセスの1つ以上のステップを自動化します。AIを搭載したデバッグ・ツールは、大量のコードをより迅速に検索してエラーを特定したり、コードの一部を絞り込んだりすることができます。

自動化されたシステムは、コード行を複製し、テストを自動化して、システムが意図したとおりに動作していることを確認できます。自動化は、新しいコードのテストと実装を加速する2つのアプローチである、継続的インテグレーション(CI)と継続的デリバリー(CD)の両方で大きな役割を果たします。

ブルートフォース・デバッグ

通常、他の方法が失敗した場合に行われるブルートフォース・デバッグでは、問題の原因を特定するためにコードベース全体を一行ずつ調べていきまうs。このアプローチは時間がかかりますが、デバッグを行うエンジニアやプログラマーがコードベースに精通していない場合に、小規模なプログラムのデバッグにも役立ちます。

 

デバッグ・ツール

デバッガーは、オペレーティング・システムまたはアプリケーション開発プロセスのコーディング・エラーを特定することで、ソフトウェア開発 を最適化する高度なツールとAPIです。デバッガーは、大規模で成長しているビジネスを表しています。コンピューターやモバイルのアプリケーションとプログラムが進化し続けている状況を考えると、世界のデバッガー市場が2020年代の終わりまでに大幅に成長すると予測されていることに驚くことはありません。1

多くの企業は、高度なデバッグ・ツール(コードをデバッグできるAIチャットボットなど)の開発に数百万ドルを投資しており2、大学の研究者もビデオゲームを自律的にデバッグできるツール3やドメイン固有のプログラミング言語4をデバッグできるツールを開発しています。

ツールやテクノロジーの機能は大きく異なりますが、基本的にはすべて、組織がバグの問題を発見して修正するのに役立つコマンドライン・インターフェイスを提供します。また、ほとんどの場合、リモート・デバッグ機能やチュートリアルが用意されており、初心者にも親しみやすいソフトウェアとなっています。

デバッグ・ツールの例としては、次のようなものがあります。

統合開発環境(IDE)

IDEは、コンピューター・プログラマーにソフトウェア開発のための包括的な機能を提供します。Visual Studio、Eclipse、PyCharmなどの多くのIDEには、「デバッグモード」が付属しています。これらの組み込みデバッグ・ツールにより、開発者は行ごとにコードを実行したり(ステップ・デバッグ)、指定した時点(ブレーク・ポイント)でプログラムの実行を停止したり、任意の時点で変数とメモリーの状態を検査したりすることができます。

IDEは、 Java 、Python、JavaScript、TypeScriptなどのさまざまなプログラミング言語やPHPなどのスクリプト言語と互換性のあるオープンソース・プラグインとしても利用できます。

スタンドアロン・デバッガー

GNU Debugger(GDB)などのスタンドアロン・デバッガーは、条件付きブレーク・ポイントやウォッチ・ポイントなどの高度なデバッグ機能を提供します。また、プログラマーがプログラムを逆方向に実行する逆デバッグも容易になります。IDEやその他の開発者ツールに組み込まれたデバッガーよりも強力で多用途である傾向がありますが、ユーザーの学習曲線が急勾配であり、より多くの技術的専門知識を必要とします。

ロギング・ユーティリティー

これらのツールは、コードのさまざまな時点でプログラムの状態を記録する方法を提供します。その後、ログを分析して、異常や問題のあるパターンを見つけることができます。ロギングは、対話型デバッグが不可能である可能性がある実稼働環境で発生するバグの問題に対処するのに役立ちます。

静的コード・アナライザー

静的コード解析ツールは、コードを実行せずに分析し、潜在的なエラーを探し、バグやコーディング基準からの逸脱を修正します。これらのツールは(インタプリタやコンパイラーのように)構文に焦点を当てるのではなく、ソースコードの意味を分析するため、開発者はよくあるプログラミングのミスを検出し、一貫したコーディング・スタイルを適用できます。

動的解析ツール

基本的に、静的コード・アナライザーとは逆に、動的解析ツールは、実行中のソフトウェアを監視し、リソース・リークや同時実行性の問題などの問題を検出します。このツールは、メモリー・リークやバッファー・オーバーフローなど、静的解析では見逃される可能性のあるバグを発見するのに役立ちます。

パフォーマンス・プロファイラー
 

開発者はパフォーマンス・プロファイラーを使用して、コード内のパフォーマンスのボトルネックを特定できます。これらのシステムは、CPU使用率、メモリー使用率、IOオペレーションを測定し、低速で非効率なオペレーションを特定するのに役立ちます。

デバッグとテストの違い

テストとデバッグは、新しいコードの開発における補完的なプロセスです。結果は異なりますが、テストとデバッグはどちらもエラーのないコードを作成ために行われます。

ソフトウェア開発者はテストを行うことで、バグが発生したときにシステムに何が起こるかを理解することができます。これらのテストは、システムがいつ障害を起こしたか、またその障害がソフトウェアに与える可能性のある影響を知るのに役立ちます。自動テストを使用することで、新しいコードに対して継続的にテストを実行し、さまざまなシナリオに対する洞察を得ることができます。テストはソフトウェア開発の重要な部分ではありますが、エラーが発生した理由を説明するものではありません。

デバッグ戦略とツールは、開発者がエラーの根本原因を見つけて修正し、文書化して再発を防ぐために使用するものです。デバッグとテストを併用することで、チームはコードを開発し、より優れたソフトウェア製品を作成するための合理的なアプローチを構築することができます。

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脚注

1 "Global software debugging market analysis [2023-2030," Benzinga, 5 September 2022
2 "Google’s Bard AI chatbot can now generate and debug code," TechCrunch+, 12 April 2023
3 "Autonomously debugging video games." University of Southern California-Viterbi School of Engineering, 5 April 2023
4 "An easier way to get bugs out of programming languages," MIT News, 7 April 2023