対話型AIとは
対話型AIの仕組みや、それがサービス提供者とお客様をどのように結びつけ企業にとって役立つのかをご紹介します。
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対話型AIとは

対話型人工知能(AI)とは、ユーザーと対話することができる、 チャットボット仮想エージェントなどの技術のことを指します。これらの技術は大容量データ、機械学習自然言語処理を使用し、発話やテキスト入力を認識し、複数の言語の間で翻訳・通訳を行うなどして、人間の意思疎通を模倣することができます。また近年、生成AIの登場により複雑な問い合わせを理解し強化された体験が進んでいます。

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IBMは、2023年Gartner Magic Quadrantのエンタープライズ会話型AIプラットフォームのリーダーに選ばれました。
対話型AIのコンポーネント

対話型AIは自然言語処理(NLP)と機械学習の組み合わせです。これらのNLPプロセスは、AIアルゴリズムを継続的に改善する機械学習プロセスにより、定数フィードバック・ループにフローします。対話型AIは、原則のコンポーネントを有しており、それにより、ごく自然なかたちで応答を処理し、理解し、生成することができます。

機械学習(ML)は、人工知能のサブフィールドであり、一連のアルゴリズム、機能、データ・セットから構成されています。そしてこれらは、経験を積むことで、継続的に改善されていきます。入力情報による経験値が増えるにつれ、 AIプラットフォーム ・マシンは、パターンの認識がますます上達し、それを活用して予測ができるようになります。

自然言語処理とは、 機械学習の手を借りる言語分析の今日的メソッドであり、 対話AIで用いられているものです。 機械学習に先立って、言語学を起点として言語処理方法論の進化があり、それがさらに計算言語学や、統計的自然言語処理につながりました。将来的には、ディープ・ラーニングによって、 対話型AIの自然言語処理機能は、さらなる進歩を遂げることでしょう。

NLPは4つの手順からなります。入力生成、入力分析、出力生成、強化学習です。非構造化データを、コンピューターが読み取れる形式に変換することで、分析や、適切な対応の生成が可能になります。基礎となるMLアルゴリズムは、学習を重ねることで、時間の経過とともに、応答の品質を向上させていきます。NLPのこれら4つの手順をさらに詳しく解説すると、下記のようになります。

  • 入力生成:ユーザーは、Webサイトまたはアプリを通して入力を行います。入力形式は、音声かテキストのいずれかになります。
  • 入力分析:入力がテキストベースの場合、 対話型 AI ソリューションアプリは、 自然言語 理解 (NLU)を活用して、入力の意味を解読し、入力者の意図を汲み取ります。ただし入力が音声ベースの場合、データ分析には、自動音声認識(ASR)とNLUを組み合わせる必要があります。
  • 対話マネジメント:この手順では、自然言語生成(NLG)とNLPのコンポーネントが、応答を策定します。
  • 強化学習:最後に機械学習アルゴリズムを活用して、時間の経過とともに応答を洗練し、正確さを担保します。

 

新時代の到来

複雑な問い合わせを理解し人間らしい会話ができる生成AIチャットボットと音声を組み合わせて、対話による顧客体験を強化する時代が来ています。IBVによるCEOのための生成AI活用ガイドによると、経営幹部の85%が、生成AIは今後2年間で顧客と直接やり取りするようになると述べています。対話型AIと生成AIの組み合わせは急速に進んでおり、IBMでも対話型AIのwatsonx Assistantと生成AIのwatsonx.aiを連携し、検索機能やボイスボットと組み合わせることで、企業として責任ある回答が自動でできる仕組みを提供しています。

対話型AIの作成の仕組み

対話型AIがまず初めに考えることは、御社製品のユーザーになろうとしている人が、その製品とどのような対話をしたいと思うかであり、また、将来のユーザーが抱くであろう主な質問事項です。のちほど、対話型AIツールを使って、関連資料への経路指定を行うことができます。この章では、対話型AIの開発立案から作成までを一通りご案内いたします。


1.エンドユーザー向けのよくある質問(FAQ)リストを見つける

よくある質問は、対話型AI開発プロセスの基礎となるものです。このデータのおかげで、御社製品のエンド・ユーザーの主なニーズや懸念を把握することができ、その結果、ユーザーからのフィードバックを求めて、幅広く呼びかけを行う御社のサポート・チームの労力をいくらか省くことにもつながります。御社製品に関して、よくある質問リストが存在しない場合、カスタマー・サクセス・チームを立ち上げ、対話型AIでサポート可能な、適切な質問リストを策定しましょう。

いま仮に、御社が銀行だとします。よくある質問リストの最初の1問は次のようになるでしょう。

  • 自分の口座にアクセスするにはどうしたらいいですか?
  • どうやったらルーティング・ナンバーや口座番号を知ることができますか?
  • デビット・カードはいつ到着しますか?
  • デビット・カードをアクティブ化する方法は?
  • 自分の注文内容を確認する方法は?
  • 地元の銀行を打合せする方法は?

よくある質問リストには、いつでも質問を追加することができます。このためまずは、開発段階で対話型AIにとってプロトタイプといえる必要最小限の質問だけを揃えることも可能です。


2.対話型AIツールの開発という目標を目指してよくある質問を活用する

よくある質問は、ユーザーが入力によって伝えようとする目的や意図の基本形を定めるものです。口座へのアクセスなども、これにあたります。いったん大まかに目的を定めたら、watsonxAssistantなどの競争力のある対話型AIツールにそれらをプラグインすることを企図することもできます。

その状態から、ユーザーが当該情報を言い表したり問い合わせたりする方法について、対話型AIを教育する必要があります。「自分の口座にアクセスするにはどうしたらいいですか?」を例に取れば、ユーザーがサポートチームとチャットでやりとりする際に使用するかもしれない別のフレーズを検討することができます。一例としては、「ログインする方法は?」、「パスワードを初期化する方法は?」、「アカウントを割り当ててもらう方法は契約以下のための口座」、というようなフレーズです。

お客様が使うかもしれないその他のフレーズが、見当がつかない場合は、社内の分析チームやサポート・チームと提携することが推奨されます。御社のチャットボット分析ツールが適切に設定されていれば、御社の分析チームは、Webデータをマイニングし、サイト検索データから他のクエリーを調査できます。または、Webチャットの会話やコール・センターからの複写データを分析することもできます。御社の分析チームが、このタイプの分析を設定していない場合、顧客がお問い合わせの際によく使う表現については、社内のサポート・チームが貴重な情報を提供してくれるはずです。


3.目的を活用して、関連する名詞やキーワードを理解し構築する

御社の意図に関連する名詞やエンティティーについて考察しましょう。ここでは、例として、ユーザーの銀行口座について着目してきました。このため、銀行口座情報を中心にエンティティーを作成することが合理的であると言えます。

「ユーザー名」、「パスワード」、「口座番号」など、多くの値が、このカテゴリーの情報に分類される場合があります。

特定のユーザーの意図に関わるエンティティーを理解するには、ツールまたはサポート・チームから収集されたものと同じ情報を使用して、目的または意図を開発する必要があります。これらの名詞は、主な質問の前後にきます。


4.すべてを1つにまとめ、ユーザーとの有意義な対話を作成する

これらの要素がすべて連携することで、エンド・ユーザーとの会話が作成されます。マシンは、意図を手掛かりとして、ユーザーが何を求めているかを解読し、関連する応答を提供する手段として、エンティティーが機能します。たとえば、対話型AIと、パスワードを忘れたユーザーとのあいだでは、次のようなやりとりが展開することが考えられます。

ユーザーのニーズに基づいて論理的な会話フローを構築するにあたり、目的と名詞(またはIBMが意図やエンティティーとみなすもの)は、一体となって機能します。御社独自の対話型AIの構築を開始する準備がすでに整っていれば、IBMのwatsonxAssistantLiteバージョンを無料でお試しいただけます。

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対話型AI利用サービス

対話型人工知能といえば、すぐ頭に浮かぶものとして、オンライン・チャットボットや音声アシスタントがあり、お客様サポート ・サービスやオムニチャネル の展開とワンセットで考えられます。多くの 対話型AI アプリには広範な分析機能が バックエンド ・プログラムに組み込まれており、人間との会話に近い利用感を確実にするのに役立っています。

専門家の見解としては、 今日運用されている対話型AIアプリは、非常に狭い分野のタスクをこなすことに特化しているため、ごく初歩的なレベルの低いAIとみなされています。 レベルの高い発達したAIは、まだ理論上の概念に過ぎませんが、さまざまなタスクを解決し、幅広い問題を解決できる、人間の意識に近い存在を目指しています。

さばけるタスクの範囲がまだまだ狭いにもかかわらず、対話型AIは企業にとって非常に収益性の高いテクノロジーであり、企業様の収益性を向上させます。対話型AIの最も人気のある形式としてAIチャットボットを挙げることができますが、企業全体を見渡せば、他にも多くのユースケースがあり得ます。たとえば以下のような例があります。

  • オンラインのお客様サポート: オンライン・ チャットボット が人間になり代わって カスタマー・ジャーニーをサポートします。オンラインのお客様サポートは、配送などのトピックに関して、よくある質問(FAQ)に回答したり、パーソナライズされたアドバイスを提供したり、製品をクロスセルしたり、ユーザーにサイズを提案したりすることができ、Webサイトやソーシャル・メディア ・プラットフォーム全体にわたって、カスタマー・エンゲージメントについての考え方に変革をもたらしています。例としては、 仮想エージェント を備えたe-コマース ・サイトのメッセージング ・ボット、SlackやFacebookMessengerなどのメッセージング・アプリ、 仮想アシスタントや音声アシスタントが通常行っているタスクなどがあります。
  • アクセシビリティー: 特に支援技術を使用するユーザーにとっての参入障壁を低くすることで、企業様は、さらにアクセスしやすい存在になることができます。これらのグループで一般によく使用される対話型AIの機能は、テキストを音声に変換する 口述機能と言語翻訳機能です。
  • HRプロセス: 人事に関する業務は、従業員の訓練、新入社員教育、従業員情報の更新などをはじめ大きな部分を、 対話型AIを運用することで最適化を図ることができます。
  • 医療分野: 対話型AI の導入で、医療サービスの価格を手頃なものにし、患者にとってさらに利用しやすい医療を実現できるだけでなく、 運用効率 を改善し、請求処理など経営管理業務をさらに合理化することができます。
  • モノのインターネット(IoT)デバイス: Alexaスピーカーからスマート・ウォッチや携帯電話に至るまで、いまや、ほとんどのご家庭でIoTデバイスが利用されています。これらのデバイスは、自動化された 音声認識機能を使って、エンド・ユーザーと対話しています。人気を集めているアプリとしては、Amazon社のAlexa、Apple社のSiri 、Google社のHomeが挙げられます。
  • コンピューター・ソフトウェア: オフィス業務には、 Googleで何かを検索する際のオートコンプリート検索や、スペル・チェックなど、 対話型AIによって簡素化できるものが多数あります。

ほとんどのAIチャットボット やAIアプリは、現在、初歩的な問題解決スキルを備えているにすぎませんが、頻繁にある お客様サポート 事例に要する時間を節約できるため、コスト効率が向上するだけでなく、人手が解放されることで、より複雑な事例に集中することができます。全体としては、対話型AIアプリは、人間の 会話をうまく再現することができ、お客様の満足度の向上につながっています。

対話型AIがもたらすメリット

対話型AIは、多くのビジネスプロセスにとってコスト効率の高いソリューションです。 対話型AIを運用するメリットは次のとおりです。


コスト効率

カスタマー・サービス部門に人員を配置するにあたっては、特に、通常の営業時間外にお問い合わせに応えられるように体制を整えると、非常にコストがかかることがあります。対話型インターフェースを通して、お客様へのサポートを提供することで、特に中小企業では、給与と社員教育にかかるビジネス・コストを大幅に削減できます。チャットボットや仮想アシスタントは、時間帯を問わず即座に応対できるため、お客様などに対し24時間対応が行えます。

生身の人間であるスタッフとの会話では、むしろ、お客様などに対し一貫性を欠く対応が生じるおそれもあります。サポート窓口でのやりとりのほとんどは、情報を求めての相談で、反復性もあるため、企業は対話型AIをプログラムすることで、さまざまなユースケースを処理し、包括性と一貫性を確保できます。これにより、顧客体験内に一貫性が生まれるだけでなく、貴重な人手を、より複雑なお問い合わせへの対応に集中させることができます。


増加売上とカスタマー・エンゲージメント

モバイル・デバイスが消費者の日常生活に普及するにつれ、企業はエンド・ユーザーに対し、リアルタイムで情報を提供できる体制を整備する必要に迫られています。対話型AIツールは、生身の人間よりもアクセスしやすいため、お客様は、より迅速かつ頻繁にブランドと接触することができます。即応態勢の整ったサポートにより、お客様は、コール・センターで長時間待たされることもなくなり、顧客体験の全体的な向上につながります。 お客様の満足度が高まるにつれ、企業にとっては、その影響が顧客ロイヤルティーの向上に現れ、引き合いによる収益増が見られるようになります。

対話型AIのパーソナライズ機能により、チャットボットはエンド・ユーザーに推奨事項を提供できるようになり、企業はお客様が当初考えていなかった製品をクロスセルできるようになります。


拡張性

対話型AIは非常に高い拡張性を備えています。これは、新入社員を採用したり、オンボーディング・プロセスを実施するよりも、対話型AIサポート用のインフラを追加するほうが、はるかに安上がりで早く整備できるためです。これは、地理的に新たな市場に製品を売り込む場合や、休暇シーズンなど、予期しない短期の需要集中時に、特に力を発揮します。

「対話型AIをお勧めする理由」(英語)の動画を見る
対話型AI技術の課題

対話型AIは、まだ生まれて間もない段階にあり、近年になってようやく、ビジネスへの普及が始まったところです。その他の新技術が進歩を遂げる際と同じように、対話型AIアプリも、移行にあたって、まだいくつかの技術的課題を抱えています。たとえば以下のような例があります。


言語入力

言語入力は、入力形式がテキストであっても音声であっても、 対話型AIの問題点になるおそれがあります。方言、アクセント、背景の雑音が、生の入力情報を理解するAIの理解力に影響を及ぼすおそれがあります。俗語や、スクリプト言語でない言語も、入力処理で問題を引き起こすおそれがあります。

ただ 対話型AIの最大の課題は、言語入力におけるヒューマン・ファクターです。激しい感情や口調、皮肉が含まれると、ユーザーの意図するところを、 対話型AI が正しく解釈し、適切に対応することは、困難になります。


プライバシーとセキュリティー

対話型AIは、ユーザーのクエリーに回答するにあたりデータ収集に依存しているため、プライバシーやセキュリティーの侵害に対しても脆弱です。高いプライバシーとセキュリティー標準および監視システムを備えた 対話型AIアプリを開発することは、エンド・ユーザーの信頼を勝ち取るのに役立ち、最終的にはチャットボットの使用を時間の経過とともに増加させます。


ユーザーの懸念

会話の相手が人間ではなく機械であることに気付いたとき、ユーザーが特に懸念しがちなのが、個人情報や機密情報の取り扱いです。すべてのお客様がすぐに採用してくださるわけではないため、より良い顧客体験を作り出すべく、これらのテクノロジーの利点や安全性について、ターゲット・オーディエンスを啓発しソーシャル化することが重要になります。この点を疎かにすれば、 ユーザー体験 が低下し、AIのパフォーマンスも減殺されて、プラスの効果が失われるおそれがあります。

また、チャットボットが幅広いユーザーの問い合わせに答えるようにプログラムされていない場合もあります。そのような場合、的外れな応答や、中途半端な応答が提供され、エンド・ユーザーがフラストレーションを抱えることが考えられるため、より複雑なクエリーに対処できる代替のコミュニケーション・チャンネルを用意しておくことが重要となります。このような場合、お客様には、御社の窓口を務める方と意思疎通できる機会が用意されているべきです。

最後に、対話型AIは、企業のワークフローを最適化することもできるため、特定の職務に必要な労働力を削減することにつながります。これは社会経済問題に関する市民行動を引き起こし、企業側に対する反発を招くおそれもあります。

 

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