ホーム ケーススタディ Mawsons Huts Foundation テクノロジーが子供たちを南極へ
Mawson's Huts Foundation、IBM Cloud上でAIを活用した学習を開始

「南極ってどんな匂いがするの?」地球最南端の大陸について、ある子供が疑問に思い、実際に尋ねた質問です。これは、IBM® Cloud上で稼働する新しいAI学習プラットフォーム「The Antarctic Explorer 」の開発に協力している多くの子供たちが持つ疑問の1つにすぎません。

南極大陸は、子どもから大人まであらゆる世代に驚きを与えてくれます。「南極には驚くべき事実がたくさんあります」と、Mawson’s Hutsの最高経営責任者であり、南極旅行会社のオーナーであるGreg Carter氏は言います。「南極は最も寒く、最も標高が高く、最も乾燥した大陸です。正式には砂漠です。降水量は非常に少なく、何百万年もの間、雪が降ったことのない地域もあります。南極には世界の淡水供給量の90%が蓄えられているため、もし南極大陸全体が溶けたら、海面は60メートル上昇する可能性があります。」

幸運にも、この地を訪れることができた人にとって、その経験は人生を一変するものです。「南極に行ったことがある人なら誰でも言うことですが、南極はあなたを変えます。とても謙虚な気持ちになるのです」と同氏。「まさに、地球にいながらにして別の惑星にいるのに限りなく近いということですね。」

オーストラリアの地質学者であり南極探検家でもあったDouglas Mawson氏による、あまり知られていない驚くべき功績が証明しているように、南極におけるオーストラリアのルーツは深いものです。1997年、この遺産を守り続けたいという願いから、南極および南極におけるオーストラリアの歴史の保護に取り組むことを目的とした非営利団体であるMawson’s Huts財団が設立されました。

当時、Mawson氏が率いるオーストラレーシア南極探検隊が1911年から1914年にかけてベースキャンプとして使用した4棟の小屋(Mawson's Huts)は、地球上で最も風が強いといわれる東南極のデニソン岬に、ボロボロになりながらも無傷で残っていました。それから24年たった今でも、同財団とオーストラリア南極局がパートナーシップを結び、15回の大規模な保護探検に共同資金を提供したおかげで、これらの小屋はそのまま残っています。

10万人の子供たちに向けた取り組み

 

学習プラットフォームは毎年オーストラリア国内の子供たちに提供される予定です

500

 

プラットフォーム用のデータベースには、南極関連の質問に対する回答が現時点で500件以上登録されています

現在、私たちはプラットフォームの開発において素晴らしい進歩を遂げました。それは、私たちにとって大きな学習曲線でしたが、ISWはIBM® Watsonとクラウド技術を駆使して、それをまとめるという素晴らしい仕事をしてくれました。 Greg Carter 最高経営責任者 Mawson’s Huts Foundation
インスピレーションを与える教育

Mawson's Huts Foundationの目的は2つあります。その主な使命は、オーストラリアが42%の領有権を有する南極を含む、Mawsonの遺産を保護することです。「しかし、私たちは、南極大陸そのものや、手つかずの南極の環境をそのまま維持することの重要性について、子供たちやその他の人々に伝える役割も担っています。」と同氏は言います。「私にとって、次世代の科学者や世界を変えたいと願う人々にインスピレーションを与えることは、当財団において非常に大きな部分を占める使命です。」

そのため、同財団は、オーストラリアのホバートにある実物大の小屋のレプリカを展示した博物館や、地域の学校を巡回する「科学と持続可能性」バス、隔年でオーストラリアのホバートで開催される「オーストラリア南極フェスティバル」など、南極教育プログラムをいくつか提供しています。

IBMビジネス・パートナーであるISWのマネージング・ディレクター、Ian Warner氏は、同財団のリーダーからレプリカの博物館を案内してもらった際、AIを活用したインタラクティブな学習プラットフォームを作るというアイデアを思いつきました。「その後、私たちはお茶を飲みながら『AIを使えば、この体験をもう一段レベルアップできるかもしれない』と言いました」とWarner氏は振り返ります。「子供たちがMawson’s Hutsと南極について質問したときに、IBM Watsonテクノロジーを使用して、すぐに答えを返せないだろうか?」そこで、ISWと財団は協力して、そのコンセプトを実現にするための基礎を築き始めました。

AIを活用した専門知識、クラウドスケール

2020年は、プロジェクトが促進するきっかけが重なりました。ISWに適切な人材が配置され、新型コロナウイルス感染症によりリモート教育プログラムの必要性が急務となったのです。インタラクティブで視覚的に豊かな学習プラットフォームを開発する共同事業が進められ、ISW がテクノロジー部分を引き受け、同財団が基盤となるコンテンツを調達しました。

この学習プラットフォームはIBM Cloud上で動作するため、子供たちやその他の人々はどこにいてもブラウザからこの学習プラットフォームにアクセスできます。ユーザーがブラウザベースのインターフェイスを介して質問を送信すると、学習プラットフォームは、IBM watsonx Assistantが提供するAIを搭載した自然言語処理(NLP)機能を使用して質問を解釈し、IBM Cloud Object Storageに保存されている関連メディア(動画、画像、文書)から取得した情報と共に適切な回答を提供します。

より豊かな対話体験を提供するため、このプラットフォームでは、障害のある生徒がハンズフリーで利用できる、など、さまざまな目的で利用するためのオプションとしてIBM Watson Speech to TextIBM Watson Text to Speech AI機能を提供しています。

Mawson's Huts Foundationは、プラットフォームに質問と回答を寄稿している多くの専門家とのつながりがあります。「当財団は、考古学者、保存修復家、野生動物の専門家、気候学者、そして遠征に同行してくれる医療関係者など、素晴らしいネットワークを築いてきました」とCarter氏は言います。「これまでに、何千もの質問に対する500件以上の南極関連の回答をまとめてきました。」

「今まで、この情報をまとめているところはどこにもありませんでした」と彼は続けます。「情報はあちこちに散らばっています。大陸の歴史、南極における国際協力、動物とオキアミ、気候について人々を教育しすることでインスピレーションを与える。それがこのプラットフォームの大きな魅力です。」

子供たちや教師からの質問が、このコンテンツに新鮮かつ現実世界の視点を与えています。「子供たちは私たちが考えもしなかった質問をしてくることに気づきました」と同氏。「彼らは『初期の遠征では何匹のペンギンを殺さなければならなかったのか?』といった質問に対して、すぐに核心を突きたがります。『ペンギンを食べたの?どんな味がしたの?』などといった感じです。これらはすべて良い、重要な質問です。」

教室に入る

現在も、プラットフォームを構築して実装するための共同作業が盛んに行われています。「過去6ヶ月間にチームが改良を重ねた15のトピックにおいて、私たちは素晴らしい進歩を遂げています。私たちにとって、それは大きな学習曲線でした」とCarter氏は言います。「しかし、ISWは、IBM CloudとIBM Watsonテクノロジーを駆使して、それをまとめるという素晴らしい仕事をしてくれました。」

プラットフォームのベータ版に対する教師や生徒からの最初の反応は非常に好意的でした。次の段階では、子供たちからの質問をできるだけ多く取り入れ、さらにテストを実施して、プラットフォームを微調整することになります。

オーストラリアには、オーストラリアン・ナショナル・カリキュラムがありますが、各州および準州はその実施に責任を持ち、大まかなカリキュラムをより具体的な内容に変換する必要があります。Mawson’s Huts Foundationは、多くの州と協力して、教師が授業ですぐに使用できる南極関連のコンテンツを作成しています。

そのため、オーストラリアの学校で2022年度の初めに予定されているこのプラットフォームの導入前に、同氏はオーストラリアの官公庁教育プログラム部門、およびニューサウスウェールズ州とタスマニア州をはじめとするさまざまな州の教育プログラム部門から承認を得る計画を立てています。その後、同財団が学校に働きかけ、このプラットフォームを教育および学習ツールとして使用するよう要請する予定です。

リーチの拡大

すべてが計画通りに進めば、最終的にはオーストラリア国内において毎年最大10万人の子供たちが南極探検プラットフォームを利用すると同財団は予測しています。そして、このプラットフォームがオーストラリア国内で認められれば、同財団はその範囲の拡大を検討しています。

「他の国でも展開できる可能性は大いにあると思います」とCarter氏は言います。「特に南極条約の署名国や、私たちが開催しているAntarctic Festivalに参加しているすべての大使館においても他国で展開できる可能性は非常に高いです。特に南極での国際協力を考えると、各国が協力し合う姿は驚くべきことです。」

実際、すでにいくつかの組織が関心を示しています。「私はUnited Kingdom Antarctic Heritage TrustやNew Zealand Antarctic Heritage Trustとよく仕事をしています」と同氏。「彼らはAntarctic Explorerと、今後これを自国で活用していくことに非常に関心があります。」

ISWとしては、このプラットフォームが技術的および創造的な可能性をさらに広げるきっかけになりました。「同じ方法論を使用して、他の博物館や組織向けの学習プラットフォームを開発する機会があると考えています」とWarner氏は言います。「そして、IBM AIツールは確実にこれらの市場への参入を支援するための論理的な選択となるでしょう。」

プラットフォームの開発が進むにつれ、同財団は南極の山小屋を保護するという使命も継続しつづけています。Carter氏は自分が南極大陸を訪れた時の経験に基づいて、最初に伝えた「子供たちからの質問」にこう答えています。

「はい、南極には匂いがあります。特にペンギンの近くに行くと匂います。」

Mawson's Huts Foundationのロゴ
Mawson’s Huts Foundationについて

オーストラリアのシドニーに本部を置くMawson’s Huts Foundation(ibm.com外部リンク)は、Douglas Mawsonが1911年から1914年まで率いたオーストラリア南極探検隊が東南極のデニソン岬に建てた歴史的な小屋の保存に取り組む非営利団体です。1996年の設立以来、同財団はオーストラリア南極局と協力して、15回にわたる小屋の保護遠征やオーストラリアの南極遺産に関する教育プログラムに資金を提供してきました。

ISW社について

タスマニア州のバッテリー・ポイントに本社を置くISW(ibm.com外部リンク)は、非公開のクラウドおよびITサービス・プロバイダーであり、オーストラリア国内外でソリューションを展開しています。 1996年に設立された同社は、大手テクノロジー・プロバイダーの幅広いインフラおよびソフトウェア・ソリューションの認定を受けており、コンサルティングからライセンス供与、開発、導入、マネージド・サービスまで、幅広いサービスでITプロジェクトをサポートしています。

次のステップ

この記事で紹介されているIBMソリューションの詳細については、IBMの担当者またはIBM ビジネス・パートナーにお問い合わせください。

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2021 年 12 月

IBM、IBMロゴ、ibm.com、IBM Cloud、および IBM Watsonは世界の多くの国で登録された International Business Machines Corporation の商標です。その他の製品名・サービス名はIBMまたは他社の商標である可能性があります。IBM の商標の最新リストは、Web のibm.com/legal/copyright-trademarkで入手できます。

本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国であっても、特定の製品を利用できない場合があります。

記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。