人工知能(AI)を使用した価格予測の最適化

IBMにおける製品価格設定の変革
IBM Institute for Business Valueコグニティブ・エンタープライズ
時間のかかる価格見積もりや、最適とは言えない価格見積もり

製品の最適価格を予測することは、あらゆる製品販売戦略の重要な部分です。しかし、特に顧客の購買履歴、製品履歴、業界動向、インフレ率などの重要なデータと並行して数百もの製品を評価する必要がある場合、それはしばしば困難な作業になることがあります。さらに作業を複雑にするのは、データが不完全であったり、急速に変化していたりすることです。そうしたことはよくあります。

IBMの販売業者とビジネス・パートナーは、販売する製品の最適な価格を見積もるという課題に直面していました。製品販売、業界動向、交渉履歴に関する重要な履歴データへのアクセスが限られていたため、数千の顧客と何百もの製品の価格決定を行う際には、時間のかかる手作業による査定を、個人の経験に頼りつつ行わざるを得ない状況があまりにも多く、拡張性に欠けていました。このような手作業による査定は、承認プロセスの長期化にもつながり、時間通りに、高い信頼性をもって効果的に取引を成立させる能力に影響を及ぼしていました。

さらに、販売担当者が販売データや製品データを、異種のサード・パーティー・システムやレガシー・システムのデータと統合することは困難でした。また、地理的データ、ビジネス・データ、市場動向データのばらつきも、予測の精度に影響を与えました。このためIBMは、数は少ないが同様のサービスを提供し、かつ承認にかかる時間が短い企業を相手に市場で競争することが困難になっていました。

「IBMの料金体系」を示す図。
1つ減少 最適価格の適用時に必要な承認のレベル 41% クライアントによって最適価格で受け入れられる見積もり
Cognitive Pricing Analyticsソリューションは、IBMの販売業者やビジネス・パートナーが使用する見積ツールとシームレスに統合されます。ユーザーが見積もりを設定したら、ボタンをクリックするだけで、AIによる最適な価格設定を適用できます。
Sachin Shinde CIOデータサイエンティスト IBM
AIを活用した、より迅速で最適な価格設定

このビジネス上の課題を解決するために、CIO Pricing SystemsのITチーム、IBMのChief Analytics Office、およびIBM Researchは、Cognitive Pricing Analyticsソリューションを共同開発しました。これは、IBMのハードウェアおよびソフトウェア製品を販売するIBMの販売業者とビジネス・パートナーを支援するために、最適な価格予測を推奨するソリューションです。

このソリューションは、顧客の地理的な位置と購入パターンに基づいて、個々の顧客に最適な価格を推奨します。Cognitive Pricing Analyticsソリューションの設計では、機械学習(ML)モデルとIBMの事業分野全体にわたる長年の取引データを使用することで、これらのパラメーターやその他のパラメーターを考慮し、最適な価格を決定します。このデータを使用して、各Cognitive Pricing Analyticsモデルは、特定の見積もりの価格感度に寄与する要因を決定し、この値を使用して最適な価格を推奨します。

「データの規模」を示す図。
Cognitive Pricing Analyticsソリューションは、顧客の過去の購買行動を活用し、回帰ベースの機械学習モデルを使用して、製品価格戦略、通貨換算、インフレ率などの最新の市場動向を取り入れ、落札価格を推奨します。
Nitesh Garg CIOデータサイエンティスト IBM
効率の向上

Cognitive Pricing Analyticsは、販売価格設定と交渉プロセスを改善するためのデータ駆動型AIベースの価格設定モデルであり、販売ワークストリームにシームレスに統合されるように設計されています。

IBMのCIOデータサイエンティストであるSachin Shindeは、「IBMの販売業者もビジネス・パートナーも、Cognitive Pricing Analyticsの価格予測を申請すると、関連するビジネス・ルールに基づいて自動承認された、最適化された見積りが数分以内に作成されます」と説明します。推奨される最適価格は、価格予測の精度の向上と相まって、大きなビジネス価値をもたらします。価格設定チームは、承認の迅速化を可能にする最適価格を使用することで、承認に必要なプロセスを減らすことができます。IBMは、Cognitive Pricing Analyticsの使用をすべての事業部門に拡大することを検討しています。

このアプリケーションは、現在CIOで運用されているAI/MLアプリケーションの中で最高峰のものの1つと考えられており、多次元のデータ・ポイントを使用する成熟した信頼できるモデルのセットを採用しています。これにより、ハードウェアおよびソフトウェア案件の成功率に影響を与え、IBMの収益拡大に貢献しています。
Sunil Rao Cognitive Pricing Analytics、ファースト・ライン・マネージャー IBM
今後の機能強化

Cognitive Pricing Analyticsチームは、主要なAIおよびデータサイエンス・ツールとガバナンス機能によってソリューションをさらに強化し、価格設定モデルの公平性と説明可能性を監視しています。

  • 予定されている追加機能には、データについて明確で視覚的な理解を得るためのダッシュボードを備えた、共同モデル開発用のIBM Watson Studioが含まれます。Watson StudioのAutoAI機能は、特定のデータに適用する最適なモデルを決定するために、複数の組み込みモデルを自動的に評価し、最上位のモデルを迅速に推奨します。

  • Watson Studioパイプラインを活用して、ランタイム環境でのモデル・デプロイメントとIBM Watson OpenScaleによる監視のための視覚的なパイプライン構造が構築されます。

  • Watson OpenScaleには、Fairness 360キットを含むガバナンス機能が組み込まれています。OpenScaleを通じて展開および監視されるモデルは、IBM OpenPages GRC(ガバナンス、リスク、コンプライアンス)を通じてリスクも監視されるため、開発から展開までエンドツーエンドのガバナンスが確立されます。
設計の内訳を示す図

「これはまさにAIソリューションであり、当社の主力かつ標準のデータサイエンス・プラットフォームを活用しています。Cognitive Pricing Analyticsチームは、主要なAIおよびデータサイエンス・ツールを使用してソリューションをさらにモダナイズし、AIガバナンスの実現に向けてモデルの公平性と説明可能性を継続的に監視するための概念実証を完了しました。次のステップは、IBM watsonx.governance機能を活用することです」と、IBM技術理事兼データ &AI CTOであるSuj Perepaは説明しています。

IBMの8本の青色ストライプのロゴ
IBM CIO組織について

最高情報責任者(CIO)組織は、IBMの社内ITストラテジーを主導し、IBM従業員が日々の業務に使用するITソリューションの提供、保護、モダナイズ、およびサポートを担当します。CIO(最高情報責任者)ストラテジーには、企業全体でITへのアクセスを容易にし、問題解決を加速し、IBMのイノベーション・エンジンとして機能してビジネスの成長を促す適応型ITプラットフォームの構築が含まれます。

製品・サービス IBM® Watson Studio(AutoAI、Watson Pipelinesを含む) IBM Watson Machine Learning IBM Watson OpenScale IBM OpenPages
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米国で制作。2024年2月

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