AIを活用したマスターズ

オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのマスターズ・グローバル・コンテンツ・センター内には、ほとんど誰も見たことのないものがあります。ガラスの壁の後ろに設置された、幅21フィート、高さ7フィートの没入型LEDスクリーンです。この巨大なスクリーンは、世界で最も有名なゴルフコースの驚くほどリアルでインタラクティブなデジタルツインを表示するために作られており、過去9年間にマスターズで撮影された18万以上のショットの履歴データを表示でき、他に類を見ないこの伝統あるトーナメントならではのパターンと洞察を明らかにすることができます。

IBM Consultingは、マスターズの最も貴重な資産の1つであるデータを視覚化するためにこの壁を構築しました。マスターズほど選手とファンのエクスペリエンスにとってデータが重要な場所はありません。マスターズは、毎年同じコース、オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブで行われる唯一のゴルフメジャー大会です。約90年にわたり、4月初旬になると、世界最高レベルのゴルファーがゴルフ界で最も有名なゴルフホールに挑戦します。見た目より難しい12番ホールのティーショット11番ホールの危険なアプローチショット18番ホールの狭い木々に囲まれたドライブ

すべてのプレーヤーが、すべてのホールで、すべてのショットを打つと、構造化および非構造化の両方で、30以上のデータポイントが生成され、スコア、統計、ビデオ、写真、記事、略歴などが記録されます。このデータをもとに、マスターズのデジタル・エクスペリエンスはつくられます。IBMの仕事は、すべてを取得、ルーティング、処理、分析し、この膨大な量と多様なデータをマスターズ公式アプリ上で有意義な洞察に変換することです。そのためには、強力なデジタルプラットフォームが必要です。

このプラットフォームは、オープンで柔軟なハイブリッドクラウド・アーキテクチャーで構成される基盤から始まります。IBMは、マスターズのアプリケーションとワークロードを複数の場所の複数のクラウドでホストし、常に各ワークロードに最適なクラウドを選択します。そのため、チームは多くのアプリケーションをRed Hat OpenShiftプラットフォーム上で作成しており、一度作成すればどのクラウドでも実行できます。

このアーキテクチャにより、データがどこに存在していてもAIモデルがデータを操作できるようになります。そして、複数のクラウドにまたがるデータを管理する鍵となるのがIBM watsonx.dataです。データ・ストア（IBMデータレイクハウス）です。マスターデータは独自のものであり、非常に価値がありますが、そのデータはさまざまなソースと信頼できるパートナーから取得されています。watsonx.dataは、構造化または非構造化、履歴またはリアルタイム、オンプレミス、クラウド、またはエッジでのAIモデルでの使用のために、すべてを収集、キュレート、準備するように設計されています。

「Watsonx.dataはオペレーション全体にとってクリティカルです」とIBMのスポーツとエンターテインメントのパートナーシップのテクニカル・プログラム・ディレクターであるCorey Shelton氏は述べています。「AI搭載のエクスペリエンスは、それを促進するデータと同じくらい優れていることを私たちは知っています。また watsonx.dataではすべての主要なデータソースにアクセスでき、それらの入力は処理の準備ができているという確信が得られます。」

データが準備されると、AIモデルが面倒な作業の多くを行います。たとえば、AIは、すべてのラウンド後に、すべてのプレイヤーに対して「3分でラウンド」のハイライトリールを即座に数百回作成します。高速かつ効率的なIBM Graniteモデルは、20,000以上のショットの音声ナレーションとHole Insightsを生成するのに役立ちます。そして、IBM Consultingチームは、IBM watsonx Code Assistantを使用して開発プロセスの加速、自然言語のプロンプトに基づくコード生成、既存コードの分析、開発者間のより良いコラボレーションを促進しています。

全体の運用がスムーズに実行されるように、IBMはIBM Instana Observabilityを使用してITオペレーションの重要な側面を自動化しています。マスターズ・デジタル・プラットフォーム全体でクリティカルなアプリケーションの性能を常に監視することで、複雑さを管理し、コストを削減、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。問題が発生した瞬間に、チームにアラートが届きます。また、多くの場合、問題を自動的に解決できます。そして、マルチクラウド、オンプレミス、またはアプリケーションが存在する場所など、複雑な環境全体でそれを実現します。

IBMのスポーツ＆エンターテインメント・パートナーシップ担当IBM Marketingプログラム・ディレクターのKristi Kolski氏は、「この同じ方式が世界中のIBMのお客様とも行われているのを目の当たりにしています。」と語っています。「ビジネスのためのデータとAIの力をよく知りたいとお考えの場合は、マスターズ・アプリをしばらくの間使ってみてほしいです」

マスターズは、貴重な独自のデータと専用のAIモデルを組み合わせることで、ゴルフのデジタル・エクスペリエンスを再定義しています。しかし、それは単なるスポーツの話ではありません。これは、エンタープライズグレードのAIが実際に動作している様子を示すショーケースです。このマスターズ・デジタル・プラットフォームは、組織が独自のデータを活用してクライアント向けのイノベーションを実現し、クラウド環境全体にAIソリューションを拡張し、AIを使用して生産性を高め、価値実現までの時間を短縮する方法を示しています。それは40フィートのバーディー・パットより優れています。

1934年以来、マスターズはゴルフ史上最高の瞬間の舞台に何度もなっています。満開のツツジ、そびえ立つ松、開花するハナミズキに囲まれた4月の第1週は、ゴルフとスポーツならではのステージの到来を告げます。4日間、72ホールにわたって、メジャー・チャンピオンシップ・ゴルフ最小のフィールドで、グリーン・ジャケット獲得のチャンスとマスターズの歴史に残る地位をかけて競います。Magnolia Laneを歩いたり、Amen Cornerを散策したりして、これまでにないマスターズ・トーナメントを象徴する伝統、瞬間、歴史を探ってみましょう。