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Smarter Business

第四北越銀行がSalesforceで住宅ローンの一連の手続きを「マイページ」に構築

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小野 謙太郎氏

小野 謙太郎氏
株式会社第四北越銀行
事業開発企画部 副部長 

1999年4月入行。2012年2月に本部所属となり、約12年間にわたり住宅ローン・無担保ローンの推進企画に従事。現在DX推進プロジェクトの一員として、マイページ開発の推進企画・事務企画・システム企画に携わる。

 

野中 康宏氏

野中 康宏氏
株式会社第四北越銀行
総合企画部 上席調査役 

2013年よりTSUBASA基幹系システムへの移行、2017年より銀行合併に伴うシステム統合のプロジェクトを牽引。2021年より構造改革・DX推進の統括部門に所属し、レガシーとクラウド、対面と非対面のベストミックスを推進。

 

照井 康真

照井 康真
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部 CXデリバリー
マネージング・コンサルタント 

約20年間のアジャイル開発、Salesforce導入コンサルティングを経て、2020年IBM入社。リードコンサルタントとして、基幹システムをはじめとする周辺システムとの連携を活かしたSalesforceソリューションによるDXを推進。

 

小柳 唯史氏

小柳 唯史氏
株式会社第四北越銀行
事業開発企画部
調査役
 

 

小幡 祐太氏

小幡 祐太氏
株式会社第四北越銀行
システム部
主任調査役
 

 

田覺 賢幸氏

田覺 賢幸氏
株式会社第四北越銀行
事業開発企画部
主任調査役
 

 

前田 宙樹氏

前田 宙樹氏
株式会社第四北越銀行
システム部
調査役
 

 

沖 順子

沖 順子
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部 CXデリバリー
アソシエイト・パートナー

新潟県を中心に営業活動を展開する株式会社第四北越銀行(以下、第四北越銀行)では、住宅ローンにかかわる各種手続きをお客様がいつでもどこでもWebで行える新たなチャネルとして「マイページ」を構築しました。Salesforceプラットフォームの活用により、行員も手続き状況をリアルタイムに確認できるなど進捗管理も強化され、事務処理時間を大幅に削減しています。構築の狙いや導入後の効果について、同行開発チームの皆様と開発推進をサポートした日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、IBM)のコンサルティングチームに話を聞きました。

住宅ローンの一連の手続きをマイページに構築し、利便性を向上

第四北越銀行は2023年4月、住宅ローンの仮申し込みから契約までの一連の手続きができる個人向けWebサービス「マイページ」の提供を開始しました。これにより、お客様は時間や場所を気にすることなく、住宅ローンの手続きをWebから行うことができるようになりました。
住宅ローンの申し込みに関しては、多くの金融機関でも事前申し込みや契約手続きを電子化、Web化していますが、団体信用生命保険の申し込みや書類による正式申込など、来店が必要な部分が残っています。今回同行ではこれらの手続きについてもWeb対応を実現しました。


図:一部Web導入だった従前(左)とマイページ構築後(右)の手続き
出典:株式会社第四北越銀行様資料をもとに作成

開発責任者である同行事業開発企画部副部長の小野謙太郎氏は、住宅ローン手続きの全てを電子化できた要因の一つとして、同行の電子契約の比率が以前から高かった点を挙げ、「入力項目の簡素化や不動産・住宅会社への周知、CMなどの告知活動によって、もともと事前申し込みの62%、契約の88%が電子化されていました。これは他行に比べても非常に高い数字で、優位性がありました」と話します。

インタビュー時の様子

こうしたWeb対応、電子契約が受け入れられている状況を基に、“申し込みから契約後フォローまでWebで完結”するための検討を2022年3月に開始しました。各社からの提案があった中で、第四北越銀行は実現のパートナーとしてIBMを選定します。「知見に基づいた技術的な支援に加え、一歩踏み込んだ提案をしてくれるという期待がありました」とPMOとしてシステム側からプロジェクトに参加した小幡祐太氏。開発は同年8月にスタートし、Salesforceプラットフォームを活用して、アジャイル手法を取り入れることで、8カ月後の2023年4月にはサービスの提供が開始されました。

事務を効率化した分、お客様のライフスタイルに合った提案の時間に

マイページの開発に当たって同行が最も注力したのは、お客様と行員が双方向でコミュニケーションできるようにすることでした。プロジェクト全体のコーディネート役を務めた総合企画部上席調査役の野中康宏氏は「地域の金融機関として住宅ローンという大きなライフイベントに寄り添い、安心感と信頼感を提供することを目指しました」と話します。

インタビュー時の様子

業務の担当者として開発プロジェクトに参加した田覺賢幸氏も「一人ひとりのライフスタイルに合った提案ができるのが、地銀の存在意義だと考えています。申し込んで終わりではなく、お客様の話を聞いて最適なご提案をするために、非対面の便利さと対面の良さを併せ持ったサービスを作っていきました」と振り返ります。

コミュニケーションのために活用されたのが、Salesforce Experience Cloudです。お客様は事前の確認事項などをマイページで確認できるだけでなく、担当者宛に質問事項などをメッセージとして送ることができます。一方、担当者側からも「資料をご確認いただけましたか」とお客様に問いかけることができます。Salesforceの利用に際しては、最小限の利用者で最大の効果を狙うため、行員の利用者を集約するとともに社内のCRMシステムと連携。実施した行動やアクションをCRMシステムに反映させて、行内のメンバー全員で情報共有できる仕組みを実現しました。

標準機能を駆使してカスタマイズを回避

今回の開発プロジェクトのもう一つの特徴は、徹底してカスタマイズを避けて、必要とする機能を標準機能の範囲で実現したことです。野中氏は「Salesforceは定期的にバージョンアップを行うため、追加費用やその都度の対応が必要になると聞いていました。プロジェクト当初からノンカスタマイズを徹底しようというポリシーをチームメンバー全員で共有し、知恵を出し合いながら進めました」と話します。

例えば、第四北越銀行が実現したい機能のイメージをExcelシートなどで表現して渡し、IBMはそれをいかに標準機能で実装するかを検討していくというかたちで開発を進めました。標準機能を活用した実装を行うことにより開発期間を短縮し、さらにSalesforceのバージョンアップに伴う追加コストの発生も防ぐことができました。ビジネス・アーキテクトとしてプロジェクトに現場の意見を反映させる役割を担った小柳唯史氏は「こんな要望が通るのかなと思うようなことでも、IBMは素早く解決策を示してくれました。時にはミーティング中に画面を作り替えてくれることもあったくらいです」と驚きを口にします。

また、チームメンバーにとってクラウドを使った大規模開発は初めてのことでした。「当初はCRMや基幹系システム等の社内システムとの連携にも不安がありましたが、IBMが技術的な支援や実証実験の機会を提供してくれたことで実現できました」と小幡氏。

Salesforceに精通し、今回リードコンサルタントという立場で加わったIBMの照井康真は、「以前からメインフレームでIBMをご利用いただいていた経緯もあり、第四北越銀行様はIBMメンバーの能力を理解した上でチームのポテンシャルを最大限に引き出してくださいました。共に多くの議論を重ねた結果、新しいものを作り上げることができました」と振り返ります。

インタビュー時の様子

困難に挑み続ける中で、ベンダーから真のパートナーに

今回の開発はアジャイル型のアプローチを採用し、開発現場でコミュニケーションを取りながら進められました。週3回のペースでミーティングを開き、第四北越銀行のメンバーとIBMのメンバーがスクラムを組んで開発に当たりました。

「Salesforceの使用は経験がなかったため、まさに手探り状態でした。こちらの要望に対して、経験豊富なIBMならではのアイデアを得たり、他社の事例を教えてもらったりしたことが、プロジェクトの成功につながったと思います」とプロジェクト・マネージャー役を務めた前田宙樹氏は語ります。

プロジェクトのIBM側の責任者である沖順子は「第四北越銀行様は大変協力的で、このプロジェクトをより良いものにするにはどうすべきかを一緒に考えてくださいました。お互い良い関係で進められたプロジェクトになりました」と話します。

スクラムを組んで困難に挑み続ける中でお互いの関係にも変化が生まれました。小野氏は「プロジェクトの前は、IBMのことを単にシステムを調達してくれるITベンダーの一社として見ていましたが、今はパートナーとしての信頼関係ができたと思います」と語ります。

進捗管理システムの基本パッケージとして他行にも提案していきたい

第四北越銀行の「マイページ」イメージ

今回開発された住宅ローンの一連のWebによる手続きは、2023年10月末時点で既に全体の87%を占めるまでに利用されています。お客様に利便性を提供できるようになっただけでなく、銀行内の業務にも良い変化をもたらしています。

「これまで2時間以上かかっていた申し込み手続きが1時間程度でできるようになり、残りの時間をクロスセルなどご提案やコンサルティングに割り当てることができるようになりました」と小野氏は効果を語ります。

同行では今回の開発をマイページ構想という同行のDXの1次フェーズに位置付けています。今後は帳票の電子交付や火災保険の申し込み手続き、住宅業者ポータルの導入、普通預金新規口座開設などの取り込みも想定しています。その際もできる限り標準機能によるノーコード/ローコードで取り組んでいく予定です。

小野氏は「今回開発したマイページや進捗管理システムの基本パッケージは他行でも活用できると思います。自社での開発はコストも手間もかかります。工数を削減するためにも今回のシステム導入をぜひ検討してもらいたいですね」と話します。同行の取り組みが他の地銀の底上げにつながることが期待されています。