「クオンタムアドバンテージ」とは、現在の”古典”コンピューターの性能よりも優位性を持つことを、特定のユースケースにて明確に示せるようになることを指す。「優位性」とは、量子コンピューティングが次のいずれかの状態に到達することを意味する。
– 古典コンピューティングよりも、計算処理能力が数百倍から数千倍高速となる
– 古典コンピューターに比べ、計算に必要なメモリーがごくわずかとなる
– 古典コンピューターでは現在実現不可能な計算処理が可能となる
量子コンピューティングの計算能力を高めるための取り組みが勢いを増している今、クオンタムアドバンテージの達成は近い。現在は、IBMが「クオンタムレディ(Quantum Ready)」と呼ぶ段階にある。この段階の目標は、将来実現される量子コンピューティングのこれまでにない計算能力をお客様が活用できるようにすることである。現在のシステムにて実行できる程度の小規模な将来のユースケースに資する実験(実機での検証)を行うことで、重要な洞察の創出は既に可能である。
テクノロジーが進歩するにつれ、業界のアプリケーション開発者はこれらのユースケースの適用範囲を広げ、量子コンピューティングを利用した事業優位性を獲得するようになるだろう。
この先20年間で、フライト数は2倍になり、運航の複雑さが増すと予想されている。将来、量子コンピューティングは、航空会社が抱える複雑なビジネス課題を解決するうえで重要な役割を果たすことが期待される。また、主に計算速度の向上、データ主導型のアクション(分類・予測)の精度向上、古典コンピューティングでは解決が困難とされている課題に対応可能な新たなアルゴリズムおよびシステムの確立により、新たなビジネスチャンスが創出される。本レポートでは、航空会社が運航状況を最適化し、顧客体験を向上させるうえで、クオンタムアドバンテージが大きな変革をもたらし得る3つのユースケースを紹介する。
著者について
Lynn Kesterson-Townes, Global Cloud & Quantum Leader, IBM Institute for Business Value, IBM ConsultingSteven Peterson, Global Thought Leader, IBM Institute for Business Value
Dr. Imed Othmani, Industry Partner, Quantum Industry & Technical Services Systems, IBM Quantum
Yannis Gounaris, Global Leader, Airlines, IBM Travel & Transportation Center of Competence, IBM Consulting
Dr. Markus Ettl, Distinguished Researcher and Senior Manager, AI Marketing Research, IBM Research
発行日 2020年11月2日