ホーム保険業界

「リスク・コンシェルジュ」が変える保険の未来

先進的な保険会社は、テクノロジーを活用して、パーソナライズされたサービスやより合理的な顧客体験を提供します。

保険会社では何年にもわたり、デジタル・トランスフォーメーション(DX)をただの「ペーパーレス化」と同義に捉えることが珍しくなかった。本来のDXとは、データとプロセスの完全デジタル化を進め、自社とエコシステムのパートナーで使われるシステムにインテリジェント・ワークフローを展開することである。こうした「真の」DXに取り組んでいると回答した保険会社の経営層は、パンデミック2年前の2018年には12%に過ぎなかったが、2022年までに64%へ跳ね上がる見込みで、この変化には目を見張るものがあります。

一方、保険会社は既存プロセスをデジタル化するだけでは不十分だとはっきり認識しており、取扱商品の多様化や新規事業への速やかな参入、顧客への助言などサービス拡充を併せて進めています。加えて、デジタル化に取り組むことで販路拡大だけでなく、まったく新しいリスク対策商品の開発が促進され、ポートフォリオ(商品・サービス構成)の多様化を進めるにつれて、コンシェルジュのような存在に変化しつつあります。つまり、さまざまなリスクの知識を豊富に備えた、頼れる存在として、提案を行うだけではなく、一人一人のリスクに合わせた個別の助言やサービスを提供します。

年間収益は新興のリスク・コンシェルジュの方が約5億ドル多い。

このように顧客体験を重視する保険会社を本レポートでは「リスク・コンシェルジュ」と呼びます。こうした保険会社が果たす役割は何か。そのためにはどういった機能が必要となるのか。そうした保険会社に顧客は何を求めるのか。その概念を明確にするため、IBVでは世界の保険会社の経営層1,000人(日本は100人)と顧客9,000人(日本は900人)以上を対象に調査を実施しました。

調査結果から、より幅広い商品・サービスを提供することは、保険会社にとって今や当たり前となりつつあることがわかりました。大半の保険会社は、車の走行距離など利用実績で保険料が決まる「利用ベース保険(UBI)」や、小規模なリスク事象(マイクロ・リスク)に対応した保険、さらに付帯リスク商品など、新タイプの商品を少なくとも試行的に手掛け始めています。「もはや商品がポイントではない。当社にとって重要なのはリスク・エクスペリエンス(体験)を顧客に提供することだ」とある役員は指摘します。

保険会社の60%は、新タイプの商品・サービスはいずれ売上額で従来型商品に並ぶと予想している。同商品に取って代わるときが来るとする回答も4分の1程度に上った。

これまでのようにお決まりの商品を売り込むだけでは、十分に強固な顧客関係を長期的に築くのは難しいと保険会社は理解しているようです。オンライン自動車保険大手のような「カテゴリー・キラー」と言われる専門業者でさえ、商品ラインアップや保険内容の多様化を急速に進めています。調査では保険会社の少なくとも60%は、新タイプの商品・サービスはいずれ売上額で従来型商品に並ぶと予想しています。同商品に取って代わるときが来るとする回答も4分の1程度に上りました。

「定番」からの脱却: 
標準的なサービスの枠を越えて、新タイプの商品を試行的に手掛け始めている保険会社は多い。

Off the beaten path: Many insurers are dabbling in nontraditional products.

* スマート・ホーム・サービスはスマートフォンなどで住宅設備を遠隔操作できるサービス
 

リスク・コンシェルジュの概念を具現化するクラウドとAI

リスク・コンシェルジュの概念を具現化するには、クラウドや人工知能(AI)、およびモノのインターネット(IoT)などのコネクテッド技術を活用した強力なアーキテクチャー基盤が必要です。これにオープン・スタンダードも組み合わせれば、保険業界を何十年も悩ませてきた技術的負債とレガシー・ロックイン(古い技術の入れ替えが困難な状態)の軽減につながります。

このため、業界をリードする保険会社は、個人のニーズに一段と寄り添ったアプローチを考案し、IT関連支出の半分以上を顧客対応のテクノロジーと機能に投資しています。こうした投資は量と質の両面で功を奏しており、成長率が最大3倍(日本では8倍)となっているほか、顧客に対する深い理解や高い顧客満足度を実現しています。

保険会社がどのようにテクノロジーを活用してポートフォリオを拡大し、進化する顧客の期待に応え、競合他社を凌駕しているかについて、ぜひレポートをダウンロードして詳細をご覧ください。


このレポートをブックマークする


著者について

Noel Garry

Connect with author:


, Global Insurance, Europe & AP Partner Lead and Global Offering Manager, IBM Insurance Platforms


Mark McLaughlin

Connect with author:


, General Manager, Insurance, IBM Technology Global Sales


Christian Bieck

Connect with author:


, Europe Leader & Global Research Leader, Insurance, IBM Institute for Business Value

発行日 2021年11月1日

その他のおすすめ