シミュレーション

線型回帰などの予測モデルでは、結果や目標値を予測するための既知の入力セットが必要になります。しかし、多くの場合、実世界のアプリケーションの入力値は不確定なものです。シミュレーションにより、予測モデルに対する入力の不確定要素を考慮し、その不確定要素を前提としてモデルのさまざまな出力結果の尤度を評価することができます。例えば、材料のコストを入力として持つ収益モデルを使用する場合、そのコストには、市場の変動による不確定性が存在します。シミュレーションを使用すると、その不確定性をモデル化し、その不確定性が収益に与える影響を判断することができます。

IBM® SPSS® Statistics のシミュレーションでは、モンテカルロ法が使用されます。不確定性の入力は、三角分布などの確率分布によってモデル化され、これらの分布から描画することにより、不確定性の入力に対するシミュレーションされた値が生成されます。既知の値を持つ入力は、その既知の値で固定されます。不確定性の入力ごとにシミュレーションされた値と、既知の入力の固定値を使用して、予測モデルが評価され、モデルの目標が計算されます。このプロセスを何度も繰り返し (通常は数万回から数十万回)、その結果として得られた目標値の分布を使用して、確率的な性質の質問に回答することができます。IBM SPSS Statistics のコンテキストでは、プロセスを繰り返すごとに、不確定性の入力に対してシミュレーションされた値、固定入力の値、およびモデルの予測目標のセットで構成されたデータの個別のケース (レコード) が生成されます。

シミュレーションする変数の確率分布を指定することで、予測モデルを使用せずにデータをシミュレーションすることもできます。生成されるデータの各ケースは、指定された変数のシミュレーションされた値のセットで構成されます。

シミュレーションを実行するには、予測モデル、不確実性の入力の確率分布、これらの入力と固定入力の値との相関などの詳細情報を指定する必要があります。シミュレーションのすべての詳細情報を指定したら、シミュレーションを実行することができます。また、必要に応じて、その指定内容をシミュレーション・プラン・ファイルに保存することができます。シミュレーション・プランは、他のユーザーと共有することができます。プランを共有しているユーザーは、それがどのように作成されたかを知らなくても、シミュレーションを実行することができます。

2 つのインターフェースを使用して、シミュレーションを操作することできます。シミュレーション・ビルダーは、シミュレーションを設計して実行するユーザー向けの高度なインターフェースです。このインターフェースには、シミュレーションの設計、シミュレーション・プラン・ファイルへの仕様の保存、出力の指定、シミュレーションの起動を行うための包括的な機能が用意されています。シミュレーションは、IBM SPSS のモデル・ファイル、またはシミュレーション・ビルダーで定義した一連のカスタム方程式に基づいて作成することができます。既存のシミュレーション・プランをシミュレーション・ビルダーに読み込み、設定を変更してシミュレーションを実行することもできます。必要に応じて、更新したプランを保存することもできます。シミュレーション・プランを持っていて、主にシミュレーションを実行するユーザーについては、よりシンプルなインターフェースが用意されています。このインターフェースを使用して設定を変更し、さまざまな条件下でシミュレーションを実行することができますが、シミュレーションを設計するための、シミュレーション・ビルダーのすべての機能が用意されているわけではありません。

シミュレーションでは次のコマンド・シンタックスが貼り付けられます。

  • SIMPLAN シミュレーション・プラン・ファイルを作成するためのコマンド・シンタックス
  • SIMRUN シミュレーションを実行するためのコマンド・シンタックス
  • SIMPREP BEGIN-SIMPREP END 一連のカスタム方程式に基づいてシミュレーションをセットアップするためのコマンド・シンタックス