目標と主要な成果(OKR)とは

机を囲んで共同作業する5人のチーム・メンバー

執筆者

Tasmiha Khan

Writer

目標と主要な成果(OKR)とは

目標と主要な成果(OKR)は、組織が測定可能な成果を伴う野心的な目標を定義し追跡するために役立つ共同の目標設定フレームワークです。この方法論は、戦略目標を具体的な行動に結び付け、チームが組織のビジョンを定量的な成果に変えることを可能にします。

組織は、OKRを目標管理フレームワークとして使用し、広範なストラテジーを具体的で測定可能な目標に変換し、進捗と説明責任を促進します。OKRフレームワークは、2つの核となるコンポーネントで構成されており、それらが連携することで成功を推進します。

目標とは、組織が達成したいことを定義する、定量的で野心的なゴールのことです。主要な成果(KR)とは、目標に向けた進捗状況を追跡するための具体的で測定可能な成果のことです。OKRを効果的に実施すれば、日常業務と組織的戦略との整合性が保たれ、透明性と説明責任が促進されます。

多くの組織は、戦略の実行とチームの調整という課題に直面しています。よく練られた戦略は実行できないことがあり、明確な目標設定やコミュニケーションは必ずしも単純ではありません。チームに明確な方向性が欠如し、日常業務を戦略目標に結びつけることができないと、実行とエンゲージメントの両方に問題が生じます。

組織には、大局的な戦略を明確で実行可能な目標に落とし込み、それを達成するためにチームが最適な方法を決定できるようにするようなフレームワークが必要です。多くの成功している組織は、このギャップを埋めるためにOKRを採用しています。OKRは、大局的なの目標を測定可能な成果に結びつけることで、チームが最も重要なことに集中し、進捗状況を可視化し、従来の業務の枠を超えて野心的な目標を達成することを支援します。OKRは、企業全体、チーム、個人のいずれのレベルで活用しても、戦略を行動に変えるために必要な明確さと整合性を生み出します。

OKRの簡単な歴史

Intel社の元CEOであるAndy Grove氏は、1970年代にOKRの概念を初めて導入しました。これは、従来の経営手法よりもIntelのビジネス・モデルに適した、成長とイノベーションための管理戦略として考案されたものです。Grove氏は、経営理論家Peter Drucker氏と、その「目標による管理(MBO)」のコンセプトから着想を得て、モデルをよりアジャイルかつ測定可能なものに調整しました。

Intel社でGrove氏の下で働いていたJohn Doerr氏が1999年にこのフレームワークをGoogle社に持ち込み、それが同社の創設者であるLarry Page氏とSergey Brin氏に受け入れられました。Google社で採用されたことで、OKRの手法は広く知られるようになり、現在では新興企業から既存企業まで業界を問わず同様に採用、実践されています。

OKRの作成方法

OKRの効果的な設定は、まずシンプルな方法から始まります。つまり、達成すべきことを明確に示す目標を1つ設定し、その進捗を測定する2~4の主な成果を定義するというものです。優れたOKRは一貫したテンプレートに基づいており、チーム・メンバーが協力して意欲的なゴールと成功に必要な具体的なマイルストーンを策定します。OKRが実践でどのように機能するかを理解することで、チームが単なるプロジェクト管理を超えて、組織全体の変革を推進できるようになります。

効果的な目標を作成する

目標は、達成したいことを定義するものです。優れた目標は、インスピレーションを与える定性的なもので、チームが有意義な変化を推進する動機付けとなる明確な目標を表しています。具体的な方法を規定するのではなく方向性を示し、成功のための最善のアプローチをチームが決定できるようにします。

効果的な目標の特徴:

  • 明確:専門用語を使わず、組織全体が理解できるシンプルな言葉を使用します

  • 実行可能:具体的な作業を指示するのではなく、達成に向けた明確な方向性を示し、意思決定や焦点の指針となります

  • 意欲的 :チームのモチベーションを高め、現状を超えた有意義な進歩を推進する、魅力的で先見性のある方向性を設定します

  • 定性的:具体的なメトリクスではなく、大きな目標を表現し、包括的なゴールに焦点を当てます

  • 整合性がある:全社的な目標と戦略をサポートし、組織の広範なビジョンに貢献します

  • 焦点を絞る:優先順位を3~5つに絞ることで明確性を保ち、努力の希薄化を防ぎます

優れた目標とは、例えば「お客様を喜ばせる優れたデジタル・エクスペリエンスを生み出す」といったものです。この目標は明確で野心的であり、重要な優先事項に焦点を当てています。対照的に、「3つの新しいデジタル機能を3つ提供する」というのは効果的な目標ではありません。あまりにも具体的で、アクティビティーに焦点を当てているため、主要な成果にする方が向いています。

効果的な主要な結果を作成する

主要な成果は、チームや組織が設定した目標に向けて進捗状況を測定する方法を定義します。定性的な目標を、望ましい結果を明確に特定するような定量的かつ検証可能な成果へと変換します。各目標には、目標が達成されたかどうかを判断するために使用する、2~4の主要な成果が必要です。

効果的な主要な成果の特徴:

  • 定量化可能:目標に向けた進捗状況を示す具体的なメトリクスで表されます

  • 測定可能:主観的な判断ではなく、信頼できるデータに基づいて、正確に追跡および検証できます

  • 結果重視:実行した活動よりも達成した成果を強調し、実行した影響を測定します

  • 期限付き:測定の対象となる明確な期限を含めることで、切迫感と説明責任を創出します

  • 挑戦的:達成できる範囲で限界を押し広げ、非現実的な期待は避けつつ高い業績を促します

  • 関連性がある:定められた目標に直接貢献し、その目標に沿うようにします

  • 限定的:焦点と管理性を保つため、主要な成果は目標ごとに2~4つに絞ります

例えば、「卓越したデジタル・エクスペリエンスを生み出す」ことが目的の場合、効果的な主要な成果としては「平均ページ読み込み時間を2秒未満に短縮」や「モバイル・アプリケーションのエンゲージメント率を80%向上」などが挙げられます。これらは、目標の達成に向けた進捗状況を明確に示すことができる、具体的な測定可能な結果です。

目標と主要な成果が効果的に連携すると、戦略的目標から測定可能な成果までの明確な見通しが得られます。チームは、何を達成しようとしているのか、そして成功がどのように測定されるのかの両方を理解できます。対照的に、「Webサイトの性能向上に取り組む」や「Webサイト最適化プロジェクトを立ち上げる」ことは、効果的な主要な成果ではありません。測定可能な成果よりも活動に焦点を当てており、具体的な成功基準が欠如しているためです。

会議室で働く人々を上から見た画像

OKRで組織を導く

従業員の力を引き出し、組織のアジリティを高めるOKR(目標と主要な成果)の策定方法を学びましょう。

OKRの種類

組織は、会社レベルの戦略目標から特定の取り組みに焦点を当てたチームのOKRまで、組織全体のさまざまな戦略的ニーズに応じて、さまざまな種類のOKRを使用します。これらの異なる種類を理解することは、新興企業から大企業に至るまで、チームが戦略計画のニーズに適したアプローチを選択するのに役立ちます。

OKRの例としては、次のようなものがあります。

コミットメント型OKR

コミットメント型OKRは、組織が達成しなければならない目標を表します。これらのOKRは通常、コア・ビジネスの機能、製品ライフサイクルのマイルストーン、および失敗が許されない重要な成果物に焦点を当てています。チームは、慎重な計画とリソースの割り当てにより、コミットメント型OKRの100%を達成することが求められます。

コミットメント型OKRの一例としては、クリティカルなシステムの性能維持に焦点を合わせたものが挙げられます。

目標:すべてのお客様に信頼性と可用性の高いプラットフォームを提供する

主要な成果:

  • システム稼働率を99.9%に維持
  • すべてのトランザクションを3秒以内に処理
  • クリティカルな問題をすべて1時間以内に解決

意欲型OKR

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意欲型OKRは「ストレッチ・ゴール」や「ムーンショット」とも呼ばれ、組織がより大きな視野で考え、より高い目標を目指すことを後押しします。こうした大胆な目標は、チームが段階的な改善を超えて全体像を把握することを促し、イノベーションと革新的な思考を推進します。意欲型OKRの成功とは、通常、目標の60~70%を達成することを意味します。これは、意欲型OKRが野心的な性質を持つためです。

意欲型OKRの一例としては、ブランドの認知度を再構築することが挙げられます。

目標:業界で最も信頼されるブランドになる

主要な成果:

  • ブラインド消費者調査で#1のブランド認知度を達成
  • メディアでの肯定的な言及を400%増加
  • ネット・プロモーター・スコアを35から85に引き上げ
  • 業界の出版物で最も引用されるソート・リーダーになる

学習型OKR

学習型OKRは、組織が新たな機会を探求したり、困難な問題を理解するしたりするために役立ちます。このOKRは、特定のビジネス成果を達成することよりも、洞察を得ることに重点を置いています。これは、新しい市場に参入したり、新しいテクノロジーを開発したり、複雑な課題に取り組んだりする場合に特に有効です。

学習型OKRとは、例えば次のようなものです。

目標:東南アジア市場への進出機会を評価する

主要な成果:

  • 5つの対象国または地域の市場分析を完了
  • 対象市場全体で200人の潜在顧客を対象にフォーカス・グループを実施
  • それぞれの国または地域の規制要件と参入障壁を文書化

トップダウン型OKRとボトムアップ型OKR

組織は、トップダウンとボトムアップのアプローチを組み合わせて、戦略的整合性とチームの自律性のバランスを取ることでメリットを得られます。これにより、組織レベルの会社のOKRから個人のOKRまで、明確な階層が作成され、従業員が個人的な貢献をより広範な戦略的目標に結び付けることができます。

トップダウン型のOKRは、経営陣が組織の明確な方向性を示す戦略的優先順位を設定して伝達することから始まります。この種のOKRは、長期的な戦略的成果に焦点を当て、さまざまなチームや部門間の連携を図ります。さらに、組織全体が共通の目標に向かって取り組み、より広範な戦略的コンテキストを理解できるように導きます。

ボトムアップ型のOKRは、チームの専門知識と直接的な経験に基づいて生まれます。このアプローチは、組織の目標に貢献するための最善な方法を判断する力をチームに与えることで、イノベーションと創造的な問題解決を可能にします。主体性と当事者意識を高め、他の方法では見逃されかねない貴重な現場の知識や洞察を活用できます。

非常に効果的な組織は、これらのアプローチの適切なバランスを見いだしています。経営陣は明確な戦略目標を設定し、チームはそのビジネス目標にどのように貢献するかを示すOKRを策定します。これによって、日々の業務を組織的戦略に結びつける、個々の目標がつながったネットワークが生まれます。

OKRとKPIの違い

OKRと主要業績評価指標(KPI)はどちらも組織の成功を測定するために役立ちますが、その目的は異なります。KPIは継続的な業績と健全性を監視し、OKRは変革と改善を推進します。これらの違いを理解することは、組織が各ツールを効果的に使用するために役立ちます。

両者の根本的な違いは、その目的と用途にあります。KPIは、重要なビジネス・オペレーションを追跡するためのメトリクスであり、確立されたベンチマークに対するパフォーマンスを測定します。例えば、サービス品質基準を維持するために、Webサイトのアップタイムやページ読み込み速度などのデジタル・プラットフォームに関連するKPIを追跡するといったことです。OKRは、野心的な目標を通じて変化と改善を推進することに重点を置いています。例えば、AIを活用したパーソナライゼーションやシームレスなクロスチャネル統合により、デジタル・エクスペリエンスを変革するといったことです。

時間枠と測定の点でも両者は異なります。KPIでは、進行中のオペレーションを監視するために継続的に追跡を行い、チームは設定された目標を一貫して達成することが期待されます。OKRは特定の期間(通常は四半期ごと)に設定されます。明確な終了日があり、野心的な目標設定を促すために、達成度が60~70%であれば成功と見なされることもよくあります。

両者の焦点は、組織における異なるニーズを反映しています。KPIは、月次収益や顧客満足度スコアなど、重要なビジネス・メトリクスや業務の健全性を測定するために使われます。OKRは、新規市場への参入やサービス提供モデルの再構築など、戦略的な変革や成長の取り組みを対象としています。KPIはビジネスのパフォーマンスを示しますが、OKRはビジネスをどのように変化させ、改善する必要があるかを定義するものです。

OKRとKPIは、包括的なパフォーマンス管理システムにおいて相互補完的な役割を果たします。KPIは改善が必要な領域を特定するために役立ち、OKRはそれらの改善を達成するために必要な変化を推進します。チームは多くの場合、関連するKPIを主要な成果に組み込み、継続的な業績メトリクスと戦略目標を明確に結び付けます。この連携により、優れた業績を維持しながら、野心的な目標をサポートできます。

OKRのメリット

OKRを効果的に導入した組織は、チームの協働のあり方や戦略目標の達成方法を変革することができます。このフレームワークは、以下の5つのメリットをもたらします。これにより、組織が戦略ををより効果的に実行できるようにすると同時に、従業員のエンゲージメントと連携が高まります。

  • フォーカス
  • アライメント
  • コミットメント
  • トラッキング
  • ストレッチ

フォーカス

OKRは、組織がリソースと意識を最も重要なことに集中させるために役立ちます。

  • すべてを一度に実行しようとするのではなく、チームを主要な優先事項に結集させる
  • 本質的でない業務を排除し、集中力を高める
  • チームが限られたリソースを影響の大きい活動に集中的に投入できるようにする
  • 戦略と日々の業務との明確なつながりを構築する
  • 非常に影響力のある活動でチームがリアルタイム・データを活用できるようにする

アライメント

OKRフレームワークは、以下によって組織の戦略と実行の間に強固な整合性を生み出します。

  • 個人およびチームの業務を会社の目標に直接結びつける
  • 共通の目標を通じて部門横断的なコラボレーションを促進する
  • チーム間の依存関係を可視化し、管理しやすくする
  • 異なるレベル間の目標を明確に関連付けることで、透明性が生まれる
  • 戦略的取り組みをチーム・レベルの実行に結びつける

コミットメント

OKRは、以下によって組織全体で目標に対する共同の当事者意識を育みます

  • 成果に対する共通の説明責任を生み出す
  • 目標達成に向けた相互のコミットメントを構築する
  • 定期的な進捗確認を通じて、一貫した実行を促す
  • 目標の達成方法をチーム自身が決定できるようにする
  • 目標設定へのボトムアップの関与を通じて主体性を高める

トラッキング

OKRフレームワークは、以下によって明確な進捗状況の追跡とデータ駆動型の意思決定を可能にします。

  • 進捗状況を透過性のある形で測定する
  • 潜在的な問題を早期に特定する
  • 自動追跡とレポートを通じて、データ駆動型のリソースに関する判断を支援する
  • 視覚的インジケーター(RAG[赤、黄、青]ステータスなど)を使用して進捗状況を評価する
  • 進捗表示を利害関係者に合わせてカスタマイズする

ストレッチング

OKRは以下によって、組織が段階的な改善を超えて前進するよう促します。

  • 有意義な変革を促す、野心的な目標を設定する
  • イノベーションと創造的なアプローチを奨励する
  • ストレッチ目標を通じて可能性を再定義する
  • 成果と学びの両方を称える文化を築く

OKRを効果的に導入することで、これらのメリットは相互に作用し、アジャイルでフォーカスの定まった組織を実現します。チームは、自分たちの業務が戦略的成功にどのように貢献しているかを理解できるようになります。このフレームワークは、大局的な戦略を測定可能な進捗に落とし込むための構造を提供するとともに、チームが最適な進め方を自律的に決定できる環境を整えます。

OKRを測定して評価する方法

効果的なOKRには、定期的な測定と追跡が不可欠です。明確なメトリクスと一貫した評価がなければ、組織は目標を達成しているかどうかを判断できず、軌道修正する必要がある箇所の特定もできません。強力な測定アプローチとは、明確に定義されたスコアリングの基準と定期的な進捗レビューを組み合わせたものです。

組織は、自らのニーズや文化に応じて、各サイクルの最後にさまざまな方法でOKRを評価します。その一般的なアプローチには、次のようなものがあります。

  • 各主要な成果が達成されたかどうかの単純なはい・いいえの評価
  • 失敗、進行中、達成を示す信号機システム(赤/黄/緑)
  • Googleが開発したOKRの数値スコアリング方式。それぞれの主要な成果に特定のパーセンテージまたは小数(0~1の間)を割り当てて進捗状況を詳細に把握し、改善の余地がある領域を特定します。

評価方法にかかわらず、成功している組織は、OKRを評価するために包括的なアプローチを採用しています。明確な基準と客観的なデータを使用してそれぞれの主要な成果を評価し、成功と失敗を文書化し、この洞察を利用して将来のOKRを改良します。チーム全体で一貫した採点を実践することにより、成功についての共通の理解を生み出し、異なるグループ間で有意義な比較を行うことができます。

評価方法と適切なアプローチの選択方法について、詳しくは「OKRの測定とスコアリング」をお読みください。

OKRの効果的な実施

OKRの手法を成功裏に実施するためには、単に良い目標と主要な成果を作成するだけでは不十分です。管理フレームワークであるOKRは、企業目標を行動に移すために、最初の展開や継続的な実行のための明確なプロセスが全社的に必要です。

組織は、 明確なプロセスを確立し、当事者意識を定義し、透明性を通じて 従業員のエンゲージメントを維持しながら、チームが効果的に実行できるようにするサポート・システムを構築する必要があります。思慮深い導入アプローチにより、組織はよくある落とし穴を回避しながら、OKRフレームワークのメリットを最大限に実現することができます。

OKRレビュー・サイクル

OKRサイクルは通常、四半期ごとに行います。サイクルは、チームが目標に対する現在の進捗状況を確認し、成功したOKRや調整が必要なOKRを分析することから始まります。それにより学んだことと変化するビジネスの優先事項を踏まえて、チームは次の四半期に向けた新しい目標を設定します。

OKRプロセスでは、四半期を通じて定期的に行う進捗確認に基づいて、チームが進捗状況を追跡し、必要な調整を行うことができます。部門や事業部レベルでの月次レビューでチームをまたいだ連携を維持し、チーム単位では毎週または隔週で進捗確認を行うことで、一貫した実行を促進し、課題を早期に顕在化させることができます。

年間計画は、より長期的な戦略目標を設定することで、この四半期ごとのサイクルを補完します。組織は多くの場合、年次目標を指針として四半期ごとのOKRを策定しており、これによりチームは年間を通じて変化する状況に適応しながら、戦略的優先事項に集中し続けることができるようになります。

OKR管理システム

現代の組織が目標を大規模に管理するには、効果的なOKRツールが必要です。多くのチームはスプレッドシートなどのシンプルなツールからOKRを始めますが、専用のOKRソフトウェア・ソリューションは進捗状況の追跡、目標間のつながりの視覚化、組織全体の整合性の維持に役立ちます。適切に設計された管理システムには、次のような機能が備わっているはずです。

  • さまざまな組織レベルにおける目標間の関係を明確に視覚化し、チームに自分たちの仕事がより広い目標にどのように貢献しているかを理解させる。

  • インタラクティブなダッシュボードにより、チームがリアルタイムで進捗状況を追跡し、潜在的なボトルネックや注意が必要な依存関係を特定できるようにする。

  • 詳細なチームレベルの追跡から大局的な戦略の概要まで、さまざまな利害関係者のニーズに対応するカスタマイズ可能な表示画面。こうした多様な視点により、誰もが適切な情報にアクセスして意思決定を行い、目標に向かって前進できるようになります。

OKRとアジャイルの実践

OKRは、実行における柔軟性を維持しながら明確な方向性を示すことで、アジャイル手法を自然に補完します。このフレームワークは、アジャイル・チームが、変化に対応する適応性を維持しながら、スプリントやインクリメントをより広範な戦略目標につなげるために役立ちます。この連携は、戦略的目標が各段階における開発の指針となる必要があるような、複雑な製品ライフサイクルを管理するチームにとって特に価値があります。

多くの組織では、OKRをアジャイルのセレモニーや成果物と紐付け、バックログの優先順位付けやスプリント計画の参考にしています。定期的なOKRの進捗確認はスプリント・レビューやレトロスペクティブと相性が良く、進捗状況を評価して調整する機会が自然に生まれます。

これらの方法論がどのように連携するかについて、詳しくは「アジャイル・トランスフォーメーションを実現するOKR 」をお読みください。

OKRのよくある間違いと解決策

よくある落とし穴を理解することは、組織がOKRの有効性を損ないかねない誤りを回避するのに役立ちます。OKRは戦略的実行を推進するための強力なフレームワークを提供しますが、特定のプラクティスはその影響を限定したり、意図せず悪影響をもたらしたりする可能性すらあります。

目標設定における間違い

  • 通常業務のような目標:有意義な変化を推進するのではなく、通常の業務を記述するだけの目標を設定すると、変革の可能性が制限されます。「現在の顧客満足度を維持する」のではなく、「業界をリードする顧客体験を提供する」など、変革を推進する目標を設定しましょう。

  • 主要な成果が測定不能:主要な成果に具体的なメトリクスや明確な成功基準が欠如している場合は、混乱を招き、客観的な評価が妨げられます。「顧客体験を向上させる」などの曖昧な記述を避け、「ネット・プロモーター・スコアを32から65に向上させる」などの測定可能な成果を設定しましょう。

  • 目標が多すぎる:一度にすべてに取り組もうとすると、集中力が薄れ、チームが困惑します。明確さを維持し、戦略目標に向けた実際の進歩を推進するために、目標を四半期あたり3~5件に抑え、それぞれに2~4件の主要な成果を設定しましょう。

  • タスク重視の主要な成果:主要な成果を結果ではなく活動のチェックリストしてしまうと、本当に重要なことが見えなくなります。「アプリの新機能を3つリリースする」などの活動ではなく、「モバイル・アプリケーションのエンゲージメントを40%向上させる」など、成果に焦点を当てるようにしましょう。

実装における間違い

  • サンドバッギング目標:成功を保証するために意図的に低い目標を設定すると、変革を推進するというOKRフレームワークの能力が損なわれます。野心的な目標の70%を達成する方が、簡単な目標を100%達成するよりも高い価値を生み出すという原則を受け入れましょう。

  • 不十分な透明性:OKRをチーム内に隠したままにすると、サイロが生まれ、整合性が減少します。OKRを組織全体に対して可視化することで、部門間の調整と知見の共有が促進されます。

  • 目標の不整合:チーム、部署、会社の目標がうまく結びついていない場合、チームの業務に食い違いが生じるリスクがあります。戦略目標に向けて協調的に進めるよう、異なるレベルのOKR間に明確なつながりを持たせましょう。

  • 責任の所在が不明確:目標に対して具体的な責任者がいない場合、進捗が停滞しがちです。各目標には、その達成を推進する権限と責任の両方を持つ担当者を割り当てましょう。

レビューのプロセスにおける間違い

  • 設定した後は忘れるという姿勢:四半期ごとの計画立案とレビューの際にのみOKRを確認するのでは、形式的な作業になってしまいます。目標を常に念頭に置き、タイムリーな軌道修正を可能にするために、定期的な進捗確認を継続しましょう。

  • 硬直的な遵守:状況の変化や新たな洞察があるにもかかわらず、当初のOKRに固執すると、俊敏性が損なわれます。定期的なレビューの機械を設け、目標や主要な成果の調整が必要かどうかを評価しましょう。

  • 進捗確認の頻度不足:定期的なレビューを怠ると、目標達成を阻害しかねない障害の早期特定が妨げられます。進捗の勢いを維持し、停滞している課題を解決するために、定期的な進捗確認の予定を立てましょう。

  • 人事評価との連動:OKRの達成度を報酬や昇進の決定に用いると、誤ったインセンティブを生み出してしまいます。意欲的な目標設定と正直なな評価を促すために、OKRと業績評価を区別しましょう。

OKRで組織を牽引

従業員の力を引き出し、組織のアジリティを高めるOKR(目標と主要な成果)の策定方法を学びましょう。

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