レガシー・アプリケーションのモダナイゼーション:ビジネスをモダナイズするための包括的なアプローチ

2台のコンピューター画面の前で作業する男性

急速に進化する今日のビジネス環境では、レガシー・アプリケーションが進歩の障壁となることがよくあります。時代遅れのテクノロジーとアーキテクチャーから成る既存のシステムは、変化するビジネス・ニーズに対応する組織の能力を妨げ、重大なセキュリティーおよび運用上のリスクをもたらす可能性があります。ペースの速い今日のビジネス業界では、競争力を維持することが不可欠であり、レガシー・アプリケーションのモダナイゼーションが真価を発揮します。

この包括的なガイドでは、ソフトウェアのモダナイゼーションの複雑さ、その重要性、導入を成功させるための戦略、潜在的な課題、新しいテクノロジーの統合について説明します。

レガシー・アプリケーションを理解する

ITの文脈では、レガシー・アプリケーションは、長期間使用されてきたシステムを指し、通常は次のような特徴があります。

  • 時代遅れのテクノロジー:レガシー・アプリケーションは多くの場合、時代遅れのテクノロジーに依存しています。このような時代遅れのテクノロジーは、最新の標準やベスト・プラクティスとの互換性がない可能性があります。
  • 非効率なパフォーマンス:これらのシステムでは、生産性を妨げる非効率性や遅い応答時間に悩まされるかもしれません。
  • セキュリティーの脆弱性:セキュリティー対策が古く、アップデートされていないため、レガシー・アプリケーションはサイバーセキュリティー脅威に対してより脆弱です。
  • 高い保守コスト:レガシー・アプリケーションの継続的な保守とサポートは、時間の経過とともにコストが増大する可能性があります。
  • 限られた拡張性:増大するニーズに対応するためにシステムを拡張することは、困難でコストが高くなる可能性があります。
  • 適応性が低い: 従来のアプリケーションは、変化するビジネス要件に簡単に適応できない可能性があるため、最新のダイナミックな組織には適していません。これは、レガシー・アプリケーションの主な問題の1つです。多くの場合、レガシー・コードに基づいて構築されているため、記述や注釈が不十分である場合があります。その結果、ナレッジのサイロ化が発生し、従業員が異動する際に組織に大きな負担をかける可能性があります。後継者には、書かれたコードを理解するのが非常に難しく、変更を加えるための進行を妨げてしまう可能性があります。

レガシー・システムのモダナイゼーションへのアプローチ

レガシー・システムのモダナイゼーションとは、時代遅れの、多くの場合モノリシックで非効率なレガシー・システムを、より現代的で効率的、かつ適応性に優れたソリューションにアップグレードまたは変換するプロセスです。堅実なアプリのモダナイゼーション戦略を策定することが成功のカギです。この戦略は、マイクロサービスの採用、レガシー・ソフトウェアのカプセル化、モダナイゼーション・ソリューションの導入のプロセスをガイドするのに役立ちます。目標は、ビジネス・プロセスを強化し、顧客体験を向上させる新しいシステムを構築することです。

マイクロサービスは、レガシー・アプリケーションをモダナイズするうえで重要なコンポーネントです。これには、大規模なモノリシック・アプリケーションを、より小さな管理しやすいコンポーネントまたはサービスに分割することが含まれます。ソフトウェア・システムの保守性を向上させるには、明確に定義された境界内で特定のデータまたはコンポーネントをカプセル化または内包するプラクティスが不可欠です。

レガシー・アプリケーションのモダナイゼーションは、多くの場合、より広範なデジタル・トランスフォーメーション・イニシアチブの一環として行われます。デジタル・トランスフォーメーションとは、デジタル・テクノロジーを活用して、新しいビジネス・プロセスと顧客体験を構築(または既存のものを修正)し、変化するビジネス要件や市場の要件を満たすプロセスです。多くの場合、事業運営と競争力を向上させるためのデジタル・テクノロジーと顧客中心のアプローチの統合が必要になります。ビジネス価値を向上させる過程では、多くの場合、効率の改善、コストの削減、競争力の向上が必要になります。

レガシー・システムをモダナイズするメリット

モダナイゼーションとは、必ずしもこれらのアプリケーションを完全に置き換えることではなく、現代のニーズと標準に合わせて活性化することです。レガシー・アプリケーションのモダナイズは、競争力と効率性を維持したいと考える組織に多くのメリットをもたらします。

  • パフォーマンスと効率の向上:モダナイゼーションにより、レガシー・アプリケーションのパフォーマンスと運用効率が大幅に向上し、応答時間が短縮され、ユーザー・エクスペリエンスが向上します。
  • セキュリティーとコンプライアンスの強化:セキュリティー対策を強化し、業界標準へのコンプライアンスを確保することは、モダナイゼーションの不可欠な要素です。これにより、セキュリティー侵害のリスクを軽減し、コストにつながるコンプライアンスの問題を回避できます。
  • ユーザー・インターフェースとユーザー・エクスペリエンス(UI/UX)の向上:モダナイゼーションには、多くの場合、ユーザー・インターフェースとユーザー・エクスペリエンスの刷新が含まれ、顧客と従業員の満足度向上に貢献します。
  • コストの削減: モダナイゼーションを通じて、保守コストを削減し、ホスティングを最適化し、世界中の従業員をよりよく活用することができます。長期的には大幅なコストの削減につながります。たとえば、旧式の在庫管理システムを数年間使用している小売企業は、コスト効率が低くなります。こういったシステムは時代遅れで遅く、スムーズに動作し続けるために定期的なメンテナンスが必要です。モダナイゼーションにより、メンテナンス・コストを削減し、プロセスを高速化して従業員の生産性が高めることができます。

アプリケーションのモダナイゼーション戦略:評価と計画

モダナイゼーションへの取り組みは、組織のアプリケーションとシステムを包括的に評価することから始まります。ここでは、現状、強み、弱み、および改善の余地のある領域を評価することが目的です。徹底的な評価が完了したら、次の重要なステップは、ビジネスの目標と目的に沿った明確なモダナイゼーション戦略を策定することです。綿密に準備することで、取り組みが集中的で、コスト効率が高く、望ましい結果をもたらすようなモダナイゼーション戦略を設計できます。

評価と計画フェーズの一環として、さまざまなモダナイゼーション方法を検討します。アプリケーションのモダナイゼーションを取り上げているIBMのトピック・ページでは、次の点を強調しています。

「アプリケーションのモダナイゼーション・プロジェクトを開始するにあたって最も重要なステップは、アプリケーションの評価です。手持ちのアプリケーションを把握することは、このようなトランスフォーメーションに着手するにあたっての最も分かりやすい方法の1つです。リストを作成したら、すべてのアプリケーションを容易さ/難易度と、モダナイズした場合の潜在的な価値の増加をx、y軸に対してプロットすることができます」

5つの主要なモダナイゼーション戦略

レガシー・アプリケーションのモダナイズ方法は、組織の特定のニーズや状況に応じて、さまざまです。選択する戦略は、アプリケーションの現在の状態、予算の制約、望ましい結果などによって異なります。一般的な戦略には、次のようなものがあります。

  1. リホスティング:リホスティングでは、既存のコードと機能の変更を最小限に抑えて、レガシー・アプリケーションを新しい環境に移行します。迅速な移行が必要な場合には適していますが、モダナイゼーションのポテンシャルを最大限に発揮できない可能性があります。コードの構造を理解することは、ソフトウェア・アプリケーションにおけるソースコードの構成と配置を理解する上で不可欠です。
  2. リファクタリング:リファクタリングは、既存のコードを再構築および最適化し、コア機能を変更することなく、パフォーマンスと保守性を向上させるプロセスです。この戦略は、アプリケーションの効率を高めるのに効果的です。
  3. プラットフォーム変換:プラットフォーム変換には、レガシー・アプリケーションを別のプラットフォームまたはインフラストラクチャーに移行させることが含まれます。パフォーマンスと拡張性の向上につながる可能性がありますが、ある程度のコードの適応が必要になります。
  4. リアークテクティング: リアークテクティングには、最新の標準を満たすためにアプリケーションのアーキテクチャーを包括的に再設計することが含まれます。多くの場合、アーキテクチャーの問題に対処しながらプロセスを効果的に管理する、段階的なアプローチが必要になります。
  5. フル・リプレース:レガシー・システムが古すぎる場合は、フル・リプレースが必要になることがあります。新たにスタートを切ることができますが、移行プロセスでは中断が生じる可能性があります。

潜在的な課題と解決策

モダナイゼーションへの道のりは組織によって異なりますが、多くのモダナイゼーションの取り組みで対処しなければならない一般的な課題がいくつかあります。

技術的負債

レガシー・アプリのモダナイズは複雑な作業になる可能性があり、技術的負債によって妨げられることもよくあります。技術的負債とは、ソフトウェア開発で使われる用語、より包括的で責任あるアプローチの代わりに、問題に対する迅速な解決策を選択することで生じる結果を指します。金融債務と同様に、短期的な利益と長期的なコストのトレードオフを表します。

技術的負債は、ソフトウェア開発者またはチームが、当面の開発目標を達成したり、期限に間に合わせるために近道をしたり、コードの品質を犠牲にするという意図的または意図的でない決定を下す際に発生します。多くの場合、システムの品質を効果的に更新するには時間がかかる場合があるためです。これらのショートカットにより、コードの品質が低下したり、必ずしも問題の根本原因に対処していない回避策になったりする可能性があります。

技術的負債に対処するためには、次のことができます。

  • 削減を優先する:保守性と適応性を高めるために、レガシー・コードを再構築し、リファクタリングすることで、レガシー・コード内の技術的負債を減らすことに注力します。
  • クラウドネイティブ・システムに移行する:クラウドネイティブ・システムに移行することで、拡張性とコスト効率が向上し、アプリケーションが将来のニーズに対応できるようになります。また、オンプレミス・ソリューションが依然として必要な場合は、より広範なクラウド移行戦略(デジタル・トランスフォーメーションの取り組みの一環としてなど)やハイブリッドクラウド・アプローチを検討することもできます。
  • DevOpsの方法論を採用する: DevOpsは、開発チームとIT運用チームの業務を自動化および統合することで、より高品質のソフトウェアの提供を迅速化するソフトウェア開発プロセスと組織文化のシフトを指します。DevOpsを実践することで、よりアジャイルかつプロアクティブに行動できるようになり、ユーザーのニーズを満たすためにソフトウェアのアップデートや新機能を一貫して展開する際に、ソフトウェア・システムが実際のシナリオでどのように機能するかについての洞察を得ることができます。

セキュリティー

セキュリティーは、モダナイゼーションの取り組みにおいて核となる考慮事項です。モダナイゼーションは、セキュリティー対策を強化し、アップデートする機会を提供します。モダナイズしたアプリケーションのセキュリティーを確保するには、セキュリティーを早期に統合することが重要です。モダナイゼーション・プロセスの初期段階からセキュリティー対策を組み込み、アプリケーションのアーキテクチャーと設計の核となる要素にします。

  • リスク評価を実施する:包括的なセキュリティー・リスク評価を実施し、モダナイゼーション時に顕在化する可能性のある潜在的な脅威を特定します。
  • 要件と期待事項を定義する:モダナイズしたアプリケーションのセキュリティー要件と期待値を明確に定義します。これには、データ保護、アクセス・コントロール、暗号化、規制遵守などが含まれる必要があります。
  • コンプライアンスを確保する:最後に、モダナイズしたシステムが関連する規制に準拠していること、およびコンプライアンスを常に最新の状態に保つための定期的なプロセスが整っていることを確認します。

将来への備え

計画の重要性は、どれほど強調してもし過ぎることはありません。包括的なロードマップを作成し、組織がどのようにアプリケーションをモダナイズし、将来にわたって現在の状態を維持するつもりかを決定します。これには、モダナイゼーション目標を達成するために必要な目的、方法論、スケジュール、リソースを含めるべきです。

モダナイズしたアプリケーションの競争力を維持し、将来に備えるには、次の点を検討してください。

  • APIを開発する:モダナイズしたシステムを既存のアプリケーションやより広範なエコシステムに接続するためのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を開発します。APIは、さまざまなソフトウェア・システム、サービス、プラットフォームの統合と相互作用を可能にします。
  • フレームワークを利用する:フレームワークとは、ソフトウェア・アプリケーションを開発するための基盤を提供する、確立されたライブラリー、ツール、規約の組み合わせです。一般的なタスクに対する既製のソリューションは、開発プロセスを最適化するのに役立ちます。
  • 先端テクノロジーを活用する:自動化、人工知能クラウド・コンピューティング、その他の先端ソリューションなどの最新テクノロジーを活用します。これには、新しい機能を備えた、モダナイズしたアプリケーションの提供や、必要に応じてシステム・インフラストラクチャー全体をアップグレードすることなどが含まれます。

全体として、ビジネスの成長を確保し、変化し続けるビジネス環境に対応するには、レガシー・アプリケーションをアップデートすることが重要です。

レガシー・アプリケーションのモダナイゼーションとIBM

ビジネスの成長を確保し、変化し続けるビジネス環境に対応するには、レガシー・アプリケーションをアップデートすることが重要です。IBM Instana ObservabilityとIBM Turbonomicは、可観測性、拡張性、パフォーマンスを最適化するように設計されたプラットフォームを提供します。

パフォーマンス・データをコンテキストに合わせて表示する、完全に自動化されたリアルタイムの可観測性プラットフォームを使用して、問題を迅速に特定し、問題の予防と修復に役立てます。Instanaは、従来のAPMソリューションの限界を超えて可観測性の活用範囲を広げ、DevOps、サイト信頼性エンジニアリング(SRE)、プラットフォーム・エンジニアリング、ITOps、開発の各部門の誰もが、必要なデータを必要なコンテキストとともに取得できるようにします。

IBM Turbonomicは、フルスタックの可視性、インテリジェントな自動化、AIを活用した洞察など、組織にメリットをもたらす機能を備えた、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドのパフォーマンスとコストを最適化するプラットフォームです。Turbonomicは、重要なアクションをリアルタイムかつ人間の介入なしで継続的に自動化し、スタックのあらゆる層で、コンピュート、ストレージ、ネットワークのリソースを最も効率的な形でアプリケーションと「縫合」します。その結果、クラウド環境へのリソースの過剰な割り当てを回避し、必要なものだけを使用することで、クラウド関連の支出が削減され、投資利益率(ROI)が向上します。

著者

Tasmiha Khan

Writer