石橋 達司、関 恭裕、森 祐之、久波 健二、出口 雅一
多くの企業がクラウドサービスの導入により業務効率化に取り組むなか、その管理負担やコストの増大が大きな課題になっています。複雑なクラウド運用における課題を解決するために、日本IBMとスカイアーチネットワークスの協業により実現したのが、エンタープライズ企業向けマネージドサービス「SKY-OPT(スカイオプト)Enterprise」です。大規模かつ複雑なAWS利用環境における「セキュリティ」「ガバナンス」「コスト効率」を同時に実現し、高度な運用基盤を提供する「SKY-OPT Enterprise」について、セミナーの様子をダイジェストでお届けします。
森:「SKY-OPT Enterprise」をご紹介する前に、まず私から「クラウドの現在地」というテーマでお話しさせてください。
2025年にIBM Institute for Business Valueが公開したレポート『The Great Tech Reset』では、“世界中の多くの企業がクラウド活用において十分な成果を挙げられていない”という調査結果が出ています。具体的には以下のとおりです。
・クラウドIT資産やサービスのうち、要求通りに機能している割合 29%
・クラウド活用プログラムでのROI 10%未満(期待値150%に対して、実際は-5%~10%)
・過去に失敗したデジタルトランスフォーメーションプログラム 84%
では、なぜ成果を上げられないのか。それには大きく3つの課題があります。
1. 深刻な「人材不足」
ひとつ目は、「人材の不足」です。クラウドを活用するためには、クラウドを使いこなす人材だけでなく、その特性を活かして「構想」「設計」「構築」ができる高度な専門人材が圧倒的に不足しています。
2. 「運用・セキュリティーリスク」の増大
ふたつ目は、「運用・セキュリティーリスクの増大」です。クラウドの普及に伴い、IT部門の承認を得ずに、従業員個人あるいは部署の判断でクラウドサービスを導入するケースが増えています。このようなIT部門が関知しない「シャドーIT(野良クラウド)」は企業の管理水準を満たさないため、セキュリティーインシデントの発生源となるリスクが高まっています。
3. 「クラウドコスト」の増加
最後の3つ目は、「クラウドコストの増加」です。従量課金や自動スケールによる利用料の予測は難しく、コスト管理が未成熟なまま運用を続けた結果、予期せぬコスト増大に悩む企業が増えています。
これらの課題を解決するために、IBMの戦略とスカイアーチネットワークスのAWS専門知見を融合させたのが、今回ご紹介する「SKY-OPT Enterprise」です。
どのようなソリューションで、どう課題を解決するのか。次のセッションで詳しくご説明しましょう。
関:では、私から「SKY-OPT Enterprise」についてご説明いたします。
「SKY-OPT Enterprise」は、先ほど森から紹介のあったクラウド活用を阻む3つの課題を包括的に解決するために、4つのコンポーネントで構成された、AWS総合クラウド・ソリューションです。AWSに特化した専門性と、大規模システムに求められる品質やガバナンスを融合させることで、エンタープライズグレードの品質を確保しながら、効率的な導入・運用を実現し、お客様のクラウド環境を全方位からあるべき姿へと導きます。
4つのコンポーネントにはそれぞれ特長があります。
1. AWSデリバリー
Amazon EC2主体への移行(マイグレーション)から、コンテナやIaC(Infrastructure as Code)を活用したシステムの最新化(モダナイゼーション)まで、設計・構築・開発を代行します。
2. AWS運用保守(MSP)
24時間365日の監視・障害対応に加え、脆弱性診断などの高度なセキュリティー運用や、ガバナンス管理を提供します。
3. 内製化支援
資格取得支援や仮想OJTなどのAWSトレーニングの提供に加え、ガイドラインや標準環境の策定を行い、お客様社内のクラウドガバナンスの確立とスキル向上を支援します。
4. AWSアカウントマネージド
専用ポータルでの申請管理やIAM発行などの「クラウド管理」、円建て請求書発行やFinOpsツール提供による「コスト最適化」、およびセキュリティーイベント検出などの「リスク管理」を一括で支援します。
「SKY-OPT」の名称は「Optimization(最適化)」に由来します。その名のとおり、ガバナンスやセキュリティーポリシーを整えたうえで基盤を導入し、最終的な運用保守までをワンストップで担うことで、統制されたクラウド環境と最適化されたコストをご提供します。
お客様との共通言語を増やし、安心してインフラ管理をお任せいただける。それが「SKY-OPT Enterprise」というAWS総合サービスです。
出口:では続いて私から、日本IBMがめざすIT運用の未来像についてお話します。複雑化したハイブリッドクラウド環境において、私たちは次の3つのコンセプトに基づいて、お客様のIT運用の高度化を推進しています。
1. ゼロオペレーション
運用を原則として自動化し、運用専任者をゼロにすることを目指すのが「ゼロオペレーション」です。 従来のような人手による定型業務をAIや自動化技術に置き換えることで、運用担当者は現状維持のための保守運用から解放されます。その結果、お客様への提供価値向上やサービス改善といった、より生産的な業務に専念できるようになります。
2. シェアード オペレーション/クラウド推進組織(CCoE)(Shared OPS/CoE)
専門性を共有するのが「シェアード オペレーション/クラウド推進組織(CCoE)」です。 高度なクラウド人材を自社だけですべて確保・維持し続けることは、コストや採用の面で非常に困難です。そこで、クラウド専門チームを「シェアード・サービス」として活用するアプローチをとります。専門チームが的確かつ迅速に対応・デリバリーを担うことで、人材不足の課題を解消しつつ、高品質なサポートを受けることが可能になります。今回ご紹介した「SKY-OPT Enterprise」は、まさにこの役割をお客様に伴走して提供するものです。
3. 業務部門への示唆
運用保守を単なる「システムの維持管理」に留めないために、「業務部門への示唆」を提供します。運用現場で得られたデータや気づきを分析し、ビジネス・チームへ積極的に改善提案(フィードバック)を行います。IBMのコンサルティング知見を活かし、ビジネスへの貢献を念頭に置いたシステムの改善や品質向上を提案するサイクルを生み出します。
出口:これらのコンセプト、特にひとつめの「ゼロオペレーション」を実現するための技術的基盤となるのが、「IBM Consulting AIOps 2.0」です。
これは、AIソリューションを活用して高度化された自律型のシステム運用を目指すフレームワークです。「SKY-OPT Enterprise」はこの技術と融合し、IT運用全体を分析・可視化するダッシュボード機能や、AIによるインシデント対応支援、予測分析などを提供します。具体的には、以下の3つの機能(Hub)を通じて、お客様のIT運用管理を総合的にサポートします。
1.Operations Hub
インシデントの一元管理や、AIを活用した対応支援、セキュリティー脆弱性の管理を行います。
2.Instrumentation Hub
各種監視ツールとの接続管理や、生成AIを活用したチケット要約などの仕組みを提供します。
3. Insights Hub
チケット(問合せ)の分析・予測や、業務KPIのダッシュボードを提供し、運用の状況を可視化します。
久波:私からは、実際に「SKY-OPT Enterprise」の導入により、これまで挙げられた課題を解決できた流通業のお客様の事例をご紹介します。まず、そのお客様は、現場のニーズに応えるため、新システムをクラウド上に順次構築していった結果、ガバナンスが効かず、セキュリティー管理が十分にできないという課題を抱えていました。人的リソースも不足しており、運用に関する整備も行き届かないという状況です。クラウド運用が進むと、それだけアカウントの数が多くなり、運用専任者の負担も増大してトラブルも起きやすくなってしまいます。
そこで、スカイアーチネットワークスと日本IBMが連携して、AWSクラウドを活用したシステム標準環境を構築。クラウド活用のガイドライン策定・運用し、両社による共通窓口・管理組織を立ち上げました。その結果、利用者の混乱が削減されただけでなく、インフラ管理業務のフロー化・手順化によって、外部委託も可能になりました。これにより、セキュアで持続可能なクラウド基盤の提供、標準環境の活用によるシステム導入・保守の生産性と運用効率の向上が実現できたのです。
この事例では、IBMとスカイアーチネットワークスの協業により、短期間でAWS環境構築とクラウド標準ガイドライン整備を実現できました。両社の融合により、AWSのリセールから利用最適化まで、お客様のビジネスをトータルにサポートする体制が整います。
石橋:スカイアーチネットワークスのAWS特化の専門性と、IBMの高いコンサルティング力・基幹系システムの業務知識。それらが融合したことで、より包括的なサービスの提供が可能になりました。とくに、IBMのAIソリューションと「SKY-OPT Enterprise」を組み合わせることで、IT人材不足が深刻化する時代においても、人手に依存しない高度なクラウド運用の自動化を実現し、お客様が本業に集中できるワンストップサービスを提供します。ハイブリッドクラウド運用で課題を抱えているお客様は、ぜひご相談ください。
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