AWSを活用し、お客様の変革を加速─IBM×スカイアーチのシナジー(2)

AWSエキスパート2名

アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)に特化し、総合的なサービスを提供するスペシャリスト集団のスカイアーチネットワークスとIBMは、今後グループ企業として緊密に連携しながら、お客様の最適なハイブリッドクラウド活用を包括的に支援していきます。本協業がいかなるシナジーを生み出し、お客様にどのような価値を提供するのか、Japan AWS Ambassadorsとして活躍する両社のAWSエキスパートが語り合いました。

AWS人材の育成でもシナジーを期待

山崎 まゆみ スカイアーチネットワークスはAWSに特化した組織として高度な専門性を備えています。IBMにも多くのAWS技術者が在籍していますが、スカイアーチネットワークスはAWSのカルチャーに、より適合した組織だと言えます。その特長と前編でご紹介したIBMのケイパビリティーにより、今後はハイブリッドクラウド領域においてお客様を包括的にご支援していくことができます。

神津 崇士 おっしゃるとおりです。例えば、AWSの総合支援領域では、スカイアーチネットワークスの約160名の専門人材とIBMのグローバルな知見を組み合わせることで、より高度なマネージド・サービスを提供できるようになります。当社が展開するAWS教育分野のサービスをお客様向けだけでなく、IBM社内のAWS人材育成にも適用することで、さらなるシナジーを生み出せるのではないかと考えています。

山崎 日本IBMではこれまで、社内のAWS人材を拡充するために、AWSの研修やeラーニングを利用してきました。スカイアーチネットワークスは、AWS認定トレーニングパートナーであるのに加えて、実践的なスキルを習得するための教育プログラムも開発しています。これらを活用して社内のAWS人材を育てていくための準備を進めています。

モダナイゼーション、AI、セキュリティーでも両社の強みを結集

山崎 お客様のモダナイゼーションの領域でも、両社の協業による相乗効果を発揮できるはずです。IT人材の不足が深刻化する中、人手に依存したモダナイゼーションはもはや現実的ではありません。生成AIをはじめとするAI技術の進化が著しい今、これらの技術を活用したモダナイゼーション支援ソリューションが求められています。前編でも触れたように、IBMはモダナイゼーションを含むシステム開発・運用をAIで自動化・効率化する「IT変革のためのAIソリューション」の提供を開始しました。今後は同ソリューションを両社で活用し、お客様のモダナイゼーションを支援していくことが考えられます。(図)

また、モダナイゼーションだけでなく、デジタル変革(DX)における生成AIの活用支援も両社が得意とするところです。IBMは自社でIBM Graniteなどの生成AI用基盤モデルを開発していますが、IBM watsonxではMetaやGoogleなどサードパーティー製の基盤モデルも利用することができます。一方、スカイアーチネットワークスはAWS上で提供される生成AIに関して豊富な知見・実績を有しています。両社の技術とノウハウを組み合わせることで、お客様に最適なAI活用をご提案できます。

神津 当社では、自動化や生成AIなどの技術を活用した次世代型マネージド・サービスの開発にも力を入れていく計画です。クラウド・インフラとAWSやIBMのAI技術をさらに高度に融合させ、お客様のDXをより強力にご支援していきます。

セキュリティーの分野では、AWSレベル1 MSSPコンピテンシー認定パートナーとしての高度な知見を生かして、包括的で堅牢なセキュリティー・ソリューションをご提供します。AWS上にシステムを構築する際、アプリケーションの機能要件が優先され、インフラなど非機能要件が後回しになりがちです。しかし、クラウドでは非機能要件に応じてアーキテクチャーが大きく変わるため、セキュリティーを含めた設計が不可欠です。これを怠ると、想定と違うシステムになってしまう恐れがあります。

さらに、コストの面でも、非機能要件を事前に固めておかなければ最終的な予算が合わなくなるケースが生じます。スカイアーチネットワークスは、AWSのセキュリティーに特化した製品の取り扱いや、セキュリティーを考慮したAWSアカウントの設計を得意とします。これらの強みをIBMのプロジェクトでも活用することで、より高いセキュリティーを備えたAWS環境をご提供できると考えています。

それぞれの得意分野を合わせてお客様を包括的に支援

山崎 加えて、今後はお客様ごとの課題に対応した個別のソリューションを提供するだけでなく、一定の汎用性を持つソリューションを用意し、スピーディーに展開していく必要性も高まっていくでしょう。そうした取り組みもぜひ一緒に進めていきたいですね。

また、両社のお客様は一部共通しているように見えますが、実は担当する業務領域が全く異なります。

神津 ご指摘のとおりです。当社はエンターテインメント業界を中心に実績を重ねていますが、中にはIBMのお客様もいらっしゃいます。ただし、当社は比較的小規模なシステムや、大量のリクエストを処理するWeb系のフロント・システムを多く手掛けています。

それに対して、IBMは基幹系などエンタープライズ領域のシステムを主に扱っています。そのため、両社が連携することで、より包括的で価値の高い提案が可能になります。日本のクラウド市場は2027年には13兆円規模に達すると予測されており、この協業は市場のニーズに的確に応える、まさにタイムリーな取り組みだと言えます。

山崎 すでに具体的なプロジェクトで協業を模索している案件もありますね。また、スカイアーチネットワークスはAWSサービスの再販も行っているため、お客様の検討の初期段階から協業することで、よりお客様のニーズに適したご提案ができるはずです。IBM社内でも、両社の協業によって実現できる新たな価値を周知し、協業のシナジーを一刻も早くお客様に届けられるよう努めていきます。

AWSのリセールから利用最適化まで、お客様をトータルにサポート

山崎 今回の対談を通じて、IBMとスカイアーチネットワークスが力を合わせることで、新たな価値を生み出し、お客様のビジネスの発展により一層貢献できると確信しました。最後に改めて、協業にかける思いをお聞かせください。

神津 IBMは高いコンサルティング力と、基幹系システムの開発・運用などを通じて得たさまざまな業界の業務知識により、お客様と強固な信頼関係を築いています。さらに、AIソリューションも豊富に有するほか、量子コンピューターなど先端分野の研究開発でも業界をリードするなど、総合力を備えたITベンダーです。一方、スカイアーチネットワークスはこれまでAWSに特化した専門性を磨き、多くのお客様から信頼を得てきました。これらの特性を融合させることで、それぞれの強みを生かしながら、お客様に対してより包括的なサービスをご提供していきたいと考えています。

山崎 私は、IBMがAWSを活用したサービスを充実させ、例えばお客様が本業に集中できるようなワンストップ・サービスを提供していくには、リセラーとしての役割が重要だと考えていました。また、AWS上でのシステム構築やモダナイゼーションなどを通じてお客様に「クラウドにして本当に良かった」と実感していただくためには、インフラのレイヤーまでトータルにカバーし、最適化する提案をしていくことが必要です。スカイアーチネットワークスとの協業を通じてお客様との関係性をさらに深め、より強いパートナーシップを育んでいきたいと思います。神津さん、本日はありがとうございました。

寄稿者

神津 崇士

株式会社スカイアーチネットワークス システムアーキテクト部 チーフテクニカルアーキテクト CCoEリーダー 2024 Japan AWS Ambassador

山崎 まゆみ

日本アイ・ビー・エム株式会社コンサルティング事業本部 AWSストラテジック・パートナーシップ シニア・アドバイザリー・テクニカルスペシャリスト/AWS CoEマネージャー 2024 Japan AWS Ambassador