ブログ概要:
IBMが、2016年に初めて量子コンピューターをクラウド上で公開した時に、インターネット接続がある人なら誰にでも本物の量子ハードウェアを無料で実験できる機会を提供したいと考えました。10年経った今も、私たちは量子コンピューティングにおけるオープンなアクセス、オープンな教育、オープンなイノベーションにコミットしており、誰でも無料でIBMの量子ハードウェアを使えるようにしています。
エントリーレベルのユーザー向けに無料で量子コンピューターへの一定アクセスを提供するIBMのQuantumオープン・プランでは、28日ごとに最大10分間の量子ランタイムを利用して世界有数の量子コンピューターで実際の実験を行えます。これは、小さな回路を動かしたり、Qiskitのチュートリアルを試したり、基本的なアルゴリズムを探求したり、簡単な量子・古典ワークフローを試したりする上で、特に学生や初心者にとっては、十分な計算時間です。
今回、研究者やその他の先進的なユーザー向けにこのサービスを拡充する、特別な一度限りのオファーを導入します。
2026年3月16日から、過去12か月間に20分の計算時間を利用したオープンプランのユーザーには、特別な一度限りの特典として、その後の12か月間に180分の計算時間が提供されます。
この180分はご自分のペースでご利用いただけます。毎月15分ずつ利用していただいてもよいですし、1日で一気に180分を使ってくださっても構いません。もちろんその中間のペース配分でもOKです。この12ヶ月期間終了後、そのユーザーは標準の10分/月の割り当てに戻り、その後はこれまでと変更ありません。
オープン・プラン(一度限りのオファー)
前提条件:
今回のオープン・アクセス拡充はこれだけではありません。計算時間の拡大に加えて、オープン・プランに利用可能な量子コンピューターに、IBM Quantum Heron r2プロセッサー ibm_kingstonを追加しました。ibm_kingstonは、これまでは有料アクセス・プランのユーザー向けに確保されていたシステムです。
ibm_kingstonはIBMの量子コンピューターの中で最高性能を持ったシステムの1台であり、最大340k CLOPS(演算実行速度の単位。circuit layer operation per second)の処理能力と、2量子ビットエラー率の中央値で2.03×10⁻³という信頼性を持っています。また、IBM Quantumのプロセッサーの中でも、実用規模の動的回路を実行できるようにアップグレードされた最初のプロセッサーの一つでもあります。
では、IBM Quantumコンピューターを10分あるいは180分実行すると何ができるのでしょうか。多くのことが可能です。実際のところ10分でも、IBM Quantum Platformで公開されているチュートリアルの3分の2以上を実行するのに十分すぎる時間です。
10分の計算時間で可能な処理
IBM量子コンピューターで10分間の実行時間があれば、量子ワークフローを学び、テストし、理解するのに十分な時間です。つまり、小さな回路を動かしたり、Qiskitのチュートリアルを実行したり、基本的なアルゴリズムを探ったり、さらには量子・古典ワークフローを試したりすることができます。
これらの例は、量子コンピューティングを始めたばかりの学習者向けのトイプロブレムのように聞こえるかもしれませんが、量子コンピューティングでは、小さな回路や基本的なアルゴリズムが大きなインパクトを持ちえます。10分の計算時間で、入門的な練習問題をはるかに超えて、私たちの最も高度なテクニックのいくつかを試し始めることができます。
例えば、動的回路を用いた長距離量子もつれのチュートリアルを実行するのに、わずか約4分の計算時間しかかかりません。この手法は、量子ビット間の接続性が限られた量子チップ上でも、遠距離に離れた量子ビットのペアを量子もつれできるようにします。この手法についての2025年のブログ記事と、それに触発された論文をぜひご覧ください。
このチュートリアルでデモされている長距離量子もつれ手法は10分以内で実行可能ですが、対応する論文で詳述された完全な実験を再現するにはかなり計算時間がかかることにご注意ください。
180分の実計算時間で可能な処理
IBM Quantumコンピューターで180分の計算時間を使えば、さらに高度なワークロードを実行でき、より野心的なプロジェクトを構想することができます。たとえば、反復的なアルゴリズムのチューニング、ハイブリッド最適化ワークフローのテスト、さまざまなエラー緩和手法のベンチマーク、さらにはドメイン固有のユースケースの探求などなどです。
たとえば、180分はHeron r2プロセッサー上でprobabilistic error amplification(PEA)を用いた実用規模のエラー緩和手法のチュートリアルを実行するのに十分な計算時間です。このチュートリアルは、量子コンピューターが正確な古典計算手法を超えて科学的価値を提供する証拠を初めて示した2023年の画期的な量子ユーティリティー実験を再現しています。
この実験の計算時間は推定16分なので、180分の割り当て時間があればこの量子ユーティリティー実験を再現するのに十分なだけでなく、そのタスクをほぼ12回実行することができます。この実験と画期的な量子ユーティリティー論文について詳しく知りたい方は、2023年のブログ記事をご覧ください。
オープン・アクセスの量子コンピューティングは、小さな回路を動かす初心者だけのものではありません。真剣に取り組む研究者であっても、IBMの量子オープン・プランから本格的な実験や概念実証の成果を引き出せるようにしたいとIBMは考えています。量子ハードウェアで180分の計算時間をあれば、それが可能です。
この拡大したアクセスを最大限に活用するために、IBM Quantum Learning上で新コース「Designing and leading quantum projects(量子プロジェクトの設計とリード)」を開始しました。このコースは、量子イニシアチブの構築の成功を支援します。このコースでは、初期段階の計画、チームの役割と責任、意義あるユースケースの特定、成功基準の定義といった重要なトピックを扱います。
特に重要な点として、新コースでは助成金申請のベストプラクティスもカバーしています。これはユーザーが今後もIBM Quantumハードウェアを最大限に活用できるようにするためのものです。高品質な研究を行うユーザーが、助成金申請支援やIBM Quantum Creditプログラムのような仕組みを利用することによって、180分の割り当てを使い切った後もその研究を継続できることをIBMは願っています。
量子優位性の最初の実現が近づく中、すべてのユーザーが前進を続けられるようにしたいとIBMは考えています。この無料アクセスの拡大は、オープンな教育、オープンな探求、オープンな科学的進歩を支援するという私たちの約束を強化しています。
すでにオープン・プランを利用していらっしゃいますでしょうか? IBM Quantum Platformにサインインして、実際の量子コンピューターで回路を動かし、オープン・プランが提供するすべての利益を享受してください。今後は、12か月間で20分の計算時間を使用すれば、新しい180分の追加を受けられるようになります。
まだオープン・プランに申し込んでいませんでしょうか?今こそ始めるには絶好のタイミングです。 こちらをクリックしてアカウントを作成し、180分のコンピューティングに向けて進み始めてみてください。
IBMは、無料アクセスの拡大、最新のハードウェア、新しい教育リソースにより、オープン・プラン・ユーザーにこれまで以上に多くの学び、探求、構築の機会を提供しています。