企業でのAI利活用が広がる今、必要なのは新しいツールを導入することだけではない。
既存のシステムやデータをどうつなぐのか。誰が、どのAIを、どのような目的で利用しているのかをどう把握するのか。特定のクラウドや製品に閉じることなく、企業全体で安全に運用するには、どのような基盤が必要なのか。
その答えは、一つの製品の中にあるわけではない。個々の技術を理解したうえで、企業がすでに持っているシステムやデータ、クラウド環境を一つのプラットフォームとして設計する力が求められる。
Linuxやオープンソースの普及から始まり、APIプラットフォーム、データ基盤、セキュリティ、AIへと事業領域を広げてきたサイオステクノロジー株式会社。同社のAPIソリューションサービスラインはIBMのビジネスパートナーとして、webMethods、HashiCorp Vault、watsonx.data、Confluentなどを組み合わせ、新たな共創の可能性を探っている。
サイオステクノロジー株式会社 執行役員で、APIソリューションサービスラインのヘッドである二瓶 司氏へのインタビューから見えてきたのは、次の3つだ。
この記事の3つのポイント
1.サイオステクノロジーのAPIソリューションはツール販売事業ではなく、プラットフォーム設計事業である
2.AI活用を広げるには、安心して挑戦できる「AIガードレール」が必要である
3.APIは単なるシステム連携ではなく、企業間パートナーシップを生み出す基盤である
二瓶 司(にへい つかさ)
サイオステクノロジー株式会社 | 執行役員 APIソリューションサービスラインヘッド
1995年、一橋大学を卒業し丸紅入社。その後、朝日アーサーアンダーセン(現PwCコンサルティング)やIT関連企業を経て、2016年にサイオステクノロジー入社。エグゼクティブマネージャー APIエコシステム、サブスクリプションサービスデザイン担当として、主にAPI関連の業務に携わる。
——まず、サイオステクノロジーがどのような会社なのか、改めて教えてください。
二瓶:
サイオステクノロジーは、もともとLinuxを中心としたオープンソースを日本に紹介し、システム開発の世界へ広げていくことを旗印にしてきた会社です。
単にシステムを構築するだけではなく、オープンソースという文化そのものを広げていこうとしてきました。IBMさんとの関係でいえば、Red Hatは今も非常に大きな柱ですね。
その一方で、約10年前からAPIプラットフォームの事業にも取り組んできました。「APIエコノミーを日本に広げる」という考え方で始めたものです。
私たちは、もともと特定のツールに強くこだわる会社ではありません。特に大手企業のお客様には、すでに長年使っているシステムや購入済みのライセンスがあります。「これを標準として使いたい」という社内の方針もある。それなら、それを前提に一番いい形を考えましょう、というのが私たちのスタンスです。
どの製品を入れるかが目的ではありません。お客様が実現したいことに対して、その製品をどう使い、全体の中にどう組み込むかが重要なんです。
——事業を始めた頃と現在では、お客様から求められることも変わっていますか。
二瓶:
大きく変わっています。
大手企業ではAPI基盤そのものの構築は一巡し、今はその基盤を使ってサービスをどう成長させ、外部パートナーやシステムと連携しながら投資対効果を高めるかという段階に移っています。基盤をつくることから、どう活用するかへと関心が移っているんです。
その流れで、DevSecOpsやAI活用を支えるデータ基盤の相談が増えています。AIに注目が集まる一方で、データをどこに蓄積し、どう流すのかという設計が十分でない企業も少なくありません。そこで私たちは、データを継続的に流し活用できるプラットフォームを設計しています。
さらに最近は、料金精算やレベニューシェア、入金消し込みなどを担う決済基盤の相談も増えています。サービスをつくるだけでなく、事業としてお金が回る仕組みまで支えてほしいというニーズです。そのために、システムやアプリケーションをつなぐwebMethods、認証情報や機密情報を守るVault、大量のデータを蓄積・活用するwatsonx.data、データを継続的かつリアルタイムに流すConfluentなどを使います。
ただし、これらの製品を単体で売りたいわけではありません。サービス全体を成立させるためのパーツとして見ています。
——VaultやConfluent、webMethodsなどを、他社ではなくサイオステクノロジーが手掛ける価値はどこにあるのでしょうか。
二瓶:
私たちの強みは、システムコンサルティングからコンセプト設計、実装、運用までをワンストップでつなげられることです。
特に、上流でシステム全体を設計できる人は、日本では本当に少ないと思います。本当の意味でゼロから全体設計ができる人材がそろっていることは、私たちのコアバリューです。
今は、きれいな正常系の設計であれば、インターネット上からかなり情報を集められます。でも、実際のシステムでは正常系だけを考えていればいいわけではありません。
大事なのは、イレギュラーなケースをどれだけ想像できるかです。この会社がこの使い方をしたら、システムはどんな振る舞いをするのか。このユーザーなら、こちらが想定していない操作をするかもしれない。そういう話は、お客様に聞いてもなかなか出てきません。まだ経験していない未来の話ですから。そうした可能性をどこまで洗い出せるかは、やはり場数がものを言います。
私たちが扱っているのは、金融や製造業などの大規模なエンタープライズ基盤です。金融ならお金が動きますし、製造業ならサプライチェーンが動きます。そこで抜け漏れがあると、大きな問題になります。
正常に動いているときだけでなく、想定外のことが起きたときにシステムがどう振る舞うか。そこまで網羅して設計し切れることが、私たちの強みだと思っています。
経験が豊富であっても、過去の知識だけでは、現在の技術環境に適したプラットフォームは設計できない。新しい技術をいち早く理解し、検証を重ね、使える選択肢として蓄積していく。サイオステクノロジーにとって、それは設計力そのものを更新する活動でもある。
——技術の変化が速い中で、どのように先進性を保っているのでしょうか。
二瓶:
APIやデータ基盤の世界は、AIの普及もあって非常に速いスピードで進化しています。だから常にキャッチアップしていないと、すぐにトップランナーから落ちてしまいます。新しい技術が出てきたら、まず自分たちで理解し、社内で検証する。それをやらなければ、お客様にも勧められません。導入するかどうかはその後の話で、まずは自分たちがきちんと理解していることが重要です。
そのうえで、その技術をどう既存のポートフォリオに組み込み、ほかの技術と組み合わせて「1+1を3や5にできるか」を考えます。
私たちは特定製品の販売会社ではなく、プラットフォームを設計する会社です。だから一つの製品の機能だけを見るのではなく、お客様の環境や設計思想にどう取り込み、システム全体として価値を発揮できるかまで考えています。インタビューに同席したIBMの担当者も、サイオステクノロジーの特徴として、新しい情報を吸収する速さを挙げた。
IBM担当者:
サイオステクノロジーさんの強みは、実績や経験だけではないと思っています。
セミナーやイベントがあれば、すぐにメンバーの方をアサインして、最新情報をキャッチアップしてくださいます。そこまで徹底して動いてくださるパートナーは、正直なかなかいません。
新しい技術を理解したうえでお客様に提案している。その点で、私たちとしても強い信頼感があります。
——サイオステクノロジーとして、これからお客様に提案していきたいテーマはありますか。
二瓶:
今、一番推進したいのはAIガードレールです。
AIは、ある意味で情報システムの民主化だと思っています。これまでシステムに直接触れる機会が少なかった総務や営業の方々も、AIを通じてシステムを使い始めています。
一方で、私たちが普段お話ししている情報システム部門や経営企画部門の方々は、「AIを使わなければいけない」と考えながらも、「事件や事故が起きたらどうしよう」と不安を抱えています。AIを使おうとは言っているけれど、後ろから心配そうに見ているような状態です。
AIガードレールは、AIを禁止したり、使える範囲をただ狭くしたりするためのものではありません。誰が、どのAIを使い、どんなデータを扱い、どのような結果を出したのかを把握しながら、安全に使える環境をつくる。そのための仕組みです。
多少新しいことに挑戦しても、大きな事故にはつながらない。ガードレールがあるから、安心して前へ進める。そんな環境を基盤として提供したいと考えています。
——AIプラットフォームの実現に、IBMはどのような価値を提供できるのでしょうか。
二瓶:
私たちは、「この製品を売りたい」ではなく、「こういうものをつくりたい」というところからIBMさんの製品を見ています。
例えば、AIと既存の業務システムやアプリケーションをつなぎ、利用の流れを管理するならwebMethodsが使える。
データベースのパスワードやAPIキーなど、システムが利用する重要な認証情報を守るならVaultがある。
企業向けのAIを開発・活用する基盤としてwatsonxがあり、大量のデータを蓄積して分析やAIに利用するデータ基盤としてwatsonx.dataがある。
さらに、発生し続けるデータをリアルタイムに届ける仕組みとしてConfluentがあります。Confluentは、クラウドやオンプレミスにまたがるデータを継続的に連携させるデータストリーミングの基盤です。
こうした技術を組み合わせることで、AIの利用状況を管理し、必要なデータを安全かつ継続的に届けるAIプラットフォームを構成できると考えています。ただ、一つのパッケージを入れれば終わり、という話ではありません。
実際のお客様の環境って、更地じゃないんですよ。
「この部署はこの製品を使っている」「海外拠点は別のクラウドで動いている」「このデータベースはまだ入れ替えられない」という状態が普通です。すでにさまざまな仕組みが入り、全体を見ると虫食いになっている。
私たちの仕事は、その現実を前提に何が足りないのかを見極め、足りないパーツを埋めながら既存の仕組みを一枚の絵につなげることです。そこが、プラットフォーム設計会社としての私たちの役割だと思っています。
二瓶:
IBMさんの製品群の良いところは、すべてを一つにまとめて、「これを全部入れてください」とゼロか100かを迫る形ではないことです。
Vaultだけを使うこともできる。webMethodsと組み合わせることもできる。必要に応じてwatsonx.dataやConfluentを加えることもできる。お客様がすでに持っている環境を前提に、足りない部分を選びながら全体の絵をつくりやすいんです。
特に大企業は、すべてを一つのハイパースケーラーに依存したいとは限りません。
グローバル企業なら、欧州と中国で同じ環境を使えるとは限らない。地域ごとにデータの扱いや規制も異なります。そのため、複数のクラウドやオンプレミスを併用しながら、全体として一貫した管理を実現する必要があります。
そのときに求められるのは、一つの環境の中だけで完結する仕組みではなく、複数の環境を横断して設計できるプラットフォームです。私たちは、そのインテグレーションを担うことができる。そして、そのために必要な技術を幅広く提供できるのがIBMさんだと考えています。
オープンで、特定の環境に閉じない。その考え方も、私たちとは相性がいいと思っています。
——ここまで、プラットフォーム設計やAIガードレールについて伺ってきました。サイオステクノロジーは、それらを通じてどのような未来を実現したいのでしょうか。
二瓶:
私たちは、ずっとAPIを通じてシステムの世界を見てきました。そこから見ると、日本には良い技術やビジネス資産がたくさんあるのに、それを使って次の成長の絵を描くことが、十分にできていないと感じます。非常にもったいないですよね。
変える必要があるのは技術だけではありません。リスクの取り方や、新しい取り組みを継続して育てていく考え方も必要です。新しいプラットフォームやエコシステムは、導入すればすぐ完成するわけではありません。使いながら、参加する企業やサービスを増やし、継続的に育てていくものです。
そして、APIは単なるシステム連携ではありません。APIというと、システムとシステムをつなぐ技術の話に聞こえます。でも、その先には必ず企業があります。
A社とB社がAPIでつながるということは、A社とB社がビジネスとしてパートナーシップを組むということなんです。私は、そこにAPIの本質があると思っています。
自社だけですべてを抱えるのではなく、ほかの企業が持つ技術やデータ、サービスを組み合わせる。そうすることで、一社だけではつくれなかったサービスやビジネスを生み出せる。
特に日本には、製造業が長年培ってきた技術やデータ、現場の知見があります。それらをAPIやデータによって新しいビジネスモデルへ組み替え、世界へ展開していく。
私たちは、その変革をシステムの側から支えたいと思っています。
サイオステクノロジーが目指しているのは、真っ白なキャンバスに、理想的なシステムを一から描くことではない。
企業には、長年使ってきたシステムがある。導入済みのクラウドやデータベースがあり、部門ごとの事情や海外拠点ごとの制約もある。その複雑な現実を否定せず、今あるものを生かしながら、足りない部分を補っていく。散在するシステムやデータをつなぎ、一つのプラットフォームへ仕立てる。その設計力を支えているのは、大規模なエンタープライズシステムで蓄積してきた経験と、新しい技術を学び、検証し続ける姿勢だ。
AI活用が企業全体へ広がるほど、必要になるのはAIそのものだけではない。安心して利用するためのAIガードレールと、それを支えるセキュリティ、データ基盤、システム連携、運用管理が求められる。
そして、そのプラットフォームが企業の外へひらかれたとき、APIは単なるデータの通り道ではなくなる。企業同士が互いの資産を持ち寄り、新しいサービスをともにつくるための接点になる。
私たちが売るのは最適なプラットフォームをデザインする技術力。ツールはソリューションを実現する手段にすぎない。
安心して挑戦できる環境があってこそ、AIの導入は加速する。
システムをつないだ先の、企業間の連携まで見据える。
この3つを一本の線で結ぶことが、サイオステクノロジーとIBMによる次の共創テーマなのだ。
サイオステクノロジーは、サイオス株式会社を持株会社とするサイオスグループの中核事業会社として、クラウド・AI等の先端テクノロジーを活用したソフトウェア製品の開発・販売および高度なシステムインテグレーションサービスの提供を通じて、企業のデジタルトランスフォーメーションを支えています。
「世界中の人々のために、不可能を可能に。」をミッションステートメントに、グループの総力を結集し、AI時代の新たな価値創造をリードしていきます。
詳細情報については、https://sios.jp/ をご覧ください。