IBM Zの耐量子セキュリティー

量子コンピューティングが今後もたらす脅威から機密データを保護
IBM Zの耐量子セキュリティーの線画イラスト

IBM® Zの耐量子セキュリティーは、今後の量子コンピューターの脅威からデータを保護できるように設計された暗号化手法を採用しています。

IBM z16プラットフォームが搭載している耐量子セキュリティーは、従来型のコンピューターと量子コンピューターの両方の攻撃を防御する暗号化手法を採用しており、データの長期的な安全性を確保できます。量子コンピューティングが進化する中で、従来の暗号化はリスクにさらされる可能性があります。したがって、金融、医療、防衛などの業界では耐量子セキュリティーが決定的に重要です。

全方位型暗号化で保存時と転送時のデータを保護

全方位型暗号化は、保存データと転送データの両方を幅広く暗号化するための包括的なソリューションを提供し、耐量子暗号化をきわめてシンプルに導入できるようにします。

全方位型暗号化のフレームワークに統合されている耐量子暗号化によって、暗号化フレームワークのセキュリティーが強化されます。現在と今後の脅威からデータを保護しましょう。この手法を取り入れることで、データ保護に関連するコストを削減できるだけでなく、今後の量子の脅威に伴うリスクを大きく軽減できます。

機能

新しい耐量子標準の採用に向けた準備には、いくつかの重要な段階があります。それぞれの手順については、IBM® Redbooksの『Transitioning to Quantum-Safe Cryptography on IBM Z』の第2章に説明があります。

データの特定 暗号インベントリー 暗号アジリティー 耐量子
使ってみる
リスク・アセスメントの実施

IBMのエキスパート・ラボ・サービスが、包括的な量子リスク・アセスメントを実施し、鍵、証明書、アルゴリズムなど、暗号の構成要素に関する総合的なインベントリーを作成します。このアセスメントは、低強度の暗号化や鍵管理の不備など、脆弱性の特定と軽減に役立ちます。アセスメントは以下の領域が対象となります。

  • インフラストラクチャー暗号化サービス
  • z/OS ICSF暗号化サービス
  • 鍵管理サービス
  • ネットワーク暗号化サービス
  • 保存データ暗号化サービス
  • アプリケーション暗号化サービス
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ツール

IBM z16は、アプリケーションで暗号がどのように使われているかを発見するための複数のツールを備えており、移行やモダナイゼーションの計画に役立ちます。

CP Assist for Cryptographic Functions(CPACF)
暗号インベントリーの作成にあたって、IBM z16では、CP Assist for Cryptographic Functions(CPACF)の暗号命令の実行を追跡するための新たな手段を使用できます。 CPACFは、暗号化や復号化などの暗号処理をメイン・プロセッサーからオフロードして、その実行を高速化します。これはシステム上でのデータ・セキュリティー・タスクの高速化と効率化に役立ちます。
Application Discovery and Delivery Intelligence(ADDI)
ADDIでは、暗号がアプリケーションのどの部分でどのように使用されているかを特定できます。ADDIでアプリケーションの評価とモダナイズを行い、高度な暗号化手法をサポートすることによって、耐量子への備えが強化されます。ADDIを利用して、更新が必要なアプリケーションの特定、互換性の分析、今後のリスクの精査を行うことで、耐量子テクノロジーのスムーズな統合と戦略的なモダナイゼーションが進めやすくなります。こうして、来たるべきセキュリティー課題に効果的に対処するためのシステムの準備が整います。
Unified Key Orchestrator(UKO)for IBM z/OS
UKO for IBM Zは、高度な暗号化標準をサポートする一元的かつ効率的な鍵管理によって、耐量子への備えを強化します。IBM Z環境全体で耐量子暗号化鍵の導入と管理がシンプルになり、コンプライアンスに準拠した堅牢なデータ保護を実現しやすくなります。UKOを活用した鍵のオペレーションの効率化と耐量子アルゴリズムの統合によって、組織は将来を見据えたセキュリティー対策へとスムーズに移行できます。
z/OS 暗号化準備テクノロジー (zERT)
IBM z/OSの機能の1つで、耐量子暗号化標準への移行を支援するためのツールと機能を提供し、耐量子への備えを強化します。この機能を利用して、最新のデータ暗号化の仕組みを導入し、今後の量子の脅威に取り組む態勢を整えることで、高度な暗号ソリューションをz/OS環境にシームレスに統合しやすくなり、組織は来たるべきセキュリティー課題に備えることができます。
Integrated Cryptographic Services Facility(ICSF)
IBM z/OSのソフトウェア・コンポーネントの1つで、来たるべき量子の脅威からデータを守るうえで欠かせない高度な暗号サービスを提供し、耐量子への備えを強化します。CEX8Sを利用した耐量子アルゴリズムと鍵管理をサポートし、組織は新しい暗号化標準にシームレスに移行できます。セキュリティー要件が変化する中でも、ICSFの堅牢な機能のもとで、データ保護手法や暗号化手法のレジリエンスとコンプライアンスが維持されます。
IBM Crypto Analytics Tool(CAT)
サービス契約を通じて利用できる有償のオプション機能で、IBM UKOの一部です。企業のIBM Zで暗号関連の最新情報を監視するために開発されました。セキュリティー関連情報を収集して、暗号インベントリーの構築を支援するほか、グラフィカル・クライアントでセキュリティー情報を簡単に分析できます。
関連するユースケース 耐量子標準のもとで、IBMの暗号化コプロセッサー(別名Crypto Express)とのシームレスな統合を通じて、セキュアなID検証、コードの完全性、コンプライアンスに準拠した決済処理を実現できます。 PCiE Cryptographic Coprocessorはこちら
認証

認証では、IDや作成元を検証し、データ、ソフトウェア、ファームウェアの完全性を確保できます。コード署名などの手法を利用して、ベンダーが提供した正規のコードのみが実行されるよう保証できます。認証はIBM PCIe Cryptographic Coprocessor(CEX8SのHSM)とICSFで強化できます。これらはIBM Zシステムとシームレスに統合し、堅牢でセキュアなデータ保護を実現します。

決済処理

耐量子アルゴリズムが業界標準に組み込まれ、セキュリティーが強化されることは、中心的な金融取引アプリケーションにメリットをもたらします。例えば、PINを用いるPOS取引やPINブロックの保護において、現在ではAES暗号化がサポートされています。IBM Zは、Integrated Cryptographic Service FacilityとIBM 4770 Cryptographic Coprocessorを使用して、PIN変換、PIN検証、一意の鍵管理などの必須タスクを処理できるため、コンプライアンスに準拠したセキュアな決済処理を実現できます。

参考情報

Illustration of a secure system
耐量子暗号とは
Protect data and outsmart threats
耐量子のハイブリッド・デジタル署名の仕組みでデータの完全性を保持
NIST Post-Quantum Standards
NISTの標準と、ポスト量子暗号に対するIBMの貢献を理解
Illustration of four cubes, one highlighted in blue
z/TPFのセキュリティー・コンプライアンスと暗号インベントリー
次のステップ

IBM z16での耐量子暗号で、新時代のコンピューティングへの準備を整えましょう。

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