ビジネス上の課題
自然災害の後には保険の問い合わせが急増し、未処理の業務が発生し、保険契約者の待ち時間が長くなります。CodeObjects社は、AIテクノロジーを使用して、保険会社がより迅速に電話に対応できるようにしたいと考えていました。
概要と経緯
InsurBot.aiは、保険契約者の質問や要求に自動的に応答し、ビジネス・トランザクションを自動化することで、保険会社の応答性を向上させるのに役立ちます。
成果
通話待ち時間を完全解消
大災害の時であっても保険契約者をお待たせしません1分あたり約1米ドルの節約
結果として、何十万ドルもの節約平均呼び出し時間、最大75%削減
保険契約者のニーズを効率的に評価するAI技術ビジネス上の課題の詳細
記録的な損失
2016年と2017年には、米国内外で記録的な数の自然災害が発生しました。損害保険(P&C)企業には、ハリケーン、洪水、火災などによる記録的な数の壊滅的な損失に対する請求がありました。保険金請求の件数が増えるにつれ、損害保険会社の間で完璧な顧客サービスを提供するという必要性も高まりました。これは全米の保険会社向けのコア保険システムを開発するCodeObjects社にとって、ひとつの行動喚起となりました。
CodeObjects社の製品管理担当副社長であるArun Bala氏は、次のように説明します。「家屋がハリケーンによる被害を受けた保険契約者は、保険会社への請求で1時間も費やしたくはありません。多くの保険契約者が保険会社とやり取りするのは請求を行う必要があるときだけですので、顧客体験をできるだけポジティブなものにすることは保険会社にとって最大の利益になります」
ただし多くの保険会社は、この重要なタッチポイントをサード・パーティーのコールセンターに外部委託しているため、事態が複雑になる可能性があります。アウトソーシングされたコール・センターは通常、コール・センター独自のシステムを使用しています。これは、自社のスタッフを複数の社外アプリケーションに対応できるようにトレーニングさせたくないためです。このような状況では保険会社が損失の性質に関する正確な情報を取得する能力に影響を与える可能性があり、結果として請求処理プロセス全体が非効率になります。
「こうした問題は壊滅的な被害に関連した電話だけで起きているのではありません」とBala氏は言います。「保険契約者は、ご自身が加入している保険の種類を調べたり、請求書について質問するためにも電話をかけてきます。顧客サービス担当者とのタッチポイントはどこも非効率的ですし、なによりコストがかかります。多くの保険会社は自動化を採用することで、こうした重大な問題を軽減しようとしています」
Bala氏は、「そうした事態体への対応として、当社はチャットボット機能を備えた中核システムのオファリングを増強しています。これにより、既存のお客様と将来のお客様に優れた顧客体験を提供できるようになります」と言います。
「当社はチャットボットを求める声が増え続けると確信しています。モデルを十分にトレーニングすると、予測可能で再現性の高い結果が得られるのです。5つ星のCSR [カスタマー・サービス担当者] と会話するようにチャットボットをトレーニングすると、すべての会話が5つ星の会話となる可能性もあるのです」とBala氏は言います。
“ 顧客サービス担当者とのタッチポイントはどこも非効率的ですし、なによりコストがかかります。多くの保険会社は自動化を採用することで、こうした重大な問題を軽減しようとしています。 ”
— Arun Bala氏, 製品管理担当統括責任者, CodeObjects社
概要と経緯の詳細
劇的な展開

AIのさまざまなオプションを検討した後、CodeObjects社は、同社がInsurBot.aiと呼んでいるチャットボット製品をサポートするためにIBM Watsonプラットフォームを選択しました。このソリューションは、IBM Watson Assistant、IBM Watson Discovery、IBM Watson Speech to Text、IBM Watson Text to Speech、およびIBM Voice Agent with Watsonサービスを備えています。
CodeObjects社の商品マーケティング担当バイスプレジデントであるAnthony Peccerillo氏は、次のように説明します。「このチャットボットのフェーズ1として計画したのは、まず顧客サービス分野を対象として絞り込み、人々が日常的に行っている反復可能なタスクを自動化することでした」
重要なフェーズ1のタスクには、最初の損害通知(FNOL)の提出、支払いまたは請求のステータスの確認、見積もりの取得と支払いが含まれていました。このソリューションは、2017年のハリケーン「イルマ」の後に寄せられた約50,000件の通話をWatsonテクノロジーで分析し、その結果に基づいて開発した所定のスクリプトに従って保険契約者の声に応えるものです。
InsurBot.aiは、保険契約者にとって可能な限り簡単でシームレスな体験を提供することを目的として開発されていましたが、通話者が自分で会話をコントロールしている感じを与えることにも注意を払っていました。Bala氏は次のように説明します。「Watson Assistantを使用して記述したダイアログ・フローには、ユーザーの要求やその他の内部条件によって人間のエージェントに交代するノードがいくつか存在します」
CodeObjects社がInsurBot.aiイニシアチブの第1段階のスクリプトを仕上げていたちょうどその時、ハリケーン「マイケル」がレーダー画面に初めて姿を現しました。ハリケーンは、CodeObjects社のお客様の多くが事業を行っていたフロリダ・パンハンドルに向かっていました。その予測モデルが正しければ、1992年以来この地域に上陸する最大級の嵐になるでしょう。壊滅的な損失は事実上避けられませんでした。
ハリケーン直撃後に損害賠償請求が大量に殺到することを予想して、CodeObjects社の既存顧客の1社であるSecurity First Insurance社は、嵐の前に新しいAIアシスタントを展開することを決定しました。1週間も経たないうちに、InsurBot.aiとSecurity First Insurance社のチームは、パイロット環境から実動環境への移行に取り掛かりました。Bala氏は、当時をこう振り返ります。「私達はデプロイメント・モードに入りました、それはまさに人員総動員でした。チームはInsurBot.aiのテストを重ねて調整し、実稼働環境を標準からプレミアムのWatsonプランに移行しました。多くの作業を完了させるには実に短い期間でしたが、チームはこの課題に正面から取り組んで無事に成功を収めました」
Security First Insurance社の最高執行責任者のWerner Kruck氏は、こう同意します。「InsurBot.aiのチームのおかげで、顧客満足度を向上させるだけでなく顧客体験をさらに差別化し、長期的にコストを削減するための技術戦略を作成することができました」
成果の詳細
有望な成果
ハリケーン「マイケル」の後にInsurBot.aiへの問い合わせを選んだ保険契約者の75%は、人間のエージェントに電話を回されることなく問い合わせを完了できました。壊滅的なハリケーン「マイケル」の上陸後、InsurBot.aiはSecurity First Insurance社が受け取ったすべての通話のうち、合計30%を処理しました。これにより、ハリケーンの後の問い合わせの急騰時に1分あたり約1米ドルの節約になりました。
さらに電話でInsurBot.aiへの問い合わせを選択した保険契約者は、待ち時間ゼロで回答を得られました。スムーズな顧客体験を実現するというCodeObjects社の信条が、ここに結実したのです。前年のハリケーンでは、平均待ち時間は約8分で、中には30分ほどかかるケースもありました。その時と比較すれば、これは明らかに保険会社と保険契約者にとって絶大な改善です。
ハリケーン「マイケル」でのInsurBot.aiの成功により、CodeObjects社は同社のソリューションがP&C業界全体の顧客サービスの改善に役立つと確信しました。最終的には、InsurBot.aiは複数の言語と複数のチャネルをサポートするだけでなく、多くの既存の保険システムと統合されることになります。
CodeObjects社は数々の分析を基に、このソリューションをさらに改善させようと計画しています。Peccerillo氏によれば、「例えば、ハリケーンの進路を予測するデータを顧客リストと照らし合わせ、もしハリケーンの進路にお住いの契約者がいれば、事前にリスク軽減の準備ができるように各種の資料や動画をプロアクティブに送信できるのです」
こうした分析は、保険会社自身にも利益をもたらす可能性があります。Bala氏は、「当社は数多くの情報をリアルタイムでお伝えできるツールをお客様に提供したいと考えています。ボットでうまく対応できるものとできないもの、さらにホットスポットがどこにあるかを把握して、迅速に対処できるようにします」と言います。
こうした追加機能により、CodeObjects社はInsurBot.ai が壊滅的な災害の発生時であっても、ほぼすべての通話をシームレスに処理できるようになると考えています。「InsurBot.aiは、考えられうる最大量の通話にも対応するよう設計されています。最初の人でも100番目の人でも、お問合せの電話には直ちに応答する。それが当社の目標です」とBala氏は締めくくりました。

CodeObjects社
2006年に設立されたCodeObjects社は、全米の保険会社向けのコア・システムを開発しています。2018年、CodeObjects社は主力製品であるInsurBot.aiを発表しました。これは、AIを利用したカスタマー・アシスタンス・サービスで、保険会社が顧客とコミュニケーションをとる方法に革新をもたらしています。
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