営業チームのプロセス摩擦を削減し、収益拡大を促進
Asian Paints社、オートメーションを導入してトレードプロモーションの簡素化とスピードアップを実現

インドでは、生活のほぼすべての領域において、大胆で、めまいがするほど鮮やかな色彩を目にします。衣服の生地、街角の看板、そして国全土で食されている料理にさえ、多彩な色が使われています。そして、おそらくそれが最も顕著に表れるのが、春の訪れを祝うホーリー祭でしょう。色彩の祭典であるホーリーでは、誰もが無礼講で絵の具や粉末染料をかけ合い、祭りを楽しみ、国中が盛り上がります。

インドにおいて色が一種の言語であるとすれば、そのメッセージは高揚感・喜び・美しさです。当然のことながら、色で表現するというこの本能は、インドの家庭、特に急速な成長を遂げている中産階級世帯の壁においても見られます。このカラーブームの中で、Asian Paintsは塗料だけでなく、その大胆な戦略でも業界で注目される存在となっています。

現在、ムンバイを拠点とする同社は、インドを代表する塗料メーカーであり、世界の塗料メーカーの中で第7位、アジアでは第2位にランクインしています。同社の市場におけるポジションが高まったのには多くの要因があるものの、最も大きな影響をもたらしたのは、同社が大胆な戦略を積極的に採用し、それが成功を収めたことです。たとえば、Asian Paintsはインドで初めて、デマンドパターンをより深く理解し、それに対応するためにテクノロジー(当時で言えばスーパーコンピューター)を活用した企業です。

しかし、同社を本当の意味で他社と差別化したのは、製造工場から販売業者へと直接製品を移動させるという、先駆的で画期的な流通戦略でした。物流とフルフィルメントにおけるこのアプローチは、同社とチャネルパートナーとの距離を縮め、販売業者ネットワーク(現在では約6万以上)を戦略的支柱とした今日の成長を実現しました。

Asian Paintsは最近、塗料から装飾品への大転換を開始し、塗料製品・サービス会社から、バス用品、キッチン、ファブリック、壁紙、ラグ、家具、調度品、照明など、より多様な家庭用装飾品ソリューションのプロバイダーになることを目指しています。同社のビジネスおよびITのトップリーダーにとって、このシフトは、装飾品市場における消費者へのリーチをさらに広げ、収益源を多様化する戦略としての自然な進化でした。

しかし同社は、販売業者中心の販売戦略において、これが新たな課題と機会をもたらすことも認識していました。重要な機会の1つだったのが、収益増加を目的としたトレードプロモーションを合理化することです。同社が新たに提供する商品の組み合わせが拡大したことで、プロモーションのプロセスが複雑になり、成長が抑制される恐れがありました。Asian Paintsにとって、これはまさにIT部門と事業部門が協力して対処しなければならない問題でした。

当社は、より幅広い商品を提供することで、顧客エンゲージメントの長さ、深さ、幅が大きく変化し、より複雑になることを認識しています。このシナリオでは、オートメーションを導入してフィールドセールスチームのプロセスを簡素化することに、強力なビジネス・ケースがあると考えました。 Deepak Bhosale General Manager of IT Asian Paints Limited
オートメーションによる販売プロセスの簡素化

ディーパック・ボセール氏は、IT部門のゼネラル・マネージャーとして、ビジネス上の意思決定にアナリティクスを広く取り入れるなど、テクノロジー主導の一連の変革プロジェクトを率いてきました。Asian Paintsの家庭用装飾品へのシフトに伴い、販売業者だけでなく現場のセールスチームにとっても、販売プロセスの合理化、簡素化、スピードアップが急務となりました。ボセール氏は次のように述べています。「当社は、より幅広い商品を提供することで、顧客エンゲージメントの長さ、深さ、幅が大きく変化し、より複雑になることを認識しています。このシナリオでは、オートメーションを導入してセールスチームのプロセスを簡素化することに、強力なビジネス・ケースがあると考えました」

販売業者の注文を支配する最も重要な要因のいくつかは、一般的にスキームと呼ばれる様々な製品の割引やインセンティブであり、これらは過去の注文アクティビティー、季節変動要因、販売業者のクレジットヒストリーなどのパラメーターに基づいています。周期的な販売計画の一環として、このような複数のスキームが販売促進のために展開されています。従来型のプロセスでは、販売業者は社内の営業担当者に電話や一元化されたコンタクトセンターで注文の「希望リスト」を渡していました。そこから、担当者またはコンタクトセンターのエージェントは、複数のシステム、表計算、その他の手動ソースからその販売業者のデータを収集し、スキームターゲットに対する達成度を評価します。数時間、場合によっては1日以上かかることもあるプロセスを経て、初めて販売業者は発注することができます。

ボセール氏とそのチームは、プロモーションと割引計算のルール・ベースの性質が、オートメーションの理想的なユースケースであることを認識していました。残された重要な問題である特定のテクノロジーオプションに対処するため、同社はIBM® Consulting™との長年にわたる提携を利用しました。ボセール氏は次のように話します。「IBMは10年以上にわたるパートナーとして、変革のあらゆる段階で当社をサポートしてくれました。IBMの実績は、プロセスオートメーション分野でのソート・リーダーシップとともに、同社が提案したアプローチに高いレベルの信頼を与えてくれました」

当社は、変化に機敏に対応し続ける必要性を認識しています。文化的にも、ビジネスチームとITチームの間で緊密なコラボレーションが行われており、IBMのようなパートナーとの協力関係もまた、このような迅速な適応を可能にしています。 Deepak Bhosale General Manager of IT Asian Paints Limited
プロセスオートメーションがディーラーにもたらすメリット

Asian Paintsが選択したアプローチの基盤は、IBM® Operational Decision Manager(ODM)です。これは、ルール・ベースのビジネス上の意思決定を最適化するために使用されるIBM Cloud Pak® for Business Automationソリューションのエレメントです。設計通り、このプロジェクトではIBM Lab Servicesのチームがソリューションを導入し、初期のビジネス・ロジックを開発して、Asian Paintsの担当者がソリューションの最適化とさらなる強化を引き継ぐ、共創の形がとられました。ビジネス・ルールの原動力となる販売データは、Asian PaintsのSAP S/4HANA ERPシステムから取得されます。

営業チームが新しいポータルベースのソリューションにログインすると、ODMモデルによって販売業者ごとに自動的に計算された割引や販促スキームを見ることができます。基盤となる同じモデルとデータがあれば、販売業者の収益を最大化し、コストを最小化する注文商品の組み合わせを提案することも可能です。Asian Paintsのシステム部門アソシエイト・ゼネラル・マネージャーで、このプロジェクトの中心人物であるアクヒル・グプタ氏は、「このスピードと効率は、従来の発注プロセスでは考えられなかったことです」と話します。「これは、エンタープライズデータを活用したビジネスオートメーションが、明らかに優れたエクスペリエンスを提供し、同時に組織とその販売業者に重要なビジネスの成果をもたらすのを示す強力な例です」

そしてそれは、Asian Paintsにとって不可欠な販売業者ネットワークにとって何が最も重要かという問いにつながる、とグプタ氏は付け加えます。「塗装業者であろうと装飾品業者であろうと、販売業者はオーバーヘッドアクティビティーではなく顧客への販売に時間と労力を集中させたいと考えています。大局的に見れば、販売業者の業務を簡素化し、プロセスをより効率的にすることは、業者にとっても当社にとっても非常に戦略的なことなのです」

税金の複雑さを解消

ルール・ベースのプロセスオートメーションの次の大きなユースケースを探していたAsian Paintsチームは、財務部門において有力な候補を見つけました。それは、2017年に初めて導入されたインドの物品・サービス税(GST)に関連する税金の支払いです。例えば、ある販売業者が塗料を注文したとします。売主であるAsian Paintsは、販売業者が負担する税金を計算するだけでなく、販売業者に代わってインド政府に税金を納付しなければなりません。その金額が販売業者宛の請求書に上乗せされます。同様にAsian Paintsは、購入を行う際に、GSTを正しく計算し、GSTのインプットタックスクレジットを完全に申請できるようにすることで、正味の納税額を適正な水準に保つ必要があります。

その問題点は、この面倒で時間のかかる作業税務照合と呼ばれるプロセスにあります。これは、購入者が購入/請求書の記帳データと製造業者が提出したGST申告書を比較し、自社の税金計算が正しい情報に基づいていることを確認するものです。Asian Paintsにとって最悪のシナリオでは、購入の請求書が入手できなかったり、入手できても納税義務が誤って記載されていたりして、手遅れになるまで発見されないことがあります。これにより、同社は過大な税金、あるいは罰金を政府に支払わなくてはならない可能性があります。「オートメーションに基づく意思決定の最適化からメリットを得るという点で、GST照合は当社のニーズをすべて満たすものでした」とグプタ氏は話します。

Asian PaintsのITチームとIBM Lab Servicesチームは、ODMのビジネス・ルールを使用して、Asian PaintsのERPシステムから購入の請求書データを自動的に取得し、製造業者が提出したGST申告書と比較する意思決定ツールを共同で作成しました。請求書の不一致が見つかった場合、ODMはアラートを出し、請求書にレビュー用のフラグを立てます。さらに最も重要なこととして、IBM Cloud Pak for Business Automationのもう1つのコンポーネントであるIBM Business Automation Workflowソリューションを使用して社内で構築されたベンダー請求書処理プラットフォームで支払いをブロックします。Asian Paintsは、製造業者の税金問題を防ぐことで、その業務を簡素化し、ロイヤリティとパートナーシップを強化しています。

しかし、ボセール氏が指摘するように、GSTツールは社内効率におけるオートメーションのメリットも示しています。同氏はこう述べています。「従来の手作業によるGST請求書の照合には4日間もかかっていました。これは1日あたり数千件のトランザクションにおよびます。ルール・ベースの照合とオートメーションによって、この作業を1日に短縮し、時間とコストを大幅に削減することができました」

適応力と敏捷性が成長の鍵

Asian Paintsの装飾品市場への参入は、10年近くの歳月を経て大きな成功を収めており、最近では装飾照明器具がラインナップに加わりました。その舞台裏では、同社のデジタル変革が急ピッチで進められており、オートメーションはその取り組みの最前線かつ中核にあるものとなっています。ボセール氏とそのチームは、各事業部門と協力しながら新しいユースケースを定義し続けており、それを構築するために実用的かつアジャイルなアプローチを適用しています。同氏は次ように話します。「優先順位の合意が得られたら、当社はアジャイルなアプローチに従い、迅速なPoC(概念検証)を通じて価値をテストします。それがうまくいった場合、それを当社のビジネス全体にスケールします」

Asian Paintsは、この2つの並行した変革の取り組みを通じて、より迅速な成長を遂げるとともに、急激な伸びを見せるインドの家庭用装飾品支出におけるシェアを拡大するためのポジションを築いています。同社の成功の根底には何らかのテーマがあるのかとの問いに、ボセール氏は簡潔に答えました。「当社は、変化に機敏に対応し続ける必要性を認識しています。文化的にも、ビジネスチームとITチームの間で緊密なコラボレーションが行われており、IBMのようなパートナーとの協力関係もまた、このような迅速な適応を可能にしています」

    Asian Paintsのロゴ
    Asian Paints Limitedについて

    ムンバイに本社を置くAsian Paints(リンクはibm.comの外)は、インドを代表する塗料・装飾品会社であり、世界の大手コーティング企業の中で7位にランクインしています。Asian Paintsとその子会社は、世界15カ国に27の塗料製造施設を持ち、Asian Paints、Apco Coatings、Asian Paints Berger、Asian Paints Causeway、SCIB Paints、Taubmans、Kadisco Asian Paintsを通じて、中東、南太平洋、アフリカ、アジアの60カ国以上の消費者にサービスを提供しています。Asian Paintsはまた、家庭用装飾品も幅広く提供しており、インドのリフォーム・インテリア分野で新たな有力企業として台頭しています。

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    米国で製作、2023年2月

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