サウジアラビアが2016年にビジョン2030を策定したとき、Alinma Bank社はすぐに賛同を示しました。このイスラム銀行は2008年に設立され、完全にシャリーアに準拠した商品とサービスの提供に熱心に取り組んでおり、一部は政府が所有しているため、このレベルの取り組みは驚くにはあたりませんでした。
ビジョン2030は、中東におけるサウジアラビアの経済的独立性、技術力、全体的な卓越性を高めるための戦略計画を示しています。このビジョンを実現する鍵となるのは、特に銀行と金融の分野で、業務プロセスの自動化とデジタル化、アプリケーションのモダナイゼーションを通じて、技術的なリーダーシップを確立できる国としての力です。
それはAlinma Bank社の使命の本質的な部分でもあります。また、デジタルバンクや金融テクノロジー企業(フィンテック)など、急速に台頭する競合他社を前にして、Alinma Bank社はオープン・テクノロジーを活用することで、パートナーとの迅速でアジャイルなコラボレーションを促進し、サウジアラビアのビジョンを実現しようとしています。
新API管理機能で、パートナーのオンボーディング・プロセスの手順数を50%削減
パートナー用の新サービス開発にかかる時間が、数週間から5日未満に
Alinma Bank社がB2Bオンボーディング・プロセスの改善を目指したときも同様でした。当時、同行は、IBM DataPower® Gateway物理アプライアンスを使って、IT環境で資金振替、請求書支払、給与支払などの業務用のWebサービスを実行していました。このソリューションは強力なプラットフォームとして機能していましたが、政府・法人パートナーのオンボーディングを行うプロセスにはかなりの労力と時間がかかりました。
オンボーディング・プロセスのスピードと効率性を高めるため、同行は、政府・法人パートナーが銀行に高速で接続し、APIを簡単にテストできるシステムを必要としていました。また、同行は全社的なアプリケーションにわたる大規模な取り組みの一環として、オンボーディング・アプリケーションのモダナイゼーションを図りました。
Alinma Bank社とIBMの関係は、同行の創立時にまで遡ります。実は、同行の中核インフラストラクチャの多くは、IBMのテクノロジーで構築されています。また、Alinma Bank社は競合他社の製品も検討しましたが、新しいB2B統合ソリューションの基盤として、IBM Cloud Pak® for Integrationプラットフォームを選びました。このソリューションは、銀行の既存のインフラストラクチャと互換性があるだけでなく、API管理機能がアナリスト会社Gartnerによって高く評価されているものでした。興味深いことに、同行が検討した他のソリューションの1つがRed Hat® OpenShift®コンテナ・プラットフォームでした。これはIBMはその後すぐにに買収し、現在ではすべてのIBM Cloud Paksの中核テクノロジーとなっています。
Alinma Bank社は、IBM® のエキスパート・ラボ・チームと協力し、新しいオンボーディング・プラットフォームのアーキテクチャ、ホスティング環境、移行戦略を計画しました。この計画は、銀行のB2BWebサービスをIBM Cloud Pak for IntegrationのAPI 管理機能に移行し、オンボーディング・プラットフォームの既存のインフラストラクチャを Red Hat OpenShiftに置き換えることで構成されていました。
開発は、2020年1月に始まりました。その2カ月後、新型コロナウイルス感染症が発生しました。インストールにはきわめて重要な時期であり、パンデミックにより大きな困難がもたらされました。導入チームは、金融機関のITインフラストラクチャにリモートでアクセスするための非常に厳格な銀行要件に対応する必要がありました。IBMとAlinma Bank社は協力することで、アクセスの問題を克服することができました。
このプロジェクトでは、Red Hat OpenShift開発、システム統合テスト、ユーザー受け入れテスト、本番環境にそれぞれ1つずつ、計4つの環境のインストールが必要でした。チームは、IBM Cloud Pak for Integrationをインストールし、環境をカスタマイズし、既存のサービスをIBM DataPower GatewayからIBM Cloud Pak for IntegrationのAPI管理機能に移行しながら、環境を次々と移行していきました。
インフラの準備が整うと、チームはさらにカスタマイズと開発を開始しました。新しいプラットフォームに独自のB2Bサービスを入れて、旧来のSOAP WebサービスをREST APIに置き換え、APIポータルにAlinma Bank社の外観・操作性を取り入れました。さらに、資産を物理的なIBM DataPower GatewayアプライアンスからIBM Cloud Pak for Integrationの一部である仮想DataPower機能に移行しました。
全体の実装には、約1年かかりました。プラットフォームを運用する前に、銀行は新サービスをテストしました。このプラットフォームは完全に機能したため、Alinma Bank社は 2020年12月に正式にこのプラットフォームを開始しました。
新B2Bオンボーディング・プラットフォームは、これまでに素晴らしい実績を上げており、オンボーディングの手順数を半減させ、バーチャル口座管理用のRESTサービスや取引照会サービスなど、提供するサービス数を倍増させることに成功しています。パートナーを登録し新B2Bサービスを作成するための市場投入までの時間を削減することで、Alinma Bank社は新たな収益チャネルを開拓しやすくなります。これにより、市場において他社に対し競争上優位になることができます。
以前のオンボーディング・プロセスでは、Alinma Bank社の業務担当者がパートナーを追加する申請を送信すると、その申請はIBM DataPower Gatewayアプライアンスやその他の社内システムとの実装と統合のために技術チームに送られ、数日から数週間かかることがありました。現在、Alinma社の業務担当者は、APIポータルを使って新しいパートナーを登録し、サービスへのアクセスを許可したり、その他のサービスを無効にしたりすることができます。
Alinma Bank社のB2Bチャネルアドバイザー、Ahmed Gamil氏は、以前は数週間かかっていたテスト・プロセスについて、現在では1日で完了すると見積もっています。
APIの文書化とバージョン管理も、新しいプラットフォームにより大幅に改善されました。以前は、共有サービスを追跡するのが難しく、パートナーが銀行のアプリケーションの最新バージョンを使用しているか確認することが継続的な課題でした。今では、パートナーはAPIポータルに直接ログインして、最新の文書を検索できるようになりました。
新機能では、付加価値を提供できます。「API管理機能の分析コンポーネントは、取引を追跡し、API管理機能を活用し、APIの問題についてインサイトを得る上で非常に強力です」と、Gamil氏は述べています。「分析ダッシュボードを通じて、業務を簡単に追跡・監視できます。これはB2Bプラットフォームとしては非常に便利です」
Red Hat OpenShiftにより、オンボーディング・プラットフォームの柔軟性と拡張性を本格的に刷新し、堅牢なサービスのホスティングが可能になりました。以前は、新しい仮想サーバーの取得とインストールに数日から数週間かかっていましたが、Red Hat OpenShiftでは、必要に応じてノードを起動して拡張できます。また、アプリケーションを再起動することなく、新しいサービスを動的に展開することもできます。
今後、同行はB2B統合レイヤーやその他のバックエンドシステム全体で、コンテナ化とRed Hat OpenShiftへの移行を続行する予定です。これらはすべて、さらに大きなビジョンに貢献しています。Alinma Bank社のCIO(最高情報責任者)、Yasser AlOufi氏は述べています。「Alinma Bank社の戦略目標に沿って、オープン・バンキング・イニシアチブを含め、高度なデジタル経済の発展を目的とした国家的イニシアチブを支援する主要な金融機関となることを目指しています」「進歩的なB2B環境により、この取り組みを支える強固な基盤を実現できます」
「Alinma Bank社とIBMは、2008年の銀行創立以来、共に大きな成功を収めてきました」と Gamil氏は締めくくりました。「その間、当行では多くのIBMの既製製品やサービスを利用してきましたが、IBMのコンサルティング・サービスを利用したプロジェクトはこれが初めてかもしれません」この経験により、IBMコンサルティング・サービスを信頼するようになりました。近い将来、このようなコラボレーションがさらに増えると思っています」
2007年に設立されたAlinma Bank社 (ibm.com外部へのリンク)は、サウジアラビア最大級の金融サービス機関であり、個人・法人・官公庁・自治体の顧客にサービスを提供しています。このイスラム銀行は一部政府所有で、シャリーアに準拠した銀行業務基準に従って運営されています。Alinma Bank社は、サウジアラビアのリヤドに本部を置き、全国に支店とATMを展開しています。
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2022年6月、米国で作成
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