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Smarter Business

IBM戦略コンサルタントの視点 #3|人とAIの協働~IBM内実践例から見る未来の可能性~

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穴原 匡史

穴原 匡史
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
戦略コンサルティング 技術戦略
アソシエイト・パートナー

2002年 日本IBM入社 ERP導入コンサルティングにおけるテクノロジーコンサルタント/アーキテクトを経て、2012年に戦略コンサルティング部門に参画、現在に至る。
IT戦略デジタル戦略などの戦略策定を強みとするほか、システム化構想、ITを活用した事業変革、デジタル・ビジネス・プラットフォーム構想など多数のプロジェクトにプロジェクトマネージャーおよびプロジェクト責任者として従事。構想策定から実行・定着の支援といった、コンサルティング上流から実務への移行まで幅広く活動している。また日本IBM内では、若手戦略コンサルタントが所属する約100名の組織をリード、後進の育成に従事。

2018年に経済産業省がDXレポートの初版を公開してから5年、COVID-19によるパンデミック環境を経て企業内でのデジタル化は激的に加速したと言える。デジタル化の中でもバックオフィス業務は、これまで以上の効率化が求められ、単に人間が実施する作業の置き換えに留まらず、人の判断代替、さらには自律的な改善活動にAIの支援が入ってくることはすでに始まっており、今後ますます増えていくことが予想される。AIを業務に統合することにより、従来の業務に比べて高い精度で分析や予測が可能になる。例えば、製造業では生産ラインの管理や製品の品質管理、金融業界ではリスク管理や株価予測などに活用されており、顧客情報の分析やマーケティングの効果測定など、マーケティング領域でもAIの活用が進んでいる。

2021年版CIOスタディ-空前の変化と好機出典:IBV 2021年版 CIOスタディ

IBMでは、「Good Tech」と呼ぶ社内業務へのデータとAI活用を始め、業務効率化と企業価値向上の両立する取り組みを実践している。テクノロジーを用いて、人が持つ偏見を軽減し、AI ・データドリブンな方法でインクルーシブな環境を目指している。

IBM社内で実践されているAIおよびデータの活用

IBM社内で実践されているAIおよびデータの活用代表例として以下が挙げられる

  1. テクノロジー活用での従業員の体験向上
  2. 勤怠管理、各種申請など複数システムにまたがる申請処理を単一のユーザー・インターフェースからシームレスに連動処理し、蓄積されたデータをAIにより活用することでストレスなく円滑に処理
    例:結婚出産など複数の手続きを一連の流れで処理

  3. キャリアやスキルの提案
  4. 社員の業務経験や評価に基づき、AIが推測したスキル・レベルや上司からのコメントを基に、現在およびキャリアに必要なスキルを提案し、将来のスキル開発を効果的に実施

  5. 管理職向けた必要なアクションの推進
  6. 管理職向けのダッシュボードで様々な比率(部門別、等級別の男女比率など)や、分析結果を提示し、時宜を得た行動を促進

  7. データに基づく社員エンゲージメントの促進
  8. 社員のスキル、職種、労働市場における給与水準などのデータから昇給の提案や、社員のリテンション施策においてもデータに基づく分析を行い、管理職の意思決定をサポート

  9. コンプライアンス遵守、不正抑止
  10. 経費精算や発注処理などの処理における、上位管理職の承認処理をルールと統計に基づく自動化により、承認負荷を減らしながら社内規程遵守や不正の発見を効率化

これらは、IBM内での実践の一部であるが、AIおよびデータドリブンでの業務の高度化の範囲は日進月歩で拡大している。データとAIは人間の知能や能力を拡張するものであり、人間とAIが協調して業務を遂行することが重要であるため、IBMでは完全に業務自体が自動化・機会化することでの効率化を目的としているのではなく、業務の負荷を低減させつつ人間の判断・意思決定を高度化にすることに重きをおくことで企業価値の向上に努めている。

世の中をより良く変えていくカタリスト

データおよびAI活用は単なるテクノロジーの導入にとどまらず、運用のためのルールやポリシーの整備やその浸透が重要である。また、自動化が進んだ先の人員配置の見直しや、データの保護・プライバシーの確保なども考慮すべき事項となる。IBMでは、テクノロジー・カンパニーとして先端技術活用ノウハウだけでなく、これらを実業務として適用した社内実践に基づく方法論と、これらの技術を業務に活用するための整備してきた制度、業務プロセス、組織、人材(スキル)定義など自社を題材にした活きた事例を持った企業であり、私たちは社員としてこれらのオペレーションやマネジメント当事者でもあり、この活きた経験と示唆をお客様にお伝えすることができる存在である。

2023年5月、企業が信頼できるデータを用いて最先端のAI活用の拡大・加速を可能にする、新しいAIとデータ・プラットフォームである「IBM watsonx」を発表した。このようなAIプラットフォームを業務の中核におき、ビジネス変革を加速する企業が増していくことは想像に容易い。
私たちは「世の中をより良く変えていくカタリスト」として貴社の変革に際し、戦略コンサルタント、テクノロジー専門家が連携し、変革の当事者として戦略の策定から実現の伴走することが可能である。是非、貴社のパートナーとして私達を活用いただきたい。

本シリーズでは、IBMの戦略コンサルタントが、IBM自身の経営・変革の仕組みを解説する。
IBMは、絶え間ない変革を続け100年以上も技術革新の激しいIT業界の中で、一時は赤字の苦境に立たされながらも会社を大きく改革させることで存続してきた。
そして今もIBMは、AIやHybrid Cloudなど最先端のテクノロジーと創造性をもって、お客様・業界・社会のあらゆる枠を乗り越えて、より良い未来づくりを実現すべくチャレンジし続けている。
IBMの戦略コンサルタントは、IBM自身のグローバル企業としての変革実践に裏打ちされた知見も用い、お客様の変革をサポートします。