量子コンピューティングは、量子力学の法則を用いて、古典的なコンピューターには複雑すぎる問題を解決する、急速に台頭しているテクノロジーです。
今日、IBM Quantumは、30年前は、まだ科学者がイメージをし始めたばかりのツールに過ぎなかった量子ハードウェアを、数千人の開発者に対して、実際に利用可能なものにしています。 IBMのエンジニアは、これまで以上に強力な超伝導量子プロセッサーを定期的に提供し、ソフトウェアと、従来の量子オーケストレーションに重要な進歩をもたらしています。 これにより、世界を変えるために必要な量子コンピューティングのスピードと容量は大幅に躍進されます。
こうしたマシンは、半世紀以上前から存在している古典的なコンピューターとは大きく異なります。 ここでは、この革新的なテクノロジーについてご紹介します。
IBM Quantumの詳細はこちら
量子コンピューターについてのブログを読む
ある種の問題に対しては、スーパーコンピューターはそれほど「スーパー」ではありません。
科学者やエンジニアは、困難な問題に遭遇すると、スーパーコンピューターに目を向けます。 スーパーコンピューターは、通常は、何千もの古典的なCPUコアとGPUコアを備えた、非常に大規模な古典的なコンピューターです。 しかし、スーパーコンピューターであっても、ある特定の問題を解決することは困難です。
スーパーコンピューターがつまずいた場合、それはおそらく、この巨大な古典的なマシンが高度に複雑な問題を解決するように求められたためです。
古典的なコンピューターが問題の解決につまずく原因の多くは、複雑性にあります。
複雑な問題は、多数の変数が複雑に相互作用する問題です。
分子内の個々の原子の動きをモデル化することは、個々のすべての電子が相互に作用しているため、複雑な問題です。
グローバルな海運ネットワークで、数百隻のタンカーに最善の航路を選別することが困難なのと同じです。
古典的なコンピューターが実現できないものを、いかに量子コンピューターが実現できるかについて示す例を見てみましょう。
スーパーコンピューターは、タンパク質配列の巨大なデータベースを整理するような難しい作業には向いているかもしれません。しかし、それらのタンパク質がどのように行動するかを決定する、データの微妙なパターンを見極めるのは、スーパーコンピューターには困難です。
タンパク質は、アミノ酸が連なった長い鎖で、複雑な形に折りたたまれると有用な生物学的機械になります。 タンパク質がどのように折りたたまれるのかを解明することは、生物学と医学にとって重要な意味を持つ問題です。
古典的なスーパーコンピューターは、答えを導き出す前に、タンパク質を力ずくで折りたたむことを試み、多数のプロセッサーを利用してこの化学物質の鎖を折りたためる方法をすべて確認するかもしれません。 タンパク質配列が長く複雑になると、スーパーコンピューターは行き詰ります。 100個のアミノ酸から成る鎖の折りたたみ方は、理論的には何兆通りあります。 個々の折りたたみ方の可能な組み合わせをすべて処理する作業メモリーを備えたコンピューターは存在しません。
量子アルゴリズムは、このような複雑な問題に対して、個々のデータ・ポイントにリンクするパターンが出現する多次元空間を作成するという新しいアプローチを取ります。 タンパク質の折りたたみ方の問題の場合、そのパターンは、生成するのに最小のエネルギーを必要とする折りたたみ方の組み合わせである可能性があります。 その折りたたみ方の組み合わせが、問題の解決策となります。
古典的なコンピューターは、このような計算空間を作れないため、こうしたパターンを見つけることができません。 タンパク質の場合、古典的なコンピューターが行うような面倒な確認手順が不要で、まったく新しい、より効率的な方法で折りたたみパターンを見つけることが可能な、初期の量子アルゴリズムが既に存在しています。 量子ハードウェアが拡張され、このアルゴリズムが進歩すれば、それを使用して、スーパーコンピューターには複雑すぎるタンパク質の折りたたみの問題に対処できます。
量子コンピューターは、スーパーコンピューターに比べて、サイズが小さく、必要とする消費電力も少なくてすむ、洗練されたマシンです。 IBM Quantumプロセッサーは、ノートPCに搭載されているものと大差ない大きさのウェハーです。 量子ハードウェア・システムは、自動車程度の大きさであり、その大部分は超伝導プロセッサーを超低温の動作温度に保つための冷却システムで構成されています。
古典的なプロセッサーは、ビットを使用して演算を行います。 量子コンピューターは、量子ビット(CUEビット)を使用して多次元の量子アルゴリズムを実行します。
超流動
デスクトップ・コンピューターは、多くの場合、ファンを使用して十分に冷却してから動作します。 IBMの量子プロセッサーは、絶対零度よりも約百万分の1度上という非常に低い温度まで冷却する必要があります。 これを実現するために、IBMは過冷却された超流動体を使用して超伝導体を作っています。
超伝導体
この超低温では、IBMのプロセッサーに使用されている特定の物質が、電子が抵抗なく移動するという、もうひとつの重要な量子力学的効果を発揮します。 こうして、これらの物質は「超伝導体」になります。
電子が超伝導体を通過するとき、これらは対となって「クーパー対」を形成します。これらの対は、量子トンネリングと呼ばれるプロセスを通じて、障壁(絶縁体)を越えて電荷を運ぶことができます。 絶縁体のそれぞれの端に置かれた2つの超伝導体は、ジョセフソン接合を形成します。
制御
IBMの量子コンピューターは、ジョセフソン接合を超伝導量子ビットとして使用します。 この量子ビットにマイクロ波を照射することで、量子ビットの動きを制御し、量子ビットが個々の量子情報を保持、変更、読み取ることができるようにします。
重ね合わせ
量子ビットは、それ自体はあまり役に立ちません。 しかし、量子ビットには、保持する量子情報を重ね合わせた状態(量子ビットの可能な構成すべてを組み合わせたもの)にするという重要な機能があります。 重ね合わせた量子ビットのグループは、複雑で多次元的な計算空間を作ることができます。 このような空間では、複雑な問題を新しい方法で表すことができます。
エンタングルメント
エンタングルメントとは、2つの別個の現象を相関させる量子力学的効果のことです。 2つの量子ビットがもつれると、一方の量子ビットの変化がもう一方の量子ビットに直接影響を与えます。 量子アルゴリズムは、この関係性を活用して、複雑な問題の解決策を見つけます。
IBMの量子コンピューターは、IBMのオープンソースで、Pythonベースの量子コンピューター用SDKであるQiskit(ibm.com外部へのリンク)を使用してプログラミングされています。 Qiskitには、財務、化学、最適化、機械学習専用のモジュールがあります。
さらに大きなワークロードへの準備はできていますでしょうか。 ワークロードを効率的に構築し、拡張するIBMの量子プログラミング・モデルであるQiskit Runtimeで、スケーリングを実行できます。 Qiskit Runtimeを使用すると、ユーザーは、世界で最も高性能の量子システムのHPCのハイブリッド・コンピュテーションに簡単にアクセスできる、量子古典アプリケーションをデプロイできるようになります。 Qiskit Runtimeは、量子回路を古典的な処理に組み込むための実行環境を提供し、指定の量子プログラムのネイティブ実行を加速します。 これは、すなわち、世界屈指の量子システム上で、より迅速な反復、遅延の減少、計算時間の制限が少なくなることを意味します。Qiskit Runtimeのクラウド・ベースの実行モデルにより、分子の動きをシミュレーションするスピードが120倍速くなることが実証されました。