何千もの個人的ストーリーが織りなす壮大な歴史
Vasaloppetは、データとストーリーテリングを活用して、新たなつながりと交流を促進しています
Vasaloppet(世界最古の長距離クロスカントリー・スキー・レース)の本拠地であるスウェーデンのムーラ
始まりは、当時まだ国家でなくデンマークの一部であった、16世紀のスウェーデンに遡ります。2人の勇敢なスキーヤーが国家の独立をかけて、ムーラ村からセーレン村にかけて熾烈なレースに挑みました。

2人は革命指導者、Gustav Eriksson Vasaの行方を追っていました。ようやく探し出した2人は、ムーラ村に帰還し、当時のデンマーク王国との戦いを指揮するよう、将来スウェーデンの王様となるこの指導者を説得しました。2年半後、革命は幕を閉じ、スウェーデンは独立を手にしました。

この豊かな歴史は、Vasa王から名を取った「Vasaloppet」レースの神髄となっています。このレースはスウェーデンのムーラ・セーレン地方で年に1度開催されます。毎年、10万人前後に達する参加者が、Vasaloppet組織が夏期と冬期に開催する10以上のスキー、徒歩、自転車レースの1つまたは複数で競います。

Vasaloppetのテクノロジー・コーディネーター、Marcus Berndt氏は次のように語ります。「このレースは数百年間開催されてきましたが、私たちの歴史はそれ以前から綿々と続いています。ですから多くの場合、このイベントで競技することは、参加者の大半にとって実に大きな意味があります。スウェーデンではどの家族にも、多かれ少なかれVasaloppetとつながりのある人がいます」

Vasaloppetでは、こうした文化的で個人的なつながりが継続するだけでなく、強化したいと考え、レースの参加者との対話を向上する方法を模索し始めました。

Berndt氏は説明します。「参加者のために、1年中ずっと続くレースでの体験と感情的なつながりを創り出したいと考えました。ストーリーはそうした感情にぴったりの枠組みとなるという認識から、体験に関するさまざまなデータ・ポイントを1つにつなげることに成功しました。デジタル化されたそれぞれの瞬間は体験に関するストーリーを伝え、個人的な旅を思い出すのに役立ちます」

もちろん、Vasaloppetは競技者のために一部の瞬間を既に記録していましたが、こうしたスナップショットを1つの物語へと、より効果的にまとめたいと考えました。例えば、Vasaloppetはさまざまなベンダーとスポンサーと長年連携して写真だけでなくビデオ撮影をして競技者と共有してきました。ただ、こうしたビデオや画像を送信していたのはVasaloppetでなく撮影した外部組織であることが常でした。そのため、競技者の旅物語は断片的となり、順番どおりに届かないことも珍しくありませんでした。

35,000件のストーリー

 

35,000件ものストーリーが初年度だけで共有され、交流が活発になり、興味を掻き立てています

約30分

 

レース後のコミュニケーションは約30分に短縮し、数時間から数週間までかかっていた以前より大幅に改善しています

体験に関するさまざまなデータ・ポイントを1つにつなげることに成功しました。デジタル化されたそれぞれの瞬間は体験に関するストーリーを伝え、個人的な旅を思い出すのに役立ちます Marcus Berndt氏 テクノロジー・コーディネーター Vasaloppet
個人の歴史を刻む

レース誕生100周年が近づくのを機に、Vasaloppetは参加者の絆が深まるような特別なことをしたいと考えました。そして2021年終盤のIBM Design Thinking Workshopの参加後に、明確な計画を立てました。

Berndt氏は次のように語ります。「IBMとは50年以上にわたり、さまざまな機会に連携してきました。IBMは主要スポンサーの1社であり、年に2、3回、IBMが開催するワークショップに参加しています。当時私たちは、記念レースのためにいわゆる「壮大な計画」、つまり革新的な変化を模索していました。Vasastoryのアイデアが浮かんだのはそんなときでした」

Vasastoryでは、脈略のないEメールやソーシャル・メディアへの投稿を通じたコミュニケーションでなく、ソーシャル・メディアで共有可能な個人的ウェブページを通じてレース日の個別アカウントを各参加者に提供します。一方、競技者はゴールしてから30分以内に届く祝福Eメールを通じて、自分のVasastoryにアクセスできます。

まず、VasaloppetはIBMとIBMビジネス・パートナーのAtea社と連携して、IBMデータ統合テクノロジーとクラウドネイティブのIBM Db2 Warehouseを搭載したサンプル・ソリューションを構築しました。IBM iXIBM Consulting内でエクスペリエンス設計の実践担当ユニット)から、新しいVasastoryのフロントエンドと設計を担当する専属チームが派遣されました。一方、IBM Client EngineeringチームとAtea社はバックエンドのワークロードを分担しました。

Berndt氏は次のように振り返ります。「私たちはストーリーを世の中に広めようと、一丸となって取り組みました」Java開発者がIBMのエキスパートと直接連携して、データベースやAPIなどのバックエンドを構築しました。抜群のチームワークでした」

第一段階の成功に基づき、Vasaloppetは2022年の主要レースすべてを対象にVasastoryの本格的な制作に入りました。「リレー・イベントにはいくらか足りない点が残っています。夜間レースにも特有の課題があります。写真がないと魅力的なVasastoryを作るのが難しいのです」(Berndt氏)。

新しいインフラストラクチャーはIBM Cloudのパブリック環境でホストされ、さまざまな場所にあるレース・データ記録はIBM Db2 Warehouseにまとめて保存されます。Vasaloppetでは他にIBM Cognos Analyticsソフトウェアを使用して、情報プールのインサイトを取得し、トレンドを特定したり主要統計を抽出したりして、スポンサー、メディア、一般と共有しています。

私たちはストーリーを世の中に広めようと、一丸となって取り組みました Marcus Berndt氏 テクノロジー・コーディネーター Vasaloppet
ある参加者のストーリー

参加者はレース当日に早起きして、天気を確認します。幸いクロスカントリー・スキーにうってつけの天候状況です。ホテルで軽く朝食をとってから、Vasaloppetアリーナに向かいます。到着すると、雰囲気が盛り上がっているのを実感します。自分を含めて、そこにいる参加者全員が、何世紀も前から続く国の歴史に自分の体験を紡ごうとしています。

参加者がレースに登録すると、スキー靴に付けるRFIDタグが手渡されます。1時間後にレースがスタートしました。足で雪を踏みしめながら歴史あるVasaloppetレースのルートを進んで行きます。RIDタグはレース中、コースを通じてセンサーで認識され、時間が追跡されます。また、イベントの写真とビデオを個人的な体験とマッチングできるようにします。

何時間も奮闘した末、遂にゴールを切ります。達成感に浸っているうちに、Vasastoryシステムで30分のタイマーが起動します。スポーツ・ウェアを着替えて、軽食をとります。ようやくリラックスしてその日のことを振り返り始める頃に、新着のEメール通知が電話に届きます。

Eメールを開封すると、Vasaloppet主催組織からの祝福メッセージと、各参加者固有のVasastoryへのリンクが掲載されています。

「レースのほとんどは長距離なので、個々の瞬間は体験全体の中に埋もれがちです。競技者が1日の体験全体を振り返ることができるようにVasastoryを設計したのはそのためです」とBerndt氏は説明します。

ストーリーは、コース地図、天候情報、スタート地点周辺の写真など、その日の細部から始まります。次に、焦点はレース自体に移り、ゴール・ラインを超えるまでの写真を間に挟みながら、レース中の参加者の進行状況を追跡し、チェックポイントの通過時刻を共有します。

「豊かな歴史と競技者を関連付けるちょっとした豆知識や競技者の各レースに関する一般統計も共有します。参加者数や男性と女性部門の優勝者といった情報です。競技歴に基づき、次のチャレンジに関して競技者の参考になる助言も提供します」とBerndtは説明します。

Vasaloppetでは、Vasastoryソリューションの運用を開始して以来、継続的に強化を図っており、完走者向けのデジタル・メダルを追加したり、ソーシャル・メディアでストーリーを共有しやすくしたりしています。

「大胆な計画があります」とBerndt氏は話しを続けます。「参加者がスマート・ウォッチなどのデバイスからGPX(GPS Exchange Format)ファイルをアップロードして、見逃しがちな、細かいコースの歴史を共有できるようにすることを検討しています。Vasastoryをパートナーやスポンサーに公開する方法や参加者に付加サービスを提供するための活用方法も模索中です」

レースのほとんどは長距離なので、個々の瞬間は体験全体の中に埋もれがちです。競技者が1日の体験全体を振り返ることができるようにVasastoryを設計したのはそのためです Marcus Berndt氏 テクノロジー・コーディネーター Vasaloppet
引き継がれる国の伝説

Vasaloppetが2022年を通じて一貫して取り組んだのが、3万5,000人を超える参加者が自分個人のVasastoryをソーシャル・メディアからオンラインで共有することにより、各種レースへの興味を掻き立て、参加を促す活動でした。

Berndt氏は次のように説明します。「私たちは、ストーリーテリングを利用して、参加者とかつてないほど強い絆を築く段階にあります。かなり前から、競技者が参加体験を伝えることに、次第に積極的になっている証拠を目にするようになっています。過年度の祝福Eメールのスクリーンショットを撮って、Instagramに投稿するのは、その一例と言えます。自分がこのイベントに参加したこと、イベントの歴史に名前を刻んだことを共有したいのです。Vasastoryによってこうした望みは簡単に叶えられるようになっています」

言うまでもなく、30分以内に祝福Eメールが届くようになったことも大きな改善に結びついています。「何年もの間、これほど早いわけではありませんでした」とBerndt氏は指摘します。「ほとんどのレースは夏と冬の各1週間に、集中的に開催されます。以前は、その1週間が終了してからすべてのEメールを一斉に送信していたため、参加者に連絡するまで数日から1週間以上経っていることがありました。今ではストーリーテリングはほとんど瞬時に行われています」

Vasaloppetはこのプロジェクトの一環として、過去のレース記録と画像をデジタル化して、膨大な歴史をより簡単に公開できるようにしています。こうした詳細なデータを個人のストーリーに取り込みやすくすることで、コミュニティへの帰属感と絆を築くことができます。

「イノベーションはIBMの貢献の一部にすぎません。数年にわたる提携でその実例を見てきました。Ateaもこの関係にぴったりフィットしています。今後どのようなストーリーを共有、模索できるか、ワクワクしています」

    Vasaloppetのロゴ
    Vasaloppetについて

    スウェーデンの文化機関として、毎年10万人近くの競技者がVasaloppet(ibm.com外部へのリンク)イベントに参加しています。1922年に最初のスキー大会が開催されて以来、過去1世紀にわたって拡大し続け、今では夏と冬に集中的に開催される「レース・ウィーク」中に10種類以上のスキー、自転車、徒歩レースを主催するまでに至っています。中でもクロスカントリー・スキーのコースは世界最大級の規模を誇ります。

    Atea社について

    IBMビジネス・パートナー、Atea社(ibm.com外部へのリンク)は、北欧とバルト諸国を中心に、製品管理とインフラストラクチャーを専門とするITサービス・ソリューションを提供しています。7.500人を超える雇用スタッフは、欧州7か国の85都市に分散しています。スウェーデンだけでも、30以上の現地オフィスで、直接雇用された2,700人の従業員とコンサルタントが活躍しています。

    次のステップ

    この記事で紹介されているIBMソリューションの詳細については、IBMの担当者またはIBM ビジネス・パートナーにお問い合わせください。

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    © Copyright IBM Corporation 2023. 日本アイ・ビー・エム株式会社 〒103-8510 東京都中央区日本橋箱崎町19-21

    米国で制作、2023年12月

    IBM、IBMのロゴ、Cognos、Db2、IBM Cloud、IBM Consultingは、米国およびその他の国々におけるInternational Business Machines Corporationの商標または登録商標です。その他の製品名・サービス名はIBMまたは他社の商標である可能性があります。IBMの商標の最新リストは、ibm.com/legal/copyright-trademarkでご覧いただけます。

    本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国であっても、特定の製品を利用できない場合があります。

    引用または説明されているすべての事例は、一部のクライアントがIBM製品を使用し、達成した結果の例として提示されています。実際の環境でのコストや結果の特性は、クライアントごとの構成や条件によって異なります。お客様のシステムおよびご注文のサービス内容によって各クライアントの結果は異なるため、一般的に予測される結果を提示することはできません。本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。