2020年4月、T-Mobile社は自らの競争力を大きく高め、米国の通信市場を変革しました。同社はSprint社を買収し、合併に着手することで、米国最大の5Gネットワークを構築しました。

当然ながら、この拡大は大きなリスクも伴いました。競争の激しい通信市場で顧客を獲得するためには、合併を急ぐ必要がありました。T-Mobile社は、2つの巨大ネットワークを統合する一方で、全体として一貫した信頼性と質の高いサービス品質を提供し続ける必要がありました。

その実現は、ネットワーク管理に左右されます。T-Mobile社は、IBM® Cloud Pak for Watson AIOpsが提供するツールを使用して管理体制を統合し、2つの巨大ネットワークを1つにまとめ、AIを活用した自動化を活用して信頼性と効率性を最大化しています。

T-Mobil社がSprint社を買収した際には、1日あたり約

300万

件の追加の障害を相関させる必要ありました

IBM Cloud Pak for Watson AIOpsを使用した平均的な障害処理時間:

19秒

5分から短縮されました

複雑さが倍増しても品質を最大化

T-Mobile社のプリンシパル・イベント・マネジメント・アーキテクトを務めるTom Higdon氏は、次のように述べています。「ネットワーク管理は、T-Mobileのネットワークを利用する人々や企業に提供するサービスの品質の極めて重要な部分を占めています。ネットワーク管理とは、提供するすべての優れたサービスをお客様が実際に利用でき、また期待通りの性能を発揮できるようにすることです。」

また、世界最大級の通信ネットワークを稼働させる場合、ネットワーク管理も極めて複雑なものとなります。Higdon氏はこう述べています。「これは単に無線ネットワークだけの問題ではありません。無線ネットワークは、他のサポート・ネットワークやインフラに依存しているからです。これにはデータセンターやIPベースのギア、アプリケーションとサービス、セル・サイト、スイッチ・サイト、およびあらゆる設備が含まれます。」

T-Mobile社がSprint社を買収した際に、その事業規模と複雑さは基本的に倍増しました。Higdon氏は次のように語っています。「合併の初日に、ネットワーク管理を提供するのに必要な業務範囲は、監視下に置かれた50万台近くのデバイスの分だけ拡大し、1日当たり約300万件の相関すべき新たな障害を生み出しました。」

さらに、2つのネットワークには明確に異なる、成熟した管理システムが存在していました。「統合の複雑さは、それぞれに10年以上が経過したシステムがあったことで増大しました」と、Higdon氏は述べています。これらのシステムには、2つの異なるコア管理プラットフォーム(1つは現在のIBM Cloud Pak for Watson AIOpsに組み込まれているIBM Netcoolソリューション、もう1つはサード・パーティーの管理ソリューションに基づくもの)に加え、コア・プラットにデータを送信する、複数ベンダーのさまざまなモニタリング・ツールが採用されていました。

最高のネットワーク・パフォーマンスの提供を重視したT-Mobile社は、毎日発生する数百万件の障害の中で対処可能な項目を特定するための最善の方法を模索しました。同社はまた自動化を一段と進め、ネットワーク管理をより効率的にし、ネットワーク自体をさらに信頼できるものにすることを目指しています。

T-Mobile店舗の正面ドアとウィンドウ・ディスプレイ

ネットワーク管理における柔軟性と効率性

Higdon氏はこう述べています。「合併のほぼ直後に、当社はIBMが製品スイートに投資しており、IBMが当社と真の提携関係を築くことを望んでいること、そして我々は共に進化し、共に成功できることを認識しました。そうした中で、いくつかの技術的な、また技術以外の差別化要因がその姿を現しました。そのため当社は、Watson AIOpsソリューションと共に前進することを決定しました。」

当時の最優先課題は、異なる障害管理プラットフォームを統合することでした。これは早急に完了する必要がある、困難なタスクでした。幸運なことに、Higdon氏と彼の同僚は、IBMソリューションが他社の管理およびモニター・ツールのデータを取り込むのうえで十分な柔軟性があることを確認しました。Higdon氏はこう振り返っています。「統合は迅速に完了しました。これは新規のビジネスとして、当社がまず最初に行ったことの1つです。IBMの製品スイート内のコネクターとアダプターは、最小限のカスタマイズを加えることで迅速にデプロイおよび構成可能であり、データ収集をすぐに開始し、障害およびイベント情報を強化することができました。これにより、ネットワーク運用チームを統合することができました。」

正式リリースのために統合されたネットワーク管理プラットフォームをステージングする際に、T-Mobile社は劇的な効率性向上を実現しました。「当社は全アラーム・ボリュームの90%を、目標としていた実動システムの10分の1の規模で処理できました。すべてのSNMPアラームは単一のSNMPプローブを介して、遅延や障害なしに受信される一方で、ネットワークに存在していた別の管理システムは、同じボリュームを処理するのに10個のSNMPゲートウェイを必要とし、複数の障害または処理遅延を起こしていました。」

日没の空を背景にした通信塔

実行可能な洞察を劇的に加速

買収されたプラットフォームと従来のプラットフォームとの運用が統合されたことで、Higdon氏と彼のチームは現在、管理体制の一層の合理化、定期的なネットワーク運用の「ノイズ」の削減、および問題の検出と解決、また理想的には予防のための最短のパスの策定に注力しています。「今は汎用的な性質がある、私がフレームワークと呼ぶものを作成し、実行しています。こうしたフレームワークは、複数タイプの問題に対処し、適切な成果を得るのに役立ちます。」 Higdon氏はその一例として、最近実装されたワイヤレス・コアアラームの相関フレームワークを挙げています。「相関はほぼ瞬時に遂行されます。これは差別化要因の1つです。過去データを検証し、毎分何千もの障害をスキャンする必要はありません。これは瞬時に行われるのです。」

Higdon氏によれば、こうしたフレームワークを構築するのは比較的容易です。「Watson AIOpsのツールはここでも柔軟であり、そのアダプターはこうしたフレームワークの作成に役立ちます。これは最大の強みの1つです。広範囲にわたるコーディングは必要ありません。いくらかの適応が必要となりますが、これは非常にシンプルな傾向があります。このソリューションは、非常に多くの異なるものを総称的に処理する方法を提供してくれます。また、当社のニーズを満たすように容易に適応可能な内部機能を提供します。」

Higdon氏と彼のチームはすでに、ユーザーに対する実行可能な洞察の提供が劇的に加速していることを目の当たりにしています。「当社はあらゆるレベルで完全なローカルおよび地理的な冗長性を提供できるよう、Watson AIOpsのデプロイメントを設計しています。さらに、受動システムの規模を、必要な障害ボリュームを最小限の遅延で処理できるように調整しました。最小のAIOpsコンポーネントを使用して、全体的な障害ボリュームの90%を処理する場合、すべてのエンリッチメント、相関、または抑止を含むシステムを介した障害発生から、それがユーザーに表示されるまでの平均時間が19秒であることが確認されています。これに対し、既存システムは5分近くを要していました。」

店舗内で顧客と会話するT-Mobile社の担当者

次のステップ: AIを使ったクローズドループの自動化

現在、T-Mobile社は、IBM Watson AIOpsのAIおよび機械学習機能が、より優れた反応性を実現し、ネットワークの信頼性をさらに強化するのにどのように役立つかをテストしています。

「我々は、AIがインテリジェンスな反応をしてくれることを期待しています。これは、相関カウントのしきい値をどこに設定するべきかという形でのインテリジェンスとなる可能性があります。あるいは、我々が把握していないリレーションシップが存在するのでしょうか。こうしたリレーションシップは、人間である我々が膨大な時間とエネルギーを費やすことなしに得ることはできないかもしれません。」

ネットワーク管理の目標は、リアクティブからプロアクティブ、そして最終的には予測可能な管理に移行することです。Higdon氏は、AIOpsを活用して次の段階に進み、クローズドループの自動化を実現しようとしています。「これは、当社が最終的に到達しようとしている段階です。ツールを使用して大量のデータを取り込み、そのデータの意味を理解し、推奨を行い、場合によってはインテントベースのオーケストレーションまたは自動化に到達することを目指しています。」

競争が熾烈な業界にあって、これはそうした規模のネットワークと合わせて価値ある優位性となるでしょう。「キャパシティーを増やす必要があります。情報をインテリジェントな自動化プラットフォームに転送し、変更を有効にするツールが必要です。これはすべて人の介入なしで行われます。これが我々の計画であり、クローズドループであり、今現在も取り組んでいる課題です。」

T-Mobile社のロゴ

T-Mobile社について

T-Mobile社(外部リンク)は、世界有数の最も急成長を遂げているモバイル通信プロバイダーのひとつです。ドイツのボンに本社を置くDeutsche Telekom AGの子会社であるT-Mobile社は、欧州、米国、カリブ諸国の利用者および企業顧客にサービスを提供しています。2020年には実質で550万人の顧客を増やし、収益は684億米ドルに達しました。

製品・サービス
IBM® Cloud Pak for Watson AIOps

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2021年11月

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