基幹システム基盤刷新の複雑さに対し、段階的なサイジングと柔軟な仮想化基盤を組み合わせ、停止を最小限に抑えながら情報システム基盤の移行を実現。
四国電力株式会社(以下、四国電力)では、経理・資材業務、原子力発電所の保修業務、営業業務の3つの業務分野でSAP ECC 6.0を利用した業務システムを開発しており、特に経理・資材業務システム(以下、ERPシステム)はグループ13社で利用する業務システムとして長年運用してきました。
このような状況の中で大きな課題となったのが、ECC 6.0保守サポートの終了です。基幹業務を支える重要なシステムであるため、長期的な安定稼働を見据えると、S/4HANAへの移行は避けられない一方で、膨大なデータ移行作業、作業に伴うシステム停止時の業務対応や作業不調時の切り戻し手順の確立などについて入念な検討が必要となります。とりわけ、最初に着手したERPシステムのS/4HANA移行のプロジェクトは、初期段階でサーバーの精緻なサイジングが難しく、またS/4HANAのインメモリDB(HANA DB)に現行システムの大量データを移行して安定稼働するのか見通せないなど、情報システム基盤のリソース不足が移行計画全体に影響を及ぼすリスクを抱えていました。
こうした課題に対し、四国電力は段階的にリソースを調整するアプローチを採用しました。まず既存のIBM® Power9(E950)にメモリーを追加、開発サーバーを構築し、S/4HANAが必要とする実サイズを正確に把握。これにより、品質保証サーバー→本番サーバーの順に負荷と要件を確認しながら、適切にサイジングし、都度、必要なメモリー等を追加することにしました。
一方、ERPシステムのS/4HANA移行プロジェクトを進める中で、先行してCIS(顧客情報システム)のPower8(S824)保守サービス終了への対応が必要となりました。
このため、Power9(E950)に対する品質保証・本番サーバー用メモリーを追加する計画を見直し、CISのPower8(S824)の取替に合わせて、ERPシステムも収容可能な基盤として最新のIBM® Power10(E1050)を導入。高い処理性能と大容量メモリーに加え、IBM® PowerVMによる仮想化基盤とShared Processor Poolを用いたCPUリソース共有により、S/4HANA、ECC6.0その他のアプリケーションなど複数のシステムが並行稼働する環境でも安定したリソース配分を可能にし、突発的なワークロード増にも柔軟に対応できる構成となりました。
さらに四国電力は移行後の運用も見据え、今後のS/4HANAのパフォーマンス改善や、開発環境の準備などにも柔軟に対応できるよう、物理コアの迅速なアクティベーションが可能な構成を採用しました。これにより、今後の業務変化にもスピーディーに対応できる柔軟な情報システム基盤が整いました。
なお、CISのPower10(E1050)への移行時には、停止時間を抑えるため、IBM® Storage間での高速データコピー(V7000からFS7200)を活用した移行方法を採用しました。これにより、サーバー移行にかかる作業工程を大幅に圧縮し、業務影響を抑えつつ、実質1日という短期間で新サーバーへの移行が完了しました。
現在、四国電力のSAP関連ストレージはIBM FlashSystemで構成されており、高いパフォーマンスと共に高速データコピー機能をはじめとする高度なストレージ機能が、今回の迅速な移行を実現する上で大きな役割を果たしています。
四国電力は、3年にわたる長期プロジェクトを着実に推進し、計画通り2025年のゴールデンウィーク中にS/4HANAへの本番移行が完了しています。以降も処理性能や安定性に問題を抱えることなく運用を継続しています。
また、IBM FlashSystemの高速データコピー機能を活用したことで、サーバー移行は従来約5日要していた作業を1日で完了。停止時間を大幅に短縮できたことで、影響の大きい期間を避けながら移行を進めることが可能になり、事業継続性の確保にも大きく寄与しました。
さらに、IBM Powerの仮想化技術を活用してリソースを最適化した結果、サーバー・ソフトウェア費用を約5,400万円削減。Shared Processor PoolによるCPUの柔軟な割り当てで開発・テスト期間中の複数サーバーの併存期間も安定性を保つことができ、移行期間のリスクを大幅に抑えることにも成功しています。
今回の取り組みで得られた知見は、2026年度に予定しているEAMの移行にも活用できる見込みです。段階的なサイジングや、停止時間を抑えるためのストレージ機能を活かした移行方法や、併存環境でも安定稼働を実現するリソース設計といったアプローチは、同様の大規模な基幹システム刷新においても有効です。
本番・検証・開発環境を含むERPシステムをIBM Power上で一元的に運用できるようになったことによる保守性・運用性の向上に加え、IBM PowerのIaaSサービスであるPower Virtual ServerがSAP社のCloud ERP(RISE with SAP)に対応していることで、将来的にクラウド環境へ移行することになった場合にも容易に対応可能となりました。さらに、ソフトウェア・ライセンス費用の削減やサーバ台数やラックスペースの削減などの課題解決にも今回の結果が活かせると見込まれています。
四国電力の情報システム部 基盤開発・最適化グループリーダーの濱上 輝之氏(2026年3月時点)は、「従来よりIBM Powerを利用していますが、基盤障害の経験が無い程の優れた堅牢性を備えており、高い可用性を要求される重要システムの基盤として絶大な信頼感を寄せています。加えてコア当たりの性能も格段に向上しており、更なる高集約化に期待しています」と述べます。
四国電力株式会社は、四国地域における電力供給を担う企業として、安定した電力サービスの提供とともに、デジタル技術を活用した業務変革に取り組んでいます。また、将来の収益源となる新たな価値の創造を目指し、総合エネルギー、情報通信、ビシネス・生活サポートといった多様な分野においてビジネス領域を伸長しています。四国電力グループが培ってきた技術やノウハウを活かしながら、四国地域の産業特性やお客様ニーズに合致するサービスをご提供できるよう、グループ一体となって取り組みを進めています。
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