小さなスタートアップ企業が、とてつもない影響を与えることも

2020年、韓国の医薬品の研究開発の大手企業であるDaewoong Pharmaceutical社は、新興企業の起ち上げ支援に乗り出しました。その内容は、医薬品業界全体の重要なプロセスを革新する可能性を秘めた企業を支援することで、結果的に消費者の安全強化への貢献を目的とするものでした。

その支援を受けたのが、SELTA SQUARE社です。製薬業界には医薬品安全性監視(PV)という活動があり、医薬品の副作用を検出して規制当局に報告することで、その評価、理解、予防に努めていますが、同社はこの活動にイノベーションをもたらしたのです。PVは臨床試験段階だけでなく、医薬品として流通している全期間において実行される必要があります。しかしそれには、医薬品製造者の多大なたゆまぬ努力が必要になります。

SELTA SQUARE社は、この困難な活動に IBM® Robotic Process Automation(RPA)ソフトウェアと自社開発のAIアルゴリズムを適用することで、業界初の自動化PVサービスの運用に成功しました。これにより、同社は国内だけでなく世界各地にこのサービスを提供しています。まさに、製薬会社が消費者の安全を確保するためのゲーム・チェンジャーになるでしょう。

SELTA SQUARE社はIBM RPAの採用により

4倍以上

PVプロセスを加速させました

これまで5分かかっていた検索時間が、平均で

1分11 秒

まで短縮されました

重要だが時間がかかり退屈な作業

医薬品の開発は、まさに日進月歩です。2017年から2021年にかけてグローバル・マーケットに参入してきた新薬の数は、それ以前の5年間に参入してきた新薬の47%以上となりました(外部リンク)。そして、2026年までの間にさらに増加することが予測されています。

これほど次々に新薬が開発されると、どれほど大規模な臨床試験を行っても、それらの医薬品が服用者や他の薬とどのように相互に作用するかについて、完全には説明できなくなってきます。これこそが、PVが重要である理由です。PVとは、医薬品の安全を保障するためのコア・プロセスなのです。

しかし薬の効き目や副作用についての情報は(特に市販されてからは)、複雑で情報源も様々になります。RPAの採用以前、Daewoong Pharmaceutical社のPVチームは同社の100件以上の製品に対して、毎週PVプロセスを実施していました。PVプロセスの対象製品には、PRS阻害剤や肺線維症治療薬など、高リスク疾患の治療薬も含まれていたため、安全性を確保するためにグローバルなデータ収集が不可欠でした。

棚にある薬をチェックする薬剤師

このプロセスでは、副作用や有害事象、非典型的なラボ結果などに関するあらゆるデータを、広範囲に渡って検索します。この検索は国内外のデータベースにとどまらず、医学文献や症例報告など、あまり体系化されていない情報源でも行われました。さらにチームは、各製品の原薬(API)の名前だけでなく、すべての製品の名前も検索する必要がありました。 複数のAPIを含む製剤であれば、さらに検索が必要になる場合もあります。

この検索作業と併せて、PV担当者は各情報のスクリーン・ショットの保存、ソース文書のダウンロード、検索結果の文書作成、Daewoong Pharmaceutical社のサーバーへのデータのアップロードを行う必要がありました。

通常このPVプロセスには一人のチーム・メンバーが割り当てられていましたが、100件もの製品にPVプロセスを実行するのは一日がかりでした。

このプロセスこそが、まさに自動化を採用する絶好の機会だったのですが、最初の試みは不毛な結果に終わりました。PVチームはサード・パーティーのRPAソフトウェアを使用して、検索プロセスを自動化しました。このソフトウェアは検索結果をMicrosoft Excelのスプレッドシート・データに変換するのですが、Excelと一部のデータ・ソース間に互換性が無いため、手動での再作業と修正が必要でした。これによりレポート作成に時間がかかってしまい、自動化によって得られた効率性が相殺されてしまいました。

とはいえ、チームは自分たちの方向性が正しいことは確信していました。彼らには、より優れたソリューションが必要だったのです。

RPAにより効率が改善し、手作業の品質も向上

SELTA SQUARE社は同じことの繰り返しにとどまらない新たなソリューションを開発して、真のイノベーションを成し遂げました。これにより、同社は独立した一企業として立ち上がったのです。SELTA SQUARE社はIBMと協力して、従前のRPAソフトウェアをIBM RPAに置き換えてソリューションをWebに移行し、韓国初の PV-as-a-Service(PVaaS)システムを作りました。SELTA SQUARE社の最高経営責任者(CEO)であるMin Kyung Shin氏は、「私たちが開発したウェブ・ベースのサービスは競合企業には無い強みであるだけでなく、他の企業にも簡単に提供できます。これほど価値あるイノベーションを、弊社の中に閉じ込めておくことはできませんでした」述べています。

SELTA SQUARE社は、IBM RPAソフトウェアを使用することでデータの非互換性の問題を解消して安定した性能を実現し、コンピュータ化システム・バリデーション(CSV)プロセスですべてのデータを検証しています。これは、米国食品医薬品局(FDA)のFDA21 CFR Part 11ガイドラインおよび国際製薬技術協会(ISPE)GAMP 5ガイドラインなど、データの整合性を保証するための業界の規則に準拠しています。

オフィスのデスクでコンピュータを操作するビジネスパーソン

処理精度が高まったことで、チームは自動化されたシステムの価値を存分に発揮できるようになりました。RPAソリューションは、人間よりもはるかに高速で文献検索を実行するだけでなく、24時間体制で作業することもできるというメリットがあります。またSELTA SQUARE社が検索処理に取り込んだAIにより、重複した検出結果の検出や除去などの単純な反復作業に費やす時間が短縮されています。これについてShin氏は、「 まず、IBM RPAが文献から主要な用語を検索します。次に、SELTA SQUARE社のAI Case DetactorがRPAによる検索で特定された文献内のページでさらに検索作業を実行し、重複していない正しい情報を強調表示します。専門家は引き続き情報に基づいた行動を取りますが、今は鍵となる情報をより早く獲得できるようになっています」と述べています。

PVプロセスは以前よりも4倍以上速くなっていますが、節約された時間は人間のスタッフがPVの品質を向上させるための時間となります。

Shin氏は次のように説明しています。「以前は、文献検索だけで1つの検索項目につき平均5分程度かかりました。私たちの調査によると、他の企業も所要時間は似たようなものです。しかし新しいRPAソリューションを使用すると、1回の検索項目につき平均でたったの1分11秒で検索結果が得られます。しかもこの作業は、夜間に行われるのです。今ではPVのスペシャリストは検索に何時間もかける必要がなくなり、検索の済んだ文献を見るだけで医学的判断を下せるようになりました。私たちのチームは現在、有効な症例をレビュー、評価、分析することに重点を置いており、文献監視の質を総合的に向上させています」

グローバルなイノベーションの可能性

SELTA SQUARE社は、2022年7月に自動化されたPVaaSサービスを公式に立ち上げました。Shin氏は、「多くのお客様から弊社のPVソリューションの価値を実感していただけるようになり、お客様にイノベーションを体験していただく弊社の活動も軌道に乗り始めました。今後も弊社としましては、日々強化されるPV規制に対応すべく様々な業務を体系的に処理するとともに、世界中の人々により安全な医薬品をお届けすることに貢献していく所存です」と話しています。

SELTA SQUARE社のロゴ

SELTA SQUARE社について

SELTA SQUARE(外部リンク)社は医薬品業界に、医薬品安全性監視のニューノーマルを提供しています。インダストリー4.0テクノロジーをPVに適用する唯一の企業であるSELTA SQUARE社は、医薬品の安全性を監視し、より体系的かつ科学的に評価を行うためのプラットフォームを提供しています。お客様と連携してPVの効率性を高め、コストを削減し、時間を節約して専門家がより価値の高い作業を行えるように支援しています。SELTA SQUARE社は、今後もより多くの皆様への医薬品の安全性に貢献したいと考えています。

製品・サービス

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2022年9月

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