2020年の春、多くの人がヘアスタイルについて大胆になりました。 コロナウイルスが北米に上陸したため、サロンや理髪店は一時的に休業したり、営業を制限したりする中で、 自分で髪を染めるなどというリスキーな行動は今まで考えたこともなかった消費者が、DIY(自分で染める)キットやその他のセルフケア製品をオンラインで購入したのです。
「楽観的に考えれば、パンデミックは私たちにとって、最悪な状況の中に良い面もあった出来事でした」と語るのは、Sonoma Taylor氏です。 プロフェッショナル向け美容製品の世界的な販売代理店および専門小売業者であるSally Beauty Holdings社のソリューション・デリバリー担当バイス・プレジデントを務めています。「私たちはすでにプロ仕様のDIYブランドに大きな力を注いでいましたが、今では消費者がそれらを使用する時間が増え、実験する機会が増えました。 どうせオフィスに行かないのなら、髪を紫に染めるのも悪くないですよね」
Sally Beauty Holdings社は、消費者にサービスを提供するSally Beauty Supply LLCと、サロン専門家にサービスを提供するBeauty Systems Group LLC(BSG、ブランド名はCosmo Prof)の2つの事業会社を通じて運営されています。 当然のことながら、パンデミックが始まったときにSally Beauty Supply社はオンライン需要の大幅な急増を経験しました。 同時に、政府からの命令と従業員の安全に対する会社の懸念によって、米国にある同社の配送センター3カ所の業務は減速しました。
「消費者は当社の製品を本当に欲しがるようになりましたが、いつも倉庫から出荷できるとは限りませんでした」とTaylor氏はコメントします。
幸いなことに、Sally Beauty Holdings社は前年、オムニチャネルB2CとB2Bの顧客体験を向上させるためのデジタル・トランスフォーメーションに着手していました。 同社は、注文と購入のプロセスを簡易にして、オンラインと店舗の顧客にシームレスなサービスを提供することで、売上と顧客満足度を向上させたいと考えていました。
その取り組みの一環として、Sally Beauty Holdings社は、 IBM Sterling Order Managementプラットフォームを使用して注文管理とフルフィルメントのシステムをモダナイズしました。 このソリューションは、在庫、注文、フルフィルメントを一元的にリアルタイムで可視化し管理します。 また、店舗からの出荷(SFS)やその他のデジタル・フルフィルメント・オプションの導入をスムーズにするのにも役立ちます。 さらに、IBMは業界の専門知識と知識を提供し、デジタル・トランスフォーメーションを通じて同社をガイドしています。
Sally Beauty Holdings社は、IBMのビジネス・パートナーであるPerficient社と連携し、IBM Cloud上にIBM Sterlingプラットフォームを導入しました。このプラットフォームは、多様な事業分野とサービスをサポートするための拡張性、可用性、および豊富なセキュリティー機能を備えています。
SFS機能の市場導入までにかかった期間は3週間
2020年以降200万個のSFS出荷を達成し、売上が540%増加
2020年3月までに、同社は新しいプラットフォームで、いくつかの初期導入を正常に完了しました。 同社は、sallybeauty.comとcosmoprofbeauty.com向けに、直接配送機能を含む注文管理システムを開始しました。 また、Cosmo Profの直販コンサルタントのオンライン注文フルフィルメントも可能にし、cosmoprofbeauty.comでの即日配送(SDD)機能を導入しました。 また、カナダのSally Beautyの16店舗が参加するsallybeauty.caのSFSプログラムを試験的に実施しました。
その後ウイルスの突然の到来に伴い、Sally Beauty Holdings社は、最適な顧客体験を提供しながら、DIY製品に対するオンライン需要の急増に対応するために何ができるかをすぐに検討しました。
Sally Beauty Holdings社の次のステップで、同社の機知と機敏性が明らかになりました。 同社は、配送センターからの注文をタイムリーに処理できなかったため、別の方法を見つけたのです。
「私たちはこんなふうに話しました。『米国のSally Beautyの店舗には大量の在庫がある。 店舗から発送してみよう。そうすれば、サプライヤーが完全に稼働していない間でも、当社の製品の品揃えを拡大することができる。 それに、店舗従業員の仕事も増えるし、お客様が買い物に来てくれるきっかけにもなる』とね」とTaylor氏は説明します。
同社は3週間以内に、米国にある3,300の小売店のうち2,700店舗をフルフィルメント・センターとして機能できるようにしました。 つまり、同社の米国内ネットワークに数千の新しい配送ノードを追加することで、同社は顧客満足度と売上を大幅に向上させました。
Taylor氏は、注文の流通と輸送に関する新しいビジネス・ルールの確立とトレーニングなど、新しいSFS機能を店舗内で実行することは、複雑なプロセスであると説明します。 IBM Sterling Order Managementソリューションを活用して、チームは迅速に作業を完了しました。
「とてもストレスがかかりました。しかし、どこに需要があり、どこに在庫があり、消費者に届ける最適な方法はなにか、それらを理解するためにIBMアプリケーションは構築されています。 信じられないほど強力なアプリケーションで、必要なことを実行できるよう柔軟に設定できます」と同氏は言います。
また、チームは実装中にIBMやPerficient社と緊密に連携し、アジャイル配信手法を適用してアプリケーションを会社のPOSシステムに統合するなどの作業を行いました。 「Sally Beautyチームと緊密に連携して、統合された包括的なソリューションを導入してくれた、IBMのサポート・チームとPerficient チームには世界中の称賛を贈らなければなりません」とTaylor氏は言います。
たとえば、稼働開始直後、膨大なトランザクション量が原因でSFSアプリケーションのパフォーマンスが低下しました。 「当社では SaaS(サービスとしてのソフトウェア)配信モデルを使用していますが、拡張性とパフォーマンスに関して、この時以外では問題が発生したことはありません」とTaylor氏は言います。 「しかし、私たちのように電子商取引事業を拡大する場合、ちょっとした課題が生じるものです。 すぐにIBMやPerficientと協力してクラウド機能のサイズを変更し、数時間以内に復旧して稼働できるようになりました。 それ以来、パフォーマンスの問題が発生したことは一度もありません」
Sally Beauty Holdings社は、SFS機能をいち早く導入し、北米でパンデミックが起こった初期の数カ月間で、新しいB2C顧客を獲得しました。 しかし、サプライチェーンの混乱により店舗内の在庫がバラバラになっていたため、顧客は注文の分割発送を受けることがよくありました。 ブランド体験を向上させ、配送コストを最小限に抑えるために、同社はSFSオプションを提供する店舗の数を2,700店舗から245店舗へと徐々に減らしました。 同社はネットワークの最適化を続け、在庫割り当ての合理化につなげています。
2020年4月、一部の店舗が安全に営業を再開し始めたため、Sally Beauty Holdings社は、米国とカナダのほとんどのSally Beauty Supply店舗で、カーブサイドピックアップおよびオンライン購入と店舗受け取り(BOPIS)の機能を、迅速に試験運用開始して展開しました。 このモデルにより、注文の分割と配送コストがさらに削減され、新規顧客が店舗の場所や品揃えをよりよく理解できるようになりました。
パンデミックが始まってから1年以上が経過した今も、Sally Beauty Holdings社のデジタル・トランスフォーメーションは続いています。 2021年の夏、同社はcosmoprofbeauty.comにBOPISオプションを導入しました。 また、sallybeauty.comでは同日2時間、cosmoprofbeauty.comでは同日3時間の配達サービス導入も進められています。
「顧客に優れた体験を提供し、コストを最適化するために、適切な場所に適切なタイミングで在庫を配置することに引き続き重点を置いています」とTaylor氏は言います。
Sally Beauty Supply社は、わずか数週間で米国の2,700店舗にSFS機能を導入し、200万以上の SFS出荷を行って、売上を540%増加させました。 また、1,046のCosmo Prof参加店舗では、42,000件を超えるSDDの出荷を行っています。
IBM Sterlingプラットフォームを使用することで、Sally Beauty Holdings社は真のオムニチャネル購入体験を提供できるようになり、顧客が自分の選択した手段を通じてブランドと関わることができるようにしました。 高度なフルフィルメント・オプションでオンライン・ビジネスを強化することで、同社は顧客満足度を向上させただけでなく、収益性も向上させました。
過去1年半を振り返ってTaylor氏は、それはスリル満点の旅だったと述べています。 「これほど短期間でどれだけのことをしてきたかを思い返すと、信じられないほどです」と同氏は言います。 「少なくとも2020年と、その頃起こったすべてのことに間に合うようにデジタル移行の取り組みを開始できたのは、正直少し幸運だったと思います」
今後も、Sally Beauty Holdings社の取り組みは続きます。 Taylor氏は、IBM Sterling Fulfillment Optimizer with Watsonソフトウェアを採用して、フルフィルメント拠点の在庫需要を予測して注文後のプロセスを最適化するなど、購買体験をさらに向上させようと考えています。同社はまた、Cosmo Profのウェブサイトを通じて、サロンの専門家やフィールド・セールス・コンサルタントへのサービスを向上させる方法も検討する予定です。
Taylor氏は小売企業に対し、Sterlingプラットフォームの力をどのように活用するかについて、柔軟に対応することを推奨しています。 「ソリューションは進化を続け、新しい機能が追加されていきますが、消費者の期待は変わり、オペレーションも変わります」と同氏は言います。 「私たちは、こうした需要に応えるために自信を持って新機能を導入し、後でその決定を見直して改良することで、さまざまな結果を導き出せることを知っています」
当初のDIY製品ラッシュが一段落したとはいえ、家庭用ヘアケア、スキンケア、ネイルケア製品の需要は今後も続くと予想されます。 他にもいくつか確かなことがある、とTaylor氏は言います。 消費者はパンデミック中に導入されたオンラインショッピングの利便性を手放すことはなく、サプライチェーンは常に期待どおりに流れるとは限りません。
「ありがたいことに、当社にはIBM Sterlingプラットフォームがあるおかげで、常に先手を打って市場の需要に迅速に対応できます」と同氏は言います。
テキサス州デントンに本社を置くSally Beauty(ibm.com外部へのリンク)は、店舗数ベースで世界最大のプロ用美容製品の流通・小売業者です。 Sally Beauty Holdings社は、ヘアカラーやヘアケア、スキンケアやネイル用品など数千の製品を提供することで、小売消費者とサロン関係者の両方にサービスを提供しています。 従業員27,000名、世界中に3,700店舗を展開する同社は、2020年に35億米ドルの売上を上げました。
Perficient社について
ミズーリ州セントルイスに拠点を置くIBMビジネス・パートナーのPerficient社(ibm.com外部へのリンク)は、戦略、クリエイティブ、テクノロジーに関する能力を提供するグローバルなデジタル・コンサルタント会社です。 同社は、現実的なアプローチとともに、大局的な思考と革新的なアイデアをもたらし、世界最大の企業や一流ブランドの成功を支援しています。 1997年に設立されたPerficient社は、北米、ヨーロッパ、インド、中国で働く約3,300人の従業員を擁しています。
© Copyright IBM Corporation 2021.IBM Corporation, IBM Watson Supply Chain, New Orchard Road, Armonk, NY 10504
米国で製作、2021年9月
IBM、IBMロゴ、ibm.com、IBM Cloud、およびIBM Sterlingは、International Business Machines Corp.の商標であり、世界中の多くの管轄区域で登録されています。その他の製品名およびサービス名は、IBMまたは他社の商標である可能性があります。IBM商標の最新リストは、ウェブ上の「著作権および商標情報」 https://www.ibm.com/jp-ja/legal/copytradeで入手できます。
本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国であっても、特定の製品を利用できない場合があります。
記載されているパフォーマンス・データと顧客事例は、例示する目的でのみ提供されています。実際のパフォーマンス結果は特定の構成や作動条件によって異なります。IBMビジネス・パートナーは独自の価格を設定しており、価格は異なる場合があります。 本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づいて保証されます。