ENN Group Co., Ltd.は、現代のテクノロジーを使用して、未来のエネルギー課題を解決することに全力で取り組んでいます。中国の80都市以上で顧客にサービスを提供しているこのグリーンエネルギーの大手企業は、長きに渡り業界の先頭に立って技術革新を進めてきました。同社の最終目標は、人々の生活の質を向上させるクリーンエネルギーの選択肢を促進することです。

2020年初め、新型コロナウイルス感染症の流行により、同社のオフィスに勤務していた何千人ものスタッフが、ほぼ一晩で在宅勤務にシフトすることを余儀なくされました。リモート勤務に関連するITサービスに対する需要(VPNの許可、パスワードのダウンロード、リセットを求める要求など)が一夜にして急増しました。数多くのITヘルプ・デスク担当者が途方に暮れている姿は、想像に難くありません。

幸いにもENN社は、IT従業員のサービス・デスクへの問い合わせを解釈して対応するために、IBM Watson® AssistantIBM Watson DiscoveryテクノロジーのAIに加えて、IBM® Robotic Process Automation(RPA)with Automation Anywhereソリューションのオートメーション機能を組み合わせた新しい仮想アシスタントをロールアウトしようとしていたところでした。この仮想アシスタントの支援により、わずか半日足らずで何千人もの従業員が、リモート勤務のために必要なテクノロジーを使用できるようになりました。以前であれば、このような作業には数日あるいは数週間かかっていたことでしょう。

同社のデジタル・オートメーションのジャーニーは、新型コロナウイルス感染症が新聞の見出しを飾るようになるはるか前から始められていました。1年前に、同社は「Little ENN Assistant」(ENN社の小さなアシスタント)という仮想従業員を同社の財務共有センターに導入しました。

数千人の従業員のヘルプ・デスク要求への対応にかかった時間

0.5

新しい仮想アシスタントの稼働開始にかかった時間

2

日(数週間ではない)

この自動化財務アシスタントはIBM RPAテクノロジーをベースとしており、レポートの取得や毎月の帳簿処理などの基本的なバックオフィス作業を実行しました。このアシスタントの導入は大成功で、1日に2,000~3,000件のタスクを実行し、70種類以上のビジネス・シナリオを実施することで数百万ドルの価値がもたらされ、処理時間を60%削減できました。

ですが、これは始まりに過ぎませんでした。複合的な多角経営企業であるENN社は、運用コストの上昇、一流の製品やサービスを求める顧客からの期待の高まり、ビジネス要件の絶え間ない変化、従業員の満足度を継続的に維持しなければならないというニーズに直面していました。同社は、次のステップのオートメーション・ジャーニーに踏み出すべき時を迎えていました。すなわち、ハイパーオートメーションです。Gartner Researchが2020年の戦略的技術のトップ・トレンドに選んだハイパーオートメーションとは、インテリジェントな意思決定に基づく行動を促進するためにオートメーションとAIを組み合わせることです。

両手と1つの脳

このジャーニーを成功させるために、ENN社は既存のIBM RPA基盤を土台として、IBM Cloud Pak® for AutomationオファリングのAI機能と、IBM Watson AssistantソリューションおよびIBM Watson Discoveryソリューション(これらのソリューションはどちらもIBM Cloud Pak for Dataプラットフォーム上で稼働します)とを組み合わせて構築することを選択しました。この単一のプラットフォームにより、ENN社は将来のソリューションのための基盤だけでなく、同社の事業全体のデータを統合、運用化、管理する能力も手に入れ、結果的にコストを削減しながらデータ・サイロを解消できるようになりました。

これは十分な根拠に基づいて決断された選択でした。IBM Watson Assistantソフトウェアは、米調査会社のForrester社から、2018年に会話型コンピューティングのリーダーとして評価されました。また IBM Watson Discoveryソリューションは、2019年にAlconicsの「Enterprise AI Awards」の「Best Innovation in Natural Language Processing(NLP)」を受賞しています。それに加えて、IBM Cloud Pak for Automationは、事前に組み込まれたオートメーション技術とローコード・ツールによる利便性を備えているので、自動化されたアプリケーションとサービスの設計、構築、実行を迅速かつ大規模に行うことができます。

AIの「脳」を提供するIBM Watsonのテクノロジーにより生まれ変わったENN社の仮想AIアシスタントは、ユーザーの意図を尋ね、その情報をIBM RPAのオートメーションの「2つの手」に渡して、適切なアクションを実行できるようになりました。

このようなインテリジェントな仮想アシスタントの利用は、今や従業員や顧客のセルフサービス機能にも及んでいます。パンデミックが始まったときに稼働を開始したこのITデスクトップ・サービスAIアシスタントは、今もIBM Watson AssistantおよびIBM RPAソリューションを活用して、従業員からのITに関する問い合わせの照会と支援を継続しています。

回路基板で表された脳のイラスト

財務関連の問題については、同じくIBM Watson Assistantのテクノロジーをベースとして構築されたAIアシスタントが、社内の多様な業務チーム、財務チーム、財務共有センターの間で何度も行われる複雑な会話や対話をサポートすることで、コミュニケーション・サイクルが短縮されるようになりました。さらに、ユーザーの権限やビジネス・ニーズに基づいて、財務データへのアクセス権も付与しています。

また顧客中心のAIアシスタントは、顧客にビジネスやITのサービスを提供しています。利用者は素早く簡単に請求書の支払い状況などの質問に回答してもらえるので、運用コストを削減しながら顧客体験を向上させることができています。

さらに従業員AIアシスタントにより、ENN社の5万人の従業員は数百件のビジネス・システムに格納されている情報にアクセスできるようになりました。従業員は、個々の内部システムにログインして手作業で照会を実行することなく、費用レポートなどの内部プロセスに関する最新の状況を取得できます。この仮想アシスタントはIBM Watson Discoveryソリューションを使用することで、エンタープライズ・データベースとナレッジ・データベースをインテリジェントに検索して、顧客サービス担当者が顧客からの複雑な質問に回答できるように支援しています。

また、同じくIBM Watson Discoveryテクノロジーで駆動する「エキスパート」アシスタントは、大量の非構造化データや構造化データ(製造マニュアル、開発ファイル、内部ユーザー・ガイドなど)を解析しています。これにより従業員は、これまでは利用できなかった情報や、時間のかかるトレーニングや検索を行わないとアクセスできなかった情報にアクセスできるようになりました。

教室のテーブルに植物を置いている若い女性とその背景にいる他の人たち

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2020年12月

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