ビジネス上の課題
DXC社のLife Insurance and Wealth Managementコンタクト・センターのCSRは、電話、Eメール、書面による顧客からの複雑な問い合わせの処理時間が長いという課題を抱えていました。
概要と経緯
効率性と自信が向上したDXC社のチームは、初回解決率の改善に集中しました。これにより、従業員の離職率と新人研修コストが削減され、CSRの回答速度が向上しました。
成果
平均的な電話対応時間が30%短縮
これにより、質の高いサービスを提供できるようになりました。従業員の満足度の向上
CSRに初日からツ各種のールを提供して、新人研修の時間を短縮することで実現しました。生産性の2桁向上
従業員がより多くの問い合わせに、自信を持って対応できるようになりました。ビジネス上の課題の詳細
ストレスの多い環境の脱却
保険会社に電話で問い合わせたことのある顧客は誰でも、一度は通話を保留にされたことがあるはずです。保留時間が1分に満たなくても、顧客とCSRの関係は悪化します。特にCSRが複数のソフトウェア・システムを使用しなければならない場合、保険会社のコンタクト・センターは顧客とCSRの両方にとって混沌としたストレスの多い環境となりかねません。それがまさに、DXC社のLife Insurance and Wealth Managementコンタクト・センターで起こったのです。CSRは、ほぼすべての顧客からの問い合わせにおいて、異なる複数のシステムから関連するデータを見つけ出すのに苦労していました。
DXC社のコンタクト・センター・スーパーバイザーであるMelissa Randolph氏は、こう振り返ります。「とても大変でした。問い合わせがあるたびに10種類のシステムを立ち上げて必要な情報を探すため、何度も通話を保留にしては顧客とやり取りをする、といった対応を繰り返す必要があり、神経をすり減らしていました。これではとても、良い顧客体験とは言えません」
スタッフもまた、自分たちの仕事の質が低いと感じて、不満が募っていました。その結果、DXC社は人材とその育成への投資に見合った費用対効果が得られていませんでした。
DXC社のコンタクト・センター責任者であるWayne Harrington氏は、こう説明します。「皆さんは、コンタクト・センターの仕事とはこういうものだろう、とそれぞれ想像されていると思いますが、保険の場合は少し違うんです。顧客は、私たちが彼らの代理人となり、何百もの商品に関するどんな質問にも答えられることを期待して、電話をかけてきます。現場のスタッフは何から何まで知っていることが前提ですし、不明なことがあれば10種類もの管理システムを使用して答えを見つけ出さなければならない、という立場に置かれているのです」
DXC社のチームは、CSRと保険契約者の通話体験の満足度と成功を高めるために、この困難な環境を進化させる方法を模索しました。
「このままでは持続可能なビジネスができないので、アップグレードする必要があることは明白でした」とHarrington氏は付け加えます。
“ 多くの保険会社のコンタクト・センターと比較して、当社は立ち遅れていました。より良いシステムに投資しなければ、事業拡大は実現できません。 ”
— Wayne Harrington氏, コンタクト・センター責任者, DXC Technology社
概要と経緯の詳細
古いものを捨て、Watsonを取り入れる
スタッフを複数の管理システムから単一のプログラムに移行することは、簡単な作業ではありませんでした。DXC社は、IBMとWatson®人工知能テクノロジーに注目し、IBMは最新のテクノロジーを駆使してコンタクト・センターを業界のパイオニアとして位置づける「Watson Journey」という複数ステップの取り組みを考案しました。両社は、最初のステップとして、既存のWEXダッシュボードに新たにWatson Discoveryソリューションを統合したものを、CSRの業務に使用することを決定しました。このダッシュボードは、既存の10種類のシステムから顧客情報や契約情報を引き出し、1つのインターフェースにまとめたものです。この取り組みの目的は、DXC社の重要業績評価指標(KPI)の1つである、問い合わせごとの電話対応時間を短縮することでした。
「Watsonのダッシュボードには非常に多くの価値があります。当社は保険会社を顧客サービス業界のトップに位置づけるためにも、まずは動き出す必要がありました」とHarrington氏は説明します。
「これは普通のプロジェクトではありませんでした。保険業界の多くの企業がそうであるように、当社もテクノロジーの老朽化という課題を抱えており、これは当社が変革のリーダーになる機会でもありました」と彼は続けます。「一旦本腰を入れて取りかかると、当社はかなり素早く動き始められました。概念を理解し、適切な人材に参加してもらうことで、移行はスムーズに進んだのです」
変革が動き出すと、契約情報や手続きに関する質問に対して、正確な回答を迅速かつ一貫して見つけられるようにする別のツールをCSRに提供するという次のフェーズへと移行しました。このフェーズでは、Watson AssistantソリューションとWatson Discoveryソリューションを使用して、既存のダッシュボードと連動する仮想エージェントが開発されました。Watsonは、2,800件を超えるユーザーからの質問を使用して学習し、2,000を超える資料(製品情報資料や手順マニュアルなど)を含む複数のソースから構造化データと非構造化データを取り込みました。このツールは、DXC社のテクノロジー・ジャーニーにおいて極めて重要な役割を果たしました。このチャットボットは、CSRが保険契約者との通話中または通話の保留中に直接の回答を素早く検索できる機能を提供し、CSRからアシスト・ラインへの通話回数を削減しました。CSRはこのチャットボットを開いて質問すれば即座に回答がポップアップ表示されるので、大変に便利です。1つの問い合わせのために、紙の参考資料を調べたり、複数の異なるシステムを操作する必要があった時代は、これで終わりを迎えました。
業務の進め方に直接影響を与えるイニシアチブを推進する場合、変更管理は常に課題となります。特に、長年業務に携わり、同じやり方で物事を進めることに慣れている人にとってはなおさらです。DXC社は、当初からこのことを理解しており、早期にチームを巻き込むための導入戦略を策定しました。DXC社は、ソリューションの設計から実装までの全プロセスに現場のスタッフが参加するようにし、対象分野の専門家でありながら同僚に影響力のある従業員をコンタクト・センターの仲間に加えました。DXC社は、各段階において、チームに計画を明確に伝え、チームからのフィードバックを常に収集することで、現場のチーム全体で自然な参加意識と当事者意識が育まれるようにしました。
“ 私たちは、CSRの電話対応能力が大幅に向上していることを感じ始めました。Watsonチャットボットは、担当員の仕事の質を向上させ、顧客体験にプラスの影響を与えました。 ”
— Melissa Randolph氏, コンタクト・センター・スーパーバイザー, DXC Technology社
成果の詳細
CSRに自信とスピードを与える
DXC社では、CSRからアシスト・ラインへの平均通話回数と、全体の通話処理時間の両方が即座に大幅に削減されました。Randolph氏は説明します。「当社の最も革新的で複雑な商品は、問い合わせの平均処理時間が突出して長く、顧客体験に大きな影響を与えていました。この商品への問い合わせで、顧客を保留にする時間を半分に短縮できたことは、非常に大きなことでした」
こうしたプラスの成果と、顧客との初回解決率の向上により、CSRの仕事に対する自信が向上し、サービスの質が向上し、職場環境が全体的に改善しました。
「以前は毎月のように新しい従業員を雇っていましたが、今では年に1回しか雇わなくなりました」とRandolph氏は付け加えます。これまでのCSRでは、従業員は自分たちの仕事の質が低いと感じていましたが、今では『この新しいシステムをとても気に入っています。研修資料を読み返す必要はありません。質問を入力するだけで、すぐに情報が表示されるんです』というような感想をくれます」
そして、追加の従業員を雇うことになったとき、DXC社は研修費用を削減することができました。「当社は6週間の研修プログラムを再設計し、新しいスタッフを迎えるまでのリード・タイムを50%短縮することができました。研修に割かれる時間は資料の保管場所を見つけることではなく、チャットボットの使い方に重点が置かれるようになりました」とRandolph氏は言います。「研修が180度変わりました」
Harrington氏によれば、DXC社の取り組みの次のステップは、Watsonチームとの連携を継続するということです。DXC社とWatsonチームは、「セルフサービスを提供する」という「Watson Journey」の第3フェーズへとコンタクト・センターを移行させ、顧客からの問い合わせにさらに迅速に対応するとともに、DXC社のスタッフをより戦略的な業務へと解放します。
「現時点までにおいて、当社は目指していたものを達成し、あるべき姿になりました。しかし当社の目標は、それにとどまりません。このフェーズのさらに先に進み、この業界をこれまでにないセルフサービスの道へと導くことです」とHarrington氏は付け加えます。「今、当社はセルフサービスの実装を開始しようとしていますが、これはエンド・ユーザーである顧客にとって本当に素晴らしいツールであり、このパズルの大きなピースとなるでしょう」
“ 当社の最も革新的で複雑な商品は、問い合わせの平均処理時間が突出して長く、顧客体験に大きな影響を与えていました。この商品への問い合わせで、顧客を保留にする時間を半分に短縮できたことは、非常に大きなことでした ”
— Melissa Randolph氏, コンタクト・センター・スーパーバイザー, DXC Technology社

DXC Technology社
DXC(ibm.com外部へのリンク)社は、世界をリードする独立系エンドツーエンドITサービス企業であり、基幹システムを管理してモダナイズし、それらのシステムを新しいデジタル・ソリューションと統合してより優れたビジネス成果を生み出しています。DXC社のグローバルな展開力と人材、イノベーション・プラットフォーム、テクノロジーの独立性、広範なパートナー・ネットワークにより、同社の世界70カ国にある6,000社を超える民間部門と公共部門の顧客は、変更にうまく対応できています。
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