ASPHI Onlus Foundationは、インクルージョンの促進と教育機会の強化に重点を置いたイタリアの非営利団体です。その主な目標は、聴覚障害や認知障害、非ネイティブのイタリア語話者など、特別な課題に直面している人々にとって、よりアクセスしやすく充実した読書と学習の体験を提供することです。これらの障害は、多くの場合、効果的なコミュニケーションや書面による資料や教材の使用を妨げます。
デジタル・アクセシビリティー推進の先駆者である同財団は、こうしたギャップを埋めるためには高度な技術が緊急に必要であると認識し、戦略的パートナーシップを通じて、障害を持つ人々の学習ニーズに対応するカスタマイズされたソリューションの開発をリードしてきました。そして、識字能力向上に対する従来のアプローチを変革できる新しいソリューションを生み出すため、業界リーダーたちと連携してきました。
これらの課題に対処するため、ASPHI Onlusは人間開発のためのビッグデータおよび人工知能のための国際財団であるIFAB (International Foundation for Big Data and Artificial Intelligence for Human Development)および IBM Client Engineeringと提携し、人工知能 (AI)をこのテーマにどのように適用できるかを検討した上、IBM® watsonx.aiプラットフォーム、IBM watsonx Assistant、IBM® Cloud Code Engine、および IBM® Cloudant データベースを使用した概念実証 (POC)を実施しました。POCは4週間かけて行われました。このプロジェクトには、ASPHI Onlus、IFAB、IBMから合計で14名が参加し、財団のデータと公開データを活用しました。
チームは、複雑なテキストをよりアクセスしやすく魅力的にすることで、あらゆる能力の読者を支援する革新的なプラットフォーム「Limpide Letture」(または「Clear Reading」)を開発しました。また、watsonxの強力な分析機能を活用して、読書を簡素化し、ユーザーを新しい学習教材に誘導するツールも開発しました。
Limpide Lettureは、次の方法でユーザー・エクスペリエンスを変革しています。
また、分かりやすい資料、または難しい語彙や文の構造を取り上げて説明する詳細なガイダンスを提供するなど、最適な読書方法に関するパーソナライズされた提案を行っています。
プラットフォームをサポートするために、チームは、テキストに関するあらゆる質問に答えることができるAI搭載のバーチャル・アシスタント「LucIA」をユーザー向けに開発しました。バーチャル・アシスタントはwatsonx.ai上に構築されており、watsonx Assistantをデプロイして、読み取り対象のテキストに関する質問を常時管理し、リアルタイムの支援を提供します。さらに、IBM CloudantとIBM Cloud Code Engineは、アプリケーションに堅牢でスケーラブルなストレージとランタイム環境を提供し、最小限の労力とメンテナンスで大量の文書とセッションのデータを保存および取得できるようにします。
Limpide LettureとLucIAの AI ツールを活用することにより、ASPHI Onlus Foundationはすべての学習者がそれぞれの能力に最適かつカスタマイズ可能なリソースを確実に受け取れるようにしています。
POCでのwatsonxの実装は、注目すべき成果が得られました。ASPHI Onlus Foundationの専門家は、教育プログラムや読書によるイタリア語学習を放棄するユーザーの数が減少すると予測しています。現在、彼らは若い学生がより多くの本(少なくとも年間30冊の物語)を読み、語彙を豊かにできるようになることを期待しています。
このソリューションは、年齢、教育レベル、提案された読み物に基づいて複雑さを多様化およびカスタマイズしながら、ユーザー数を10万人に増やすというASPHI Onlus Foundationの目標達成を後押しすると期待されています。さらに、読書を通じてイタリア語の学習に費やす時間を短縮し、わずか1年でユーザーが次のレベルに進むことができるようにすることも目的としています。
ASPHI Onlus Foundationは、Limpide LettureとLucIAを通じて、言語の難しさという障害を取り除き、聴覚障害や認知障害のある人々やイタリア語を学ぶ学生の読書を容易にすることができます。POCでのツールの大きな成功を受けて、ASPHI Onlus Foundationは将来的にこのソリューションを学生以外にも対象を拡大したいと考えています。
このソリューションがコミュニティーに与える影響は大きいでしょう。Limpide Lettureは単なる技術ツールではなく、包括的な教育へのアプローチ方法の前進を表しています。このソリューションは、障害を取り払うことで、障害を持つ人々の自立を促進し、すべての人にとってより公平な学習環境を提供します。ASPHI Onlus Foundationの使命は革新的なソリューションを推進し続けることであり、IBMとのコラボレーションは、アクセス可能な教育に向けた道のりにおける重要なマイルストーンとなりました。
ASPHI Onlus Foundation(ibm.com外部へのリンク)は、約40年にわたり障害者向けのデジタル技術に取り組んできたイタリアの非営利の社会貢献団体です。その使命は、デジタル技術を利用して、障害を持つ人々が学校、職場、社会に参加できるように後押しすることです。
IFAB(ibm.com外部へのリンク)は、データとAIが自社の戦略に不可欠であると認識している国内外の企業で構成された参加型の非営利財団です。この財団は、人類の発展、持続可能性、新興科学に関する世界的な科学的・文化的対話において、独立した権威ある基準となることを目指しています。スーパーコンピューティングにおける主要な国内および国際ネットワークに参加し、業界と社会全体にわたる技術、研究、実用的なアプリケーション間の「リンク」としての役割を果たしています。
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