シスプレックス内の TCP/IP

ネットワーク・サーバー、特に System z® サーバーへの要求が高まるにつれて、単一サーバーではそのクライアントが課す可用性要求とスケーラビリティー要求を満たすことができない場合にパフォーマンス要件に対処するために、異なる技法が生み出されました。とりわけ、ネットワーク・ソリューションはクラスター化と呼ばれる技法を利用するようになっており、これは複数のサーバーを互いに関連付けて 1 つのクラスターとし、クライアントからの要求に対応できるだけの十分な処理能力と可用性に関する特性を提供しようとするものです。

このトピックの説明では、シスプレックスがこのクラスターの機能を提供します。すなわち、シスプレックスが多数の System z サーバーをクラスター化するために必要な機能を提供し、それらのサーバーが互いに協力して特定のサービス環境で必須の要求に応じるために必要な処理能力を発揮します。

サーバーの可用性と処理能力を高めるためにクラスター化のアプローチを使用しているソリューションは、膨大な要求を生成する可能性を持った多数のクライアントを含む環境では、クラスター要求に確実に対処できる仕組みを提供しようとします。そのために、クラスター技法は高可用性およびロード・バランシングという 2 つの主要な目的を果たすことができます。一部のケース (動的 VIPA がこれに該当) では、クラスター化技法は高可用性のみに対応します。このケースでは、TCP/IP スタック障害または z/OS® イメージ障害が発生する場合に対応して高可用性を提供します。また、高可用性とロード・バランシングの両方を提供しようとする場合もあり、例えば、シスプレックス・ディストリビューターなどがこれに該当します。

一般にロード・バランシングとは、クラスター内の異なるシステムを同時に使用して、各システムの計算機能を追加して利用する能力のことを指します。さらに、ロード・バランシングに対処するクラスター化技法では、システム全体にわたる単一のイメージ (クライアントはシステムへのアクセス時に 1 つの ID でアクセス可能)、水平方向の拡張、管理の容易さなど、その他のシステム要件も可能にします。

従来の単一サーバーの定義は、主に、可能性として少数のネットワーク・インターフェース (IP アドレス) を保有する単一マシンでした。従来の定義の単一サーバーの場合、このサーバー内で障害の発生原因となり得るポイントが数多く存在する傾向があります。すなわち、マシン本体 (ハードウェア)、マシン上で実行されているオペレーティング・システム (TCP/IP スタックを含む) カーネル、またはネットワーク・インターフェース (およびそれに関連した IP アドレス) などです。静的仮想 IP アドレス (VIPA) を使用するとネットワーク・インターフェースを障害発生点から除外でき、動的 VIPA を使用するとさらにサーバー (イメージ) またはカーネルの障害時に対応できます。この方法では、高可用性は、サーバー・クラスター全体の可用性およびそのサーバーが提供するサービスの可用性と考えることができます。さらに、VIPA はシスプレックス・ディストリビューターのロード・バランシング・ソリューションと組み合わせて使用することができます。

接続要求のロード・バランシングに対処するクラスター化の技法は、通常、一定の高可用性も提供します。すなわち、これらの技法は接続をターゲット・サーバーにディスパッチし、接続を受信できるターゲット・サーバーのリストから障害のあるサーバーを除外することができます。このようにして、ディスパッチング機能は要求を満たすことのできないサーバーへの接続および要求のルーティングを防止します。

ロード・バランシングは、クラスターを構成しているターゲット・サーバーにワークロードを均一に (または一定のポリシーに従って) 分散する、クラスターの機能です。通常、このロード・バランシングはそれぞれのターゲット・サーバーでの認知できる負荷を何らかのかたちで表して測定します。このトピックでは、シスプレックス・ディストリビューターを使用したロード・バランシングについて説明します。この技法では、なんらかの指定に基づいて、クライアント接続を受信しようとしているターゲット System z サーバーを識別します。

クラスター化の技法は、ロード・バランシングを提供することによって、接続のディスパッチングに加えて他のシステム要件にも備える必要があります。そのような要件には、システム全体の単一イメージまたは識別を公示して、クライアントがサービスを一意的にかつ容易に識別できるようにする機能があります。さらに、クラスター化の技法はシステムの水平方向の拡張および管理の容易さにも備えなければなりません。

また、シスプレックス内のメンバーを、複数サブセットのメンバー (XCF 経由でそのメンバー間だけで通信する) に分けて配置すると便利な場合があります。 これは、サブプレックスと呼ばれます。サブプレックスの各メンバーは、固有のシスプレックス・グループ・セットに加わり、同じ固有のシスプレックス・グループ・セットに加わっている他メンバーのみと、XCF を通じて通信します。 各 TCP/IP スタックは、1 つのサブプレックスのみに参加できます。詳しくは、シスプレックスのサブプレックス化を参照してください。

注: この情報は、特に断りがない限り、IPv4 と IPv6 の両方に適用されます。