TAG Heuer社がオンラインで輝く時

デジタル・エンゲージメント・エンジンで混乱に立ち向かう
Noelle Tanas
読了時間:5分

時代を超えた革新性は、常にTAG Heuer社の真髄です。

それは、161年前にEdouard Heuer氏がスイスのサン・イミエ村で最初の懐中時計を販売したとき、1910年代に最初のスプリット・セカンド・ストップ・ウォッチとダッシュボード・クロノグラフを会社で開発したとき、1962年にジョン・グレン着用の最初の時計が宇宙に持ち出されたとき、2015年に最初の高級スマートウォッチと繋がったときもそうでした。

しかし、この名高い時計メーカーにとってすら、この1年間ほど時間と革新が重要になることはありませんでした。 2020年と2021年は、TAG Heuer社が提唱した「Don’t Crack Under Pressure―プレッシャーに負けるな」という言葉は、かつてないほど試され、より一層真実味が増しました。

小売業の疲弊により、自社の店舗だけではなく何千もの宝石店やデパートと結び付いたブランドが、すでに課題に直面しています。 一方、消費者は、より良いデジタル販売というだけでなく、より良いデジタル体験と環境も求めるようになっています。 TAG Heuer社のような世界的なラグジュアリー・ブランドにとって、異なる販売チャネルとマーケティング・チャネルを統合する際の障害は、1日のうちの秒数と同じくらい途方もなく感じられます。

これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが世界を停滞させ、買い物と生活を永遠に変える前の話です。

TAG Heuer社の腕時計を着けてサーフィンをする人の画像

新しいオンライン購入体験の開発にかけた時間

3

週間

よりパーソナライズされたサービスを提供して成長を支援

3倍

成長

「主な課題は当面の不確実性ですが、私たちは適応しながら俊敏性を保ち続けています」とTAG Heuer社の最高経営責任者(CEO)であるFrédéric Arnault氏は、2020年10月、Forbes外部リンクに語りました。

ただ、この1年、TAG Heuer社の経営陣が長年支持してきた新しいデジタル指向を強調して加速させています。

私たちは(在宅で時計を作ることはできないので)、生産の停止を含む厳しい数カ月を経験しましたが、本当に率直に申し上げると、e-コマースのおかげで、それほど悪くはありませんでした。
Beatrice Goasglas氏
TAG Heuer社 デジタルおよび顧客体験担当バイス・プレジデント
TAG Heuer社の時計の内部スプリング機構の画像

デジタル販売は店舗になり得るのでしょうか

多くの点で、この優れた方向転換を実施したArnault氏は理想的なリーダーであるといえます。

2020年6月にトップに任命されたとき、Arnault氏はわずか25歳でしたが、その3年前から、デジタル戦略とスマートウォッチ開発をリードしていました。 TAG Heuer社を含む高級コングロマリットであるLVMHを統括するArnault家で育った彼は、すでに世界の高級メゾンの価値と伝統に深い感銘を受けていました。 同時に、Arnault氏はデジタル・ネイティブであり、社会に精通した若いミレニアル世代であり、同世代の好みやトレンドを理解しています。

それは、どこであろうと現代の消費者がいる場所で出会うということにかかっています。つまり、オンラインや外出先だったり、あるいは飛行機で世界を飛び回ったり、最も大切な価値観である友人やブランドとの日々のつながりで「いいね」と評価をすることです。

よりデジタル化したいという願望は、TAG Heuer社が小売のパートナーに歴史的に依存してきたところから大きく変化したことの一つです。

TAG Heuer社の時計のスプリングの作業をする男性の画像
TAG Heuer社の時計の文字盤の画像

「私たちは、消費者への直接販売、特にe-コマースを促進しながら、お客様との関係を強化したいと考えていました」と、TAG Heuer社のデジタルおよび顧客体験担当バイス・プレジデントであるBeatrice Goasglas氏は述べています。 「そして、それと並行して、専門的な部分として、そうしたつながりをすでに確立している既存の、定評ある、世界的な小売ネットワークを育成しながらこれを行いたいと考えていました」

TAG Heuer社は長年にわたり、Salesforce CRMを使用して、小売業者やその他の企業間取引パートナーとの関係を管理してきました。 消費者変革戦略に着手するにあたり、スイスとフランスにおける時計メーカーの経営陣は、消費者エンゲージメントにおいても、Salesforceのクラウド・プラットフォームを利用することが最も効果的であると判断しました。

Salesforce方式の技術的側面と経験的側面の両側を運営するために、TAG Heuer社は2017年にIBM iX®のグローバル・デジタル・トランスフォーメーションおよびカスタマー・エクスペリエンス・デザイン・コンサルティングと協業し、Salesforce統合、デザイン思考、小売業界の知識を組み合わせた総合的な専門知識を取得しました。

「Salesforceでクロス・クラウド・アプローチを採用することに決めたのは、e-コマース、マーケティング・オートメーション、統合、カスタマー・ケア、データ、分析など、あらゆるものを変革できる多様な可能性があったからです」と、TAG Heuer社のITデジタル・マネージャーである、Alexandre Regard氏は述べています。 「最終的には、すべての部署がつながるでしょう」

360度ビュー、24時間体制

特に高級時計の世界では、これは非常に重要なポイントです。 お客様が、いつ、どこで、どのように購入しようと、単なる消費者ではありません。 お客様は、コレクターであり、ファンであり、愛好家です。 TAG Heuer社のような有名ブランドの腕時計メーカーは、所有者の情熱を築き、育てる必要があります。 Salesforceは、舞台裏ですべてを円滑に接続して推進する歯車になります。

「私たちは、100本の時計を持っていようと、1本であろうと、持っていなかろうと、お客様やファンとの関係を促進するための、非常に多くの接点を持っています」と、Regard氏は述べています。 「Salesforceを使用することで、お客様一人ひとりの状況を360度把握できます」

その視点は、修理、ロイヤルティー・プログラム、口コミやインフルエンサー・キャンペーンなど、ビジネスの非常に多くの側面を結び付け、力づける歯車になります。

重要なのは、すべてのチャネル全体で、ブランドから「見られ、声を聞かれ、知られる」ことを希望するファンの欲求を増進するという、パーソナライズ化の取り組みを促進することです。 機能強化された顧客プロファイルを通じて、所有者、店舗、会社間で全員がアクセスできるデジタル・サービス記録を使用し、修理についても合理化されました。

TAG Heuer社の腕時計を着けて運動する女性の画像

時は企業を待たず

2020年の冬と春に新型コロナウイルス感染症が初めて世界の多くの地域を襲ったとき、TAG Heuer社、Salesforce社とIBMがすでに実施していた2年間の共同作業の緊急性と重要性は一層高まりました。 「すべての国が、e-コマースの開発と世界規模での展開を求めていました」と、Goasglas氏は述べています。

TAG Heuer社の腕時計を着けてストレッチする女性の画像

顧客をファンに変えたいですか

同社は高級ブランドの中でも早くからe-コマースの分野に参入しており、2015年には5つの市場に向けて先駆的なサイト群を立ち上げました。 ただし、それは、2020年2月にそのすべてのページがリニューアルされるまで、同社のデジタル業務はその程度にとどまっていました。ちょうど、ヨーロッパと北米の新型コロナウイルス感染症によるロックダウンの期間でした。 2021年末までに、海外拠点の95%をカバーする多言語サイトを作成する予定です。

「e-コマースを始めることは、特に時計業界では、本当にリスクの高いビジネスでした」とRegard氏は述べます。 靴や服のように、時計も、フィット感や手触り、エッセンスが主なセールス・ポイントです。その言葉で表せない上質性を画面上で表現するのは非常に難しいものです。

マーケティング手法もパンデミックによって変更し、特にパーソナライズ化が加速しました。

実店舗へ足を運ぶことが不可能になり、時間の経過さえも歪む中、TAG Heuer社は、日常とお祝いの両方が実生活に戻ってきたように感じられる個人的な要素を取り込もうと試みました。

「それでも私たちは、誕生日や特別な日に「あなたのことを思っています」と伝えるためのプレゼントを用意していました」とGoasglas氏は説明します。 「私たちは、製品について話すのではなく、むしろ幸福や考え方について話すことで、お客様を魅了し、楽しんでいただくようなコミュニケーションの手法に変えたのです」

TAG Heuer社は、IBM iXのコンサルタントと協力して、物理的なギャップを埋めるための新しいガイド付きの購買体験を数週間で構築しました。 さらに多くのデータと自動化が使えるようになるほど、TAG Heuer社は新しい方法で所有者やお客様にアプローチできます。

これは、Arnault氏とTAG Heuer社が何よりもまずシームレスでグローバルな体験に取り組んでいることを示す一例でもあります。 新型コロナウイルス感染症が拡大する以前から、同社は、高級品市場のデジタル領域へのアプローチの変革に取り組んでいました。

そして、パンデミックに関わらず、顕著な成果を上げました。 2020年には、同社は3桁成長を遂げました。

「私たちは(在宅で時計を作ることはできないので)、生産の停止を含む厳しい数カ月を経験しましたが、本当に率直に申し上げると、e-コマースのおかげで、それほど悪くはありませんでした」と、Goasglas氏は述べます。 「しかし、回復が非常に速かったこともあり、お客様が戻ってきており、TAG Heuerが信頼されているという、非常に前向きなシグナルでもありました」

TAG Heuer社のロゴ

TAG Heuer社について

1860年に設立されたTAG Heuer社外部リンクは、時計やファッション・アクセサリーを、設計、製造、販売するスイスの高級時計メーカーです。 また、他社のライセンス生産により、TAG Heuer社のブランド名を冠したアイウェアや携帯電話も販売しています。 スイスのラ・ショー・ド・フォンに本社を置くTAG Heuer社は、4つの生産拠点を運営しており、すべての大陸に子会社を有しています。 従業員は約1,600名です。

製品・サービス
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TAG Heuer社について

1860年に設立されたTAG Heuer社外部リンクは、時計やファッション・アクセサリーを、設計、製造、販売するスイスの高級時計メーカーです。 また、他社のライセンス生産により、TAG Heuer社のブランド名を冠したアイウェアや携帯電話も販売しています。 スイスのラ・ショー・ド・フォンに本社を置くTAG Heuer社は、4つの生産拠点を運営しており、すべての大陸に子会社を有しています。 従業員は約1,600名です。

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