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Smarter Business

3分で読める|ここまで来た、Hyper Automation!#3「線を伸ばす」

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長井 昭史
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
シニア・マネージング・コンサルタント


#3「線を伸ばす」
デジタルレイバーの運用も自動化

デジタルレイバーによる業務自動化が進展すると、増大し続けるデジタルレイバーの運用業務を効率化する必要性が発生します。
今回は、運用負荷の高まりが更なる業務効率化への足かせとなりつつあった状況から、デジタルレイバーの運用を自動化・標準化することで、取り組みを次のステージへと進めることができた事例を紹介します。

運用負荷の高まりと属人的な運用からの脱却

RPAロボを中心としたデジタルレイバーの数は30台に近づき、新しい自動化の機会を発掘しつつも、新規デジタルレイバーの開発や既存デジタルレイバーの機能拡張・品質改善に費やせる時間に制約が出てきました。
それは、デジタルレイバーの運用業務のほとんどを手作業で実施していたこと、デジタルレイバーの開発・保守と運用を同一チームで(属人的に)実施していたことなどが原因でした。
小規模な取り組みであれば、属人化による品質の向上は有効な手段となります。一方で、その方法は規模の拡張性に欠け、業務の継続性やセキュリティー面でのリスクを伴っています。

図:ロボ運用は、デジタルレイバー遠隔監視・運用支援サービスを活用

運用自動化とリモート要員の活用

IBMが有していたAOCC(Automation Operation Command Center)というソリューションを活用することで、リモートから運用業務を実施する提案を行いました。
このソリューションは、お客様RPA環境のログを吸い出し蓄積・分析することで運用業務を自動化・標準化し、遠隔監視とデータに基づく継続的な改善提案を可能とします。
これによって、属人的であった運用業務は効率化しながら切り出すことができ、既存の開発チームの負荷が軽減されます。その結果、開発チームは新規開発や機能拡張に注力することが可能となり、お客様のDXを更にスピード・アップすることができます。

Fit&Gap分析による効果試算とパイロット運用による最適化

事前の試算では、AOCCを活用し2名の運用要員によって平日の昼間帯にサポートをすることで、4.9FTE分の運用要員に相当する価値を提供できることが分かりました。その効果の多くは定常監視業務とインシデント起票の自動化によるものです。その結果、運用要員はインシデントへの迅速かつ適切な対応や、データに基づく予防と抑止(継続的な品質改善)に注力することが可能になります。

机上で検討および試算した効果を確実なものとするため、半年間のパイロット運用期間を通じて開発チームから運用チームへのスキル移転を行うことで運用をスムーズに引継ぎました。その過程で十分に文書化されていなかった運用手順やガイドを充実させる活動も実施しました。
また、開発チームにとっても別人格である運用チームとの効果的なコラボレーションの方法を学習する機会になりました。

図:Fit&Gap分析による効果試算

自動化の旅(ジャーニー)は続く

ビジネス環境は変化し、ユーザーのニーズも変化し続けます。デジタルレイバーの活動状況をタイムリーにモニタリングすることで、迅速な対応を可能とし、統計データを活用することで中長期でのビジョンをより確かなものにしていけます。
当該事例において、運用開始から約1年が経過しました。37台のデジタルレイバーが活躍し、デジタルレイバーの実行回数は月間6,000〜7,000回に及び、エラー率は1〜2%程度で推移しています。AOCCを活用することで、個別デジタルレイバーやボットと呼ばれる実行端末別のエラー発生状況とその傾向を把握するだけではなく、ネットワーク接続状況や操作対象システムなど依存関係の稼働状況を把握し、総合的に運用品質改善の取り組みを続けています。

また、このソリューション(AOCC)はお客様ニーズを吸収することで日々進化を遂げており、固定的なサービスではありません。
エージェント化された運用要員がサービスを提供することで、顧客満足度向上へと繋げます。

図:AOCC(Automation Operation Command Center)ソリューションの活用

日本国内でのセンター立ち上げ

2020年9月に日本向けの日本語でのサービス開始をプレスリリースとして発表させていただいておりましたAOCCですが、2023年の初めに地域DXセンターとIBM Cloud東京リージョンを活用したサービスを立ち上げる準備を実施中です。また今後に向け、AOCCはDigital Operationsという名称に代わり、SAPやSFDC、カスタム開発アプリなどの監視とも連携する機能の準備も進めています。
日本の企業から今まで以上に多くのフィードバックを頂きつつ、お客様の業務改革をお手伝いできる機会が増えることを楽しみにしています。

シリーズ 3分で読める|ここまで来た、Hyper Automation!
次回は、#4「線から面へ」フィードバック・ループによる改善と更なる適用範囲拡大へです。