wlmstat コマンド
目的
クラス単位のワークロード・マネージャー (WLM) のリソース使用率統計情報を表示します。
構文
wlmstat [-l Class | -t Tier] [-S | -s] [-@] [-c ] [-m] [-b] [-B Device] [-T] [-a] [-w] [-v] [Interval] [Count]
wlmstat [-l Class | -t Tier] [-@] [-c] [-m] [-b] [-u] [Interval] [Count]
wlmstat [ -l Class | -t Tier ] [ -@ ] [ -M ] [ -S | -s ] [ -w ] [ -v ] [ Interval ] [ Count ]
説明
wlmstat コマンドは、カーネルから取り出した WLM データ構造の内容を、シンボルによって表示します。 Count が指定されると、wlmstat は Count 回ループし、 各ブロックが表示されたあと、Interval 秒の間スリープします。 Interval および Count が無 指定の場合、1 つの出力レポートが生成されます。 Interval が指定されたが Count が指定されない場合、 wlmstat は、シグナル (SIGINTR、SIGQUIT、および SIGKILL) によって停止されるまで、指定された間隔で連続して結果を出力します。 デフォルトでは、wlmstat は、 各スーパークラスおよびサブクラスごとにすべてのリソースに対して統計 情報を表示します。 フラグを指定して、リソースのタイプ、層、スーパークラス、またはサブクラスにまで 統計情報の焦点を絞り込み、出力フォーマットを変更することができます。
- AIX® 5.3 から は、WLM プロセッサー使用率の値およびプロセス優先順位調整値は、デフォルトでは 1 秒ごとに 10 回更新されます。
- プロセッサー使用率として表示される値は、最近の 1 秒における現在の瞬間使用率ではなく、 最近 N 回の測定値の平均です (AIX 5.3 からは、 N のデフォルト値は 15 です)。
- 未管理のクラスは、システム割り込み時間の報告と、WLM によって管理されないシステムのすべてのピンされたページ数に対するメモリー使用率のトラッキングのために使用されます。このクラスにプロセスは割り当てられません。
ハード制限が 50% 指定のプロセスは、連続する 2 回の WLM 使用率の更新の間で プロセッサー使用率 50% を超えて使用可能です。 1/10 秒ごとに、全プロセスに優先順位が割り当てられ、そのスケジューラー、次 いで各スケジュールがすべて、割り当てられた優先順位に基づいて処理されます。 あるプロセスでは、ある WLM 更新から次の更新間にプロセスのハード制限より多くの プロセッサー・リソースを受け取ることがあります。
デフォルトでは、各更新のプロセッサー使用率のそれぞれの瞬間的な測定値は、後続の 15 回の測定読み取りの間は保持され、その他の 14 回の測定値による平均をと った後に、wlmstat がその値を表示します。 このことにより、ある WLM 更新から次の更新間に 50% より大きい使用率が 1 回 発生することが原因で、50% より大きい値となる可能性があります。
あるプロセスがそのハード制限に常時達するかまたはこれを超える場合は、そのプロ セスの優先順位は著しく低下し、プロセスを実行できなくなります。 長期間でみると、プロセスのリソース使用率は、プロセスのハード最大にするか、 またはそれ以下になっている必要があります。 短期間でみると、wlmstat は、プロセスのハード制限を超 えた値を使用したプロセスを表示することがあります。 bos.adt.samples PTF で使用できる /usr/samples/kernel/wlmtune コマンドを 使用して、そのような場合の WLM の動作を変更できます。関連するチューナブル・フラグは次のとおりです。
- schedhz
- WLM スケジューラーがプロセッサーに関するクラス使用量および優先順位を再計算する頻度。 デフォルトは 10 です。 この値を変更すると、WLM の反応が変わります。 この値を大きくすると、WLM は、更新をより頻繁に行うようになります。その結果 、プロセスが短期間にそのハード制限を超える可能性が少なくなります。 当値変更前よりも WLM 処理が多く発生するため、この代償としてオーバーヘッドが増加します。 これにより、システム・パフォーマンス全体が影響を受ける可能性もあります。
- cpuhist
- 平均計算で使用する連続したプロセッサー使用の値をサンプリングする回数。 デフォルトは 15 です。 この値を大きくすると、長期間の平均値をとることになり、報告される プロセッサー使用率の値がさらに平滑化されます。
各クラスが長期にわたって最大値を超えないよう WLM の即応性を高めるために、 wlmstat の出力で希望する結果が表示されるまで、 schedhz を最初に変更してみることをお勧めします。 wlmstat が同じ時間間隔で平均をとるよう に、cpuhist を変更することもできます。例えば 、schedhz が 20、cpuhist が 15 の 場合は、wlmstat は 0.75 (15/20) 秒間にわたって平均をとり ます。そのため、wlmstat が 1.5 秒間にわたって引き続き平均を とるように cpuhist を 30 に変更できます。
プロセッサーの競合がないシステムでは、WLM の限度を順守するために 、wlmstat には 5 という Interval を 指定することをお勧めします。
フラグ
項目 | 説明 |
---|---|
-@ | workload partitionリソース情報を表示します。 |
-a | サブクラスの使用量を絶対項で表示します。デフォルトでは、サブクラス使用量のパーセンテージはスーパークラス使用量と比較して表示されます。このオプションを使用すると、サブクラス使用量はシステム上で使用可能なリソースの総計と比較して表示されます (これはスーパークラスの場合と同じです)。すべての値は 1% の精度で表示されます。例えば、スーパークラスに 20% のプロセッサー・ターゲットがあり、-a オプションを付けない wlmstat ではサブクラスのプロセッサー・パーセンテージが 10% であると表示される場合、-a オプションを付けた wlmstat ではサブクラスのプロセッサー・パーセンテージが 2% と表示されます。 |
-b | ディスク I/O 統計情報だけを表示します。 |
-B Device | ディスク I/O デバイスの統計情報を表示します。 空文字列 (-B "") を渡すと、そのクラスがアクセスするすべてのディスクについての統計情報を表示します。 |
-c | プロセッサー統計情報だけを表示します。 |
-l Class | Class 名の統計を表示します。 指定されない場合は、適合するフィールドの要約とともにすべてのクラスを表示します。 |
-m | 物理メモリー統計情報だけを表示します。 |
-M | 実メモリー/仮想メモリー統計情報を表示します。-M オプションを使用すると、出力に以下の欄
が追加されます。
注: この限度が未定義の場合は、
- が RMLIM、
VMLIM、および LGPGLIM の各フィールドに表示されます。-M およ
び -w オプションが併用された場合は、RMSIZ および VMSIZ の
フィールドには、実際に使用された値ではなく、これらの属性の上限水準点が入れられます。
さらに、LGPGSIZ および LGPGLIM フィールドはオフにされます。 |
-s | サブクラス統計情報だけを表示します。 |
-S | スーパークラス統計情報だけを表示します。 |
-t Tier | 指定した Tier の統計情報だけを表示します。 |
-T | WLM の開始またはクラスの作成のいずれかのうち、後に行われた方 (時点) からの、
リソース使用率の合計数を表示します。
単位は下記のとおりです。
|
-v | 詳細モードを指定します。
このフラグは、トラブルシューティングを目的としており、
いくつかのクラス属性、リソース共用と各制限、および他の WLM パラメーター
も表示します。これには、AIX サポート担当者用の内部パラメーター値も含まれます。
以下に示すのは、ユーザーの関心事となる場合がある情報です。
他の列は内部使用だけを目的としており、管理者およびエンド・ユーザーには意味はありません。 このフォーマットは、リソース・セレクター (-c、-m、または -b) とともに使用することをお勧めします。 そうしないと、行が長すぎて、ディスプレイ端末に収まらない場合があります。 |
-w | メモリーの最高水準点 を表示します。 これはクラスが、WLM の開始またはクラスの作成のいずれかが最後に実行された時点以降の、 メモリー内に保持されていたページの最大数です。 |
-u | 層ごと、および全体の未使用リソースを表示します。 |
Display
以下に示すフィールドに結果が作表されます。
名前 | クラス名 |
---|---|
CPU | クラスによって使用された全プロセッサー時間のパーセンテージ。 |
MEM | クラスによって使用された物理メモリーのパーセンテージ。 |
DKIO | クラスによって使用されたディスク入出力帯域幅のパーセンテージ。 この数は、クラスによってアクセスされたすべてのディスク装置上のディスク帯域幅の平均で、 通常は意味のあるものではありません。 例えば、クラスが 1 つのディスクの 80% の帯域幅を使用し、 他の 2 つのディスクの 5% の帯域幅を使用する場合、DKIO 列は 30% を示します。 デバイスごとの使用率の詳細を示すには、-B デバイス・オプションを使用します。 |
例
- WLM アクティビティーの印刷出力を直ちに取得するには、次のように入力します。
wlmstat
これにより、下記の出力が生成されます。
CLASS CPU MEM DKIO Unclassified 0 0 0 Unmanaged 0 0 0 Default 0 0 0 Shared 0 0 0 System 0 0 0 class1 12 0 0 class1.Default 4 0 0 class1.Shared 0 0 0 class1.subclass1 4 0 0 class1.subclass2 4 0 0 class2 12 0 0 class2.Default 4 0 0 class2.Shared 0 0 0 class2.subclass1 4 0 0 class2.subclass2 4 0 0
- スーパークラス class1 のレポートを取得するには、次のように入力します。
wlmstat -l class1
これにより、下記の出力が生成されます。CLASS CPU MEM DKIO class1 12 0 0 class1.Default 4 0 0 class1.Shared 0 0 0 class1.subclass1 4 0 0 class1.subclass2 4 0 0
- 1 分間で 10 秒ごとに更新されるサブクラス sclass1.subclass2 のレポートを取得するには、下記のように入力します。
wlmstat -l class1.subclass2 10 6
これにより、下記の出力が生成されます。CLASS CPU MEM DKIO class1.subclass2 4 0 0 class1.subclass2 4 0 0 class1.subclass2 4 0 0 class1.subclass2 4 0 0 class1.subclass2 4 0 0 class1.subclass2 4 0 0
- 仮想メモリー/実メモリー統計情報を表示するには、次のように入力します。
wlmstat -M
これにより、下記の出力が生成されます。CLASS RMSIZ RMLIM VMSIZ VMLIM LGPGSIZ LGPGLIM Unmanaged 1024 4096 4096 8192 0 - Default 0 - 0 - 0 - Shared 0 - 0 - 0 - System 23567 50000 819234 1000000 0 -
- メモリーの上限水準点を表示するには、次のように入力します。
wlmstat -M -w
これにより、下記の出力が生成されます。CLASS RMSIZ RMLIM VMSIZ VMLIM Unmanaged 1024 4096 4096 8192 Default 0 - 0 - Shared 0 - 0 - System 23567 50000 819234 1000000
エラー
WLM が開始されない場合、wlmstat によって警告メッセージが発行されます。