raso コマンド

目的

RAS (Reliability (信頼性)、Availability (可用性)、Serviceability (保守性)) の各パラメーターを管理します。

構文

raso [-p | -r] [-y] [-o Tunable [= Newvalue] ]

raso [-p | -r] [-y] [-d Tunable]

raso [-p] [-r] [-y] -D

raso [ -p ] [ -r ] [ -F]-a

raso -h [ Tunable ]

raso [ -F] -L [ Tunable ]

raso [ -F] -x [ Tunable ]

注: 複数の -o -d-x、および -L フラグを指定できます。

説明

注: raso コマンドには、root 権限が必要です。

raso コマンドを使用して、RAS (信頼性・可用性・保守性) の各チューニング・パラメーターを構成します。raso コマンドは、すべての RAS チューニング・パラメーターの現行値または次のブート値を設定または表示します。 raso コマンドを使用して、永続変更を行うことも、変更を次回リブートまで据え置くこともできます。 指定されたフラグにより、raso コマンドがパラメーターを設定するのか または表示するのかを決定します。-o フラグを使用して、パラメーターの現在値を表示するか、またはパラメーターに新規の値を設定することができます。

チューナブル・パラメーターの変更の影響を理解する

raso コマンドの誤用が原因で、 パフォーマンスの低下またはオペレーティング・システムの障害が引き起こされる可能性があります。 チューナブル・パラメーターを変更する前に、その目的を完全に理解するために、まず下記のチューナブル・パラメーターのセクションで、チューナブル・パラメーターの特性のすべてについて注意してお読みください。次に、このパラメーターの『診断』セクションおよび『チューニング』セクションに記載されている内容が、 ご使用のシステムの状態に当てはまり、さらに、パラメーターの値を変更することが、 システムのパフォーマンスの向上に役立つことを確認してください。 診断セクションとチューニング・セクションの両方に「N/A」とのみ記されている場合は、AIX® の開発側から具体的な指示がない限り、このパラメーターを変更しないことをお勧めします。

フラグ

項目 説明
-a すべてのチューナブル・パラメーターの現在値、リブート値 (-r フラグと併用した場合)、 または永続値 (-p フラグと併用した場合) を表示します。Tunable = Value が組になり、1 行に 1 組ずつ表示されます。永続オプションでは、 パラメーターのリブート値と現在値が等しい場合、パラメーターに対して 1 つの値が表示されるだけです。 そうでない場合は、NONE が値として表示されます。
-d Tunable Tunable をデフォルト値にリセットします。 Tunable を変更する必要がある場合 (すなわち、現在、 デフォルト値に設定されていない) で、タイプが Bosboot または Reboot であるか、 またはタイプが Incremental でデフォルト値が変更されており、-r フラグが 併用されていない場合、Tunable の変更は行われず、警告が表示されます。
-D すべてのチューナブル・パラメーターをそれぞれのデフォルト値にリセットします。 変更の必要なチューナブル・パラメーターのタイプが Bosboot または Reboot である場合、あるいはタイプが Incremental で、デフォルト値から変更されており、-r が併用されていない場合、 パラメーターは変更されず、警告が表示されます。
-F オプション -a-L、または -x をコマンド・ラインでのみ指定したとき、制限付きチューナブル・パラメーターの表示を強制します。 -F フラグを指定しない場合、表示オプションとの関連で制限付きチューナブルが特に指定されない限り、これらのチューナブルは含まれません。
-h Tunable Tunable パラメーターが指定されていない場合は、raso コマンドに関するヘルプを表示します。 Tunable パラメーターが指定されている場合は、Tunable パラメーターに関するヘルプを表示します。
-L Tunable 1 つまたはすべてのチューナブル・パラメーターの特性を、次の形式で 1 行に 1 つずつリストします。

NAME                CUR    DEF    BOOT   MIN    MAX    UNIT     TYPE
   DEPENDENCIES 
--------------------------------------------------------------------
mtrc_commonbufsize  3974   3974   3974    1      5067   4KBpages  D
     mtrc_enabled 
--------------------------------------------------------------------
mtrc_enabled         1      1      1      0      1      boolean    B
--------------------------------------------------------------------
mtrc_rarebufsize    2649   2649   2649   1      3378   4KB pages   D
--------------------------------------------------------------------
... 
where: 
    CUR = current value 
    DEF = default value 
    BOOT = boot value 
    MIN = minimal value 
    MAX = maximum value 
    UNIT = tunable unit of measure 
    TYPE = parameter type: D (for Dynamic), 
           S (for Static), R (for Reboot),B (for Bosboot), M (for Mount),
           I (for Incremental), C (for Connect), and d (for Deprecated) 
    DEPENDENCIES = list of dependent tunable parameters, one per line
-o Tunable [ =Newvalue ] 値を表示するか、TunableNewvalue に設定します。Tunable を変更する必要があり (指定された値が現在値と異なる)、そのタイプが Bosboot または Reboot である場合、あるいはタイプが Incremental で、現在値が指定された値より大きく、-r フラグが併用されていない場合、Tunable は変更されませんが警告が表示されます。

新しい値を指定せずに -r フラグを併用すると、 Tunable の次のブート値が表示されます。 新しい値を指定せずに -p フラグを併用すると、 Tunable の現在値と次のブート値が同じ場合にのみ値が表示されます。そうでない場合は、NONE が値として表示されます。

-p -p フラグを -o-d、または -D フラグと併用する と、変更が現在値とリブート値の両方に適用されます (さらに、現在値が更新され 、/etc/tunables/nextboot ファイルも更新されます)。Reboot および Bosboot タイプのパラメーターでは これらの組み合わせは使用できません。その理由は、これらのパラメーターの現 在値を変更できないためです。

新しい値を指定せずに -p フラグを -a または -o フラグと併用した場合、 パラメーターの現在値と次のブート値が同じ場合にのみ値が表示されます。 そうでない場合は、NONE が値として表示されます。

-r -r フラグを -o-d、または -D フラグと併用すると、変更がリブート値に適用されます (/etc/tunables/nextboot ファイルが更新されます)。 タイプが Bosboot のどのパラメーターを変更する場合も、 bosboot コマンドを実行するようにプロンプトが出されます。

新しい値を指定せずに -r フラグを -a または -o フラグと併用する と、チューナブルの次回ブート時の値が現在値の代わりに表示されます。

-x Tunable 1 つまたはすべてのチューナブルの特性を、以下の (スプレッドシート) 形式で、1 行に 1 つずつリストします。
Tunable Current Default Reboot Minimum Maximum Unit Type	
Dependencies
ここで、Tunable はチューナブル・パラメーター、Current はチューナブル・パラメーターの現在値、Default はチューナブル・パラメーターのデフォルト値、Reboot はチューナブル・パラメーターのリブート値です。また、Minimum はチューナブル・パラメーターの最小値、Maximum はチューナブル・パラメーターの最大値、Unit はチューナブル計測単位、 Type はパラメーター・タイプ、Dependencies は従属チューナブル・パラメーターのリストです。

タイプ Mount のパラメーターを変更すると (-o-d 、または -D フラグを指定)、その変更は将来のマウントについてのみ有効であるという警告メッセージが表示されます。

タイプ Connect のパラメーターを変更すると (-o-d 、または -D フラグを指定)、inetd が再始動され、その変更は将来のソケット接続についてのみ有効であるという警告メッセージが表示されます。

-r を指定せずに、タイプ Bosboot または Reboot のパラメーターを変更すると (-o-d、または -D を指定)、エラー・メッセージが出されます。

タイプ Incremental のパラメーターの現在の値を、現在の値より小さい新しい値に変更すると (-o -d、または -D を指定し、 -r を指定しない)、エラー・メッセージが出されます。

-y bosboot コマンドの実行前に、確認を求めるプロンプトの出力を抑止します。

制限付きチューナブル・パラメーターを変更すると (-o-d、または -D を指定)、限定使用タイプのチューナブル・パラメーターが変更されたという警告メッセージが表示されます。 コマンド・ラインで -r または -p オプションも指定した場合は、変更の確認を求めるプロンプトが出されます。 さらに、システム・リブート時に制限付きチューナブル・パラメーターが /etc/tunables/nextboot ファイルにあって、それらのパラメーターがデフォルト値と異なる値に (コマンド・ラインで -r または -p オプションを指定して) 既に変更されていた場合は、それらの変更されたチューナブル・パラメーターのリストを示すエラー・ログ・エントリーが作成されます。

省略形 K、M、G、T、P、および E で単位を表して、変更されたチューナブル値を指定することができます。 数値の省略形に関連した接頭部および値を次の表に示します。
項目 説明
省略語 接頭部 2 の累乗
K キロ 210
M メガ 220
G ギガ 230
T テラ 240
P ペタ 250
E エクサ 260
したがって、1024 のチューナブル値は、1K のように指定されます。

チューナブル・パラメーターのタイプ

チューニング・コマンド (nonfsovmoiooschedo、および raso) で取り扱われるすべてのチューナブル・パラメーターは、 下記のカテゴリーに分類されています。
項目 説明
Dynamic パラメーターをいつでも変更できる場合
Static パラメーターをいかなる時にでも変更できない場合
Reboot パラメーターをリブート時にのみ変更できる場合
Bosboot bosboot を実行してマシンをリブートする場合にのみパラメーターを変更できる場合
Mount パラメーターの変更が将来のファイルシステムまたはディレクトリーのマウントにのみ有効である場合
Incremental ブート時を除き、 パラメーターを増やすことだけが可能な場合
Connect パラメーターの変更が将来のソケット接続にのみ有効である場合。パラメーターは Bosboot タイプでなければなりません。
タイプ Bosboot のパラメーターの場合は、変更が加えられるたびに、 チューニング・コマンドは自動的に、 bosboot コマンドを実行したいかどうかを尋ねるプロンプトを出します。タイプ Connect のパラメーターの場合は、チューニング・コマンドは自動的に inetd デーモンを再始動します。

schedo コマンドが管理するパラメーターの 現行セットには、Dynamic および Reboot タイプのみが含まれることに注意してください。

互換モード

sys 0 の pre520tune 属性によって制御される 5.2 より前の互換モードで raso コマンドを実行する場合、タイプ Bosboot のパラメーターを除くパラメーターのリブート値は考慮されません。このモードではブート時にそれらのリブート値は適用されないからです。詳細情報については、「パフォーマンス・マネージメント」の『クライアントでの NFS チューニング』を参照してください。

5.2 より前の互換モードでは、チューニング・パラメーターへのリブート値の設定は、 ブート中に呼び出されるスクリプト内でチューニング・コマンドを呼び出すことにより行います。 したがって、タイプ Reboot のパラメーターは -r フラグ なしで設定できるので、既存のスクリプトは従来どおり作動します。

このモードは、マシンを AIX 5.2 に移行すると、自動的にオンになります。 完全なインストールの場合、これは OFF になり、パラメーターのリブート値は、 リブート中に /etc/tunables/nextboot ファイルの内容を適用することにより設定されます。 このモードの場合のみ、-r および -p フラグは完全に機能します。 詳細については、 「Performance Tools Guide and Reference」の『カーネル・チューニング』を参照してください。

チューナブル・パラメーター

チューナブルのデフォルト値および値の範囲については、raso コマンド・ヘルプ (-h <チューナブル・パラメーター名 >) を参照してください。

項目 説明
kern_heap_noexec
目的:
無実行保護をカーネル・ヒープに使用できるようにするかどうかを指定します。
チューニング:
保護を使用可能にした場合、保護されたヒープでコーディングを実行しようとするいずれの試みによっても、カーネル例外が生じます。
kernel_noexec
目的:
無実行保護をカーネル・データ領域に使用できるようにするかどうかを指定します。
チューニング:
保護を使用可能にした場合、保護された領域でコーディングを実行しようとするいずれの試みによっても、カーネル例外が生じます。
mbuf_heap_noexec
目的:
無実行保護を mbuf ヒープに使用できるようにするかどうかを指定します。
チューニング:
保護を使用可能にした場合、保護されたヒープでコーディングを実行しようとするいずれの試みによっても、カーネル例外が生じます。
mtrc_commonbufsize
目的:
First Failure Data Capture (FFDC) にシステム・トレース情報を提供する Lightweight Memory Trace (LMT) の共通イベント用メモリー・トレース・バッファー・サイズを指定します。
チューニング:
デフォルト値は、参照システム全体のアクティビティー、ハードウェアおよびシステム特性のもとでのデータ生成に基づいています。この範囲の上限はハードウェアおよびシステム特性に基づいており、LMT リソースを共有するため mtrc_rarebufsize の現在値によって決まります。記録されたイベントは、システム・ダンプに保存されるか、またはユーザー・コマンドを介して報告されます (あるいは、この両方が行われます)。
mtrc_enabled
目的:
Lightweight Memory Trace (LMT) 状態を定義します。
チューニング:
値 1 は、LMT が使用可能であることを意味します。有効にするには、どのような状態の変更でも、その後で bosboot およびシステム・リブートが必要です。
mtrc_rarebufsize
目的:
First Failure Data Capture (FFDC) にシステム・トレース情報を提供する Lightweight Memory Trace (LMT) の希少イベント用メモリー・トレース・バッファー・サイズを指定します。
チューニング:
デフォルト値は、参照システム全体のアクティビティー、ハードウェアおよびシステム特性のもとでのデータ生成に基づいています。この範囲の上限はハードウェアおよびシステム特性に基づいており、LMT リソースを共有するため mtrace_commonbufsize の現在値によって決まります。記録されたイベントは、システム・ダンプに保存されるか、またはユーザー・コマンドを介して報告されます (あるいは、この両方が行われます)。
tprof_cyc_mult
目的:
トレース・サンプリング頻度を制御する方法としてパフォーマンス・モニター PM_CYC およびソフトウェア・イベント・サンプリング頻度乗数を指定します。
tprof_evt_mult
目的:
トレース・サンプリング頻度を制御する方法としてパフォーマンス・モニター PM_* イベント・サンプリング頻度乗数を指定します。
tprof_inst_threshold
目的:
トレース・サンプリング頻度を制御する方法としてパフォーマンス・モニター・イベント・サンプル間の完了した命令の最小数を指定します。
値:
  • デフォルト: 1000
  • 範囲: 1 から 2G-1
  • タイプ: 動的
診断:
適用なし
チューニング:
適用なし
tprof_evt_system
目的:
非特権ユーザーがシステム全体にわたるパフォーマンス・モニター・イベント・サンプリングを使用することを許可または制限します。
値:
  • デフォルト : 0
  • 範囲: 0、1
  • タイプ: 動的
  • 単位: ブール値
チューニング:
tprof_evt_system を使用可能 (値 1) にすると、非特権ユーザーは tprof コマンドおよび pmctl コマンドを使用して、システム全体にわたるパフォーマンス・モニター・イベント・サンプリングを実行できます。使用不可 (値 0) にすると、非特権ユーザーは tprof コマンドおよび pmctl コマンドの -y オプション指定で開始されたプロセスについてイベント・サンプリングを実行できます。使用不可モードでは、非特権ユーザーは、カーネルおよびカーネル・エクステンションのイベント・サンプリングを実行できません。

  1. raso コマンドが管理するすべてのチューナブル・パラメーターの、現在値とリブート値、範囲、単位、タイプ、および依存関係を リストするには、次のように入力します。
    raso -L
  2. Lightweight Memory Trace をオフにするには、次のように入力します。
    raso -r -o mtrc_enabled=0
  3. mtrc_commonbufsize のヘルプを表示するには、次のように入力します。
    raso -h mtrc_commonbufsize
  4. 次のリブート後に tprof_inst_threshold を 10000 に設定するには、次のように入力します。
    raso -r -o tprof_inst_threshold=10000
  5. すべての raso チューナブル・パラメーターをそのデフォルト値に永続的にリセットするには、次のように入力します。
    raso -p -D
  6. すべての Virtual Memory Manager チューニング・パラメーターのリブート・レベルをリストするには、次のように入力します。
    raso -r -a