公開日:2024年8月23日
投稿者:Matthew Murray

FSMAとは

Food Safety Modernization Act(FSMA)は、食品の生産と流通を規制する米国の法律です。2011年1月4日にバラク・オバマ大統領によって署名され、米国食品医薬品局(FDA)によって導入されています。

FSMAの内容:

  • 食品サプライチェーン全体にわたるこれまでにない積極的な安全対策を義務付ける

  • 検査、試験、記録管理などの新しい食品安全基準について詳述する

  • 病原体に汚染された食品の追跡と汚染への対応のための包括的な食品安全システムの開発を含む、食品安全事故に対応するための新しい枠組みの概要について説明する

  • 輸入食品に対する認証制度等の管理方法を明確にする

  • 国の食品供給の安全を維持するために、他の連邦機関、州および地方自治体、および外国の対応機関と協力するようFDAに指示する

議会は、食品安全事故への事後対応ではなく、予防を中心に米国の食品安全法の方向性を変えるために、FDA食品安全近代化法を起草しました。これは、連邦食品法の大規模な改正としては約100年ぶりとなるもので、FDAやその他の連邦機関が海外で生産された食品とこの新しい時代に食品を市場に出す複雑なグローバル・サプライチェーンを規制する方法を刷新しました。

FSMA第204条(d)とは

2023年には、米国で313件の食品安全事故が発生しました。予防可能な食品による食中毒により毎年約3,000人の米国人が死亡しています。

2026年1月26日より発効した、特定の食品に対するトレーサビリティー記録の追加要件に関するFDA最終規則は、病原体に汚染された食品を追跡し、店頭の棚から迅速に回収するための連邦システムを創設しています。FSMA第204条(d)に基づいて義務付けられたこの新しい規則では、食品加工業者、サプライヤー、製造業者、流通業者、包装業者、小売業者に特定のポイントでデータを収集することを義務付けています。これにより、規制当局はサプライチェーン内の汚染源を正確に特定し、リコールを開始できるようになります。

具体的には、食品トレーサビリティー最終規則は、FDA の食品トレーサビリティー・リスト(FTL)に掲載されている食品を規制しています。

  • ソフトチーズ
  • 殻付き卵
  • ナッツ・バター
  • キュウリ
  • ハーブ
  • 葉物野菜(カット野菜)
  • メロン
  • トウガラシ
  • スプラウト(もやしなど)
  • トマト
  • トロピカル・フルーツ
  • フルーツ(カット・フルーツ)
  • 葉物野菜以外の野菜(カット野菜)
  • ひれのある魚
  • ひれのある魚(燻製)
  • 甲殻類
  • 軟体動物貝類(二枚貝)
  • すぐに食べられる惣菜サラダ
FSMAの適用対象

FDAの規制を受ける商業農場、食品加工施設、食品包装作業、レストラン、その他の事業は、FSMAに準拠する必要があります。さらに、ジュースや魚介類の生産のための危険分析および重要管理点(HACCP)管理システムを維持する必要がある企業も、通常、FSMAの適用対象となります。

FDAは、35,000の農場と300,000軒のレストランを含む、米国の食料供給者の約4分の3を規制しています。残りの4分の1は、国の食品サプライチェーンの安全を維持するために協力する州機関と連邦機関によって規制されています。州レベルの農業および公衆衛生部門は、FDA、米国農務省(USDA)およびその他の連邦機関と連携して活動し、各規制当局が重要な役割を果たしています。

  • 食品安全検査局(FSIS):USDAの傘下にあるFSISは、市販の肉、鶏肉、卵といった食品のラベル表示と包装を監督します。

  • FDA:FSISによって規制されていないすべての食品、化粧品、栄養補助食品、タバコ、医薬品、ヒトおよび動物用医薬品、ワクチンおよびその他の生物製剤、医療機器を対象とする主要公衆衛生規制機関です。

  • 疾病管理予防センター(CDC):食中毒の発生状況、および病原体汚染が発生した場合の監視と対応の取り組みを追跡および調査する国立公衆衛生機関。

FSMAは、小規模製造施設と、自分たちのコミュニティーで食品を生産および販売する地元の食品提供者を適用対象外としています。組織のFSMAコンプライアンスを支援するために、FDA、USDA、およびコーネル大学のProduce Safety Allianceも、中小企業コミュニティーに技術支援、FSMA向けトレーニング、教育および支援の機会を提供しています。

FMSAの要件

2013年からFSMAを実施するにあたり、FDAは業界関係者に適用される要件を詳述した16の最終規則を発行しました。これらのガイダンス文書は、企業向けに、特定の領域でコンプライアンスを維持するために導入する必要がある、次のようなさまざまな業務変更の概要を示しています。

認定サード・パーティー認証

2015年11月にFDAによって最終決定されたこの規則は、国内および輸入食品の安全監査を実施するサード・パーティーを認定するための認定枠組みを開発しました。

食品に対する予防管理

2015年9月にFDAによって最終決定されたこの規則は、規制対象となる特定の食品施設が食品安全計画を策定し、現行の適正製造基準(CGMP)に基づいてFSMA予防管理を実施することを義務付けています。食品に関する規則では、予防管理資格を持つ個人(PCQI)が食品安全計画を作成することが求められています。PCQIは、Food Safety Preventive Controls Alliance(FSPCA)などの認定機関によって認証される必要はありません。

飼料に対する予防管理

2015年9月にFDAによって最終決定されたこの規則は、規制対象となる特定の飼料施設が食品安全計画を策定し、CGMPおよびリスクベースの予防管理を実施することを義務付けています。

食品および飼料の食品輸入業者向けの外国供給業者検証プログラム(FSVP)

2016年1月26日より発効するこの最終規則は、食品・飼料輸入業者に対し、食品・飼料の病原体汚染リスクを評価し、予防管理を開発することを義務付けています。

農産物の安全性

2016年1月26日より発効するこの最終規則は、生肥料や安定化堆肥などの生物学的土壌改良剤の適用を含む、生鮮食品生産の最低安全基準を定めています。また、FDAの製造安全規則は、過去3年間に商品を「適格なエンドユーザー」に販売した額が、年間合計50万米ドルに満たない小規模組織を適用対象外としています。このエンドユーザーへの販売とは、「農場と同じ州または同じインディアン居留地にある、または農場から445マイル以内で業務を営む」顧客または食品施設への直接販売を指します。

意図的な異物混入から食品を守るための緩和戦略

2013年12月に提案されたこの最終規則では、農産物以外の特定食品生産施設に対して食品防御計画の策定と実施を義務付けています。

食品と飼料の衛生的輸送

2016年6月6日に発効するこの最終規則は、輸送中の食品・飼料の冷蔵および保管に関する連邦要件を標準化しています。

収穫前の農業水

2024年7月5日に発効するこの最終規則は、微生物の品質基準と、農作物の成長中に灌漑に使用される水の検査要件を更新します。

FSMA第204条(d)の要件

FSMA第204条(d)に基づき、FTL上の品目を製造、加工、梱包、保管する組織は、FDAが「農場から食卓までの流れ」と定義する重要な追跡イベント(CTE)に関する主要データ要素(KDE)を収集し、維持する必要があります。これらのCTEには次のものが含まれます。

  • 収穫:未加工の農産物(RAC)を、栽培、飼育、または調理される農場または同様の施設で除去するプロセス。

  • 最初の陸上受領者:漁船から直接得られた食料を最初に取得した個人または団体に割り当てられる名称。

  • 冷却:真空冷却、氷の使用(魚介類以外の食品の場合)、ハイドロ冷却、従来の空調など、RACの温度を下げるための積極的なプロセス。

  • 初期梱包:漁船から入手したものではないRACの初回梱包。

  • 配送:食料が「ある場所から別の場所」へ移動することを示す供給マイルストーン。このCTEには社内配送が含まれますが、消費者への直接販売や寄付は含まれません。

  • 受領:食品が出荷された後、物理的に別の場所に到着したことを示すサプライチェーンのマイルストーン。このCTEには社内配送が含まれますが、消費者への直接販売や寄付は含まれません。

  • 変換:FTLにある完成食品の製造、加工、混合、再梱包、または再ラベル付け。

すべてのFTL食品には、最初にRACとして梱包されるとき、輸送船から直接受け取るとき、または規制対象食品に変換されるときに、トレーサビリティー・ロット・コード(TLC)と呼ばれる固有の英数字識別子または記述子が割り当てられる必要があります。FDAのFSMA規則の適用除外となっている企業から受け取ったFTL食品にも、レストラン以外の受取人によってTLCが割り当てられる必要があります。

米国の全国食料品小売業協会は、1週間に平均3回の出荷を受ける典型的な15店舗の食料品チェーンの場合、各CTEには年間117,000のデータ・ポイントが必要になると推定しています。

FDAの食品トレーサビリティー最終規則では、農場やレストランに対しても、トレーサビリティー計画の作成を義務付けています。農場および食品施設の場合、トレーサビリティー情報最低要件には次のものが含まれます。

  • 記録の保管方法についての説明
  • FTL食品の識別方法についての説明
  • TLCの割り当て方法についての説明
  • 指定拠点の連絡先
  • FTL食品が栽培されている農場マップ
  • トレーサビリティーに対する更新は2年前に遡ること

さらに、FSMA第204条(d)に基づいて、組織はトレーサビリティー計画およびその他の関連文書の原本、電子コピー、または紙のコピーを維持することが義務付けられています。

農場や食品施設は、FDAの要求から24時間以内にこれらの記録を作成します。同様に、「疾病の集団発生、リコール、またはその他の公衆衛生への脅威」が発生した場合、組織はFDAの要求から24時間以内に「関連するトレーサービリティー情報」を含む並べ替え可能な電子スプレッドシートを作成する必要があります。

FDAはWebサイトで、組織がFSMA第204条(d)に基づく食品トレーサビリティー規則やその他の記録保持要件を満たす方法を詳述した包括的なガイダンスを提供しています。また、組織が要件を満たすトレーサビリティー・システムを確率するのに役立つ、ダウンロード可能および並べ替え可能な電子スプレッドシートも提供しています。

施行と違反罰則

FSMAの食品病原体汚染防止規定に従わない企業は、食品・医薬品・化粧品法に基づいて訴追されます。FDAはトレーサビリティーに関する規則を公表し、「自主的な遵守を促すために」食品業界の利害関係者と協力する意向を示しています。その一方で、FSMA違反に対して次のような特定の強制措置を講じる可能性があることを公表しています。

  • アドバイザリー・レターの発行
  • 押収、命令、その他の裁判所措置
  • 行政拘禁
  • 強制リコール
  • 食品施設の登録停止
IBM、FSMA、FSMA第204条(d)

IBMは、規模に関係なく企業のニーズを満たすコンプライアンス管理ソリューションを通じて、組織がFSMA第204条(d)のトレーサービリティー要件を満たせるように支援しています。IBMが提供するツールは、食品トレーサビリティー・ソフトウェアの開発における数十年にわたる経験に基づき、関係者が食品サプライチェーン全体を管理できるようにしています。

iFoodDSとIBMの連携

iFoodDSとIBMが提供する包括的なFSMA第204条(d)対応のトレーサビリティーおよびコンプライアンス管理ソリューションは、食品業界、規制、技術に関する深い革新的な専門知識を通じて、相互運用性と拡張性の課題を抱える組織にも役立ちます。

生産者、加工業者、卸売業者、販売業者、製造業者、小売業者の共同ネットワークであるIBMとiFoodDSのパートナーシップにより、組織とそのサプライチェーン・パートナー間の可視性と説明責任が強化されます。このソリューションはIBM® Blockchain上に構築されており、食品の来歴・取引データ・処理の詳細に関する許可型の変更不能な記録を共有することで関係者をつなぎます。

さらに、IBM®コンサルティングは企業と緊密に連携し、サプライチェーンとデータ環境全体の近代化を支援しています。この総合的なアプローチは、組織が新しい規制要件を満たし、コスト削減を実現し、顧客に価値を生み出すのに役立っています。

IBMとiFoodDSのパートナーシップまたはIBMコンサルティングの詳細については、IBM.com をご覧ください。

 

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IBM Food Trustは、食品サプライチェーン全体の可視性と説明責任を強化する共同ネットワークです。IBM Sterling Supply Chain Intelligence Suite(SCIS)の一部であるFood Trustは、安全なドキュメント共有を簡素化し、ブランドに対する利用者の信頼を深めます。Food Trustの詳細をご覧になるか、SCIS FSMA第204条(d)対応の無料評価版でご確認ください。

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お客様は適用法・規則の遵守を徹底する責任を負うものとします。IBMは法律上の助言を提供せず、IBMのサービスまたは製品を使用することでお客様による法律または規則の遵守が確約されると表明することも保証することもありません。