IBM Quantum™はロードマップに沿って加速的に前進しています。同時に、IBMはエンタープライズ・グレードのサービスを提供するため、IBM Quantum Platformのアップグレードを進めています。プラットフォームの新しいプレビュー・バージョンでは、オープン・プランのユーザも最新のHeron QPUにアクセスできるようになります。
2016年にIBM®は世界で初めて、クラウド経由で量子プロセッサーの提供を開始しました。当時は小規模で実験的なデバイスだった量子コンピューターを、IBMは約10年かけて高性能で実用規模のデバイスに進化させてきました。そして今、ユーザーがこれらのデバイスにアクセスする方法も、進化させる時が来ています。
IBMはIBM Quantum Platformをまもなくエンタープライズ・グレードのインフラストラクチャーへとアップグレードします。そしてその新しいプラットフォームのアーリーアクセス版を今すぐお試しいただけます。アップグレード後の最終バージョンは、現在使用されているバージョンと非常によく似たものとなります。これまでのプラットフォームに保管されていたドキュメントと学習リソースには引き続きアクセスできるようになります。しかしそれだけでなく、この移行によって性能が向上し、多くのユーザーの皆様が長い間要望してきた強力な機能、つまり現在のインフラストラクチャーでは導入が困難または不可能だった機能が展開できるようになります。
その最初の例としては、データ・プライバシーとセキュリティー機能の強化、洗練された通知機能、プラットフォーム・ナビゲーションの改善、英語以外の言語を利用されるユーザー向けの多言語オプションなどが含まれます。このアップグレードで導入される機能と利点の詳細なリストは、この記事の下部にあります。
今すぐ始める: IBM Quantumオープン・プラン(無料プラン)およびPay-as-you-goプラン(従量課金プラン)のユーザーは、アーリーアクセス・プラットフォームを今すぐお試し頂けます。
注: IBM Quantum Platformへのアクセスが、プラン管理者によって管理されている場合(プレミアム・プラン、デディケーテッド・サービス(専用機)、スタートアップ・プログラムなど)、今後数か月以内に管理者から移行ガイドが提供されます。それまでの間には、無料のオープン・プラン・アカウントを作成して頂くことで、新しいプラットフォームをお試し頂けます。
「アーリーアクセス」とは、本プラットフォームの新バージョンがプレビュー版であり、まだ開発中であることを意味します。フルバージョンをリリースする前から、アーリーアクセスでユーザーにお試し頂き、そのフィードバックによって機能を改善したいとIBMは考えています。まだ試すには早いと感じられたユーザーは、すぐに移行する必要はありません。ただ、IBM Quantum Platformの現在のバージョンは、最終的にはサンセットされるということはご承知おきください。十分に情報をご提供してまいりますが、そのサンセット前にすべてのユーザーは新しいプラットフォームに移行する必要がありますので、このブログを詳しくお読みになり、新しいプラットフォームについてご検討を開始して頂くことを強くお勧めします。
IBM Quantum Platformは2016年に立ち上げたIBM Q Experienceの直接の後継ですが、その頃は急成長する量子コミュニティーが、AIやデータ・サイエンスなどの分野で必要とされるような強力で柔軟で安全性の高いクラウド・ソリューションを必要としてはいませんでした。しかし、量子コミュニティーのニーズは急速に変化しています。現在までに量子コンピューターは、学術機関、企業、政府の研究機関が古典計算の範囲を超えた科学的な問題を探求するために使用している、強力で高性能なツールに進化しました。この作業を支え、IBM Quantumロードマップに沿ってサービスを継続的にスケーリングし、最新のデータ・プライバシーおよびセキュリティー対策に裏打ちされた、高性能な量子システムへのアクセスをすべてのユーザーに提供するためには、エンタープライズ・グレードのクラウド・エクスペリエンスを実現するべくプラットフォームを成熟させる必要があります。
以下では、この変更を行う理由、それがもたらす長期的なメリット、移行の準備をしているすべての方が留意すべき重要な詳細について詳しく説明します。アップグレードされたプラットフォームへのアクセス方法の詳細な手順については、次のセクションのリンクをご参照ください。
一般的な移行ガイド: 新しいプラットフォームでのアカウント作成とランタイム・プロバイダー・コードの更新の詳細が含まれます。
REST API ユーザー向けの移行ガイド:Qiskit Runtime REST APIユーザー向けの特別なガイドも含みます。
オープン・プランまたはPay-as-you-goプランのユーザーで、新しいIBM Quantum Platformへの移行をいち早く開始することに関心がある場合は、上記リンク先の移行ガイドの指示に従って、今すぐ移行することができます。可能であれば、できるだけ早い移行をお願いします。アーリーアクセスのユーザーには、後日の正式ローンチに向けて、開発者チームに貴重なフィードバックを頂けたらと考えております。
特にお伝えしたいことは、新しいプラットフォームに移行することで、オープン・プランのユーザーは、チューナブル・カップリング・アーキテクチャーを備えた最先端のIBM Quantum Heron QPUへのアクセスが初めて可能になるということです。 現在、Heronを搭載した量子コンピューターは、プレミアム・プランのユーザーのみが利用できます。新しいIQPでは、すべてのユーザーが少なくとも1つのHeron QPUにアクセスできるようになります。
注:IBM Quantum Platformへのアクセスがプラン管理者によって管理されている場合(プレミアム・プラン、デディケーテッド・サービス(専用機)、スタートアップ・プログラムなど)、今後数か月以内に管理者から移行ガイドが提供されます。それまでの間、新しいプラットフォームをお試しされるには無料のオープン・プラン・アカウントを作成してみてください。
プラットフォームの今回のアップグレードに至った最大の理由は、ユーザーの皆様から頂いていた重要な機能要求の中に、これまでのインフラストラクチャーでは提供できないものがあったからです。そのようなご要望に私たちは耳を傾け、現在および将来のすべてのサービスを処理するのに十分な堅牢性を備えた新しいプラットフォームを構築しました。
安定性の向上:量子プラットフォームは、これからユーザーが世界初となる量子優位性を実現するのを支えるために、さらに複雑なワークフローの実行に十分な安定性と信頼性を備える必要があります。アップグレードされたクラウド・サービスは、はるかに回復力のあるインフラストラクチャーと高度なフェイルオーバー・メカニズムを提供することで、新しいプラットフォームの安定性を大幅に向上させ、サービスの中断を最小限に抑え、一定したパフォーマンスを提供し続けるのに役立ちます。これらの新機能により、信頼性がさらに向上し、長期的に安定した安心できるプラットフォームの基盤が提供されます。
データ・ローカリティー(局所性): セキュリティー強化の一環として、またすべてのユーザーの処理をローカルで行うことと規制へのコンプライアンスを強化するための継続的な取り組みとして、新しいプラットフォームのローンチに伴い、新しいデータ・ローカリティー機能を導入する予定です。すなわち、データと実験の所在を特定の地域に限定することが選択できるようになります(たとえば、EUに拠点を置いている場合は、すべての実験をヨーロッパのデータセンターで実行できるようになります)。
セキュリティーの強化:新しいプラットフォームで提供できる最重要機能の1つは、データが確実に長期的に保護されるようにするセキュリティーとコンプライアンスの強化です。
エンタープライズ・クラウド機能: IBM Quantum Platformの新しいエンタープライズ・グレードのクラウド・インフラストラクチャーは、企業やその他の大規模な組織に役立つ多くの機能を提供します。これには、複数言語のサポート、SSO統合、サービスID、アクセス権とユーザー管理の高度な機能、APIキーとトークン管理の改善が含まれます。
シームレスなクラウド統合:このアップグレードによりプラットフォームは、Cloud Object Storage(COS)やVirtual Private Cloud(VPC)といった、すぐに利用できるクラウド・コンピューティング・サービス群とのシームレスな統合を提供できるようになります。これらのサービスにより、ユーザーにとって自分のデータやクラウド・リソースがどのように保存、管理、保護されるかという方法に対するコントロールが大幅に改善され、AI、HPC、その他のワークロードでの利用が容易になります。
新規および既存のアクセス・プランの統合:アップグレードされたプラットフォーム・エクスペリエンスへの移行により、IBM Quantumに関連するすべてのサービスに対して統一されたエントリー・ポイントを作成することができます。これは、Pay-as-you-goプランのユーザーが他のすべてのユーザーと同じダッシュボードを使用することを意味します。また、これは、量子コンピューターの使用方法に関するオプションをさらに増やす新しいアクセスプランの導入を加速できることも意味します。
通知機能の洗練:新しく統合された通知システムにより、アカウントの更新、サービス・アラート、ソフトウェア・リリースを追跡するのに便利な一元的な場所が提供され、通知の受信方法をより詳細に制御できます。
開発者体験の向上: IBMはこの移行の機会に、開発者のエクスペリエンスを向上する多くの機能を導入します。その一例がQiskit Runtime REST APIでのAPIバージョン管理で、これにより開発者は特定のAPIバージョンを安心して利用できるようになり、互換性を失わせる変更を回避しながらテストと機能のロールアウトを簡単化できます。開発者にとってよりスムーズで予測可能なワークフローが保証されます。
今は量子コンピューティングにとってエキサイティングな時代です。量子コミュニティーとHPCコミュニティーが互いに協力することで量子優位性が達成されるという瞬間を世界は迎えようとしており、さらに量子エラー訂正とフォールト・トレランスを達成するのもわずか数年以内であると私たちは予想しています。このような大きな成果が間もなく世に現れるにあたって、今の量子有用性の時代を活かしきり、急速に接近する量子優位性の時代に進むのに十分な堅牢なクラウドプラットフォームが必要です。アカウントを作成して、アーリーアクセス・モードで新しいIBM Quantum Platformを今すぐお試しください。
この記事は英語版IBM Researchブログ「The next evolution of IBM Quantum Platform: How to prepare for the transition」(2025年2月27日公開)を翻訳し一部更新したものです。