人工知能の長所と短所を分析する

2024年1月10日

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人工知能(AI)とは、従来は人間が必要とされていたタスクを実行するために人間の知能を備えた機械を構築することに重点を置いた、コンピューター・サイエンスとデータ・サイエンスの融合分野を指します。習、推論、問題解決、知覚、言語理解などが例として挙げられます。AIシステムは、プログラマーからの明示的な指示に頼るのではなく、データから学習して、複雑な問題(および単純だが反復的なタスク)を処理し、時間の経過とともに改善することができます。

今日のAIテクノロジーは、さまざまな業界で幅広いユースケースがあります。企業はAIを使用して、人的エラーを最小限に抑え、運用にかかる高額なコストを削減し、リアルタイムのデータ・インサイトを提供し、顧客エクスペリエンスを向上させるなど、さまざまな用途に活用しています。したがって、これはコンピューティングへのアプローチ方法の大きな変化を表し、ワークフローを改善し、日常生活の要素を強化できるシステムを作成します。

しかし、AI には数多くのメリットがあるにもかかわらず、従来のプログラミングと比較すると無視できない欠点もあります。AIの開発と導入には、データ・プライバシーの懸念、雇用の喪失、サイバーセキュリティーのリスクが伴う可能性があり、AIシステムが意図したとおりに動作することを保証するための大規模な技術的取り組みも伴います。

この記事では、AIテクノロジーがどのように機能するかについて説明し、従来のコンピューティング方法と比較した人工知能の長所と短所を説明します。

人工知能とは何でしょうか。どのように機能するのでしょうか。

AIは、データ、アルゴリズム、計算能力という3つの基盤コンポーネントに基づいて動作します。

  • データ:AIシステムはデータに基づいて学習し、意思決定を行いますが、特に機械学習(ML)モデルの場合には、効果的にトレーニングするには大量のデータが必要です。データは、モデルの学習に役立つトレーニング・データ、モデルを調整する検証データ、モデルのパフォーマンスを評価するテスト・データの3つのカテゴリーに分類されることがよくあります。最適なパフォーマンスを得るには、AIモデルが多様なデータセット(テキスト、画像、音声など)からデータを受け取り、システムが学習を新しい未知のデータに一般化できるようにする必要があります。
  • アルゴリズム:アルゴリズムは、AI システムがデータを処理して意思決定を行うために使用する一連のルールです。AIアルゴリズムのカテゴリーには、明示的なプログラミングなしで学習し、予測と決定を行うMLアルゴリズムが含まれます。AIは、多層人工ニューラル・ネットワーク(ANN)(つまり「ディープ」という記述子)を使用してビッグデータ・インフラストラクチャー内の高レベルの抽象化をモデル化するMLのサブセットであるディープラーニング・アルゴリズムから機能することもできます。また、強化学習アルゴリズムにより、バーチャル・アシスタントは機能を実行し、その正しさに基づいて罰と報酬を受け取ることで動作を学習し、モデルが完全にトレーニングされるまで繰り返し調整することができます。
  • 計算能力:AIアルゴリズムでは、特にディープラーニングの場合、大量のデータを処理し、複雑なアルゴリズムを実行するために、大量の計算リソースが必要になることがよくあります。多くの組織は、これらのプロセスを効率化するために、グラフィック・プロセッシング・ユニット(GPU)などの特殊なハードウェアに依存しています。

また、AIシステムは次の2つのカテゴリーにも分類されます。

  • 狭義の人工知能は、狭義のAIまたは弱いAIとも呼ばれ、画像認識や音声認識などの特定のタスクを実行します。IBMのwatsonx、Apple社のSiri、Amazon社のAlexa、さらにはOpenAIのChatGPTなどのバーチャル・アシスタントは、競技のAIシステムの例です。
  • 人工汎用知能(AGI)、別名、強いAIは、人間が実行できるあらゆる知的タスクを実行できます。つまり、さまざまな領域にわたって知識を理解し、学習し、適応し、それに基づいて作業することができます。しかし、AGIはまだ単なる理論的な概念にとどまっています。

従来のプログラミングの仕組み

AIプログラミングとは異なり、従来のプログラミングでは、プログラマーがあらゆるシナリオでコンピューターが従うべき明示的な指示を記述する必要があります。その後、コンピューターは指示を実行して問題を解決したり、タスクを実行したりします。これはレシピに似た決定論的なアプローチであり、コンピューターがステップバイステップの指示を実行して目的の結果を実現します。

従来のアプローチは、明確に定義され、可能な結果の数が限られている問題には適していますが、タスクが複雑であったり、人間のような認識が求められる場合(画像認識、自然言語処理など)は、すべてのシナリオに対してルールを記述することが不可能になることがよくあります。ここで、AIプログラミングはルールベースのプログラミング方法よりも明らかに優位です。

従来のコンピューティングと比較したAIの長所と短所

AIが現実世界で持つ可能性は計り知れません。AIアプリケーションには、病気の診断、SNSフィードのパーソナライズ、気象モデリングのための高度なデータ分析の実行、カスタマー・サポート・リクエストを処理するチャットボットの強化などがあります。AI搭載ロボットは自動車を組み立てたり、山火事による放射線を最小限に抑えたりすることもできます。

他のテクノロジーと同様、AIにも、従来のプログラミング・テクノロジーと比較した長所と短所があります。AIと従来のプログラミングは、基本的な機能の違い以外にも、プログラマーの制御、データ処理、拡張性、可用性の面でも大きく異なります。

  • コントロールと透明性:従来のプログラミングでは、開発者はソフトウェアのロジックと動作を完全にコントロールできるため、正確なカスタマイズと予測可能で一貫した結果を得ることができます。プログラムが期待どおりに動作しない場合は、コードベースを遡って問題を特定し、修正することができます。一方、AIシステム、特にディープ・ニューラル・ネットワークのような複雑なモデルは、制御や解釈が困難になることがあります。これらは多くの場合、「ブラック・ボックス」のように動作します。つまり、入力と出力は既知ですが、モデルが一方から他方へ移行するために使用するプロセスは不明です。この透明性の欠如は、プロセスと意思決定の説明可能性を優先する業界(医療や金融など)では問題となる可能性があります。
  • 学習とデータ処理: 従来のプログラミングは硬直的で、プログラムを実行するために構造化データに依存しており、一般的に非構造化データの処理に苦労しています。プログラムに新しい情報を「教える」には、プログラマは手動で新しいデータを追加したり、プロセスを調整したりする必要があります。また、こうしたコーディングされたプログラムは、独立した反復にも苦労します。言い換えれば、予期せぬシナリオに対応するための明示的なプログラミングがなければ、それらのシナリオに対応できない可能性があります。一方、AIシステムは膨大な量のデータから学習するため、画像、動画、自然言語テキストなどの非構造化データの処理に適しています。AIシステムは、(機械学習のように)新しいデータやエクスペリエンスから継続的に学習することもできるため、時間の経過とともにパフォーマンスを向上させることができ、最適なソリューションが時間の経過とともに進化する可能性がある動的な環境で特に有用です。
  • 安定性と拡張性:従来のプログラミングは安定しています。プログラムを作成してデバッグすると、プログラムは毎回まったく同じ方法で操作を実行します。ただし、ルールベースのプログラムの安定性は、その大小として拡張性が犠牲になります。従来のプログラムは明示的なプログラミング介入を通じてのみ学習できるため、プログラマーは操作をスケールアップするために大規模なコードを記述する必要があります。このプロセスは、多くの組織にとって、不可能ではないにしても、管理がかなり難しくなると判断される可能性があります。対するAIプログラムは、従来のプログラムよりも拡張性が高くなりますが、安定性には劣ります。AIベースのプログラム・オートメーションと継続的学習機能により、開発者はプロセスを迅速かつ比較的簡単に拡張でき、これはAIの重要なメリットの1つです。ただし、AIシステムの即興的な性質により、プログラムが常に一貫した適切な応答を提供するとは限りません。
  • 効率と可用性:ルールベースのコンピューター・プログラムは24時間365日利用可能ではあるものの、それは24時間人間の作業員が担当している場合に限られることもあります。

一方、AIテクノロジーは、人間の介入なしに24時間365日稼働できるため、事業運営を継続できます。人工知能のもう1つのメリットは、AIシステムが退屈な作業や反復的な作業(データ入力など)を自動化できるため、従業員の帯域幅をより価値の高い作業に解放し、会社の給与コストを削減できることです。ただし、オートメーションは労働力に重大な失業をもたらす可能性があることは重要な留意点となります。例えば、一部の企業では、そのようなタスクを人事部門に委任する代わりに、バーチャル・アシスタントを使用して従業員のレポートをトリアージするようになりました。組織は、業務にAIを組み込むことによる生産性の向上によって可能になる新しいワークフローに、既存の労働力を組み込む方法を見つける必要があります。

IBM Watsonによる人工知能のメリットの最大化

英国の情報通信技術市場に特化した調査会社であるOmdia社は、世界のAI市場は2028年までに2,000億米ドル規模にまで拡大すると予測しています¹。これは、企業のITシステムの複雑さが増すにつれて、企業はAIテクノロジーへの依存度が高まることを想定すべきであることを意味します。しかし、IBM Watsonx AIおよびデータ・プラットフォームを導入すれば、組織はAIを拡張するための強力なツールを手に入れることができます。

IBM watsonxを使用すると、チームは1つのプラットフォームでデータ・ソースを管理しながら責任あるAIワークフローを加速し、ビジネス全体にAIを簡単に導入して組み込むことが可能になります。watsonxは、包括的なワークロード管理やリアルタイムのデータ監視など、企業全体にわたる信頼できるデータを使用してAIを活用したITインフラストラクチャーを拡張および加速できるように設計された、さまざまな高度な機能を提供します。

AIの使用には複雑さがないわけではありませんが、その複雑さに対処できる高度なテクノロジーで対応することで、企業がますます複雑でダイナミックな世界に遅れを取らないための機会を提供します。

 

著者

Chrystal R. China

Writer, automation & ITOps