データ・リテラシーとは何か、なぜ重要なのか

AIによってグローバル・ワークプレースの変革が進むにつれて、データ・リテラシー・スキルの需要は高まっていきます。12カ月先までを見据えた意思決定を行う企業組織のうち、調査対象の実に79%がデータは今後より重要になると述べているという事実もあります。¹ しかし、実際のところデータ・リテラシーとは何でしょうか?

Gartner®社の定義するデータ・リテラシーとは、データをコンテキストに従って読み取り、書き込み、伝達する能力です。この能力にはデータのソースと構造の理解、分析手法や技法の適用、ユース・ケースの適用とその結果として生じる価値を説明する能力などが含まれます。²

では、なぜこれらのスキルが重要なのでしょうか? データ・リテラシーの文化を持つデータ主導型の組織を構築すれば、組織内のすべての人がデータ主導型のより良い意思決定を行うことで、より良い成果をあげることが可能になるからです。

データ・リテラシーは、データサイエンティストだけでなく、誰もが必要とする能力です。データを利用して理解、解釈、伝達する能力は、新人から経営幹部までのすべての従業員にとって重要なスキルです。

ビジネスのコンテキストに従ってデータを適用し、継続的なサポートとトレーニングを実施する環境でそのデータから洞察を得られるようになると、組織にとってデータ統合ワークフローは不可欠になります。このようにデータを活用することにより、これまでとは比較にならない価値ある意思決定を下せるようになると、もはや以前のような業務形態に戻ることは難しくなるでしょう。

79%

12カ月先までを見据えた意思決定を行う企業組織のうち、調査対象の実に約80%がデータは今後より重要になると述べています。¹

29%

データ主導型の意思決定スキルを有する組織の約30%は、各種の意思決定スキル中でもデータ分析を行動に移すためのスキルが最も劣っていると回答しています。³

データ・リテラシー文化の4つの基礎

データ・リテラシー文化を正しく育成するポイントをご紹介します。 



1. エンタープライズ全体でデータ・アクセスを民主化する

一般的には、データサイエンスのトレーニング・プログラムを採り入れることがデータ主導型の組織になるための第一歩と考えられていますが、まずはデータにアクセスしやすい環境づくりからスタートします。一例として、コール・センターのシステムについて考えてみましょう。ほとんどの場合、データはアプリケーションにロックされており、組織の他のメンバーが利用することはできません。しかし顧客の同意を得てコール・センターのデータを共有して分析すれば、その結果を職員のトレーニングや教育、業務全体の効率、および組織における同部門のコミュニケーションの向上に役立てることができます。

IBM Global Chief Data Office(GCDO)の副社長であるTim Humphreyは、「さまざまなタイプの洞察が価値をもたらしますが、中でも個々の職務領域やドメインの外部から幅広く得られる洞察は、特に大きな価値をもたらします。そのことを、多くの人々に理解してもらう必要があります」と述べています。データ・ファブリックなどの中央リポジトリーを構築すれば、組織全体のユーザーがデータを簡単に保存してアクセスできるようになり、データ・アクセスが簡素化されます。

民主化されたデータ・アクセスを実現するため、IBMのGCDOは統合データ・プラットフォームを実装しました。このプラットフォームでは、データ・ガバナンスの中央データ・ソース機能が利用できますので、ユーザーはここでデータのロード、変換、分析ができます。このプラットフォームの実装以来、GCDOのビジネス成果は急速に向上しています。約18カ月の間に、このオフィスではデータとAIをベースとした変革イニシアチブにより、13億米ドルの事業利益と10倍のROIを実現しました。

データ・アクセスを民主化するためのヒント

2. 明確かつ透明性のある方法で情報を整理する

データ・ガバナンスによるアクセスを実現するプラットフォームを確立したら、パイプライン全体でデータがどのように移動するかをすべての意思決定者に理解させることが重要です。それにはデータの価値、出所、品質を明確に意思決定者全員に伝えるだけでなく、あらゆるレベルの専門知識を尊重しなければなりません。技術系ユーザーと非技術系ユーザー双方のデータ・エンパワーメントを実現するには、これが最速の方法です。テクノロジー恐怖症の克服に、王道はありません。

また、すべての人がデータサイエンティストの知識を持つ必要はありませんが、データとその系統、データが(プロセスの一部だけでなく)エンドツーエンドのプロセス内でどのように流れるのかを理解する必要があります。そのためには、以下の点について確認する必要があります。

  • データのソースは何か、それは信頼できるものか?
  • その背後にあるメタデータ、ルール、コンプライアンス・ポリシーは何か?
  • このアルゴリズムから生成されたデータは、対象ユーザーにとってどのような意味を持つのか?
  • より良いビジネス成果を実現するために、このデータのビジネス上の価値をどのように説明すればよいか?

チームはデータの検索ができるだけでなく、アクセスすべきすべてのデータへのアクセスが可能であり、さらにそのデータを使用してビジネス・アプリケーションを活用できなければなりません。

データ主導型の組織で情報を整理するためのヒント

3. 責任を持ってデータを分析に使用し、データを行動につなるデータ・シチズンの育成

データ・リテラシーをトレーニングすることで、組織はデータを読み取り、解読し、使用して、より適切な意思決定を下しやすくなります(特にデータのソースがモデルである場合)。さらに、データを利用して自社を他社と差別化して競争力をつけられるようにチームを強化することもできます。トレーニングを適用してデータをビジネスの成果に結びつけるには、チームは使用しているデータ・ツールの性能と、それを使用してどのように目標を達成できるかを十分に理解する必要があります。最終的には、データを多くの人にとって価値あるものにすることで、血の通ったデータとAIを育成できる専門家が必要です。データ・リテラシー・プログラムは、チームがデータを説得力のある視覚的なストーリーに変換して多くの人の心に響くものにし、データを実用的な知識と具体的なビジネス成果に変換できた段階で、初めて成功したといえます。

Johnson & Johnson社は、従業員がAIを含む高度な先進テクノロジーを最大限に活用する方法を学べるようにサポートしています。Johnson & Johnson社の最高情報責任者(CIO)であるJim Swanson氏は、「IBMとのパートナーシップにより、非識別化外部データと社内データ・セットのスキル・データを組み合わせた、テクノロジー部門向けのAI主導型スキル推論モデルを作成しました」と述べています。

「IT部門が使用しているツールに含まれている従業員のスキルに関するデータを取得し、モデルに取り込むことができました。その結果、AIは私たちが従業員に習得させたいスキルごとに個人の習熟度を判断し、個々の長所と短所を包括的に把握できるようになりました」とSwanson氏は述べています。

Johnson and Johnson社のように経営幹部の利害関係者レベルでビジネス戦略を高度に結びつけ、それを利害関係者のドメイン全体にマッピングすることによって、組織のデータ・リテラシーを構築することもできます。

「利害関係者がデータへの取り組みに『失敗した』とか『期待した成果を得られなかった』と苦情を訴えることがありますが、多くの場合は経営戦略が明確に定義されておらず、利害関係者のデータ・リテラシーがドメインやチーム全体で調整されていないことがその原因です」と、パートナーであるIBMコンサルティングのタレント・データ・グローバル・ヘッドのJennifer Kirkwoodは述べています。

46%

データ主導型の強化に向けた対策を講じている組織のほぼ半数が、データ・リテラシーとスキルの向上に投資しています。⁴

データ主導型企業をトレーニングするためのヒント

4. 共感をもってリードし、データのチャンピオンを生み出す

好奇心こそが、データ主導型の意思決定とデータ・リテラシーの文化を構築するための原動力です。データ・リテラシーの高い組織の従業員やリーダーは、常に「なぜ」と問いかけ、何事も額面通りに受け取ることはありません。常に多くの声に耳を傾け、データ・リテラシー・スキルがどのようにビジネスに成果をもたらすことができるかを共に理解しましょう。「従業員はデータの可能性を理解する必要があります」と、IBMのグローバル最高データ責任者であるInderpal Bhandariは述べています。「データ・リーダーには、企業文化に変化をもたらすという役割があります。社内におけるデータの新たな活用法を提案し、他の従業員が従うことができる模範を示さなければなりません。もしリーダーがそれに集中して取り組まなければ、従業員が期待通りの成果をあげることはできないでしょう」

組織全体でデータがどのように機能するかを従業員が理解できる環境が整えられれば、共感を持ってリードできるようになります。これはデータ・スチュワードシップの文化において不可欠であり、最終的には組織全体にデータ・チャンピオンのネットワークが生まれ、データ・リテラシーは優れた学習サイクルの一部となります。

データ主導型組織をリードするためのヒント

データ・リテラシーはデータ・エンパワーメントである

データとAIが組織運営のあらゆる側面で中核となるにつれて、データ・リテラシーはデータ主導型の文化を構築するための基礎となります。組織のデータ・リーダーは、データに基づく共通言語を浸透させることで変化を促進し、より大きなビジネス目標達成をサポートできます。この努力には困難が伴うかもしれませんが、このように野心的なアイデアこそが解決すべきギャップを埋めるものであり、投資する価値があります。エンタープライズの将来は、まさにその努力にかかっています。

ですから、今は立ち止まらないでください。ビジネス目標に基づいて適切なデータ・リテラシー・スキルの開発を継続的に促進し、経営幹部と全従業員のチームメイトとしての立ち位置を確保してください。「企業が真のデータ・リテラシーを身につけるには、このような考え方が組織のいずれかの層でだけ顕著になるのではなく、すべての役職に浸透する必要があります」と、Humphreyは述べています。つまりデータ・リテラシーは、組織のすべてのレベルで終りの無いジャーニーを続けるのです。

そして何よりも、あなたが他の模範でいることを忘れないでください。データ・リーダーとして示した模範によって組織の方向性が定まり、チームはデータについて話しやすくなり、データからより良いビジネス成果が生み出されるようになります。アドボカシーとデータ・リテラシーの枠組みを整えることで、データの洞察を行動に移し、データ・チャンピオンの文化とデータ主導型の意思決定のための基礎を今後何年にもわたって築くことができます。

次のステップ

どのように始めますか?

適切なデータ・アーキテクチャーは、反復的なプロセスで構築されていきます。時間の経過とともに、お客様のビジネスに適応しながら成長していきます。 ぜひ、私たちにご相談ください。

脚注

¹ “Voice of the Enterprise: Data & Analytics, Data-Driven Practices,” 451 Research, 2022
² How to Create a Balanced Data and Analytics Organizational Model, Gartner, 10 May 2022. GARTNERはGartner社、および、その米国および世界各国の関連会社の登録商標およびサービス・マークであり、ここでは許可を得て使用されています。All rights reserved.³ “Voice of the Enterprise:Data & Analytics, Data-Driven Practices,” 451 Research, 2022
⁴ “Voice of the Enterprise:Data & Analytics, Data Management and Analytics,” 451 Research, 2021