クイーンズランド大学
AI研究のための高性能データ・ストレージを導入して、インサイトを得るまでの時間を短縮
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タブレットでデータを分析している2人のユーザー

世界トップクラスの研究機関であるクイーンズランド大学(UQ)は、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)環境におけるデータのキャプチャ、保存、分析、管理を簡素化することを目指していました。IBMビジネス・パートナーであるSundata社と協力して、IBM® Spectrum Scaleソフトウェアを活用して統合データ・ファブリックを開発し、画像集約型およびAIワークロードを大幅に高速化しました。

ビジネス上の課題

クイーンズランド大学は、複雑なAI主導のプロジェクトなどの研究コラボレーションを加速するために、毎日生成される数百テラバイトのデータをサポートできるストレージ・ソリューションを必要としていました。

概要と経緯

クイーンズランド大学は、IBM Spectrum Scaleを活用して、一元管理できる高性能データ・ファブリックを構築しました。また最近には、最速のHPC環境用にIBM Elastic Storage System(ESS)ソリューションを追加しました。

成果 2時間でソフトウェア・デファインド・ストレージのROIを達成
研究チームは、週に何百時間もの時間を節約できるようになりました。
医用画像解析のランタイムを約74%短縮
重要な研究の発見までの時間を短縮できるようになりました。
指数関数的に増加するデータ量
スケーラブルで、コスト効率に優れたストレージ・ファブリックがサポートしています。
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クイーンズランド大学のAI研究最前線

超音波技術をどのように活用すれば、抗体医薬が血液脳関門を突破し、アルツハイマー病の進行を遅らせることができるのでしょうか。ショウジョウバエの神経回路は、ロボットの動きを設計するにあたって、何を教えてくれるでしょうか。なぜ細胞の炎症はがんを引き起こすのでしょうか。また、生細胞をナノスケールでリアルタイムにイメージングすることで、何が分かるでしょうか。クイーンズランド大学では、創造的な研究者がこういった難しい問題に取り組み、多くの場合、世界中の人々の生活を変える可能性のある発見につながっています。

これらの難題に取り組んでいる研究チームは、最先端の研究を行うために、大学の最速のGPUアクセラレーテッド・コンピューターを活用しています。画像集約型の科学およびAIワークロード向けに特別に設計されたこのスーパーコンピューターは、同大学の他のHPCシステムと同様に、いつでもどこでも利用できる、極めて高速でスケーラブル、かつ柔軟なデータ・ストレージを必要とします。

クイーンズランド大学のリサーチ・コンピューティング・センター(RCC)は、インジェストからインサイトへの高速パスを構築するために、統一された高性能ストレージ・ストラテジーとアーキテクチャーを導入し、大学全体のデータの取り込みと分析を効果的にサポート、および管理することを目指しました。

RCCは、データ量、速度、多様性の指数関数的な増加に対応できるだけでなく、迅速なデータ・アクセスを提供できるソリューションを求めていました。「研究者は、デスクトップからHPCクラスターまで、さまざまなコンピューター・システムやMRIスキャナー、光学顕微鏡、DNAシーケンサーといった膨大な数の装置を使用して、構造化・非構造化データを生成しています」RCCでディレクターを務めるDavid Abramson氏言います。「データに関する私たちのパラダイムは、データの論理コピーを1つ保持し、それをさまざまな方法でレンダリングして、研究者が必要なときに、必要な場所でデータを利用できるようにすることです」と同氏は言います。RCCは、潜在的なソリューションを評価する一方で、大学の将来のニーズに応じて、拡張可能なテクノロジーも模索していました。

ESSソリューションを使用することで、AFMやその他のIBM Spectrum Scale機能が提供するデータ管理の透明性とともに、スーパー・コンピューター内の高速並列ファイル・システムの強みを活かすことができます。 Jake Carroll Chief Technology Officer, Research Computing Centre クイーンズランド大学
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オンデマンド・アクセスを備えたHPCストレージ

RCCは、IBM Spectrum Scaleを活用して、一元管理できるMeDiCI(Metropolitan Data Caching Infrastructure)として知られる、高性能データ・ストレージ・ファブリックを構築しました。「研究者がイノベーションを推進するには、最先端の研究コンピューティング・インフラストラクチャーを活用して、タイムリーかつスケーラブルで限界を押し広げられるアプローチで、質の高い研究を実施できる環境が必要です。クイーンズランド大学のRCCで最高技術責任者(CTO)を務めるJake Carroll氏は、「IBMとのパートナーシップは、こうしたニーズに応えるのに役立ちます」と言います。「大学全体や他の国際的な研究機関の研究者や学生は、MeDiCIを活用することで、クイーンズランド大学のコンピュート・クラスターに保存されたデータをシームレスに利用して、共同研究を行うことができます。

「研究者は、席に着くと、すべてのデータを見ることができます。それが実際に遠隔のデータセンターから光回線を介して、超高速で移動していることに気づいていません」とAbramson氏は言います。

さらに、MeDiCIエコシステムは、さまざまなプラットフォーム、機器、データをサポートしています。「IBM Spectrum Scaleソフトウェアによって、異なるサイロのストレージ・ソースを1つの統合されたインテリジェントなストレージ・インフラストラクチャーに統合し、適切なプロトコルでデータをレンダリングすることができます。これにより、分析を高速化して、リソースを有効活用できるようになります」とAbramson氏は言います。MeDiCI は、ユーザー、機器、データ・パラメーターなどのプロジェクトに関するメタデータも自動的にキャプチャします。

RCCのチームは、MeDiCIインフラストラクチャーを進化させ続け、最近ではUQ HPC Wienerストレージ・ソリューションとして展開ました(ibm.com外部へのリンク)。目標は、プラットフォームにより向上したスループットを活かして、研究者が同じ時間枠により多くの作業を行えるようにすることです。「私たちは、ギガバイト/秒の観点から多くの帯域幅を維持できるだけでなく、ディスク・システムとフラッシュ・ストレージから同時に超高速で送られてくる膨大なデータをサポートするために、極めて厳しいIOPS要件も満たせるソリューションが必要でした」とCarroll氏は言います。

「IBM Spectrum Scale(を備えたハードウェア・プラットフォーム)が必要だったのは、その機能が極めてユニークなものだったからです」とCarroll氏は言います。「ESSソリューションを使用することで、AFMやその他のIBM Spectrum Scale機能が提供するデータ管理の透明性とともに、スーパー・コンピューター内の高速並列ファイル・システムの強みを活かすことができます。この統合は、ユーザーのワークフローに適合しており、科学のアウトプットにおいては、「ワークフロー・イズ・キング」です。これ’が、ソフトウェア・デファインド・ストレージを活用している理由です」と同氏は付け加えます。

クイーンズランド大学は、ESSソリューションを使用することで、最大40 GBのスループットとエクサバイトのストレージまでスケールアウトできる大規模なデータ・ボリュームをサポートし、ハイブリッドクラウド・モデルを通じて、迅速なメタデータへのアクセスを提供しています。IBM Spectrum Scale RAIDイレイジャー・コーディング機能を備えたこのソリューションは、高レベルのストレージの信頼性、可用性、パフォーマンスをサポートできるように設計されています。AFMと組み合わせることで、単一の共通ストレージ・アーキテクチャーを維持しながら、特定のプロジェクト・ワークフローにおけるデータ・アクセスを最適化することもできます。

オーストラリアのIBM Systems Lab ServicesとIBM Systemsのテクニカル・セールス・チームは、Sundata社およびRCCと連携して、ESS GH14SソリューションをInfiniBandネットワーク上に迅速に展開し、エンド・ツー・エンドのMeDiCI ITアーキテクチャーに統合しました。各チームは連携して、プロジェクトの各段階で細部に注意を払いながら作業を行い、5 日間でアレイを実装しました。

RCCは最近、IBM Storage Insightsを導入しました。IBM Storage Insightsは、クラウドベースのストレージ管理およびサポート・プラットフォームで、予測分析機能を備えています。これにより、インフラストラクチャー全体にわたって、より詳細で一貫性のある可視性を得ることができ、より迅速な問題解決を通じて、パフォーマンスの向上を実現しています。

IBMは最近、広範なテストと評価のために新しいESS 5000をクイーンズランド大学に導入しました。Abramson氏は、既存のテクノロジーを拡張してきた実績から、IBMと提携することに決めた、と言います。

「すでに大学内で、Spectrum Scaleを導入することのイノベーションを実証していました。クイーンズランド大学の環境でどのように機能するか、どの部分を強化できるかについて、フィードバックを提供することができていました」とAbramson氏は言います。「最も要求の厳しい研究ニーズに合わせて、IBMの他の最先端のハードウェアをテストできることに興奮しています」

ESSソリューションを使用することで、AFMやその他のIBM Spectrum Scale機能が提供するデータ管理の透明性とともに、スーパー・コンピューター内の高速並列ファイル・システムの強みを活かすことができます。この統合は、ユーザーのワークフローに適合しており、科学のアウトプットにおいては、「ワークフロー・イズ・キング」です。これ’が、ソフトウェア・デファインド・ストレージを活用している理由です。 Jake Carroll Chief Technology Officer, Research Computing Centre クイーンズランド大学
成果の詳細
発見までの時間を短縮

大学全体のファイルにアクセスするためのアクティブ・ファイル・マネージメント(AFM)などのIBM Spectrum Scaleテクノロジーを採用した統一データ・ファブリックにより、RCCはデータ管理を一元化し、ITコストをコントロールしながら、研究者の時間と大学のリソースを最適化しています。大学の研究者は、大規模に膨大なデータを作成し、複雑なワークロードを実行するための包括的なコンピューティングおよびストレージ機能を手に入れました。

ESSデバイスから利用できる拡張された帯域幅とIOPSにより、Wiener HPCシステムを利用する研究チームは、前例のない速度でデータを処理しています。「機械学習とAIが中心にあります。ESS GH14Sはスーパー・コンピューターのGPUの活用を強化し、研究者が同じ時間枠により多くのことを行えるようにして、発見までの時間を短縮しています」とCarroll氏は言います。新しいストレージ・アレイはパフォーマンスの向上に基づいて、わずか2時間でROIを達成し、大学全体の医療画像を扱う研究者は毎週数百時間の時間を節約しました。

例えば、同大学のクイーンズランド脳科学研究所(QBI)では、アルツハイマー病を研究している神経科学者が、有限要素解析と呼ばれるプロジェクトのワークロードの実行に必要な時間を約74%削減し、実行時間を18.72時間に短縮しました。人間の頭蓋骨上の超音波分布をより詳細に理解することで、研究者はドラッグ・デリバリーのための血液脳関門の突破に必要な技術を開発できます。「非常に複雑な作業であり、膨大な計算能力とストレージが必要です」とCarroll氏は言います。

別のケースでは、QBIとショウジョウバエの神経回路を研究している他の研究者が、個々のニューロンの種類をラベル付けして操作する遺伝学的手法を開発しました。Wiener使用することで、動いている小さな昆虫のテラバイト規模の高速動画を迅速に処理し、触角、腹部、6本の脚の関節の正確な動きを測定できます。各ニューロンの役割に対する新たなインサイトにより、歩行や飛行行動などの複雑な運動を支配する原理をより深く理解できるようになります。

クイーンズランド大学の分子生物科学研究所では、細胞の炎症を研究している研究者が格子ライトシート顕微鏡を使用して、生きた細胞プロセスの高解像度4D画像を撮影しています。デコンボリューション顕微鏡として知られる数学的モデリング・プロセスを使用して表示された画像は、がんがどのように形成されるかをリアルタイムに観察することができます。Wienerストレージ・ソリューションは、デコンボリューション時間を70%以上削減するなど、これを可能にしています。RCCは、デコンボリューション・タスクを最適化するための使いやすいポータルを構築することで、研究者の時間をさらに節約しました。

「幅広い範囲の研究活動をサポートするために、できる限り最高のインフラストラクチャーを提供する必要があります。データの急激な増加を考慮すると、スケールメリットを達成する必要もあります」とCarroll氏は言います。「IBMとSundata社はその大きなサポートになっています」

紫の紋章が付いたオーストラリアのクイーンズランド大学のロゴ
クイーンズランド大学

クイーンズランド大学(ibm.com外部へのリンク)は、 100年以上にわたり、より良い世界に向けたナレッジ・リーダーシップを発揮し、世界的な評価されてきました。同大学は、世界の大学で最も権威があり、広く認知されているランキングで、常に上位にランクインしています。同大学はまた、オーストラリア国内の他の大学より多くの全国的な教育賞を受賞しています。質の高い教育へのコミットメントは、同大学の3つのキャンパスで学ぶ53,600人の在校生に力を与え、社会に前向きな変化をもたらす力を与えています。同大学の研究は、6つの学部、8つの研究所、100以上の研究センターの1500人以上の研究者からなる学際的な研究コミュニティーによって支えられており、グローバルな影響を与えています。

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IBM Storageソリューションの詳細については、IBM担当者またはIBMビジネス・パートナーにお問い合わせいただくか、Web サイトibm.com/storageにアクセスしてください。

Sundataについて

1986年に設立されたIBMビジネス・パートナーであるSundata社は、企業、政府、教育機関がビジネス・ストラテジーをテクノロジーと連動できるように支援しています。ブリスベンに本拠を置く中規模のシステム インテグレーター兼再販業者である同社は、幅広い計画、設置、サポート、ファイナンス・サービスを提供しています。

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法務

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2020年10月米国で作成。

IBM、IBMロゴ、ibm.com、IBM Elastic StorageおよびIBM SpectrumはInternational Business Machines Corp.の商標であり、世界中の多くの管轄区域で登録されています。その他の製品名およびサービス名は、IBMまたは他社の商標である可能性があります。IBMの登録商標の現在のリストは、Webページ「著作権および登録商標情報」( www.ibm.com/jp-ja/legal/copytrade.shtml)でご確認いただけます。

本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMビジネス・パートナーは独自の価格を設定しており、価格は異なる場合があります。 IBMが事業を展開している国であっても、特定の製品を利用できない場合があります。

記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。IBM製品およびプログラムを使って他社製品またはプログラムの動作を評価したり、検証する場合は、お客様の責任で行ってください。本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。

実際に利用可能なストレージ容量は、非圧縮データと圧縮データの両方について報告される場合がありますが、変動するため、記載されている容量よりも少なくなる場合があります。

注:お客様事例のリードスペースの画像はストックフォトです。