グローバルに展開する小さな企業がAIを利用してつながりを作る
Stickyは、照会の最大90%に自動的に応答する24時間365日の顧客サービスを提供しています
ニヤリと笑う小さな男の子にキスをする女性

子どもが帽子、手袋、ノート、さらには教科書など、大切な持ち物を持たずに学校から帰ってくることがよくあるという事実を知って、嘆かないでいられる親がいるでしょうか。そんな母親の1人が、スペインのバルセロナのガレージで、ラベル製造会社を設立してその問題を解決しようと決心しました。

今日、The Stikets Companyはグローバルな会社となり、ステッカーや接着製品のソリューションを世界の30カ国以上で家庭や企業に販売しており、15の言語に対応し、12種類の通貨をサポートしています。25カ国に特定のマーケティングを提供し、フィリピン、スペイン、コロンビアのヘルプ・デスクからサポートを提供しています。

同社は年間35万件以上の注文に応えていますが、その多くは特定の季節に発生します。たとえば、世界各地で起こる新学期の時期に注文が殺到します。その数週間の間に、親御さんたちはStikets社の顧客サービス・チャネルから様々な情報を求め、Stikets社はZendeskチャット・ソリューションを使用して、顧客とライブ・エージェントをつないでサポートします。しかし、同社が急成長したために、顧客の要求とエージェントの応答との間に長時間の遅れが発生する可能性がありました。

「問題を解決できる速さとコンバージョン率の間には、直接的な相関関係があることはわかっています」と、Stikets社の共同創設者のAntoni Ribas氏は述べています。「たとえ朝2時に来たとしても、質問や疑問をないがしろにすることでセールスの低下を招くことは許されません」

高性能AI

 

AI仮想アシスタントのStikyは最大で90%の照会を解決

AIの効率性

 

Stikyが行う平均会話数は 165件/日

高いCSAT

 

顧客満足度の評価: 92% が肯定的

残念なことに、顧客は単純な質問の回答を得るためですら、最大で24時間も待たされていました。当然、Stikets社から購入する機会も減ってしまっていました。同社のヘルプ・デスク・エージェントにとって、こうした状況は理想的なものではありませんでした。「エージェントには、同じような質問に何度も繰り返し答えるのではなく、最も難しい質問を解決し、顧客を購入のジャーニーに導くために時間を費やしてもらいたいと考えています」と、Ribas氏は言います。

Stikets社はAI搭載の仮想アシスタント・ソリューションを実装することで、この課題に取り組む決断をしました。Stikets社はわずか50人ほどの従業員を雇用していますが、Ribas氏はビジネスの未来にとってAIが重要であると強く信じています。「もしAIを持たなければ、今後数年のうちに倒産することになるでしょう」と、Ribas氏は言います。

しかし、それはただ一つの問題に対するソリューションを見つけることではありませんでした。Ribas氏によると、「当社は1つのソリューションにだけではなく、テクノロジーに投資したいと思っていました。テクノロジーに投資するためには、AIをよく知る経験豊富な企業と提携する必要がありました」。同社が、AIとデジタル・トランスフォーメーションの専門家である、IBMビジネス・パートナーのEnzyme Advising Groupを見つけたのはその時でした。

さらに、Stikets社はほぼすべてクラウドで運用されているため、同社で採用するAIソリューションはクラウド・ベースで、他のシステムやプラットフォームと互換性があり、ビジネスの季節的な性質に合わせて拡張可能であることが必要条件でした。そこでEnzyme者は、IBM Cloud®上で稼働する、IBM®watsonx Assistant仮想エージェント・ソリューションを推奨しました。

「IBM Cloudには柔軟性があり、最初は現在の当社に合わせてカスタマイズされた信頼できるソリューションから開始して、当社の成長に合わせて拡張できることがわかりました」と、Ribas氏は言います。IBM watsonx Assistantソリューションでは、Stikets社はSolution-as-a-service(SaaS)支払モデルにより、インフラストラクチャーへの投資を最小限に抑えることができます。「これはコグニティブ技術と人工知能の導入に踏み出す、当社の第一歩です。しかし、これが最初で最後の一歩でないことはわかっています。この一歩は、はるかなる道程の第一歩なのです」

Stickyは24時間365日、確実にお客様に対応いたします。これは以前の当社には実現できなかったことです。 Antoni Ribas氏 共同創設者 The Stikets Company, S.L.
AI仮想アシスタントがリアルタイムの回答を提供

Stikets社とEnzyme社は連携して、IBM Cloud上で稼働するIBM watsonx Assistantテクノロジーを使用して、Stikyというニックネームをつけたカスタム仮想アシスタントを開発しました。仮想アシスタントは、商品、出荷、価格などに関するよくある質問に回答することによって、顧客に24時間対応のサポートを提供します。IBM watsonx Assistantソリューションは、同社のZendeskアプリケーションと統合されています。これはフォローアップのためにライブ・エージェントに転送されるヘルプ・チケットを自動的に作成します。

Enzyme社はアジャイル手法を使用し、Stikets社は初めにスペイン語版ページのいくつかの基本的な応答で仮想アシスタントを訓練して、Stikyの最初のバージョンをわずか1週間で導入しました。Enzyme社とStikets社はその後もソリューションの強化を続け、さらに4つの言語を追加し、もっと複雑な質問に答えるように訓練を施しました。2020年半ばまでに、Stikets社は12のWebサイトにソリューションを導入しました。

完全に機能する仮想アシスタントを導入するのにかかったのはわずか10週間で、これにはStikyとクライアントのZendeskプラットフォームを統合することも含まれています。「どんぴしゃでした」とRibas氏は言います。「Enzyme社は10週間かかると言っていましたが、本当にそのとおりになったのです。これには感銘を受けました」

Enzyme社は、Node-RED開発ツールをベースにしたEnzyme Watson AcceleratorテクノロジーをIBM watsonx Assistantソリューションと統合しました。アクセラレーターは、顧客からの問い合わせをさらなるインテリジェンスで強化します。これはStickyのユーザー入力に基づいて、入力変数、コンテキスト、条件を定義します。また、特定の会話行動などの出力や、他の顧客システムとの統合なども行います。IBM watsonx Assistant機能を拡張して、マルチチャネルと複数言語の管理、サード・パーティーの統合を含めることができます。「IBM watsonx AssistantととIBM Cloudのアーキテクチャーのおかげで、当社は非常に迅速に作業を進められました」と、Enzyme社のディレクターのIsabel Celma氏は言います。

Enzyme社はまた、ヘルプ・デスク・エージェントのサポートを必要とする最も複雑な質問に対処するために、StickyをクライアントのZendeskソリューションにリンクする統合サービスを提供しました。「統合がシームレスに進められたことに喜んでいます、当初はこれが懸念事項でしたので」と、Ribas氏は言います。

また、Ribas氏は仮想アシスタントと他のシステムとのシームレスな統合にも感銘を受けました。「1つのシステムに統合されただけではありません」とRibas氏は言います。「当社にはカスタマイズされたe-コマース・プラットフォームやその他のシステムがあり、そうしたシステムが切断されてしまうことを恐れていましたが、そうはなりませんでした。これについては、Enzyme社の皆さんと当社のIT部門を本当に賞賛しなければなりません。Enzyme社と当社の両方にとって大変な労力を必要としました...それでも、全員が素晴らしい仕事をしたのです」

これはコグニティブ技術と人工知能の導入に踏み出す、当社の第一歩です。しかし、これが最初で最後の一歩でないことはわかっています。この一歩は、はるかなる道程の第一歩なのです。 Antoni Ribas氏 共同創設者 The Stikets Company, S.L.
顧客満足度とサービスの向上

Enzyme社と連携して、IBM Cloud上で稼働するIBM watsonx Assistantプラットフォームを使用する仮想アシスタントを開発することにより、Stikets社はリアルタイム・サポートを24時間365日に拡大しました。Stickyが質問に答えることができない場合、クライアントの統合Zendeskソリューションが自動的にチケットを生成します。ほとんどの場合、顧客サービス・エージェントは2時間以内にEメールで応答します。ピーク時期でさえも、その例外ではありません。

今日、Stickyはすべての照会の80%(スペインでは最大90%)を解決し、1日あたり平均165件の会話を行っています。この仮想アシスタントは、フルタイム従業員2.5人に相当するワークロードをカバーし、スタッフを解放して、より適切な他のタスクに集中できるようにしています。わずか数カ月の使用後に、Stikets社の統合されたカスタマー・ケア・システムは、92%の肯定的な顧客満足度を獲得しました。

「当社は今、これまでより高いレベルのサービスを提供できるようになりました」とRibas氏は指摘します。「Stickyは24時間365日、確実にお客様に対応いたします。これは以前の当社には実現できなかったことです」

Stickyを立ち上げた後、Stikets社はSticky以前の顧客サービスについて、いくつか気になることを発見をしました。「Stickyの会話を分析すると、約55%の対話が営業時間外に発生していたことがわかりました」と、Ribas氏は言います。「これには驚きました。つまりStickyの導入以前は、当社のWebサイトに寄せられた問い合わせのうち、55%は回答を翌日まで(週末をはさむ場合は月曜日まで)待たなくてはならなかったのです。待ちきれなかった顧客は、競合他社に行ってしまったでしょう。

同社はまた、Sticky以前は営業時間中に受け取ったすべての質問に答える能力がなかったことも発見しました。「営業時間外の問い合わせに対応できなかっただけでなく、営業時間内に寄せられた質問ですらかなりの数が返信できていなかったのです」と、Ribas氏は言います。「Stickyが、そうした事態を解決してくれました」

この仮想アシスタントはまた、2020年にスペインでの新学期シーズンに同社が備えることにも貢献しました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中で学校を再開する政府の計画をめぐって不確かな状態が続いていたため、Stickets社はシーズンに向けていつ準備したらよいかわかりませんでした。しかしRibas氏によると、「学校がいつ始まるのか誰もわからなかったにもかかわらず、仮想アシスタントには出荷に関する問い合わせが増加していました」とのことです。政府が学校の再開を発表した時、Stickets社と顧客は既に登校の準備ができていました。「仮想アシスタントがなければ、当社にはこうした判断はできなかったでしょう。未来を見たのではありませんが、市場が何を望んでいるかを理解できたのです」

Ribas氏には、StickyやIBM watsonx Assistantソリューションを活用する大きな計画があります。「今後の当社の目標としては、Stickyを当社の顧客の仮想アシスタントとし、販売プロセス全体のガイド役を勤めることで、テクノロジーを活用した質の高い顧客体験を実現することです」とRibas氏は語ります。「また、IBM Watsonテクノロジーを別の機能に使用することも計画しています。例えば、マーケティングや販売にも幅広く適用していきたいと考えています」

こうした小規模な企業にとって、未来のためにAIやクラウド技術に投資するのはまさに今だとRibas氏は考えています。「5年前であれば、価格が高すぎたために手が届かなかったり、そのような大きなリスクを取ることができないという企業は多かったでしょう」とRibas氏は言います。「しかし今は、投資をしないのはばかげているという段階まで来ています」

同氏の決断を後押しした重要な理由として、IBM Watsonのテクノロジーだけではなく、Stickets社とEnzyme社の関係の成長も含まれています。当社はテクノロジーを、それも質の高いテクノロジーを評価します」とRibas氏は言います。「ただし当社はテクノロジーだけでなく、パートナーについても重きを置いています」

同様にEnzyme社も、Stickets社との関係を継続して成長させることを計画しています。「Enzyme社は当初から、コグニティブとクラウドで成長したいということを本当にはっきりと示していました」とCelma氏は言います。「Enzyme社はアジャイルな会社であり、規模は小さくても、本当に大きく考えています」

Ribas氏は、「これはEnzyme社との最初の一歩であり、今はもっと多くのプロジェクトをやりたいと考えています」と結論付けています。

Striketsのロゴ
The Stikets Company, S.L.について

子どもの持ち物にラベルを付けてなくさないようにするためのより良い方法を必要としていた母親によって2010年に設立されたStikets社(ibm.com外部へのリンク)は、スペインのバルセロナに本社を置くラベル製造販売業者です。現在わずか50人の従業員で、汎用、靴用、写真、アイロン接着、カバン用タグ、カスタム・ラベルを含む、一連のラベル・ソリューションを製造しています。同社は現在、30カ国以上から年間35万件以上の、個人用と業務用の両方の注文に応えています。企業部門における100%カスタム・ラベルの売上は、ビジネス・ボリュームの12%を占めています。

Enzymeのロゴ
Enzyme Advising Groupについて

IBMビジネス・パートナーであるEnzyme社(ibm.com外部へのリンク)は、スペインのバルセロナに拠点を置く、世界中の企業にコンサルティングとテクノロジーのアドバイスを提供して、そのビジネスのデジタル・トランスフォーメーションに貢献する、専門サービス会社です。このグループは、お客様の収益性を向上させ、その顧客が要求する新しいデジタル・サービスに対応できるようにする、ソリューションやサービスの実装を支援します。Enzyme社はバルセロナとマドリードのロケーションで約75人を雇用しています。

次のステップ

この記事で紹介されているIBMソリューションの詳細については、IBMの担当者またはIBM ビジネス・パートナーにお問い合わせください。

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© Copyright IBM Corporation 2021.IBM Corporation、IBM Watson、New Orchard Road、Armonk、NY 10504

米国で製作、2021年9月

IBM、IBM ロゴ、ibm.com、およびIBM Watsonは、世界中の多くの法域で登録されているInternational Business Machines Corp.の商標です。その他の製品名およびサービス名は、IBMまたは他社の商標である可能性があります。IBMの登録商標の最新リストは、Webサイトの「著作権および登録商標情報」(ibm.com/trademark)でご確認いただけます。

本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国であっても、特定の製品を利用できない場合があります。

記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。