Siemens Gamesa Renewable Energy社は、世界中の何百万もの人々のためにクリーン・エネルギーを生成する風力タービンを構築しています。
グリーンエネルギー革命をリードするために、同社は生産能力の向上を目指していますが、手動プロセスによりエラーが発生し、タービン・ブレードの生産が遅れました。
製造を加速するため、Siemens Gamesa社はIBM Consultingと提携し、Microsoft Azure上で、レーザー・グリッドを使用することで、各ファイバーグラス層をピンポイントで正確に配置することができる機械学習(ML)ソリューションを開発しました。
新しいソリューションには、コンピューター・ビジョン、ML、エッジコンピューティング、モノのインターネット(IoT)などの複数のテクノロジーが含まれています。IBM Consultingの専門家を自社のDigital Ventures Labs(DVL)と協力させることで、Siemens Gamesa社は、アイデアを製図板から迅速に工場現場に移すために必要なケイパビリティーを手に入れることができました。
新しい製造システムでは2.5年以内に完全なROIを見込んでいます
Siemens Gamesa社は現在、デンマークのオールボーにある生産ラインの1つでデータ駆動型の製造ソリューションを使用しており、そこでは技術者がファイバーグラスからタービン・ブレードを鋳造しています。
Siemens Gamesa社のシニア・プロダクト・マネージャー、Finn Mainstone氏はこう説明します。「各タービン・ブレードは、当社のエンジニアが精密な仕様に合わせてカスタム設計しているため、製造工程で障害が発生すると、複雑でコストと時間のかかる修正が必要になります。この状況を回避するために、私たちのチームは各ブレードの上部にレーザー・グリッドを表示し、各ファイバーグラス層をどこに配置するかを正確に示すことにしています。重要なのは、ソリューションがブレードの表面にエラーや異常を検出した際に、即座にアラートを受け取ることができるようになったということです」
同氏はさらに次のように続けます。「工場内のIoTに接続されたカメラと、エッジ上の機械学習モデルを使用した継続的な分析のおかげで、すべてがMicrosoft Azure上で管理され、当社の技術者は各ブレード層をより高速かつ正確に配置できるようになりました。その結果、資材の配置ミスによる製造エラー率が減少し、生産ラインのスムーズな稼働を維持することができています。実際、ソリューションをグローバルに展開すると、ベスト・プラクティスを共有できるようになります。これにより、フランスのル・アーブルなど、新しくオープンした工場のチームの学習曲線が短縮され、スループットが向上し、より多くの顧客注文を受け入れ、世界中のより多くの人々にグリーンエネルギーの恩恵をもたらすことができるようになるのです」
タービン・ブレードの空力プロファイルは効率的な発電にとって極めて重要であり、各ブレードの構築には高度な熟練作業が必要です。「当社の最新のSG 14-222DDタービンのブレードは長さ108メートルですが、依然としてほぼ手作業で作られています」とMainstone氏は述べています。「各ブレードはオーダーメイドで作られるため、私たちのチームは組み立てラインで働く労働者というよりは、家具を組み立てる職人のようなものです。しかし、他の手動プロセスと同様に、人的ミスのリスクが常に存在します」
Siemens Gamesa社には厳格な品質保証プロセスがあり、タービン・ブレードは製造の最終段階で検査や修理が行われます。たとえば、グラスファイバーが間違って配置されたり、異物の上に置かれたりした場合、影響を受けた部分のブレードが切り取られて交換されます。これはまれなことではありますが、コストがかかってしまいます。
「ブレードを再加工するたびにコストが上昇し、各期間に生産できるブレードの数が制限されるのです」とMainstone氏は続けます。「当社のマージンとスループットに対するこのさらなる圧力は、競争の激しいマーケットプレイスにおいては困難な課題です。風力発電に対する世界的な需要は増加しており、スループットを増やすことで、これらの新たな機会を捉えてビジネスを成長させることが容易になることを私たちは認識していました。私たちの目標を達成するために、技術者がピンポイントの精度で迅速に作業できるようにする方法を探しました」
Siemens Gamesa社は、グローバルな活動にさらなる標準化と効率性をもたらす新しいデジタル・ケイパビリティーを構築するために、変革のスペシャリストからなる社内チーム、Digital Ventures Labsを結成しました。DVLの最初のプロジェクトの1つは、レーザー・グリッドを使用して、生産中にグラスファイバー層を配置する場所をチームに示す品質管理システムでした。しかし、このシステムは製造プロセスの障害を検出できず、運用するには大幅かつ反復的な手操作による介入が必要でした。
「私たちは、チームに視覚的な合図を与えることで、正しい道を歩んでいると確信していました」とMainstone氏は振り返ります。「私たちは、インテリジェント・オートメーションで品質管理システムを補強することで、プロセスを強化できる大きな可能性を感じていました」
IBMのシニア・マネージング・コンサルタント兼プロジェクト・リーダーであるMelanie Beckは、次のように続けます。「Siemens Gamesa社のチームは、各製造ステーションの上にカメラのアレイを取り付け、コンピューター・ビジョンとMLモデルを使用して、各レイヤーの配置をリアルタイムで検証するという野心的なアイデアを持っていました」
DVLは、ターゲット・ソリューションの詳細な概略図を作成し、そのビジョンを実現するパートナーを探しました。「厳しい入札プロセスを通じて、IBM Consultingは常にリーダーとして際立っていました」とMainstone氏は述べます。「1カ月にわたる綿密な議論の中で、IBMは私たちの概要に完全に沿った強力な提案を作成し、専門知識、熱意、主題に関する深いナレッジを備えたスタッフを配置してくれました」
またこう続けます。「IBMは、アイデアを洗練するために多大な時間とリソースを費やしてくれました。このプロセスは、新しいソリューションの最適な設計と構成を決定する際に非常に価値がありました。たとえば、少数の非常に高価な高解像度のカメラを導入するか、それとも多数の安価で低解像度のカメラを導入するかを決定する必要がありました。IBMは、さまざまなハードウェアとソフトウェアのオプションの長所と短所を特定し、ニーズを満たすバランスの取れたアプローチを考案する手助けをしてくれたのです」
IBM Consultingは、DVLと協力して、Siemens Gamesa社が頻繁な反復型開発サイクルを使用してプロジェクトを迅速に推進できるよう支援しました。IBM Garageの方法論の支援を受けて、2つのチームは大量の複雑な作業を非常に短期間に削減しました。Siemens Gamesa社は、数カ月以内に、設計からプロトタイピング、そしてオールボーの工場向けの最小実行可能製品(MVP)の導入に移行しました。
「私たちは入札プロセス中に、長さ97メートルの白いブレード上のファイバーグラス・シートの白い端を最小限の遅延で検出する機能など、非常に具体的な要件を設定しました」とMainstone氏は説明します。「IBMは、機械学習における強力なケイパビリティーと徹底的なクラウド・エンジニアリングの実践により、すべてのニーズを満たすソリューションの構築を支援してくれました。契約には含まれていませんでしたが、IBMは工場内のエッジコンピューティング・システムの構成を支援するために最大限の努力をしてくれました。そして、新型コロナウイルス感染症が発生したとき、IBM ConsultingはIBM Garage方法論をリモート作業に迅速に適応させ、軌道に乗るのを支援してくれたのです」
Microsoft Azure IoT Edgeプラットフォームでビデオを処理することで、同社は高度なMLモデルを大量の非構造化データにリアルタイムで適用し、レーザー・グリッド・システムを使用して工場チームにフィードバックを提供することができます。この新しいソリューションはMicrosoft Azure上に構築されているため、Siemens Gamesa社は、このミッション・クリティカルなデジタル・サービスが、同社の厳しい企業IT基準に沿った堅固な高可用性クラウド・ケーパビリティーにより、24時間365日スムーズに稼働するよう設計されているという安心感を得ることができます。
「Siemens Gamesa社はビジネスの多くの部分でMicrosoftソリューションを広く使用しているため、このプロジェクトにMicrosoft Azureを選択するのは自然な選択でした」とMainstone氏はコメントしています。「当初から、私たちはMicrosoft Azureプラットフォームに関するIBM Consultingチームのナレッジと専門知識に非常に感銘を受けてきました。IBMは、Microsoft Azure Machine Learning、Microsoft Azure DevOps、Microsoft Azure IoT Edgeなどのコンポーネントを含む、Microsoft Azureの可能性を最大限に活用するのに役立つスキルと経験をもたらしてくれました」
新しいソリューションは非常に多用途であるため、Siemens Gamesa社は新しい機能を簡単に追加できます。「私たちは最近、IBMが作成したMLモデルを自社で開発したモデルで強化しました」とMainstone氏は述べています。「この新しい機能は、金型内の工具や破片などの異物を検出し、それらを取り除くようチームに積極的に警告するため、ダウンストリームでの費用のかかる修理作業を回避するのに役立つのです」
オールボーの1つの生産ラインにおけるパイロット・プロジェクトの大成功を基に、Siemens Gamesa社は新しい製造ソリューションの全社展開を目指しています。
Beckは次のように付け加えています。「Siemens Gamesa社はMicrosoft Azure上にソリューションのコアを構築し、IBM Consulting AI@Scaleのベスト・プラクティスを活用したため、スケールアウトは非常に簡単でコスト効率も高くなります。導入が完了すると、Siemens Gamesa社はコストを削減して利益率を保護しながら、生産プロセスの品質と一貫性を大幅に向上させることができると予測しています」
プロジェクトの次の段階では、Siemens Gamesa社は、オールボーにあるすべての製造ライン、フランスのル・アーブルにある工場、英国ハルにある工場をカバーするようにソリューションを拡張します。同社はさらに先を見据えて、世界中のすべての工場にこのソリューションを導入するというアイデアを検討しています。
「Azureベースの生産システムの投資回収期間は約2年半と見込んでいます」と、Siemens Gamesa社のオフショア運用担当シニア・バイス・プレジデントKenneth Lee Kaser氏は述べています。「そして、より多くの機能性を追加し、より多くの副次的なメリットが得られるにつれて、ビジネス・ケースはますます改善されると期待しています」
「この種の意思決定支援システムを導入すると、新しい生産チームのトレーニングに必要な時間が大幅に短縮され、商品化までの時間が短縮されるため、新しい工場を開設するときに強力なメリットがもたらされます」とMainstone氏は結論付けます。「IBM Consultingは、私たちの最も信頼できるパートナーです。Siemens Gamesa社は、次世代の再生可能エネルギー技術を世界中のお客様に提供する準備ができており、IBMと協力して当社の製造ソリューションをビジネス全体に展開できることを楽しみにしています」
Siemens Gamesa(ibm.com外部へのリンク)は、再生可能エネルギー業界の世界的な技術リーダーです。風力タービンの開発、製造、設置、メンテナンスを専門とする同社は、1980年代以来、持続可能なエネルギーへの世界的な移行をサポートしてきました。再生可能エネルギー分野の主要企業であり革新的なパイオニアであるSiemens Gamesa社は、世界75カ国に107GWを超える発電容量を設置しています。
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2021年5月
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