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大手の石油・ガス企業の事業は複雑で垂直統合されており、その中で小売部門(つまり、ガソリン・スタンド)は常に非常に特殊な役割を果たしてきました。ダウンストリーム事業の末端として、ガソリン・スタンドは中核となる精製燃料製品を販売するためのアウトレットであるだけでなく、顧客とブランドとの関係を築く1次ポイントでもあります。そのため、小売店での体験のクオリティーが非常に重要であり、ますますその傾向が強くなっています。

何年もの間、主要なエネルギー企業は、コーヒーやスナック、さらには食料品へと、スタンドで販売する商品の種類を徐々に増やしてきました。これは収益の向上だけを意味するのではなく、顧客体験の種類を豊富にすれば企業は顧客を引き付けてお得意様にできるため、ガソリンの販売増にも貢献することになります。業界にとって、この伝統的な販売モデルは小売事業の基盤であり続けています。

しかし今日、社会と業界の両方が環境という点で岐路に立っているため、一部の石油・ガス企業は、小売事業を新たに捉えなおし、何らかの形で再定義する機会を見出しています。燃料の販売は依然として中心的な目標ですが、多くの企業は小売事業が顧客に提供できる価値-そして経験-に関して、より大きなビジョンを受け入れています。

東欧最大の総合石油・ガス企業の1つであるMOL Group社は、9か国に1,900を超えるサービス・ステーションを持ち、ガスの小売りに対するこの新しい見方を実証しています。MOL社の変革の舞台は2016年末に設定されました。同社はここで2030年までの戦略計画の一環として、小売事業をダウンストリーム・オペレーションからサービス・イノベーションを中心とした新しい部門に移転するという大胆な決定を下しました。

舞台裏では、経営陣はデジタルとモバイルの技術が消費者の行動を根本的に変え、その過程で小売業に戦略的機会を生み出していることを認識していました。組織レベルでは、ダウンストリームからの移行の理由は主に文化的なものでした。小売業のイノベーションには適切な環境が必要でした。

拡張型のデジタル・エンゲージメントを利用することで、

15%~30%

平均収益の増加が促進されました

競合他社との比較で

> 20%

顧客満足度が上昇しました

また、適切な人材も必要でした。そこでIstván Mag氏の出番となりました。小売業への移行が進む中、Mag氏は、小売りユニットとして知られる消費サービス部門のエグゼクティブ VPのPéter Ratatics氏の戦略アドバイザーとしてMOL社に入社し、すぐにデジタル消費者サービスの責任者に任命されました。Mag氏とチームが密接に協力してMOL社の小売業の変革計画の輪郭を改良していく中で、専門のリソース・チーム(デジタル・イノベーションの手段、事業とITの専門知識の融合)の必要性がますます明確になりました。それが消費者サービス内の「デジタル・ファクトリー」の創設につながり、Mag氏は同部門を率いるべく指名されました。

MOL社の小売りビジョンの核心は、デジタル・サービスをガソリン、食品、コンビニなどのコアの部分から、カー・シェアリング、フリート管理、小包サービスなどのまったく新しい分野にまで拡大することでした。Mag氏は「 当社の目標は、中東欧地域で真の消費財小売業者となり、総合的な複合モビリティー・サービスの提供企業になることです。これを実現するためには、「デジタル・ファクトリー」がすべての事業分野で共通のサービス・セットと顧客体験を展開できるようにする包括的なデジタル・マーケティング機能が必要であると認識していました」と述べています。計画では、最初にクロアチア、スロベニア、ハンガリーで展開し、次にプラットフォームをスロバキア、チェコ共和国、その他の地域の国に拡張することでした。

Mag氏と彼のチームは、さまざまなオプションを徹底的に検討した結果、Salesforceのマーケティング・ソリューション・スイートがニーズに最適であると判断し、すぐにその導入を決定しました。残された最大の課題は、すべてのコンポーネントをまとめるためのシステム統合パートナーの選択でした。「当社はSalesforceプラットフォームに関する実証可能な専門知識に重点を置いていました、特に当社で計画していたような包括的で大規模なソリューションを提供することについてです」とMag氏は説明しています。

MOL社がRFPプロセスに参加するよう招待した企業は、このテストで36時間のハッカソン・チャレンジに挑戦し、各社はそれぞれの技術提供能力を実証しました。ハッカソンが終わりに近づくと、Salesforceコンポーネントのフル・スイートを使用して実用的なプロトタイプを作成できるのはIBM Consulting™のチーム(地域全体の現地のメンバーで構成される)だけになっていました。「IBMにはSalesforceを活用する非常に有能な技術チームがあることが証明されました」とMag氏は言います。「IBMなら実現できる、私たちはそう確信しました」

データ中心のマーケティングでより深いエンゲージメントを推進する方法

その後のエンゲージメントでは、スタイルと実質において共創が原則でした。デジタルITの責任者であり、デジタル・ファクトリーの創設者の1人であるLaszlo Stekl氏にとって、IBMの共同アプローチは魅力的でした。小さいながらも成長している同氏のチーム開発に、必要なサポートを提供してくれたからです。「IBMは私たちの新しい組織の取り組みが成功し、目標に向かって前進するための基礎を築いてくれました。本当に感謝しています」とStekl氏は言います。「両チームにとってやりがいのある経験でしたし、多くのことを学ぶことができて非常に有益でした」

この共創の取り組みの成果が、Salesforceコンポーネントの完全なポートフォリオを採用した統合オムニチャネルのマーケティング・ソリューションです。この統合オムニチャネルでは、実際の顧客行動データを中核として、MOL社の顧客とのやり取りのあらゆる側面を調整できます。同じデータ中心の品質により、MOL社のマーケティング担当者は、各顧客の特定のジャーニーに基づいて、ターゲットを絞ったキャンペーンを提供できます。

サービス・ステーションのカフェに座って、ペーストリーを傍らにコーヒーをかき混ぜている女性

MOL社のソリューションの基盤は、Salesforce Marketing Cloudで、これは顧客にメッセージを配信するための統合ハブとして機能します。同社のCRM機能は、Salesforce Service Cloudによって実行されます。MOL社は、顧客ポータルの基盤としてSalesforce Experience Cloudを使用しています。MOL社のソリューションは、MuleSoftを採用して、複数の国にまたがるこれらすべてのコンポーネントを統合および調整します。

ソリューションを構築するにあたり、MOL社とIBMはスケール・ベースの効率性とMOL社の現地のマーケティング・チームの特定のニーズとのバランスを取る必要があることを認識していました。Mag氏によれば、MOL社とIBMの対応は、共通のフレームワークを提供する「グループ・テンプレート」アプローチに従うことでしたが、現地のチームには独自のキャンペーンを設計するための多くの柔軟性が与えられました。「各国には独自のマーケティングおよびロイヤルティー部門があります」と同氏は説明します。「テンプレートに柔軟性を組み込んだため、現地のチームは独自のキャンペーンやロイヤルティー・プログラムに合わせて実行できます」

これらのローカル機能の活性化を支援するために、IBMのチームは デジタル・ファクトリーと緊密に連携して、マーケティングとロイヤルティーに関する新しい慣行の確立を支援してくれました。「ローカル市場で新しいリワード・マーケティングのチームを立ち上げたとき、IBMはHyper Careサポートを通じて、新しいプラットフォームを独自に管理する方法についてこれらのチームを教育する上で重要な役割を果たしました」とMag氏は言います。「これは、デジタル・ファクトリーの成長と発展に伴い、当社が求めていたサポートの『架け橋』を体現しています」

Mag氏のチーム活動を開始し始めた頃、チームの方針を決める重要な段階で、IBM® Application Management Servicesは必要に応じて同様のサポートをしていました。現在ではその方針が結実し、チームはより大規模で経験豊富なチームに成長し、数々のソリューションを社内で実行しています。

収益の増加は、お客様の満足度を示す

Mag氏は、MOL社が2030年を見据えて拡張されたデジタル・コマース戦略を考案した一方で、その結果はすでに明らかになっていると指摘しています。「データ駆動型のセグメンテーション、より柔軟なロイヤルティー・プログラム、よりターゲットを絞ったキャンペーンなど、基本的に当社のデジタル・イノベーションの焦点は、お客様の行動を認識して変化をもたらすということです。さらに広く言うなら、お客様との関わり方を再定義することです」

これまでの指標が、それを物語っています。新しいアプリの導入から2年以内に、顧客のダウンロード数は順調に140万を超え、来年には2倍になると予想されています。しかし本当の成果は、「アプリを使用しているお客様からMOL社にもたらされる収益は、平均15%~30%の向上を果たしています」とMag氏は述べています。「これは、よりスマートで便利なデジタル・エンゲージメントが、ロイヤルティーを高め、より多くの消費を促進していることを示す強力な証拠です」

また、2つの重要な方法でMOLブランドを強化しています。顧客側では、デジタル・ソリューションとロイヤルティー・プログラムに関連する満足度は、競合他社と比較してMOL社の方が20%以上高くなっています。しかしMag氏が指摘するように、洗練されたMOL社のSalesforceソリューションはIT専門職の人々に強力なアピールとなり、将来的には同社の従業員となる可能性もあります。「当社は、ガス小売業界の真のイノベーターとしての評判を高めています」と同氏は説明します。「当社にはこれまで以上に優れた技術者が応募してきています。応募者の皆様は、当社を優れたテクノロジーを使用して優れた顧客体験を提供する企業と認めてくれているのです」

MOL Group社について

ハンガリーのブダペストを本拠地とするMOL社(外部リンク)は、26,000人の従業員を擁し、30か国以上で事業を展開する国際的な石油・ガス企業です。MOL社の小売事業は、中東欧地域の9か国に1,900のサービス・ステーションを有し、1,000 万人の顧客にサービスを提供しています。

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2022年7月

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